Oracle RAC環境でのキャッシュの動作

Oracle RACでは、共有リソース(クラスタウェア共有ファイル・システムに存在するすべてのデータ・ファイル、制御ファイル、PFILEおよびREDOログ・ファイルを含む)を持つ1つのOracle Databaseに複数のOracle Databaseインスタンスでアクセスできます。Oracle RACでは、高可用性が提供されるとともに、読取り/書込み一貫性およびロード・バランシングが処理されます。

Fast Application Notification (FAN)は、Oracle DatabaseでOracle Call Interface (OCI)に統合されたOracle RAC機能です。FANによって、FANイベントをサブスクライブするアプリケーションにクラスタ内の変更がパブリッシュされます。FANによって、次に示す不要な処理が実行されなくなります。

  • サービスが停止した場合の接続の試行

  • サービスがダウンした場合のトランザクション処理終了の試行

  • TCP/IPタイムアウトの待機

Oracle RACおよびFANの詳細は、『Oracle Real Application Clusters Real Application Clusters管理およびデプロイメント・ガイド』を参照してください。

キャッシュ処理を容易にするために、TimesTenでは、FANと統合されたOCIを使用してOracle Databaseイベントの通知を受信します。FANがある場合、TimesTenでは1分以内に接続障害が検出されます。FANがない場合、TimesTenではOracle Database障害の通知の受信に数分かかる可能性があります。FANがない場合にTimesTenで接続障害を検出するのは、次回にその接続が使用されるとき、またはTCP/IPタイムアウトが発生したときになります。TimesTenを使用すると、ユーザーの介入なしでOracle Database障害から迅速にリカバリできます。

TimesTenでは、透過的アプリケーション・フェイルオーバー(TAF)も使用しますが、これは障害発生後にアプリケーションを再接続する方法を指定できるOracle Net Servicesの機能です。

TAFの詳細は、『Oracle Database Net Services管理者ガイド』を参照してください。TAFでは、Oracle Databaseへの再接続を4分間試行します。再接続が成功しない場合は、キャッシュ・エージェントが再起動され、1分ごとにOracle Databaseへの再接続が試行されます。

ノート:

AgentFailoverTimeoutパラメータを指定して接続を確立する際に、TAFが再試行する時間を構成できます。詳細は、「Oracle RAC環境でのキャッシュの設定」を参照してください。

OCIアプリケーションでは、次のいずれかのタイプのOracle Netフェイルオーバー機能を使用できます。

  • NONE: フェイルオーバー機能は使用されません。このタイプでは、フェイルオーバーが発生しないように指定することもできます。これがデフォルトのフェイルオーバー機能です。

  • SESSION: アプリケーションの接続が失われると、そのアプリケーション用の新しい接続が自動的に作成されます。このタイプのフェイルオーバーでは、選択した項目のリカバリは試行されません。

  • SELECT: このタイプのフェイルオーバーでは、フェイルオーバー前にカーソルから行のフェッチを開始していたアプリケーションは、フェイルオーバー後に行のフェッチを続行できます。

キャッシュ処理の動作は、TAFのアクションおよびTAFの構成方法によって異なります。デフォルトでは、Oracle RAC環境でキャッシュを使用している場合、TAFおよびFANのコールバックがインストールされます。TAFおよびFANの機能が不要な場合は、RACCallback接続属性を0に設定します。

表9-1に、様々なTAFフェイルオーバー・タイプが指定されたOracle RAC環境でのキャッシュ処理の動作を示します。

表9-1 Oracle RAC環境でのキャッシュ処理の動作

処理 TAFフェイルオーバー・タイプ Oracle Databaseで接続障害が発生した後の動作

自動リフレッシュ

なし

キャッシュ・エージェントが自動的に停止して再起動し、Oracle Databaseで接続が確立できるようになるまで待機します。この動作は、Oracle RAC以外の環境の場合と同様です。

