3 Oracle Exadata System Softwareリリース21.xの新機能
この項では、Oracle Exadata System Softwareリリース21.xに導入された新機能について説明します。
3.1 Oracle Exadata Database Machine 21.2の新機能
- Exadata Database Machine X9Mのサポート
- 永続ストレージ索引
- 永続列キャッシュ
- IORMクラスタ・プラン
- スマート・スキャン・メタデータ共有
- Cisco RoCEネットワーク・ファブリック・スイッチおよび管理ネットワーク・スイッチに対するOracle ASRのサポート
- 管理ネットワーク・スイッチに対するパッチ・マネージャのサポート
- 物理ディスクの削除時に冗長性を維持するオプション
- ILOMプレステージングを使用した高速アップグレード
- フラッシュ・キャッシュ障害からの高速リカバリ
- ディスク・コントローラ・キャッシュ障害からの自動リカバリ
- データベース・サーバー・アラートの拡張
- フラッシュ・キャッシュでのOracle ACFS I/Oキャッシュ
- スマート・スキャン高速復号化
- Oracle Exadata System Softwareリリース21.2で非推奨となった機能
3.1.1 Exadata Database Machine X9Mのサポート
Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0では、Exadata Database Machine X9Mシステム・ファミリのサポートが導入されています。
Exadata X9Mは、RoCEネットワーク・ファブリックに基づく第2世代のシステム・ハードウェアであり、全体のパフォーマンスと容量の改善を提供しています。
詳細は、Oracle Exadata Database Machineシステム概要のOracle Exadata Database Machineのハードウェア・コンポーネントを参照してください。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0
- Exadata Database Machine X9M
3.1.2 永続ストレージ索引
ストレージ索引を使用すると、Oracle Exadata System Softwareで不要なI/O操作を回避できます。不要なI/Oを回避することで、影響を受ける操作のパフォーマンスが向上します。また、節約されたI/O帯域幅を使用して他の作業を実行できるため、システム全体のスループットが向上します。
Oracle Exadata System Softwareでは、Exadata Storage Sever共有メモリーにストレージ索引を作成して管理します。ストレージ索引では、ストレージ・リージョンごとに列の最小値と最大値およびセット・メンバーシップが自動的に追跡されます。ストレージ索引機能は、ユーザー入力なしで透過的に動作します。ストレージ索引に対して、作成、削除またはチューニングの操作は必要ありません。
Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0以降、ストレージ索引はセルの再起動およびアップグレード後も保持できます。この機能を有効にすると、ストレージ索引の共有メモリー・セグメントは正常シャットダウン時にストレージ・サーバーのシステム・ディスクに書き込まれ、再起動時に自動的にリストアされます。セル・サーバーのクラッシュまたはオフロード・サーバーのクラッシュが発生した場合、ストレージ索引の共有メモリー・セグメントはオペレーティング・システムによって保持され、ソフトウェア・サービスの再起動時にすぐに使用可能になります。
M.2ソリッドステート・ドライブ(SSD)を搭載したOracle Exadata Database Machine X7-2以降のシステムでは、Oracle Exadata System Softwareのアップグレード後も永続性を維持できます。
この機能により、ストレージ索引を再構築する必要がなくなり、セルの再起動直後の問合せパフォーマンスの一貫性が向上します。
この機能は、storageIndexPersMode
セル属性の設定によって制御されます。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0
- Oracle Database 12cリリース2 (12.2)
関連トピック
3.1.3 永続列キャッシュ
列キャッシュは、列形式のデータを含むExadataスマート・フラッシュ・キャッシュの一部です。Exadataスマート・フラッシュ・キャッシュのデータは自動的に列形式に変換され、問合せのパフォーマンスを向上させるために列キャッシュに格納されます。
Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0より前のリリースでは、セルに障害が発生するか停止すると、列キャッシュを管理するためのメタデータが失われます。そのため、セルを再起動するたびに列キャッシュを再構築する必要があります。
Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0以降、列キャッシュはセルの再起動およびアップグレード後も保持できます。この機能により、キャッシュの再構築に関連するリソースが節約され、セルの再起動直後の問合せパフォーマンスの一貫性が向上します。
永続列キャッシュを使用するには、Exadataスマート・フラッシュ・キャッシュがライトバック・モードである必要があります。この機能は、columnarCachePersMode
セル属性の設定によって制御されます。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0
関連トピック
3.1.4 IORMクラスタ・プラン
Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0は、クラスタ・プランを含めるようにI/Oリソース管理(IORM)を拡張しています。IORMクラスタ・プランでは、複数のOracle Grid Infrastructureクラスタ間でストレージ・サーバー・リソースを割り当てる方法を指定します。クラスタ・プランの各ディレクティブは、個々のデータベースまたはコンシューマ・グループではなく、Oracle Grid Infrastructureクラスタに対して割当てを指定します。
