1 WebLogic Serverデプロイメントの理解

WebLogic Serverのアプリケーション・デプロイメント機能について学習します。

この章には次の項が含まれます:

デプロイメント・プロセスの概要

アプリケーション・デプロイメントという用語は、WebLogic Serverドメインにおいて、アプリケーションまたはモジュールをクライアント・リクエストの処理に使用できるようにするプロセスを指します。アプリケーションのデプロイメントには、複数のタスクが関係します。

デプロイメントの用語

次のWebLogic Serverデプロイメント用語が、このドキュメント全体で使用されます。

  • アプリケーション - エンド・ユーザーがコンピューティング・タスクを実行するために集合的に使用する1つまたは複数のソフトウェア・プログラム。

  • アプリケーション・インストール・ディレクトリ—アプリケーションまたはモジュール用の、デプロイメント・ファイルおよび生成されたデプロイメント構成アーティファクトの整理を支援するために設計された、WebLogic Serverディレクトリ構造。アプリケーション・ルート・ディレクトリとも言います。

  • アプリケーション・モジュール—JMSまたはJDBCリソースの構成に使用するXMLドキュメント。アプリケーション・モジュールには以下の2種類があります。

    • スタンドアロン— リソースはグローバルJNDIツリーにバインドされます。

    • アプリケーション・スコープ - エンタープライズ・アプリケーションの一部としてバンドルされ、アプリケーション自体にスコープされます。

  • アプリケーション・バージョン—デプロイされたアプリケーションのバージョンを識別する文字列値。バージョン文字列を使用する互換性のあるアプリケーションでは、WebLogic Server本番再デプロイメント戦略を使用できます。

  • デプロイメント構成—特定のWebLogic Serverドメインにアプリケーションをデプロイするために必要となるデプロイメント記述子の値を定義するプロセス。アプリケーションまたはモジュールに関するデプロイメント構成は、Jakarta EEデプロイメント記述子、WebLogic Server記述子、およびWebLogic Serverデプロイメント・プランという、3種類のXMLドキュメントに格納されます。

  • デプロイメント記述子—デプロイメント時にアプリケーションまたはモジュールのJakarta EE動作またはWebLogic Server構成を定義するのに使用される、XMLドキュメント。

  • デプロイメント・プラン—特定のWebLogic Server環境(開発環境、テスト環境、本番環境など)用に、アプリケーションのWebLogic Serverデプロイメント構成を定義するために使用するXMLドキュメント。デプロイメント・プランは、アプリケーションのアーカイブ・ファイルの外部にあり、アプリケーションの既存のWebLogic Serverデプロイメント記述子をオーバーライドするデプロイメント・プロパティを格納します。デプロイメント・プランを使用すると、既存のデプロイメント記述子を修正することなく、特定の環境についてのアプリケーションのWebLogic Server構成を簡単に変更できます。複数のデプロイメント・プランを使用すると、単一のアプリケーションを、複数の様々なWebLogic Server環境にデプロイされるように再構成できます。

  • 配布 - WebLogic Serverが、デプロイメント・ソース・ファイルをデプロイメントのターゲット・サーバーにコピーするプロセス。

  • 本番再デプロイメント - 新しいバージョンの本番アプリケーションを、それより前のバージョンと一緒にデプロイする一方で、HTTP接続を自動的に管理してクライアント・アクセスが中断しないようにする、WebLogic Server再デプロイメント戦略。

  • ステージング・モード—デプロイメント・ファイルを、ドメイン内のターゲット・サーバーで使用できるようにするために、WebLogic Serverで使用される方法。ステージング・モードにより、ファイルをデプロイ前にターゲット・サーバーに配布(コピー)するかどうかが判断されます。

標準の互換性

WebLogic Serverで実装されるJakarta EE仕様には、デプロイメント仕様JSR-88が含まれています。この仕様には、アプリケーションをアプリケーション・サーバーに構成およびデプロイする際に、デプロイメント・ツールおよびアプリケーション・サーバー・プロバイダで使用する標準APIが記述されています。

ノート:

Jakarta EEデプロイメントAPI仕様(JSR-88)は、Jakartaデプロイメント1.7仕様と同じ機能を提供します。Jakarta EEデプロイメントAPI仕様(JSR-88)へのこのドキュメントのすべての参照は、Jakartaデプロイメント1.7仕様への参照として解釈できます。

