WebLogic Server とクラスタのコンフィグレーション
以下の節では、WebLogic Server および WebLogic Server クラスタの設定方法について説明します。
サーバとクラスタのコンフィグレーションの概要
WebLogic Server およびクラスタから成るドメインの永続的なコンフィグレーションは、XML コンフィグレーション ファイルに格納されます。このファイルは 3 通りの方法で変更できます。
- ドメイン コンフィグレーションを管理およびモニタするための BEA のグラフィカル ユーザ インタフェース(GUI)である Administration Console を使用します。Administration Console は、ドメイン コンフィグレーションを修正またはモニタするための第一の手段です。
- WebLogic Server に付属のアプリケーション プログラミング インタフェース(API)に基づき、プログラムを記述してコンフィグレーション属性を変更します。
- ドメイン リソースのコンフィグレーション属性にアクセスするための WebLogic Server コマンドライン ユーティリティを実行します。このユーティリティは、ドメイン管理を自動化するスクリプトを作成する場合に使用します。
管理サーバの役割
いずれの方法を選択する場合でも、ドメイン コンフィグレーションを変更するときに管理サーバが動作している必要があります。
管理サーバとは、Administration Service が動作している WebLogic Server のことです。Administration Service は、WebLogic Server のための機能を提供し、ドメイン全体のコンフィグレーションを管理します。
デフォルトでは、WebLogic Server のインスタンスは管理サーバとして扱われます。管理サーバが起動すると、コンフィグレーション ファイルがロードされます。コンフィグレーション ファイルは、デフォルトでは、WEBLOGIC_HOME
ディレクトリの config
というディレクトリに格納されます。config
ディレクトリには、管理サーバで利用できる各ドメイン用のサブディレクトリがあります。実際のコンフィグレーション ファイルは、そのドメイン専用のディレクトリに配置され、config.xml
と呼ばれます。デフォルトでは、管理サーバが起動すると、WebLogic Server ソフトウェアのインストール時に指定されたデフォルトのドメイン ディレクトリでコンフィグレーション ファイル(config.xml
)が検索されます。
管理サーバが正常に起動するたびに、config.xml.booted
という名前のバックアップ用コンフィグレーション ファイルがドメイン専用のディレクトリに作成されます。万が一、サーバが終了するまでの間に config.xml
ファイルが壊れるようなことがあっても、この正常なコンフィグレーションに戻ることができます。
ドメインは、1 つの WebLogic Server だけで構成することもできます。ただし、各ドメインには少なくとも(そして最大で)1 つの管理サーバが必要なので、その場合には、その WebLogic Server が管理サーバになります。
図 4-1 は、1 つの管理サーバと複数の WebLogic Server が存在する典型的なプロダクション環境を示しています。そのようなドメインでサーバを起動するときには、管理サーバを最初に起動します。その他の各サーバは、起動時に、コンフィグレーション情報を取得するために管理サーバにアクセスするように指示されます。このように、管理サーバはドメイン全体のコンフィグレーションの一元的な制御エンティティとして動作します。1 つのドメイン内で 複数の管理サーバがアクティブになることはできません。管理サーバだけが、動作中にコンフィグレーション ファイルを修正できます。
注意: 共有ファイルシステムと 1 つのインストールを使用して、異なるマシン上で複数の WebLogic Server インスタンスを実行しないでください。共有ファイルシステムを使用すると、シングル ポイントの競合が発生します。共有ファイルシステムにアクセスする場合(たとえば、個々のログ ファイルに書き込みを行う場合など)に、すべてのサーバが競合することになります。さらに、共有ファイルシステムに障害が発生した場合には、管理対象のサーバまたはクラスタ化されたサーバを起動できなくなることもあります。
図4-1 WebLogic Server のコンフィグレーション
Administration Console の起動
管理サーバには、Administration Console を通じてアクセスできます。Administration Console を開くには、次の操作を行います。
- 次の URL を入力します。
http://
host:port
/console
host
は管理サーバが動作しているマシンのホスト名または IP アドレス、port
は管理サーバが要求をリスンするポートのアドレス(デフォルトは 7001)です。
- ユーザ ID とパスワードの入力を要求されます。ユーザ ID とパスワードを入力します。認証と認可のチェックが実行されます。チェックでは、ユーザ データベースと照らし合わせてユーザ ID とパスワードが確認されます。
コンソールの使用が許可されている場合は、システム管理者によって割り当てられているアクセス モード(ReadOnly または Read/Write)でコンソールが表示されます。
動的コンフィグレーションの仕組み
