rules ファイルは、自動的に Solaris オペレーティング環境をインストールを実行したいシステムの各グループ (または単独のシステム) 用のルールを含むテキストファイルです。各ルールは、1 つまたは複数のシステム属性に基づいてシステムのグループを識別し、各グループを 1 つのプロファイルにリンクさせます。このプロファイルは、Solaris ソフトウェアをグループの各システムにインストールする方法を定義するテキストファイルです。
karch i86pc - basic_prof - |
たとえば上記のルールでは、Solaris インストールプログラムが、basic_prof プロファイルにある情報に基づいて、i86pc プラットフォームグループを持つシステムにインストールを実行することを指定します。rules ファイルを使用して、カスタム JumpStart インストールに必要な rules.ok ファイルを作成します。
「プロファイルフロッピーディスクの作成」 または 「プロファイルサーバーの作成」 の手順にしたがって JumpStart ディレクトリを設定した場合は、JumpStart ディレクトリに rules ファイルのサンプルがあります。rules ファイルのサンプルには、説明といくつかのルール例があります。サンプルの rules ファイルを利用する場合は、使用しないルール例は必ずコメントにしておいてください。
rules ファイルには、次のものを含めることができます。
コメント付きテキスト
行の # 記号の後に含まれるテキストは、JumpStart によってコメントとして扱われます。行が # 記号で始まる場合は、行全体がコメントとして扱われます。
1 つまたは複数のブランク行
1 つまたは複数の複数行ルール
1 つのルールを新しい行に続けるには、Return キーまたは Enter キーを押す直前に、バックスラッシュ文字 (¥) を含めます。
ルールには、少なくとも次のものが含まれていなければなりません。
キーワード、値、および対応するプロファイル
エントリがない場合は、開始フィールドと終了フィールドのマイナス符号 (-)
rules ファイル内のルールは、次の構文になっていなければなりません。
[[!]]rule_keyword rule_value [[&& [[!]]rule_keyword rule_value]] ... begin profile finish |
要素 |
説明 |
---|---|
ルールキーワードの前で使用し、否定を示す記号 |
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ホスト名 (hostname)、メモリーサイズ (memsize) などの一般的なシステム属性を記述する定義済みキーワード。ルール値とともに使用し、同じ属性を持つシステムをプロファイルに一致させる。ルールキーワードの一覧は、表 6-3 を参照 |
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対応するルールキーワードに特定のシステム属性を与える値。ルール値の一覧は、表 6-3 を参照 |
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ルールキーワードとルール値のペアを同じルールで結合する (論理積をとる) ときに使用する記号。カスタム JumpStart インストール時に、システムがルール内のすべてのペアに一致しなければ、ルールの一致は成立しない |
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インストールが開始する前に実行できるオプションの Bourne シェルスクリプト名。begin スクリプトがない場合、このフィールドにマイナス記号 (-) を指定する必要がある。begin スクリプトはすべて、JumpStart ディレクトリになければならない。 begin スクリプトの作成方法の詳細は、「begin スクリプトの作成」を参照 |
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テキストファイル名。システムがルールに一致したとき Solaris ソフトウェアがシステムにどのようにインストールされるかを定義している。プロファイル内の情報は、プロファイルキーワードと、それらに対応するプロファイル値から構成される。すべてのプロファイルは JumpStart ディレクトリになければならない。 注 - プロファイルフィールドについては、別の使用方法もあります。詳細は、「サイト固有のインストールプログラムの使用」と 「begin スクリプトによる動的プロファイルの作成」を参照してください。 |
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インストール終了後に実行できるオプションの Bourne シェルスクリプト名。finish スクリプトがない場合、このフィールドにマイナス記号 (-) を指定する必要がある。finish スクリプトはすべて、JumpStart ディレクトリになければならない。 finish スクリプトの作成方法の詳細は、「finish スクリプトの作成」を参照 |
表 6-3 で、rules ファイルで使用できるルールキーワードとルール値について説明します。
表 6-3 ルールキーワードとルール値の説明
ルールキーワード |
ルール値 |
説明 |
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---|---|---|---|---|
マイナス記号 (-) |
常に一致する |
|||
processor_type