たとえば、clusterA
およびclusterB
という2つのクラスタをホストするシステムについて検討します。ここで、clusterA
に3つの共有があり、clusterB
に1つの共有がある、共有ベースのリソース割当てを使用するクラスタ・プランを考えます。その場合で、他のIORMプランがない場合、clusterA
で実行されているすべてのデータベースはI/Oリソースの75%を共有し、clusterB
のデータベースは残りの25%を共有します。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0
- IORMクラスタ・プランを操作するには、ASMを有効範囲にしたセキュリティを構成する必要があります。
関連トピック
3.1.5 スマート・スキャン・メタデータ共有
スマート・スキャン操作中、Oracle Databaseは問合せメタデータをExadata Storage Serverに送信します。問合せメタデータには、問合せをストレージ・サーバーにオフロードするために必要な情報(予測列、計画された列、条件、データベース・セッション情報、ブルーム・フィルタなど)が含まれます。従来、パラレル問合せの実行中、各Oracle Databaseパラレル問合せサーバー・プロセスは、シリアライズされ圧縮された問合せメタデータをストレージ・サーバーに送信し、そこで使用前に解凍およびデシリアライズされていました。さらに、各パラレル問合せで、メタデータの大部分はすべてのパラレル問合せサーバー・プロセスに共通しています。
リリース21.2.0以降、Oracle Exadata System Softwareは、同じパラレル問合せに属するスマート・スキャン・セッション間で共通の問合せメタデータを共有します。この機能により、Exadata Storage Serverでのパラレル問合せのメモリーおよび処理フットプリントが削減されます。結果として節約されたリソースで他の作業をサポートできるため、システム全体のスループットを向上できます。この利点は、ブルーム・フィルタ、データ・マイニング・モデル、外部表およびJSON/XML型の表を使用した結合問合せなど、通常はより多くのメタデータを必要とする高度な操作に最適です。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0
3.1.6 Cisco RoCEネットワーク・ファブリック・スイッチおよび管理ネットワーク・スイッチに対するOracle ASRのサポート
Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0では、Oracle Auto Service Request (ASR)を使用してCiscoスイッチを監視するための新機能が導入されました。この機能は、X8M以降のシステムにあるCisco管理ネットワーク・スイッチおよびRoCEネットワーク・ファブリック・スイッチを対象としています。また、以前のX8および一部のX7システムに存在する管理ネットワーク・スイッチのモデル9348も対象になります。
このリリースでは、パッチ・マネージャ・ユーティリティ(patchmgr
)を使用してCiscoスイッチ・ファームウェアをアップグレードすると、新しい監視コンポーネントもCiscoスイッチにインストールされます。新しい監視コンポーネントは、スイッチ・アラートをOracle ASRに伝播して、問題の自動検出および解決を可能にします。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0
- Oracle Exadata Database Machine X8M、またはCisco 管理ネットワーク・スイッチのモデル9348を使用する以前のモデル
3.1.7 管理ネットワーク・スイッチに対するパッチ・マネージャのサポート
Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0以降、パッチ・マネージャ・ユーティリティ(patchmgr
)には、Oracle Exadata Database Machine X7-2以降のシステムにある9000シリーズの管理ネットワーク・スイッチでファームウェア・アップグレードを管理する機能が導入されています。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0
- Oracle Exadata Database Machine X7-2
3.1.8 物理ディスクの削除時に冗長性を維持するオプション
Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0では、CELLCLI ALTER PHYSICALDISK DROP FOR REPLACEMENT
コマンドにMAINTAIN REDUNDANCY
オプションとNOWAIT
オプションが導入されています。
MAINTAIN REDUNDANCY
オプションは、対応するASMディスクを削除する前にデータを自動的にリバランスすることで、Exadata Storage Serverの管理を合理化します。以前のリリースでは、冗長性を維持するには、ALTER PHYSICALDISK DROP FOR REPLACEMENT
コマンドを使用する前に、対応するASMディスクを手動で削除してデータをリバランスする追加の管理者操作が必要でした。
NOWAIT
オプションを使用すると、DROP FOR REPLACEMENT
操作がバックグラウンドで非同期に実行されている間にALTER PHYSICALDISK
コマンドをすぐに完了できます。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0
3.1.9 ILOMプレステージングを使用した高速アップグレード
Oracle Exadata System Softwareのアップグレード・プロセスには、通常、Integrated Lights Out Manager (ILOM)のファームウェア・アップグレードが含まれます。従来、ILOMファームウェア・アップグレードはシリアル・プロセスとして実行され、各物理サーバー(データベース・サーバーまたはストレージ・サーバー)でソフトウェアの合計アップグレード時間の約30%を要していました。
