Oracle Database 11gのOracle Data Guardには、ここで説明する新機能と拡張機能が追加されました。
Oracle Data Guard 11gリリース2(11.2.0.3)のSQL Apply固有の新機能は次のとおりです。
バイナリXMLとして格納されたXMLType
データのサポート
オブジェクト・リレーショナル形式で格納されたXMLType
データのサポート
これらの両方の格納形式のサポートには、11.2.0.3以上のREDO互換性が設定されたOracle Database 11gリリース2(11.2.0.3)以上でプライマリ・データベースを実行している必要があります。サポートされているデータ型の詳細は、「データ型の考慮」を参照してください。
これ以降の項では、Oracle Data Guard 11gリリース2(11.2)に追加された新機能と拡張機能について説明します。
REDO ApplyとSQL Applyに共通する11.2の新機能
Oracle Database 11gリリース2(11.2.0.2)から、Oracle Data GuardはOracle Real Application Clusters One Node(Oracle RAC One Node)と完全に統合されました。
Data Guard構成は、1つのプライマリ・データベースの他に最大30個のスタンバイ・データベースを含むことができます。
FAL_CLIENT
データベース初期化パラメータは必要なくなりました。
Oracle Automatic Storage Management(Oracle ASM)機能および高速リカバリ領域機能で使用されるデフォルトのアーカイブ先が、LOG_ARCHIVE_DEST_10
からLOG_ARCHIVE_DEST_1
に変更されました。
REDOギャップの解決時のみのREDOデータの圧縮というREDO転送圧縮の制限がなくなりました。転送先で圧縮が有効になっている場合は、その宛先に送信されるすべてのREDOデータが圧縮されます。
新しいALTER SYSTEM FLUSH REDO
SQL文をフェイルオーバー時に使用して、未送信のREDOをマウント済のプライマリ・データベースからスタンバイ・データベースにフラッシュすることができます。これにより、プライマリ・データベースをゼロ・データ損失データ保護モードで実行していない場合でも、ゼロ・データ損失のフェイルオーバーを実行できます。詳細は、第8.2.2項を参照してください。
REDO Applyに固有の11.2の新機能
新しいSTANDBY_MAX_DATA_DELAY
パラメータを使用して、リアルタイム問合せ環境での適用ラグ許容差を構成できます。
新しいALTER SESSION SYNC WITH PRIMARY
SQL文を使用し、この文の発行時に、適切に構成されたフィジカル・スタンバイ・データベースをプライマリ・データベースと確実に同期することができます。
V$DATAGUARD_STATS
ビューは、適用ラグおよびトランスポート・ラグを含む多数の列で精度が高くなりました。
フィジカル・スタンバイの適用ラグ値のヒストグラムを確認できます。これには、新しいV$STANDBY_EVENT_HISTOGRAM
ビューを問い合せます。
プライマリ・データベースの破損データ・ブロックは、リアルタイム問合せモードで実行しているフィジカル・スタンバイ・データベースの対応するブロックの破損していないコピーで自動的に置換されます。フィジカル・スタンバイ・データベースの破損ブロックも、プライマリ・データベースの対応するブロックの破損していないコピーで自動的に置換されます。
SQL Applyに固有の11.2の新機能
ロジカル・スタンバイ・データベースは、基本表圧縮、OLTP表圧縮およびハイブリッド列圧縮機能を備えた表をサポートしています。
関連項目:
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ロジカル・スタンバイおよびLogMinerユーティリティはSecureFile LOB列を持つ表をサポートします。SecureFile LOB列での圧縮および暗号化操作もサポートされています。(重複除外操作、およびフラグメントベースの操作はサポートされていません。)
Oracle RACプライマリ・データベースでXAグローバル・トランザクション中に行われた変更は、ロジカル・スタンバイ・データベースでレプリケートされます。
DBMS_REDEFINITION
PL/SQLパッケージを使用して、プライマリ・データベースで実行されたオンライン再定義は、ロジカル・スタンバイ・データベースで透過的にレプリケートされます。
ロジカル・スタンバイは、停止時間を最短に抑えてアプリケーションをアップグレードするために、エディションベースの再定義の使用を含め、プライマリ・データベースでのエディションの使用をサポートします。
関連項目:
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ロジカル・スタンバイ・データベースでは、Streams取得がサポートされます。これにより、一方向の情報伝播構成でプライマリ・データベースから処理をオフロードし、ロジカル・スタンバイを複数のデータベースに情報を伝播するためのハブにすることができます。また、Streams取得は、ロジカル・スタンバイ・データベースに対してローカルである変更を伝播することもできます。
これ以降の項では、Oracle Data Guard 11gリリース1(11.1)に追加された新機能と拡張機能について説明します。
REDO ApplyとSQL Applyに共通する11.1の新機能
Data Guard構成でネットワークを経由したREDOトラフィックの圧縮
この機能は、REDOギャップを解決するときに、ネットワーク経由で送信される前のREDOを圧縮することにより、REDO転送のパフォーマンスを向上させます。
REDO転送レスポンス時間ヒストグラム
V$REDO_DEST_RESP_HISTOGRAM
動的パフォーマンス・ビューには、SYNC
REDO転送先ごとのレスポンス時間データのヒストグラムが格納されます。このビューのデータは、LOG_ARCHIVE_DEST_
n
NET_TIMEOUT属性の適正値の決定を支援するために使用できます。
ロールのより高速な推移
REDO転送ネットワーク・セッションの強力な認証
SSLを使用して、REDO転送ネットワーク・セッションを認証できるようになりました。これにより、強力な認証が提供され、Data Guard構成でのリモート・ログイン・パスワード・ファイルの利用はオプションになります。