WebLogic Serverは、Jakarta EEデプロイメント仕様に準拠するように、JSR-88サービス・プロバイダ・インタフェース(SPI)プラグインとモデル・プラグインの両方を実装しています。WebLogic Serverに対してJakarta EEアプリケーションおよびモジュールを構成、デプロイ、および再デプロイするには、(APIのWebLogic Server拡張を使用せずに)WebLogic Serverプラグインとともに基本的なJakarta EEデプロイメントAPIデプロイメント・ツールを使用できます。『Oracle WebLogic Serverの理解』WebLogic Serverの互換性に関する項を参照してください。

Jakarta EEデプロイメントの実装

WebLogic Serverは、Jakarta EEデプロイメント仕様に準拠するように、JSR-88サービス・プロバイダ・インタフェース(SPI)プラグインとモデル・プラグインの両方を実装しています。

WebLogic Serverに対してJakarta EEアプリケーションおよびモジュールを構成、デプロイ、および再デプロイするには、(APIのWebLogic Server拡張を使用せずに)WebLogic Serverプラグインとともに基本的なJakarta EEデプロイメントAPIデプロイメント・ツールを使用できます。Jakarta EEデプロイメントAPI構成プロセスで生成されたWebLogic Server構成は、図1-1に示すように、デプロイメント・プランおよび1つ以上の生成されたWebLogic Serverデプロイメント記述子ファイル内に格納されます。WebLogic Serverデプロイメント記述子は、WebLogic Server構成データを格納するために、必要に応じて生成されます。

図1-1 Jakarta EEデプロイメントAPIによるアプリケーションの構成

図1-1の説明が続きます
「図1-1 Jakarta EEデプロイメントAPIによるアプリケーションの構成」の説明

Jakarta EEデプロイメントAPIのデプロイメント・ツールで生成されたWebLogic Serverデプロイメント・プランにより、構成セッション中にアプリケーションのために生成されたWebLogic Serverデプロイメント記述子が識別されます。

Jakarta EEデプロイメントAPIは、Jakarta EE準拠のアプリケーション・サーバーで使用するためのアプリケーションおよびモジュールを構成する、簡単かつ標準化された方法を提供しますが、この仕様では以前のWebLogic Serverで利用できた多くのデプロイメント機能に対応していません。そのため、WebLogic Serverでは、Jakarta EEデプロイメントAPI仕様に重要な拡張を行い、「WebLogic Serverのデプロイメント機能」に記載の機能をサポートしています。

WebLogic Serverのデプロイメント機能

WebLogic Serverでは、アプリケーションを本番環境に確実にデプロイして管理するために役立つ、いくつかの高度なデプロイメント機能がサポートされています。

追加のデプロイメント構成プロパティ

Jakarta EEデプロイメントAPIデプロイメント仕様を使用すると、アプリケーションをデプロイするために必要なベンダー固有の記述子の値を生成でき、一方、WebLogic ServerにおけるJakarta EEデプロイメントAPIの拡張機能では、次のような多くの追加デプロイメント・プロパティを構成できます:

  • アプリケーションの動作に必要な外部リソースの名前

  • 他のアプリケーションが独自に使用するために参照できる、デプロイ済のアプリケーション内に提供されるサービスに対して宣言された名前(JNDI名)

  • WebLogic Server上のアプリケーションのパフォーマンスと動作を制御するチューニング・プロパティ

これらのデプロイメント・プロパティは、WebLogic Serverデプロイメント・プランに格納できます。

複数の環境にデプロイするためのアプリケーションのエクスポート

基本的なJakarta EEデプロイメントAPI構成プロセスでは、標準化されたデプロイメント・ツールを使用して、Jakarta EEアプリケーションを複数のアプリケーション・サーバー製品に簡単にデプロイできます。しかし、アプリケーションの構成を組織内のある環境から別の環境へ移行するプロセスには使用できません。WebLogic ServerデプロイメントAPIは、Jakarta EEデプロイメントAPIを拡張して、アプリケーションの構成をエクスポートして複数のWebLogic Server環境(テスト、ステージングおよび本番ドメインなど)にデプロイするためのサポートを提供します。「新しい環境にデプロイするためのアプリケーションのエクスポート」を参照してください。