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システムのプロセッサタイプを照合する。 システムのプロセッサタイプは、uname -p コマンドで調べることができる |
|||
actual_disk_name size_range actual_disk_name - cxtydz 形式 (たとえば、c0t3d0、c0d0) のディスク名または rootdisk。rootdisk を使用する場合、照合するディスクは次の順番で決定される。
size_range - ディスクのサイズ。M バイト単位の範囲 (x-x) で指定する必要がある |
システムのディスクの名前とサイズを照合する (M バイト単位)。
この例は、250〜300M バイトの c0t3d0 ディスクを備えるシステムと照合する。
この例では、まず初めに事前にインストールされたブートイメージを含むシステムディスク、次に c0t3d0s0 ディスク、最後に 750M バイトから 1G バイトの情報を格納できるディスクを探します。 注 - size_range を計算するときは、1M バイトが 1,048,576 バイトであることに注意してください。「535M バイト」ディスクと明記されているディスクでも、ディスク空間が 510M バイトしかない場合があります。535,000,000/1,048,576=510 により、JumpStart は「535M バイト」ディスクを実際には 510M バイトのディスクと見なします。したがって、この「535M バイト」ディスクは 530-550 の size_range には一致しません。 |
|||
actual_domain_name |
システムのドメイン名を照合する。ドメイン名でネームサービスが情報を判別する方法を制御する。 システムがインストール済みの場合、domainname コマンドによりシステムのドメイン名を表示できる |
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actual_IP_address |
システムの IP アドレスを照合する |
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actual_host_name |
システムのホスト名を照合する。 システムがインストール済みの場合、uname -n コマンドによりシステムのホスト名を表示できる |
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slice version slice - cwtxdysz 形式 (たとえば、c0t3d0s5) のディスクスライス名、または any か rootdisk。any を使用すると、システムに接続されたどのディスクも照合する (カーネルのプローブ順)。rootdisk を使用すると、照合するディスクは次の順番で決定される。
version - Solaris_2.x などのバージョン名、または any か upgrade。any を使用すると、Solaris または SunOS リリースのどれとでも照合する。upgrade を使用すると、アップグレード可能な Solaris 2.1 以上のリリースのどれとでも照合する。 JumpStart で Solaris リリースが見つかっても、バージョンが不明な場合は、SystemV をバージョンとして返す |
Solaris ソフトウェアの特定バージョンに対応するルートファイルシステムが存在するディスクを照合する。
この例では、c0t3d0s1 に Solaris 8 のルートファイルシステムを持つシステムを照合している |
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actual_platform_group 有効な値は、sun4d、sun4m、sun4u、i86pc (各種システムとそのプラットフォームグループの詳細なリストは、付録 A 「プラットフォーム名とグループ」 を参照) |
システムのプラットフォームグループを照合する。 システムがインストール済みの場合は、arch -k コマンドまたは uname -m コマンドにより、システムのプラットフォームグループを表示できる |
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physical_mem 値は M バイト単位の範囲 (<x-x) または 1 つの M バイト値で指定する |
システムの物理メモリーサイズを照合する (M バイト単位)。
この例では、16M〜32M バイトの物理メモリーサイズを持つシステムと照合している。 システムがインストール済みの場合は、prtconf コマンド (2 行目) によりシステムの物理メモリーサイズを表示できる |
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actual_platform_name |
システムのプラットフォーム名を照合する。有効なプラットフォーム名については、付録 A 「プラットフォーム名とグループ」 を参照。 インストール済みのシステムのプラットフォーム名を見つけるには、uname -i コマンドか prtconf コマンド (5 行目) の出力を使用する。 |
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network_num |
システムのネットワーク番号を照合する。これは JumpStart が、システムの IP アドレスとサブネットマスクの論理積をとって判別する。
この例では、IP アドレスが 193.144.2.8 のシステムを照合する (サブネットマスクが 255.255.255.0 の場合) |