ILOMバージョン5では、新しいILOMファームウェアのプレステージングのサポートが導入されています。この機能では、プレステージングが他のサーバー・アップグレード・アクティビティと並行して行われ、アップグレード手順の最後にサーバーが再起動すると、新しいILOMファームウェアが自動的に有効になります。
Exadata X7および新しいシステムでは、このアプローチによって各サーバーのILOMファームウェア・アップグレード時間が約半分になり、ソフトウェアの合計アップグレード時間が約15%短縮されることになります。
最小要件:
-
この機能は、X8-2Lサーバーを除くExadata X7および新しいシステムでは、Oracle Exadata System Softwareをバージョン19.3.11以上または20.1.1からアップグレードするときに自動的に使用されます。
-
X8-2Lサーバーの場合のみ、Oracle Exadata System Softwareをバージョン19.3.12以上または20.1.2からアップグレードするときにこの機能が自動的に使用されます。
3.1.10 フラッシュ・キャッシュ障害からの高速リカバリ
この機能は、フラッシュ・キャッシュ・メタデータをOracle Exadata Database Machine X7以降のシステムにあるM.2ソリッドステート・ドライブ(SSD)にステージングすることにより、フラッシュ・キャッシュ障害後のリカバリ時間を短縮します。M.2 SSDを使用すると、フラッシュ障害後の表作成の復元およびキャッシュ・デバイスの割当てが高速化されます。この機能により、フラッシュ障害後の全体的なブラウンアウト時間が短縮されます。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0
- Oracle Exadata Database Machine X7-2
3.1.11 ディスク・コントローラ・キャッシュ障害からの自動リカバリ
大容量(HC)および拡張(XT)のOracle Exadata Storage Serverモデルには、ライトバック・フラッシュ・キャッシュとは別のライトバック・キャッシュを含むディスク・コントローラがあります。
ディスク・コントローラ・キャッシュでマルチビットECCエラーが発生すると、サーバーがクラッシュし、ディスク・コントローラ・キャッシュ内のフラッシュされていないデータが失われ、ディスク上に古いデータが残る可能性があります。慎重に処理されない場合、このようなエラーは重大であり、データが失われる可能性があります。
Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0では、ディスク・コントローラ・キャッシュ障害後の自動リカバリがサポートされます。可能なかぎり、この機能は問題を自動的に検出し、障害が発生したサーバーのすべてのディスクをリカバリするために他のミラーからデータをコピーします。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0
3.1.12 データベース・サーバー・アラートの拡張
Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0では、データベース・サーバーのアラートの拡張が導入されています。
この機能により、DBMCLIのLIST ALERTHISTORY
コマンドで、Oracle Grid InfrastructureおよびOracle Databaseソフトウェアに関連するインシデントが表示されるようになりました。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0
関連トピック
3.1.13 フラッシュ・キャッシュでのOracle ACFS I/Oキャッシュ
I/O効率を最適化するために、Oracle Advanced Cluster File System (Oracle ACFS)への小規模な順次書込みは自動的に1 MBのチャンクに結合されます。ただし、Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0より前では、これらのより大規模な書込みはキャッシュをバイパスしてディスクに直接行われます。
Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0以降、すべてのOracle ACFS I/OはExadataスマート・フラッシュ・キャッシュへのキャッシュ対象になります。
この機能により、小規模な順次書込みおよび後続の高速読取りが主なI/OプロファイルであるOracle GoldenGate証跡ファイルなどのアプリケーションでは特に、Oracle ACFSのパフォーマンスが向上します。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0
3.1.14 スマート・スキャンの高速復号化
Exadata Database Machine X9Mで最初に導入された適用可能なハードウェアとあわせて、Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0はVAESおよびAVX512命令セットを使用し、キャッシュフレンドリなアルゴリズムを実装して、暗号化表および圧縮表に対するスマート・スキャンのパフォーマンスを向上しています。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース21.2.0
- Exadata Database Machine X9M
3.1.15 Oracle Exadata System Softwareリリース21.2で非推奨となった機能
次の機能は、このリリースでは非推奨であり、将来のリリースではサポートされなくなる可能性があります。
3.1.15.1 RAMキャッシュが非推奨に
2022年9月のOracle Exadata System Softwareリリース更新(バージョン21.2.16および22.1.3)から、セルのRAMキャッシュ機能は非推奨になりました。
既存のRAMキャッシュインストールは、以前のリリースと同様に引き続き動作します。ただし、非推奨となった後は新しいRAMキャッシュ作成リクエストは許可されません。
セルのRAMキャッシュ機能は、Oracle Exadata System Softwareバージョン18.1.0で導入されました。「インメモリーOLTPおよび統合アクセラレーション」を参照してください。