14.43 イテレータ
イテレータでは、イテランドと繰返しコントロールを指定します。
構文
iterand_decl ::=
iteration_ctl_seq ::=
iteration_control ::=
( stepped_control ::=、single_expression_control ::=、values_of_control ::=、indices_of_control ::=、pairs_of_control ::=、cursor_iteration_control ::=)
pred_clause_seq ::=
stepped_control ::=
single_expression_control ::=
values_of_control ::=
dynamic_sql ::=
セマンティクス
iterator
イテレータでは、イテランドと繰返しコントロールを指定します。
ループの外側の文は、iterator
を参照できません。ループの内側の文はiterator
を参照できますが、その値を変更することはできません。FOR
LOOP
文の実行後、iterator
は不定になります。
iterand_decl
イテランドのタイプは、暗黙的または明示的に宣言できます。明示的にイテランドを初期化することはできません。
表14-1 イテランドの暗黙的なタイプのデフォルト
繰返しコントロール | 暗黙的なイテランドのタイプ |
---|---|
ステップ・コントロール | PLS_INTEGER |
単一式 | PLS_INTEGER |
カーソル制御 | CURSOR%ROWTYPE |
VALUES OF コントロール
|
コレクション要素タイプ |
INDICES OF コントロール
|
コレクション索引タイプ |
PAIRS OF コントロール
|
最初のイテランドはコレクションの索引タイプを示し、2番目のイテランドはコレクションの要素タイプを示します |
pls_identifier
FOR
LOOP
文に対してローカルな、暗黙に宣言された変数のイテランド名。
[ MUTABLE | IMMUTABLE ]
イテランドの可変性プロパティにより、ループ本体での代入を可能にするかどうかが決まります。イテレータで指定したすべての繰返しコントロールがカーソル・コントロールの場合、イテランドはデフォルトで可変です。それ以外の場合、イテランドは不変です。イテランドのデフォルトの可変性プロパティは、イテランド変数の後ろにキーワードMUTABLE
またはIMMUTABLE
を指定することで、イテランド宣言内で変更できます。可変性プロパティのキーワードは予約されていません。タイプの名前として使用することも可能です。そのような使用方法は、あいまいになります。そのため、イテランドの可変性プロパティは、タイプの名前をmutableやimmutableにする場合、イテランドの宣言内で明示的に指定する必要があります。INDICES OF
繰返しコントロールのイテランドおよびPAIRS OF
繰返しコントロールの索引イテランドは、可変にすることはできません。
constrained_type
イテランドは、ループ・ヘッダーでイテランドのタイプを指定するときに明示的に宣言します。イテランドに値を代入する際には、タイプに定義された制約が考慮されます。繰返しコントロールによって生成される値には、イテランドのタイプとの代入互換性が必要です。通常の変換ルールが適用されます。すべての制約違反に対して例外が発生します。
iteration_ctl_seq
複数の繰返しコントロールは、それらをカンマで区切って連鎖できます。
iteration_ctl_seqの制限:
Pairs Ofイテランドには2つのイテランドが必要になるため、Pairs Of繰返しコントロールは別の種類の繰返しコントロールと混在できません。qual_iteration_ctl
修飾反復コントロールはREVERSEオプション、およびオプションで停止述語句やスキップ述語句を指定します。[ REVERSE ]
オプションのキーワードREVERSE
を指定すると、シーケンス内の値の順序が逆転されます。
このオプションは、コレクション・ベクトル値式で使用できます。その場合、REVERSE
を指定すると、FIRST
からLAST
ではなく、LAST
からFIRST
に向けて値が生成されます。
REVERSE
の制限:
- このオプションは、繰返しコントロールでパイプライン・ファンクションが指定されているときには使用できません。
-
単一式の繰返しコントロールでは単一値が生成されるため、このオプションは使用できません。そのため、このキーワードは、このコントロールに対して実用的な意味を持ちません。
-
繰返しコントロールでSQL文を指定しているときには、このオプションは使用できません。これは、問合せによって返されたレコードのシーケンスを生成します。SQL文に
ORDER BY
句を指定することで、適切な順序に行をソートできます。 - このオプションは、コレクションがカーソル、カーソル変数、動的SQLの場合や、パイプライン・テーブル・ファンクションを呼び出す式の場合には使用できません。
iteration_control
繰返しコントロールは、値のシーケンスをイテランドに提供します。
pred_clause_seq
繰返しコントロールは、オプションの停止述語句と、それに続くオプションのスキップ述語句で変更されることがあります。述語句に含まれる式は、BOOLEAN
型にする必要があります。