ユーザーが介入する必要はありません。

自動リフレッシュ

Session

次のいずれかが発生します。

  • 障害が発生したすべての接続がリカバリされます。実行中だった自動リフレッシュ処理がロールバックされ、再試行されます。

  • TAFがタイムアウトになるか、または接続をリカバリできない場合は、キャッシュ・エージェントが自動的に停止して再起動し、Oracle Databaseで接続が確立できるようになるまで待機します。

  • いずれの場合も、ユーザーが介入する必要はありません。

自動リフレッシュ

Select

次のいずれかが発生します。

  • 接続障害が発生した時点から自動リフレッシュ処理が再開されます。

  • 実行中だった自動リフレッシュ処理がロールバックされ、再試行されます。

  • TAFがタイムアウトになるか、または接続をリカバリできない場合は、キャッシュ・エージェントが自動的に停止して再起動し、Oracle Databaseで接続が確立できるようになるまで待機します。

  • いずれの場合も、ユーザーが介入する必要はありません。

AWT

なし

AWTキャッシュ・グループのレプリケーション・エージェントのレシーバ・スレッドが終了します。新しいスレッドが作成され、そのスレッドによってOracle Databaseへの接続が試行されます。

ユーザーが介入する必要はありません。

AWT

SessionSelect

次のいずれかが発生します。

  • 接続がリカバリされ、コミットされていないDML処理がトランザクションに存在する場合、そのトランザクションはロールバックされた後で再発行されます。

  • 接続がリカバリされ、コミットされていないDML処理が存在しない場合は、ロールバックせずに新しい処理を発行できます。

いずれの場合も、ユーザーが介入する必要はありません。

SWT、伝播、フラッシュおよびパススルー

なし

接続が失われたことがアプリケーションに通知されます。キャッシュ・エージェントがOracle Databaseから切断され、現在のトランザクションがロールバックされます。変更されたすべてのセッション属性が失われます。

次のパススルー処理中に、キャッシュ・エージェントによってOracle Databaseへの再接続が試行されます。この動作は、Oracle RAC以外の環境の場合と同様です。

ユーザーが介入する必要はありません。

SWT、伝播、フラッシュおよびパススルー

SWT、伝播およびフラッシュ

Session

Select

次のいずれかが発生します。

  • Oracle Databaseへの接続がリカバリされます。失われた接続でオープン・カーソルがあったり、DML処理またはロック処理が行われていた場合は、エラーが返されるため、ユーザーは続行する前にトランザクションをロールバックする必要があります。前述の状態でなかった場合は、ロールバックせずに続行できます。

  • TAFがタイムアウトになるか、または接続をリカバリできない場合は、接続が失われたことがアプリケーションに通知されます。キャッシュ・エージェントがOracle Databaseから切断され、現在のトランザクションがロールバックされます。変更されたすべてのセッション属性が失われます。

    次のパススルー処理中に、キャッシュ・エージェントによってOracle Databaseへの再接続が試行されます。

    この場合、ユーザーが介入する必要はありません。

パススルー

Select

Oracle Databaseへの接続がリカバリされます。失われた接続でDML処理またはロック処理が行われていた場合は、エラーが返されるため、ユーザーは続行する前にトランザクションをロールバックする必要があります。前述の状態でなかった場合は、ロールバックせずに続行できます。

ロードおよびリフレッシュ

なし

接続が失われたことを示すエラーがアプリケーションに通知されます。

ロードおよびリフレッシュ

Session

次のいずれかが発生します。

  • ロードまたはリフレッシュ処理が正常に行われます。

  • Oracle Databaseでフェッチ処理を処理できないことを示すエラーが返されます。

ロードおよびリフレッシュ

Select

次のいずれかが発生します。

  • Oracle Databaseカーソルがオープンしていてそのカーソルがリカバリされている場合、またはOracle Databaseカーソルがオープンしていない場合は、ロードまたはリフレッシュ処理が正常に行われます。

  • TAFがセッションまたはオープンしているOracle Databaseカーソルをリカバリできなかった場合は、エラーが返されます。

ノート: TAFフェイルオーバー・タイプがSESSIONの場合より、エラーが返される可能性は低くなります。