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Oracle Warehouse Builderインストレーションおよび管理ガイド
11gリリース1(11.1)for Microsoft Windows and UNIX Systems
E05735-03
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9 メタデータ依存性の管理

メタデータ依存性マネージャにより、ワークスペースのメタデータやオブジェクト定義に対して行われた変更の影響を検出して解決することができます。

この章では、次の項目について説明します。

メタデータ依存性マネージャの概要

メタデータ依存性マネージャにより、データ・オブジェクトの系統ダイアグラムと影響ダイアグラムを生成します。系統ダイアグラムにより、オブジェクトからソースへ向けてデータ・フローをトレースし、これらのパスに沿ってすべてのオブジェクトが表示されます。影響ダイアグラムにより、選択されたオブジェクトから導出されたすべてのオブジェクトを識別します。

このタイプの情報は、多くの状況で次に示すような作業を行う場合に役立つがことがあります。

現在や将来において行われる変更の影響を事前に確認することで、依存性マネージャによりプロジェクトを計画できます。使用しているソース・システムに対して変更を行う予定がある場合、依存性マネージャを使用して、ウェアハウス・デザインに対して変更の影響を測定できます。また、変更が実施済の場合、ETLデザインを更新してデータ・ウェアハウスを再構築するために必要な時間を予定として計画できます。

図9-1に、メタデータ依存性マネージャを示します。Warehouse Builderにあるその他のウィンドウと同様に、依存性マネージャにはメニュー、ツールバー、ナビゲータ、プロパティ・インスペクタおよびキャンバスがあります。キャンバスには、1つ以上のダイアグラムが表示されます。

図9-1 メタデータ依存性マネージャ

メタデータ依存性マネージャのスクリーン・キャプチャ
「図9-1 メタデータ依存性マネージャ」の説明

使用例

ファイル、データベース、アプリケーションなどのソースからのメタデータは、データ統合システムのデザインと実装を行った後でも変更できます。ソースのメタデータを変更すると、Warehouse Builder実装に対して対応する影響が及ぶことを意味します。Warehouse Builderでは、変更されたソース定義をワークスペースに再びインポートすることができます。ただし、定義を再びインポートすると元のウェアハウス・デザインは有効でなくなる場合があります。また、デザインに対して変更を行い不整合を解決する必要が発生する場合があります。

最初に、ソースにおいて変更が行われたことによるウェアハウス・デザインへの影響を把握する必要があります。そして、ソースに依存する設計オブジェクトのすべてがメタデータと同期することの必要性を調べる必要があります。これによって、影響を受ける設計オブジェクトのすべてが更新され、ソースにおける変更が反映されるようになります。このプロセスが完了すると、更新されたデザインを再配布してデータ・ウェアハウスの再構築とデータの同期を実行できます。

このシナリオの企業では、CUSTOMERSの名前のフラット・ファイルからすべての統計レポートを取得します。時間が経過するにつれて、さらに別のパラメータでレポートを生成するようにファイル定義を変更する必要が発生します。また、Oracle Databaseにおいてホスティングされている統計分析データベースも、最新リリースのOracle Databaseに最近移行されました。

この企業の設計者は最初に、デザイン・ワークスペースにおいてこのファイル用に変更されたメタデータ定義を、そのデータに基づいた設計オブジェクトとマッピングのすべてと同期させる必要があります。CUSTOMERSのフラット・ファイルは、ETLデザインにおいて複数のマッピングの一部であり、その定義に対する変更はすべて無効になります。CUSTOMERSのフラット・ファイルにより影響を受けるすべての領域を手動で追跡して定義を更新することは、エラーが発生しやすいプロセスです。

データソースに対して行われる変更の影響を受けるオブジェクトのすべてを、依存性マネージャにより識別できます。ETLデザインが有効なまま維持されるように各関連設計オブジェクトが更新されることを確認できます。このプロセスが終了すると、影響を受ける表と更新されたETL設計オブジェクトをデータ・ウェアハウスに再配布できます。

系統と影響の分析ダイアグラムとは

系統と影響の分析(LIA)ダイアグラムには、Warehouse Builderで管理されるオブジェクト間における関係が表示されます。これらの関係は、マッピングと構造的関係(たとえば、主キーと外部キーの関係)により構築されます。特定のオブジェクトの系統ダイアグラムには、そのソース・オブジェクトが表示されます。また、影響ダイアグラムには、そのターゲット・オブジェクトが表示されます。

系統と影響は、互いに鏡に映ったイメージになります。オブジェクトAがオブジェクトBの系統ダイアグラムの一部である場合、オブジェクトBはオブジェクトAの系統ダイアグラムの一部になります。ダイアグラムを左から右の方向に見ると、影響を把握できます。ダイアグラムを右から左の方向に見ると、系統を把握できます。