本番アプリケーションを分離するための管理モード

アプリケーションの分散により、デプロイメント・ファイルがターゲット・サーバーにコピーされ、アプリケーションが準備状態に置かれます。その後は、アプリケーションを管理モードで起動できます。それにより、アプリケーションにアクセスできるのが構成された管理チャネルのみになるため、アプリケーションを外部クライアント接続に対して開いたり、接続されたクライアントを中断させたりすることなく、最終テストを実行できます。アプリケーションを管理モードで起動するには、「分散されたアプリケーションの管理モードでの起動」で説明するように-adminmodeオプションを使用します。「本番環境へのアプリケーションの分散」 および「本番アプリケーションの新しいバージョンの分散」を参照してください。

最終テスト実行後は、アプリケーションをアンデプロイしてさらに変更を加えるか、アプリケーションを本番モードで起動して、全般的にクライアントで使用可能にできます。

「アプリケーションの配布」を参照してください。

デプロイ可能なJDBC、JMS、およびWLDFアプリケーション・モジュール

JDBC、JMS、およびWLDFリソースは、アプリケーション・モジュールとして格納できます。これらのモジュールは複数サーバーまたはクラスタにスタンドアロン状態でデプロイすることも、アプリケーション・スコープのリソースとしてエンタープライズ・アプリケーション内に含めることも可能です。スタンドアロンのJDBC、JMSおよびWLDFアプリケーション・モジュールを使用すると、複数のWebLogic Serverドメイン内でリソースを簡単にレプリケートできるようになります。アプリケーション・スコープのリソース・モジュールを使用すると、複数の環境への移植性を最大限に高めるために、アプリケーション・モジュール自体の中にアプリケーションが必要とするリソースをすべて含めることができるようになります。アプリケーション・スコープのリソースの使用の詳細は、『Oracle WebLogic Serverアプリケーションの開発』を参照してください。WebLogic Serverへのスタンドアロン・リソースまたはアプリケーション・スコープのリソースのデプロイについては、「JDBC、JMS、およびWLDFアプリケーション・モジュールのデプロイ」を参照してください。

エンタープライズ・アプリケーションのモジュール・レベルでのデプロイメントと再デプロイメント

WebLogic Serverでは、エンタープライズ・アプリケーションの個々のモジュールを、様々なサーバー・ターゲットに割り当てることも、エンタープライズ・アプリケーションで利用可能なモジュールのサブセットのみをデプロイすることもできます。これにより柔軟性の高いパッケージング・オプションが得られ、関連するモジュールのグループをまとめてエンタープライズ・アプリケーション内でバンドルし、選択したモジュールのみをドメイン内の個々のサーバーにデプロイできます。

本番アプリケーションの安全な再デプロイメント

WebLogic Serverにより、アプリケーションに対する現在のHTTPクライアントに影響を与えることなく、本番アプリケーションの新しいバージョンを、安全に更新および再デプロイできます。本番再デプロイメントは、アプリケーションのダウンタイムなしに、また変更を加えるために冗長なサーバーを作成することなく、バグ・フィックスや、新しい機能を実現するのに役立ちます。詳細については、「本番環境でのアプリケーションの再デプロイメント」を参照してください。

デプロイメントに必要なセキュリティ・ロール

「Admin」および「Deployer」ユーザーの組込みセキュリティ・ロールにより、WebLogicリモート・コンソールを使用してデプロイメント・タスクを実行できます。「AppTester」セキュリティ・ロールにより、管理モードに対してデプロイされたアプリケーションのバージョンをテストできます。WebLogicドメインを超えてデプロイする場合、「CrossDomainConnector」ロールにより、外部のドメインからドメイン間の呼び出しを実行することができます。すべてのセキュリティ・ロールの完全なリストは、『Oracle WebLogic Serverロールおよびポリシーによるリソースの保護』デフォルト・グローバル・ロールに関する項 を参照してください。

サポートされるデプロイメント・ユニット

デプロイメント・ユニットは、Jakarta EE仕様に従って編成され、WebLogic Serverにデプロイ可能なJakarta EEアプリケーション(エンタープライズ・アプリケーションまたはWebアプリケーション)またはスタンドアロンJakarta EEモジュール(EJBやリソース・アダプタなど)のことです。

デプロイメント・ユニットのタイプごとに、必要なファイル、およびアプリケーションまたはモジュールのディレクトリ構造内での各ファイルの位置がJakarta EE仕様で定義されています。デプロイメント・ユニットは、EJBとサーブレットのJavaクラス、リソース・アダプタ、Webページとサポート・ファイル、XML形式のデプロイメント記述子、およびその他のモジュールで構成されています。

