CoEのビジネス・ケースの構築

強力なビジネス・ケースを作成して、シニア・レベルの支援を推進し、期待を調整し、EPM CoEのクラウド導入のための強固な基盤を提供します。

クラウド導入イニシアチブのビジネス・スポンサまたはITスポンサは、エグゼクティブ・スポンサと協力してビジネス・ケースの作成を主導する立場に最も適任です。正常に実装できるビジネス・ケースを作成するには、クラウド導入イニシアチブの影響を受ける人、プロセス、テクノロジについて深い知識を持つ、組織の対象分野の専門家から意見を得ることが重要です。

あらかじめ定義した目標を使用して、クラウド導入のビジネス・ケースを構築します。ビジネス・ケースは、キー・パフォーマンス・インジケータ(KPI)を含む目標の優先順位付けから始まります。ビジネス目標に優先順位を付け、定量化することで、必要な技術的、人的および財務的投資との関連で目標を経済的に検証します。

ビジネス・ケースには、クラウド変革の経済的影響を分析することが含まれます。また、必要な投資と期待される結果の包括的な説明を提供する投資収益率分析も含まれます。

次の表に、クラウド導入のビジネス・ケースで把握する重要な側面をまとめています。

表2-4 CoEのビジネス・ケースと分析の領域

ビジネス・ケースの要素 分析の領域

エグゼクティブ・サマリー

(最大1ページ)

クラウド導入の目標は何ですか?
  クラウド導入イニシアチブのビジネス価値は何ですか?
  どのようなリソースと投資が必要ですか?
  メリットはいつ発生しますか?
  ヒント: エグゼクティブ・サマリーは、ビジネス・ケース・ドキュメントの先頭に示します。ただし、ドキュメントを作成するときは、他の情報を含めた後にサマリーを作成する方が簡単な場合があります。
優先順位付けされた目標 目標とKPI
クラウド・テクノロジの導入戦略

例: 技術的なソリューション:

  • アプリケーション・ポートフォリオの移行
  • アプリケーション・ポートフォリオの最新化
  • アプリケーションのイノベーション
財務詳細 - 総所有コスト(TCO) 必要な財務投資:
  • IT運用をクラウドに移行するためのコストまたはプロバイダを変更するためのコスト
  • 労働、コンサルティング・サービス
  • Cloudプラットフォーム・サービス
  • 統合
  • トレーニングおよびワークフォース・レディネス
メリット - 投資収益率(ROI)

クラウド環境と比較した現在の環境などのベンチマーク

経済的なメリット:

  • 機器および施設の資本コストとクラウドの料金体系の比較
  • 現在の人件費とクラウドの人件費の比較
  • 物理メンテナンス・コストとクラウド・サービスの比較
  • 運用コスト
  • 統合コスト
  • トレーニング・コスト
  • セキュリティとコンプライアンス
  • 最新のテクノロジ・スタック
  • 運用環境の簡素化または改善
  • 競争力

技術的なメリット:

  • データ・センターのフットプリントを削減
  • 運用費用(OPEX)消費モデル
  • 生産性の向上
  • 拡張性
  • セキュリティとコンプライアンス
  • 可用性、ビジネスの継続性、障害回復
必要な人的リソース - リソース管理の戦略
  • エグゼクティブ・スポンサ
  • 主要な利害関係者
  • 実装チーム: 財務、ビジネスおよびIT
    • ビジネス・スポンサ
    • アーキテクト
    • 開発者
    • 業務
クラウド導入プラン クラウドに移行および構築する特定のアプリケーションの特定:
  • レガシー・アプリケーション
  • アプリケーションのリフト・アンド・シフト
  • 最新のアプリケーション開発(クラウドネイティブ)
  • インタフェース分析と統合分析
クラウド導入プロセス
  • エンタープライズ・アーキテクチャ
  • 作成および更新のガバナンス・プロセス
  • 作成および更新のセキュリティ・プロセス
推定タイムライン
  • 実装
  • 価値の実現
推奨事項 組織では、クラウド導入イニシアチブをどのように進める必要がありますか?

総所有コスト: 投資の定量化

総所有コスト(TCO)を評価することで、組織がクラウドベースのOPEXモデルへの移行や、オンプレミスのIT調達プロセスからクラウドベースの投資モデルへの移行の準備が整っていることが確認されます。クラウドに移行すると、サーバーやデータ・センターなどの資産に対する費用が不要になります。総所有コスト(TCO)は、資産の耐用期間中の資産の購入、運用、メンテナンスに関わるすべてのコストの合計です。TCO分析は、組織が初期購入価格以外の資産のコストを理解するために役立ち、投資収益率を把握するために有用です。強固なビジネス・ケースを構築するには、適切なシステム、サービスおよびインフラストラクチャを決定することが重要です。

クラウド・コンピューティングのコンテキストでは、TCOは、クラウド内のリソースやアプリケーションの設定、運用およびメンテナンスの全体的なコストです。クラウド・インフラストラクチャのTCO分析を作成する場合、現在および予測される使用状況をベースラインとして使用しますが、クラウドは本質的に動的なエコシステムであるため、組織の将来のコストはそれに応じて変動します。

クラウドのTCOを計算する場合、組織はオンプレミスのワークロードを実行するコストと、クラウドで同じワークロードを実行するコストとの間の同種比較を行うことがよくあります。つまり、組織は、オンプレミス環境のハードウェアおよびソフトウェアの初期購入価格と、クラウド・コンピューティングの月次サブスクリプション・コストを比較します。

クラウド・ソリューションを導入すると、俊敏性の向上、市場投入までの時間の短縮、生産性の向上、弾力的な需要へのコスト効率に優れた対応など、無形のメリットが得られます。

TCO分析は組織ごとに固有です。包括的なコスト分析を実行するか、組織にとって最も重要な領域にのみ集中するかはニーズに応じて選択できます。次の表に、分析で考慮する一般的なコストを示します。

表2-5 TCOのコスト領域と例

コスト領域
コンピュート サーバー、ラック・シャーシ配電盤(PDU)、トップオブラック(ToR)スイッチ、メンテナンス
ストレージ ストレージ・ディスク、ファイバ・チャネル・ストレージ・エリア・ネットワーク(FC SAN)スイッチ、メンテナンス
ネットワーキング LANスイッチ、ロード・バランサ、帯域幅コスト、メンテナンス
施設 スペース、電力、冷却、メンテナンス
セキュリティ ファイアウォール、ネットワーク・ドメイン・セキュリティ(NDS)、侵入検知システム(IDS)、メンテナンス・ソフトウェア・ライセンス、更新、アップグレード
採用、トレーニング
障害回復 代替サイト、アイドル・インフラストラクチャ
移行 再ホスティング、リファクタリング、改訂、再構築、置換
機会費用
  • 資本的支出を排除することの潜在的価値
  • 俊敏性の向上の潜在的価値
  • 市場投入までの時間短縮の潜在的価値
  • 生産性向上の潜在的価値