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Solaris_2.x |
システムにすでにインストールされている Solaris のバージョンを照合する。
この例では、Solaris 7 がすでにインストールされているシステムを照合している |
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probe_keyword |
有効なプローブまたはカスタムプローブキーワード
この例では、システムのディスクのサイズがカーネル検索順序 (たとえば、SPARC ベースシステムでは、c0t3d0s0、c0t3d0s1、c0t4d0s0) で返され、環境変数 SI_DISKLIST、SI_DISKSIZES、SI_NUMDISKS、および SI_TOTALDISK が設定される。 注 - probe キーワードは、属性を照合せず、プロファイルを実行しないという特徴があります。このキーワードは、値を返すだけです。したがって、probe ルールキーワードで、begin スクリプト、プロファイル、および finish スクリプトは指定できません。 プローブキーワードについては、第 8 章「カスタムルールおよびプローブキーワードの作成方法」を参照してください。 |
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size_range 値は M バイト単位の範囲 (x-x) で指定する必要がある |
システムのディスク空間の全体量 (M バイト単位) を照合する。ディスク空間の全体量には、システムに接続されている使用可能なディスクがすべて含まれる。
この例では、全体として 300M〜500M バイトのディスク空間を持つシステムと照合している。 注 - size_range を計算するときは、1M バイトが 1,048,576 バイトであることに注意してください。「535M バイト」ディスクと明記されているディスクでも、ディスク空間が 510M バイトしかない場合があります。535,000,000/1,048,576=510 により、JumpStart は「535M バイト」ディスクを実際には 510M バイトのディスクと見なします。したがって、この「535M バイト」ディスクは 530-550 の size_range には一致しません。 |
次の例は、rules ファイル内のルールをいくつか示しています。各行には、ルールキーワードとそのキーワードに有効な値があります。JumpStart は、rules ファイルを上から下へ走査します。
左の列に示された数字は挿入しないでください。これらの数字は、例の後に表示される脚注です。
JumpStart は、既知のシステムとルールキーワードおよび値を照合する場合、プロファイルフィールドにリストされたプロファイルによって指定された Solaris ソフトウェアをインストールします。
# rule keywords and rule values begin script profile finish script # ----------------------------- ------------ -------- ------------- 1 hostname eng-1 - basic_prof - 2 network 192.43.34.0 && !model ¥ 'SUNW,SPARCstation-20' - net_prof - 3 model SUNW,SPARCstation-LX - lx_prof complete 4 network 193.144.2.0 && karch i86pc setup IA_prof done 5 memsize 16-32 && arch i386 - prog_prof - 6 any - - generic_prof - |
1. このルールは、システムのホスト名が eng-1 の場合に一致します。basic_prof プロファイルは、このルールに一致するシステムに Solaris ソフトウェアをインストールするために使用されます。
2. このルールは、システムがサブネット 192.43.34.0 にあって、SPARCstationTM 20 (SUNW, SPARCstation-20) ではない場合に一致します。net_prof プロファイルは、このルールに一致するシステムに Solaris ソフトウェアをインストールするために使用されます。このルールは、「rules ファイルの構文」に定義されたルールラップの例にもなっています。
3. このルールは、システムが SPARCstation LX である場合に一致します。lx_prof プロファイルと complete 終了スクリプトは、このルールに一致するシステムに Solaris ソフトウェアをインストールするために使用されます。
4. このルールは、システムが 193.144.2.0 にあって、IA ベースのシステムである場合に一致します。setup 開始スクリプト、IA_prof プロファイル、および done 終了スクリプトは、このルールに一致するシステムに Solaris ソフトウェアをインストールするために使用されます。
5. このルールは、システムに 16〜32M バイトのメモリーがあって、IA 搭載システムである場合に一致します。prog_prof プロファイルは、このルールに一致するシステムに Solaris ソフトウェアをインストールするために使用されます。
6. このルールは、上記のルールに一致しなかったすべてのシステムに一致します。generic_prof プロファイルは、このルールに一致するシステムに Solaris ソフトウェアをインストールするために使用されます。このプロファイルを使用する場合は、any が常に、rules ファイルの最後のルールでなければなりません。