Jakarta EEでは、どのようにデプロイメント・ユニットをターゲット・サーバーにデプロイするかは指定されておらず、標準のアプリケーションおよびモジュールの構造のみが指定されています。WebLogic Serverは、以下のタイプのデプロイメント・ユニットをサポートします。

エンタープライズ・アプリケーション

エンタープライズ・アプリケーションは、次に示す1つ以上のJakarta EEアプリケーションまたはモジュールで構成されます:

  • Webアプリケーション

  • Jakarta Enterprise Beans (EJB)モジュール

  • リソース・アダプタ・モジュール

エンタープライズ・アプリケーションは、.ear拡張子付きでアーカイブ・ファイルとしてパッケージ化されますが、一般には展開したEARディレクトリとしてデプロイされます。展開したEARディレクトリは、アプリケーション用にJAR、WARおよびRARモジュールのすべて(展開したフォーマットで)、またエンタープライズ・アプリケーション、およびそのバンドル・アプリケーションやモジュール用にXML記述子ファイルを含みます。『Oracle WebLogic Serverアプリケーションの開発』を参照してください。

Webアプリケーション

Webアプリケーションは常に以下のファイルを含みます。

  • 1つのサーブレットまたはJSPページ、およびヘルパー・クラス

  • web.xmlデプロイメント記述子(WARファイルの内容を構成するJakarta EE標準のXMLドキュメント)。

Webアプリケーションは、JSPタグ・ライブラリ、静的な.htmlおよびイメージ・ファイル、サポート・クラスや.jarファイル、さらにWebアプリケーション用にWebLogic Server固有の要素を構成するweblogic.xmlデプロイメント記述子を含む場合があります。『Oracle WebLogic Server Webアプリケーション、サーブレット、JSPの開発』を参照してください。

Jakarta Enterprise Beans

Jakarta Enterprise Beans (EJB)は、再利用可能なJavaコンポーネントで、ビジネス・ロジックを実装し、コンポーネント・ベースの分散ビジネス・アプリケーションの開発を可能にします。EJBモジュールは、.jar拡張子がついたアーカイブ・ファイルとしてパッケージ化されますが、通常展開したアーカイブのディレクトリとしてデプロイされます。EJBのアーカイブ・ファイルまたは展開したアーカイブ・ディレクトリは、コンパイルしたEJBクラス、オプションの生成クラスおよびEJBのXMLデプロイメント記述子を含みます。EJBの様々なタイプの情報は、『Oracle WebLogic Server Enterprise JavaBeansバージョン2.1の開発』を参照してください。

リソース・アダプタ

リソース・アダプタ(コネクタとも呼ばれる)は、Jakarta EEプラットフォームにEnterprise Information System(EIS)インテグレーションを追加します。コネクタはシステム・レベルのソフトウエア・ドライバを提供し、WebLogic Serverはこれを使用してEISに接続します。コネクタはJavaクラスと、必要に応じてEISとの対話に必要なネイティブなコンポーネントを含みます。『Oracle WebLogic Serverリソース・アダプタの開発』を参照してください。

Webサービス

Webサービスとは、ネットワーク上の他のシステムからも利用でき、分散型Webベース・アプリケーションのコンポーネントとして共有および使用可能な、1つのエンティティにまとめられた一連の関数です。Webサービスは一般的に、カスタマ・リレーションシップ・マネージメント・システム、注文処理システムなどの既存のバックエンド・アプリケーションとインタフェースします。

Webサービス・モジュールはJavaクラス、あるいはWebサービスを実装するEJBのどちらかを含む場合があります。Webサービスは、実装に応じて、Webアプリケーション・アーカイブ(WAR)またはEJBモジュール(JAR)のどちらかとしてパッケージ化されます。通常、WARまたはEJB JARファイルは、さらにエンタープライズ・アプリケーションにパッケージ化されます。『Oracle WebLogic Server JAX-WS Webサービスの開発』を参照してください。

Jakarta EEライブラリ

Jakarta EEライブラリはスタンドアロンのJakarta EEモジュールか、複数のJakarta EEモジュールがパッケージされ、デプロイメント時にJakarta EEアプリケーション・コンテナに共有ライブラリとして登録されたエンタープライズ・アプリケーション(EAR)です。Jakarta EEライブラリの登録後、weblogic-application.xmlデプロイメント記述子でライブラリを参照するエンタープライズ・アプリケーションをデプロイできるようになります。参照側の各アプリケーションは、デプロイメントの際に共有Jakarta EEライブラリ・モジュールのコピーを受け取り、アプリケーション自体の一部としてパッケージ化されているかのように、これらのモジュールを使用できます。Jakarta EEライブラリ・サポートを利用すると、共有モジュールを各依存アプリケーションに物理的に追加しなくても、複数のエンタープライズ・アプリケーション間で1つ以上のJakarta EEモジュールを簡単に共有できます。