WebLogic Server では、ドメイン リソースのコンフィグレーション属性を動的に(サーバの動作中に)変更できます。ほとんどの場合では、変更を有効にするために WebLogic Server を再起動する必要はありません。属性をコンフィグレーションし直すと、新しい値は、属性の現在の実行時値と、XML コンフィグレーション ファイルに格納されている永続的な値の両方に直ちに反映されます。
ただし、例外もあります。たとえば、WebLogic Server のリスン ポートを変更した場合、新しいアドレスは対象サーバを次に再起動するまで使用されません。その場合は、値を変更すると、XML ファイルに格納されている永続的な値が変更され、その属性の現在の実行時コンフィグレーション値と永続的に格納されている値が同じでなくなる場合があります。Administration Console では、アイコンを使用して、コンフィグレーション属性の永続的な値と実行時値が同じであるかどうかが示されます。そのアイコンが、
という警告に変化した場合は、変更を有効にするためにサーバを再起動する必要があります。
Administration Console では、ユーザが変更した各属性に対して検証が行われます。サポートされているエラーは、範囲外のエラーとデータ型の不一致エラーです。両方の場合で、エラーが発生したことをユーザに通知するエラー ダイアログ ボックスが表示されます。
Administration Console の起動後に、別のプロセスが管理サーバに割り当てられたリスン ポートを獲得した場合、サーバを獲得したプロセスを削除しなければなりません。管理サーバに割り当てられているリスン ポートを獲得したプロセスを削除できない場合は、Config.XML
ファイルを編集して、割り当てられたリスン ポートを変更する必要があります。Config.XML
ファイルの編集については、『BEA WebLogic Server コンフィグレーション リファレンス』を参照してください。
クラスタ コンフィグレーションのプランニング
クラスタ コンフィグレーションをプランニングするときは、ネットワーク環境とクラスタ コンフィグレーションに関して、以下の制約があることに注意してください。
- クラスタの WebLogic ホストとして使用するマシンには、静的な IP アドレスが永続的に割り当てられている必要があります。クラスタ化環境では、動的に割り当てられる IP アドレスは使用できません。サーバとクライアントの間にファイアウォールがある場合、各サーバには、クライアントがアクセスできるパブリックな静的 IP アドレスが割り当てられている必要があります。
- クラスタ内の WebLogic Server は、すべて同じローカル エリア ネットワーク(LAN)上にあり、IP マルチキャストを通じてアクセス可能でなければなりません。
- クラスタ内のすべてのサーバは同じバージョンの WebLogic Server を実行する必要があります。
クラスタ内のサーバは、提供するサービスの構成をサポートするようにコンフィグレーションしてください。
- EJB で JDBC 接続が使用される場合は、特定の EJB をデプロイするすべてのサーバでデプロイメントと永続性のコンフィグレーションが同じでなければなりません。つまり、各サーバで同じ JDBC 接続プールをコンフィグレーションします。
- サーブレットのホストとなるすべてのマシンでは、同じ ACL(アクセス制御リスト)を使用して同じサーブレットのリストを維持しなければなりません。
- クライアント アプリケーションで JDBC 接続プールが直接使用される場合は、各 WebLogic Server で同じ接続プール(ACL も同じ)を作成しなければなりません。つまり、クラスタ内のすべてのマシンで使用できる接続プールを作成しなければりません。たとえば、WebLogic が動作している Windows NT サーバで Microsoft SQL Server データベースへの接続プールをコンフィグレーションする場合、Windows 以外のマシン(Microsoft SQL Server 接続をサポートできないマシン)が存在するクラスタではこの接続プールは使用できません。
- その他のコンフィグレーションの詳細は、クラスタ内のさまざまなメンバーによって異なることがあります。たとえば、小規模な Windows NT のワークステーションよりも多くのログイン要求を処理するように Solaris サーバをコンフィグレーションする場合があり、そうした相違は許容されます。従ってこの例では、すべてのメンバーのサービス コンフィグレーションが同じである場合に限り、個々のクラスタ メンバーのパフォーマンスに関する属性は異なる値でコンフィグレーションできます。実際には、クラスタ内の WebLogic Server は、WebLogic サービス、クラス ファイル、および外部リソース(データベースなど)に関連するすべての領域で同じようにコンフィグレーションすることになります。
サーバ コンフィグレーションの作業