[ WHILE boolean_expression ]
停止述語句により、繰返しコントロールを完全に消化できます。boolean_expressionは、ループの各反復の最初に評価されます。TRUE
に評価されない場合は、繰返しコントロールが完全に消化されています。
[ WHEN boolean_expression ]
スキップ述語句により、いくつかの値についてループ本体をスキップできます。boolean_expressionが評価されます。TRUE
に評価されない場合、繰返しコントロールは次の値にスキップします。
stepped_control
lower_bound .. upper_bound [ BY step ]
REVERSE
が指定されていない場合、iterand
の値はlower_bound
から始まり、upper_bound
に到達するまで、ループの反復ごとにstep
ずつ増加します。
REVERSE
を指定すると、iterand
の値はupper_bound
から始まり、lower_bound
に達するまで、ループの反復ごとにstep
ずつ減少します。upper_bound
がlower_bound
よりも小さい場合、statements
は実行されません。
step
のデフォルト値は1です(このオプションのBY
句を指定していない場合)。
lower_bound
とupper_bound
は、数値(数値リテラル、数値変数または数値式のいずれか)に評価されます。境界の数値が指定されていない場合、PL/SQLは事前定義の例外VALUE_ERROR
を呼び出します。PL/SQLでは、lower_bound
とupper_bound
はFOR
LOOP
文に入ったときに一度評価され、一時的なPLS_INTEGER
値として格納されます(必要に応じて、最も近い整数に四捨五入されます)。
lower_bound
とupper_bound
が等しい場合、statements
は一度のみ実行されます。
ステップ値は0 (ゼロ)より大きい値である必要があります。
single_expression_control
単一式の繰返しコントロールは、単一値を生成します。REPEAT
を指定すると、停止句によって繰返しコントロールが完全に消化されるまで、式が繰り返し評価されて値のシーケンスが生成されます。
single_expression_controlの制限:
REVERSE
は単一式の繰返しコントロールには使用できません。
values_of_control
コレクションの要素タイプには、イテランドとの代入互換性が必要です。
indices_of_control
コレクションの索引タイプには、イテランドとの代入互換性が必要です。
INDICES OF
繰返しコントロールに使用するイテランドは可変にできません。
pairs_of_control
PAIRS OF
繰返しコントロールには、2つのイテランドが必要です。PAIRS OF
繰返しコントロールと、それとは別の種類のコントロールを混在させることはできません。最初のイテランドは索引イテランドです。2番目は値イテランドです。それぞれのイテランドの後ろには明示的なタイプが続くことがあります。
コレクションの要素タイプには、値イテランドとの代入互換性が必要です。コレクションの索引タイプには、索引イテランドとの代入互換性が必要です。
PAIRS OF
繰返しコントロールに使用する索引イテランドは可変にできません。
cursor_iteration_control
カーソルの繰返しコントロールは、明示カーソルまたは暗黙カーソルによって返されるレコードのシーケンスを生成します。カーソル定義が制御式になります。
cursor_iteration_controlの制限:
カーソルの繰返しコントロールでは、REVERSE
は使用できません。
cursor_object
cursor_objectは、明示的なPL/SQLカーソル・オブジェクトです。
sql_statement
sql_statementは、繰返しコントロールで直接指定したSQL文に応じて作成される暗黙的なPL/SQLカーソル・オブジェクトです。
cursor_variable
REF CURSOR
オブジェクトの以前に宣言した変数の名前。
dynamic_sql
EXECUTE IMMEDIATE dynamic_sql_stmt [ USING [ IN ] (bind_argument [,] )+]
動的問合せは、カーソルまたはコレクションの繰返しコントロールで暗黙的カーソル定義のかわりに使用できます。このような構成では、デフォルトのタイプを指定できません。最初の繰返しコントロールとして使用する場合は、イテランドまたはPairs Ofコントロールの値イテランドに明示的なタイプを指定する必要があります。
オプションのUSING
句は、動的SQLで許容される唯一の句です。INと1つ以上のバインド変数(カンマで区切る)を含めることのみ可能です。
dynamic_sql_stmt
SQL文を表す文字列リテラル、文字列変数または文字列式です。その型は、CHAR
型、VARCHAR2
型またはCLOB
型である必要があります。
注意:
動的SQLを使用する場合は、セキュリティ・リスクのSQLインジェクションに注意してください。SQLインジェクションの詳細は、「SQLインジェクション」を参照してください。
例
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