単純化されたData Guard管理インタフェース
冗長SQL句と初期化パラメータを非推奨にすることで、Data Guard構成の管理に使用されるSQL文と初期化パラメータが単純化されました。
関連項目:
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DB_UNIQUE_NAME
に関連する拡張機能
このリリースから、V$DATABASE
ビューで新しいPRIMARY_DB_UNIQUE_NAME
列を問い合せることにより、スタンバイ・データベースからプライマリ・データベースのDB_UNIQUE_NAME
を検索できるようになります。また、Oracle Data Guardリリース11gでは、各データベースのDB_UNIQUE_NAME
が異なることが保証されます。11gへのアップグレード後、同じDB_UNIQUE_NAME
のデータベース間の通信は行えなくなります。
ローリング・アップグレードでのフィジカル・スタンバイ・データベースの使用
このリリースから、フィジカル・スタンバイ・データベースは、ロジカル・スタンバイにより提供されるローリング・アップグレード機能を利用できるようになります。SQLのALTER DATABASE RECOVER TO LOGICAL STANDBY
文で新しいKEEP IDENTITY
句オプションを使用することにより、ローリング・アップグレードのためにフィジカル・スタンバイ・データベースを一時的にロジカル・スタンバイ・データベースに変換してから、アップグレードの終了後、プライマリ・データベースとフィジカル・スタンバイ・データベースを元の構成に戻すことができます。
Data Guardの異種構成
この機能では、LinuxとWindowsのプライマリ・データベースとスタンバイ・データベースを同一のData Guard構成に混在させることができます。
REDO Applyに固有の11.1の新機能
フィジカル・スタンバイのリアルタイム問合せ機能
この機能により、REDO Applyがアクティブの間、フィジカル・スタンバイ・データベースを問合せできます。
関連項目: オープンされたフィジカル・スタンバイ・データベースが、どのようにプライマリ・データベースからREDOデータを受信し、適用し続けるかの詳細は、9.2項「フィジカル・スタンバイ・データベースのオープン」を参照してください。 |
スナップショット・スタンバイ
スナップショット・スタンバイ・データベースは、プライマリ・データベースに完全なデータ保護を提供する新しいタイプの更新可能なスタンバイ・データベースです。
フィジカル・スタンバイを使用した書込み欠落の検出
「書込み欠落」はデータベースに悪影響を及ぼす重大なデータ破損形式です。永続記憶域に書き込まれなかったにもかかわらず、I/Oサブシステムがデータベースへのブロック書込みの完了を通知する場合に発生します。この機能によって、フィジカル・スタンバイ・データベースは、プライマリ・データベースまたはフィジカル・スタンバイ・データベースへの書込み欠落を検出することができます。
関連項目: 書込みの欠落の例については、13.6項「プライマリ・データベースでの書込みの欠落エラーからのリカバリ」、書込みの欠落の検出を有効化する方法については、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。 |
Recovery Manager(RMAN)との統合の強化
カタログ使用時に、すべてのプライマリおよびフィジカル・スタンバイ・データベースでのバックアップとリカバリ操作を簡素化するために、RMANのヘルプにいくつかの拡張が行われています。また、RMANのDUPLICATE
コマンドを使用することで、事前にデータベースのバックアップを行わなくても、ネットワーク経由でフィジカル・スタンバイ・データベースを作成することができます。
SQL Applyに固有の11.1の新機能
オブジェクト・データベースおよびPL/SQLパッケージの追加サポート
CLOB
として格納されるXML
DBMS_RLS
(行レベル・セキュリティまたは仮想プライベート・データベース)
DBMS_FGA
透過的データ暗号化(TDE)のサポート
Data Guard SQL Applyを使用すると、透過的データ暗号化を有効に設定したプライマリ・データベースにデータ保護を提供できます。これにより、ロジカル・スタンバイ・データベースは、高度なセキュリティ要件を伴うアプリケーションにデータ保護を提供できるようになります。
Data Guard SQL Applyパラメータの動的な設定
SQL Applyを再起動せずに、特定のSQL Applyパラメータを構成できるようになります。DBMS_LOGSTDBY.APPLY_SET
パッケージを使用して、初期化パラメータを動的に設定し、管理性、稼働時間、ロジカル・スタンバイ構成の自動化を向上させることができます。
さらに、APPLY_SET
およびAPPLY_UNSET
サブプログラムには、2つの新しいパラメータ、LOG_AUTO_DEL_RETENTION_TARGET
およびEVENT_LOG_DEST
が含まれます。
関連項目: 『Oracle Database PL/SQLパッケージおよびタイプ・リファレンス』のDBMS_LOGSTDBY PL/SQLパッケージに関する項を参照してください。 |
ロジカル・スタンバイ・データベースでのOracle RACスイッチオーバーのサポート強化
プライマリ・データベースまたはスタンバイ・データベースがOracle RACを使用しているロジカル・スタンバイ・データベースにスイッチオーバーする場合、どのインスタンスもシャットダウンせずに、プライマリまたはロジカル・スタンバイ・データベースでSWITCHOVER
コマンドを使用できます。
Oracle Data Guard SQL ApplyでのDDL処理の強化
SQL Applyは、パラレルDDLをパラレルに(パラレル・サーバーの可用性に基づいて)実行できます。
スタンバイ・データベースでスケジューラのジョブを作成するためのPL/SQL DBMS_SCHEDULERパッケージの使用
必要なとき(たとえばデータベースがプライマリ、スタンバイ、またはその両方の場合)に実行できるように、スケジューラのジョブをPL/SQL DBMS_SCHEDULER
パッケージを使用してスタンバイ・データベースで作成し、適切なデータベース・ロールと関連付けることができます。