この項で説明したように、共有ライブラリのデプロイメント・ファイルは、標準のエンタープライズ・アプリケーションまたはJakarta EEモジュールのどちらかに類似しています。共有ライブラリは、MANIFEST.MFファイルの内容のみが、標準EARやモジュールのそれと異なります。Jakarta EEライブラリをアセンブルおよび構成する方法と、Jakarta EEライブラリを利用するエンタープライズ・アプリケーションを構成する方法については、Oracle WebLogic Serverアプリケーションの開発共有Jakarta EEライブラリおよびオプション・パッケージの作成に関する項を参照してください。

「共有Jakarta EEライブラリおよびそれに依存するアプリケーションのデプロイ」では、Jakarta EEライブラリおよびJakarta EEライブラリを参照するエンタープライズ・アプリケーションのデプロイ方法について説明します。

オプション・パッケージ

オプション・パッケージは、Jakarta EEライブラリと似た機能を提供しており、これを使用すると複数のアプリケーション間で単一のJARファイルを簡単に共有できます。ただし、オプション・パッケージは、エンタープライズ・アプリケーションとしてではなく、(スタンドアロンまたはエンタープライズ・アプリケーション内の)個々のJakarta EEモジュールとして機能します。たとえば、複数のWebアプリケーションで必要とされるサード・パーティのWebアプリケーション・フレームワーク・クラスを、単一のJARファイル内にパッケージ化およびデプロイし、ドメイン内の複数のWebアプリケーション・モジュールから参照することが可能です。

オプション・パッケージは、デプロイメント記述子を持たない基本的なJARファイルとして供給されます。単にJARをデプロイメント時にオプション・パッケージとして指定すれば、WebLogic Serverは選択したターゲット・サーバーにファイルを登録します。オプション・パッケージが登録されると、MANIFEST.MFファイルでオプション・パッケージを参照するJakarta EEモジュールおよびアプリケーションをデプロイできます。オプション・パッケージをアセンブルおよび構成する方法と、オプション・パッケージを利用するJakarta EEモジュールを構成する方法については、Oracle WebLogic Serverアプリケーションの開発共有Jakarta EEライブラリおよびオプション・パッケージの作成に関する項を参照してください。

「共有Jakarta EEライブラリおよびそれに依存するアプリケーションのデプロイ」では、オプション・パッケージ、およびオプション・パッケージを参照するJakarta EEモジュールのデプロイ方法を説明します。

JDBC、JMS、およびWLDFモジュール

JMS、JDBC、またはWebLogic診断フレームワーク(WLDF)・アプリケーション・モジュールは、スタンドアロンのリソースとしてデプロイ可能です。その場合、リソースはデプロイメント中にターゲット指定したドメインで、またはエンタープライズ・アプリケーションの一部として使用可能です。エンタープライズ・アプリケーションの一部としてデプロイしたアプリケーション・モジュールは、同梱したアプリケーション(アプリケーション・スコープのリソース)でのみ利用可能です。アプリケーション・スコープのリソースを使用することにより、アプリケーションは常に必要なリソースへ確実にアクセスでき、アプリケーションを新しい環境にデプロイする処理が簡素化されます。

システム・モジュールと対照的に、アプリケーション・モジュールの所有者は、モジュールをデプロイする管理者ではなく、モジュールを作成およびパッケージ化した開発者となります。つまり、JDBC、JMS、およびWLDFアプリケーション・モジュールに対しては、管理者の制御が及ぶ範囲のほうが、より制限されています。アプリケーション・モジュールをデプロイする際、管理者はモジュールで指定されていたリソース・プロパティを変更できますが、リソースの追加や削除は行えません。

システム・モジュールは、管理者がWebLogicリモート・コンソールを使用して作成し、必要に応じて管理者により変更または削除可能です。同様に管理者が作成したスタンドアロンのアプリケーション・モジュールは、モジュールを新しいドメインにデプロイするのみで、複数のWebLogic Server環境におけるグローバル・リソースの再作成に使用できます。