Administration Console では、以下のサーバ コンフィグレーションを行うことができます。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバを個別にコンフィグレーションできます。このノードを使用して変更できる属性には、サーバ名、リスン ポート、およびリスン アドレスなどがあります。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバを個別に複製できます。サーバは元のサーバの属性値を維持して複製され、新しいサーバの名前は [サーバ] ノードの [コンフィグレーション|一般] で設定します。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバを削除できます。削除するサーバの削除アイコンをクリックします。削除の確認を求めるメッセージが表示されます。[はい] をクリックして削除を確定するとサーバが削除されます。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバ ログを表示できます。モニタするサーバをクリックします。[モニタ] タブを選択します。[サーバ ログを見る] リンクをクリックし、Administration Console の右ペインでサーバ ログをモニタします。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバの JNDI ツリーを表示できます。モニタするサーバをクリックします。[モニタ] タブを選択します。[JNDI ツリーを見る] リンクをクリックし、Administration Console の右ペインでツリーを表示します。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバの実行キューを表示できます。モニタするサーバをクリックします。[実行キューを見る] リンクをクリックし、Administration Console の右ペインでテーブルを表示します。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバの実行スレッドを表示できます。モニタするサーバをクリックします。[実行スレッドを見る] リンクをクリックし、Administration Console の右ペインでテーブルを表示します。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバのソケットを表示できます。モニタするサーバをクリックします。[ソケットを見る] リンクをクリックし、Administration Console の右ペインでテーブルを表示します。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバの接続を表示できます。モニタするサーバをクリックします。[接続を見る] リンクをクリックし、Administration Console の右ペインでテーブルを表示します。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバでガベージ コレクションを強制できます。モニタするサーバをクリックします。[パフォーマンス] タブを選択します。[ガーベジコレクションを強制する] をクリックします。ガベージ コレクションが行われたことを確認するメッセージが表示されます。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバのセキュリティをモニタできます。モニタするサーバをクリックします。[モニタ] タブを選択します。[セキュリティ] タブを選択します。セキュリティ情報が表示されます。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバのバージョンを表示できます。モニタするサーバをクリックします。[バージョン] タブを選択します。このサーバのバージョン データが表示されます。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバのクラスタをモニタできます。モニタするサーバをクリックします。[クラスタ] タブを選択します。このサーバのクラスタ データが表示されます。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバで EJB をデプロイできます。EJB をデプロイするサーバをクリックします。[デプロイメント|EJB] タブをクリックします。デプロイする EJB をクリックし、移動コントロールを使用して [選択済み] カラムに移動します。[適用] をクリックして選択を保存します。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバのすべての EJB デプロイメントをモニタできます。EJB をモニタするサーバをクリックします。[デプロイメント|EJB] タブをクリックします。[すべてのアクティブな EJB のモニタ] リンクをクリックして [アクティブな EJB] テーブルを表示します。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバで Web アプリケーション コンポーネントをデプロイできます。Web アプリケーションをデプロイするサーバをクリックします。[デプロイメント|Web アプリケーション] タブをクリックします。デプロイする Web アプリケーションをクリックし、移動コントロールを使用して [選択済み] カラムに移動します。[適用] をクリックして選択を保存します。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバのすべての Web アプリケーション コンポーネントをモニタできます。Web アプリケーションをモニタするサーバをクリックします。[すべてのアクティブな Web アプリケーションのモニタ] リンクをクリックしてテーブルを表示します。