たとえば、データをファイルより抽出してから外部表経由で表にロードするマッピングがあると仮定します。これは次のような関係になります。

flat_file > external_table > table

図9-2は、ADDRESS_EXT_TABLEという名前の外部表の系統ダイアグラムを示します。ADDRESS_CSVはフラット・ファイルで、ADDRESS_EXT_TABLEの系統の一部になります。したがって、ADDRESS_CSVに対する変更は、ADDRESS_EXT_TABLEに影響が及びます。

図9-2 ADDRESS_EXT_TABLEの系統分析ダイアグラム

系統分析ダイアグラムのスクリーン・キャプチャ
「図9-2 ADDRESS_EXT_TABLEの系統分析ダイアグラム」の説明

図9-3は、ADDRESS_EXT_TABLEの影響ダイアグラムを示します。これにはADDRESS_TBLが含まれています。ADDRESS_EXT_TABLEに対する変更は、ADDRESS_TBLに影響が及びます。ADDRESS_EXT_TABLEは、ADDRESS_TBLの系統の一部になります。

図9-3 ADDRESS_EXT_TABLEの影響分析ダイアグラム

影響分析ダイアグラムのスクリーン・キャプチャ
「図9-3 ADDRESS_EXT_TABLEの影響分析ダイアグラム」の説明

図9-4に示すように、オブジェクト・アイコンのどちらかにあるプラス記号(+)をクリックすると、オブジェクトの系統と影響の両方を表示できます。

図9-4 系統と影響の分析ダイアグラム

系統と影響の分析ダイアグラムのスクリーン・キャプチャ
「図9-4 系統と影響の分析ダイアグラム」の説明

LIAダイアグラムの生成

LIAダイアグラムは、デザイン・センターのプロジェクト・エクスプローラからでも、メタデータ依存性マネージャを最初に起動することでも、生成できます。

ダイアグラムをデザイン・センターから生成するには:

  1. 分析対象のオブジェクトが表示されるまで、プロジェクト・エクスプローラを開いていきます。

  2. オブジェクトを右クリックして、「系統」または「影響」を選択します。

    メタデータ依存性マネージャが開いてダイアグラムが表示されます。

「系統」と「影響」のコマンドは、「表示」メニューからでも利用できます。

ダイアグラムをメタデータ依存性マネージャから生成するには:

  1. デザイン・センターの「ツール」メニューから、「メタデータ依存性マネージャ」を選択します。

    「メタデータ依存性マネージャ」が表示されます。

  2. 分析対象のオブジェクトが表示されるまで、「DMコンテキスト・ツリー」を開いていきます。

  3. オブジェクトを右クリックして、「系統の表示」または「影響の表示」を選択します。

    ダイアグラムがキャンバスに表示されます。

LIAダイアグラムの表示の変更

オブジェクトとダイアグラム・タイプの初期選択は、そのオブジェクトからダイアグラムが分岐する基点と分岐方向を決めるだけです。LIAダイアグラムは次に示す方法で変更できます。

LIAダイアグラムにおけるグループの使用

グループにより複雑なダイアグラムでオブジェクトを整理できます。これによって、オブジェクトの検索や編集が簡単になります。ダイアグラムでオブジェクトの数を減らすと、対象となるオブジェクトに簡単に焦点を絞ることができます。

グループを作成するには:

  1. オブジェクトの周囲にある枠をドラッグ・アンド・ドロップして、オブジェクトのグループを選択します。

  2. 「選択したオブジェクトのグループ化」ツールをクリックします。

    「選択したデータ・オブジェクトのグループ化」ダイアログ・ボックスが表示されます。

  3. グループの名前を入力します。

    選択したオブジェクトが、1つのフォルダ・アイコンにまとめられます。

グループにある個々のオブジェクトを表示するには、フォルダ・アイコンをダブルクリックします。これらのオブジェクトは、グループ化されていないオブジェクトと同様の方法で作業ができます。

オブジェクトのグループ化を解除するには、「選択したオブジェクトのグループ解除」ツールをクリックします。

オブジェクトの属性の表示

オブジェクト・アイコンはダイアグラムで開くことができます。これによって、属性を調べることができます。アイコンを開くには、アイコンをダブルクリックします。アイコンに戻すには、右上にある下矢印をクリックします。

属性用にLIAダイアグラムを生成するには:

  1. オブジェクトのLIAダイアグラムを生成します。

  2. アイコンをダブルクリックして、属性を表示します。

  3. 属性を右クリックして、「系統の表示」または「影響の表示」を選択します。

    選択した属性の系統パスや影響パスにある属性が、別の色でハイライト表示されます。

この詳細情報は、監査を行うため、または変更の伝播を計画するときに使用できます。

図9-5に、アイコンが2つ開いていて、その列属性がマッピングによって接続されている状態を示します。

図9-5 アイコンが開いている状態のLIAダイアグラム

アイコンが開いている状態のLIAダイアグラムのスクリーン・キャプチャ
「図9-5 アイコンが開いている状態のLIAダイアグラム」の説明

Warehouse Builderにおけるメタデータ変更の伝播

LIAダイアグラムにより、1つ以上のオブジェクトに対する変更により無効にされる場合のあるオブジェクトをすべて識別します。このことがわかっていれば、影響を受けるオブジェクトを調査して、必要に応じて変更できます。

オブジェクトを手動で変更したり、依存性マネージャにより変更を伝播したりできます。

オブジェクトを手動で変更するには:

  1. 依存性マネージャで、変更対象となる最初のオブジェクトにナビゲートします。たとえば、ソース表にナビゲートします。

  2. オブジェクト・アイコンをダイアグラムで右クリックして、「エディタを開く」を選択します。

    Warehouse Builderでは、オブジェクト用の編集ツールが起動します。たとえば、表を選択すると、Warehouse Builderではデータ・オブジェクト・エディタが起動します。

  3. 編集ツールで必要な変更を行い、変更内容を保存します。

  4. LIAダイアグラムにおいて変更が必要と判断したオブジェクトのすべてに対して前述の手順を繰り返します。

変更により影響を受けるオブジェクトの数が少ない場合、オブジェクトを手動で変更する方法を選択することがあります。だだし、影響を受けるオブジェクトの数が多い場合、変更伝播機能を使用すると、人為的なエラーが発生する危険性を少なくすることができます。

依存性マネージャによりメタデータの変更を伝播するには:

  1. ダイアグラムでオブジェクト・アイコンをダブルクリックします。

    たとえば、ソース表のアイコンをダブルクリックします。

  2. 変更対象となるメタデータを右クリックして、「変更の伝播」を選択します。

    たとえば、表の列を右クリックします。

  3. 依存性マネージャにおける変更の伝播」で説明されているように、属性を変更します。

  4. OK」をクリックします。

依存性マネージャにおける変更の伝播

「変更の伝播」ダイアログ・ボックスにおいて、系統と影響の分析ダイアグラムで示されているように、Warehouse Builderですべての依存オブジェクトに伝播するメタデータ変更を指定します。

変更対象となる各属性で「伝播」をマーキングすることから開始します。たとえば、列のデータ型と長さを変更する場合、「伝播」の下にはチェック・マークが2つあることを確認してください。

新規の値」にナビゲートし、各属性で適切な値を入力します。

メタデータ依存性マネージャのユーザー・インタフェースについて

メタデータ依存性マネージャは、オブジェクトの定義における変更に関する潜在的影響を表示するグラフィカル・インタフェースです。次のコンポーネントがあります。

メニュー・バー

メタデータ依存性マネージャのメニュー・バーには、様々な作業を実行するためのコマンドがあります。ツールバーから利用できるコマンドも、いくつかあります。

分析

「分析」メニューには、次のコマンドがあります。

編集

「編集」メニューには、次のコマンドがあります。

表示

「表示」メニューには、次のコマンドがあります。

ウィンドウ

メタデータ依存性マネージャの「ウィンドウ」メニューには、次のウィンドウの表示と非表示を切り替えるためのコマンドがあります。

ツールバー

メタデータ依存性マネージャには、頻繁に使用するコマンドへのショートカットとしてツールバーが2つあります。

鳥瞰図

「鳥瞰図」を使用して、キャンバスに現在表示されているダイアグラムの部分を迅速に変更します。この表示によりキャンバスでダイアグラムが縮小表示されます。また、キャンバスのサイズを示すスクロール可能ボックスが表示されます。ボックスを対象ダイアグラムの領域にドラッグ・アンド・ドロップします。

DMツリー

「DMツリー」を使用して、キャンバスの内容を変更します。「DMツリー」にはこれらのタブがあります。

プロパティ・インスペクタ

「プロパティ・インスペクタ」を使用して、オブジェクトのプロパティを表示します。

「プロパティ・インスペクタ」で現在のオブジェクトを変更するには、キャンバスにあるオブジェクトを右クリックし、「プロパティ・インスペクタの更新」を選択します。

プロパティの説明を表示するには、「プロパティ・インスペクタ」でプロパティを選択します。説明がウィンドウの下部に表示されます。

キャンバス

キャンバスを使用して、系統と影響のダイアグラムを1つ以上表示します。各ダイアグラムは別々のタブに表示されます。

これらの手法を使用すると、キャンバスでダイアグラムを作成して操作することができます。