JDBC、JMS、およびWLDFモジュールのデプロイ方法の詳細は、次を参照してください。

DBClientDataモジュール

DBClientDataモジュールは、存在する場合は常にJDBCモジュールで使用されるスタンドアロン・デプロイメント・モジュールです。tnsnames.oraファイル、Oracleウォレット・ファイル、サーバー信頼キーストア、クライアント・アイデンティティ・キーストア、データ・ソースで使用されるほぼすべてのデータベース・クライアント接続データが含まれますが、これらのデータを使用するデータ・ソース・インスタンスの構成には依存しません。詳細は、「JDBCモジュール用のOracle Walletファイルのデプロイ」を参照してください。

DBClientDataモジュールを使用すると、データベース・クライアント・データのデプロイ、管理および移動が容易になります。詳細は、『Oracle WebLogic Server JDBCデータ・ソースの管理』移植性のためのDBClientDataモジュールの使用を参照してください。

クライアント・アプリケーション・アーカイブ

Jakarta EE仕様では、クライアント・アプリケーションのアーカイブ・ファイル(.jarファイル)をモジュールとしてエンタープライズ・アプリケーション(.earファイル)内に組み込むことができます。Jakarta EEクライアント・アプリケーション・モジュールには、クライアントJVM(Java仮想マシン)で実行するJavaクラスと、EJB (Enterprise JavaBeans)、およびクライアントによって使用されるその他のWebLogic Serverリソースに関するデプロイメント記述子が収められます。これによりサーバー側とクライアント側のコンポーネントを1つのユニットとして配布できます。EAR内で、Jakarta EE標準のapplication-client.xmlデプロイメント記述子およびWebLogic Server weblogic-appclient.xml記述子を使用して、クライアント・モジュールを定義します。

デプロイメント・ツール

WebLogic Serverでは、アプリケーションの構成とデプロイに役立ついくつかのツールが用意されています。

weblogic.Deployer

weblogic.Deployerでは、コマンド・ライン・ベースのインタフェースを使用して、デプロイメントの基本的なタスクおよび高度なタスクの両方を実行できます。weblogic.Deployerは、WebLogic Serverのデプロイメント機能にコマンド行からアクセスする必要がある場合、またはWebLogicリモート・コンソールでサポートされていないデプロイメント・タスクを実行する必要がある場合に使用します。

WebLogicリモート・コンソールおよびFusion Middleware Control

WebLogicリモート・コンソールおよびFusion Middleware Controlは、デプロイメント・プロセスをガイドします。また、それらにより、デプロイメント・ステータスを変更およびモニターしたり、デプロイメント・ユニットが起動され実行されている間に、選択したデプロイメント記述子の値を変更したりできます。

WebLogicリモート・コンソールまたはFusion Middleware Controlは、基本的なデプロイメント機能をインタラクティブに実行する必要があり、サポートされているブラウザにアクセスできる場合に使用します。

WLST

WebLogic Scripting Tool (WLST)は、アプリケーション・デプロイメント構成およびデプロイ操作を含めたドメイン構成タスクを自動化できるコマンド行インタフェースです。詳細は、『WebLogic Scripting Toolの理解』を参照してください。

開発者用のデプロイメント・ツール

WebLogic Serverには、アプリケーションおよびスタンドアロン・モジュールをデプロイするための次のようなツールが備わっています。

  • wldeployweblogic.DeployerユーティリティのAntタスク・バージョンです。デプロイメント・タスクを自動化するには、Antのbuild.xmlファイルにwldeployコマンドを配置し、Antを実行してそのコマンドを実行します。

  • weblogic-maven-pluginは、WebLogic Server用のMavenプラグインで、これを使用するとweblogic.Deployerによってサポートされているものと同様のデプロイメント操作を実行できます。このプラグインによって、Maven環境内からWebLogic ServerへMavenを使用して構築されたアプリケーションのデプロイ、再デプロイ、更新などを実行できるようになります。

  • weblogic.PlanGenerator。開発者が複数のWebLogic Server環境へのデプロイメント用にアプリケーションの構成をエクスポートできる、コマンド行ツールです。

  • デプロイメントAPI。Javaクラスを使用してデプロイメント・タスクをプログラム的に実行できます。

  • autodeployドメイン・ディレクトリ。開発環境で評価またはテストを行うためのアプリケーションを素早くデプロイできます。