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバでスタートアップ クラスとシャットダウン クラスをデプロイできます。スタートアップ クラスをデプロイするサーバをクリックします。[デプロイメント|起動/停止] タブをクリックします。デプロイするスタートアップ クラスをクリックし、移動コントロールを使用して [選択済み] カラムに移動します。[適用] をクリックして選択を保存します。シャットダウン クラスの場合も、[停止クラス] コントロールを使用して同じ手順を行います。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバに JDBC 接続プールを割り当てることができます。JDBC 接続プールを割り当てるサーバをクリックします。[サービス|JDBC] タブをクリックします。サーバに割り当てる 1 つまたは複数の JDBC 接続プールを [選択可] カラムでクリックし、移動コントロールを使用して [選択済み] カラムに移動します。[適用] をクリックして割り当てを保存します。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバに WLEC 接続プールを割り当てることができます。WLEC 接続プールを割り当てるサーバをクリックします。[サービス|WLEC] タブをクリックします。サーバに割り当てる 1 つまたは複数の WLEC 接続プールを [選択可] カラムでクリックし、移動コントロールを使用して [選択済み] カラムに移動します。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバのすべての WLEC 接続プールをモニタできます。WLEC 接続プールをモニタするサーバをクリックします。[サービス|WLEC] タブをクリックします。[すべてのアクティブ プールのモニタ] テキスト リンクをクリックします。このサーバに割り当てられているすべての接続プールを示す [アクティブ WLEC 接続プール] テーブルが表示されます。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバに XML レジストリを割り当てることができます。XML レジストリを割り当てるサーバをクリックします。[サービス|XML] タブをクリックします。[XML レジストリ] ドロップダウン リスト ボックスからレジストリをクリックします。[適用] をクリックして選択を保存します。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバにメール セッションを割り当てることができます。メール セッションを割り当てるサーバをクリックします。サーバに割り当てる 1 つまたは複数のメール セッションを [選択可] カラムでクリックします。移動コントロールを使用して、選択したメール セッションを [選択済み] カラムに移動します。[適用] をクリックして選択を保存します。
- Administration Console の [サーバ] ノードを使用してサーバに FileT3 を割り当てることができます。FileT3 を割り当てるサーバをクリックします。[サービス|File T3] タブをクリックします。サーバに割り当てる 1 つまたは複数の FileT3 を [選択可] カラムでクリックします。移動コントロールを使用して、選択した FileT3 を [選択済み] カラムに移動します。[適用] をクリックして選択を保存します。
クラスタ コンフィグレーションの作業
Administration Console では、以下のクラスタ コンフィグレーションを行うことができます。
- Administration Console の [クラスタ] ノードを使用してサーバのクラスタをコンフィグレーションできます。このノードを使用して変更できる属性には、クラスタ名、クラスタ アドレス、デフォルトのロード バランス アルゴリズム、およびサービス期間しきい値があります。
- Administration Console の [クラスタ] ノードを使用してサーバのクラスタを複製できます。クラスタは元のクラスタの属性値とサーバを維持して複製され、新しいクラスタの名前は [サーバ] ノードの [コンフィグレーション] で設定します。
- Administration Console の [クラスタ] ノードを使用してクラスタ内のサーバをモニタできます。サーバをモニタするクラスタをクリックします。[モニタ] タブをクリックします。[このクラスタを構成するサーバをモニタ] テキスト リンクをクリックします。このクラスタに割り当てられているすべてのサーバを示すサーバ テーブルが表示されます。
- Administration Console の [クラスタ] ノードを使用してクラスタにサーバを割り当てることができます。サーバを割り当てるクラスタをクリックします。[サーバ] タブをクリックします。クラスタに割り当てる 1 つまたは複数のサーバを [選択可] カラムでクリックします。移動コントロールを使用して、選択したサーバを [選択済み] カラムに移動します。[適用] をクリックして選択を保存します。
- Administration Console の [クラスタ] ノードを使用してクラスタを削除できます。削除するクラスタの行にある [削除] アイコンをクリックします。削除要求の確認を求めるメッセージが右ペインに表示されます。[はい] をクリックして削除を確定するとクラスタが削除されます。