この章では、Enterprise Manager Grid Controlを使用して、エンタープライズ内のデプロイメントを簡単に監視および管理する方法について説明します。内容は次のとおりです。
Grid Controlを使用して、エンタープライズ全体における個々のホスト、データベース、アプリケーション・サーバー、クライアントおよびOracle以外のシステムについて、管理リポジトリに格納されている構成情報を表示、保存、追跡、比較および検索します。
Enterprise Managerは、管理エージェントが稼働するホスト上のすべてのホストおよび管理対象のターゲットに関する構成情報を収集します。エージェントは、HTTPまたはHTTPSで管理リポジトリに定期的に構成情報を送信し、Grid Controlを介してエンタープライズ全体の最新の構成情報が参照できるようにします。
表4-1 各種ターゲットの収集済構成
ターゲット・タイプ | 収集済構成情報 |
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ホスト脚注1 |
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データベース脚注2 |
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アプリケーション・サーバー |
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クライアント脚注3 |
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Oracle以外のシステム |
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エンタープライズ脚注4 |
ハードウェア、オペレーティング・システム、Oracleデータベース、Oracle Application ServersおよびOracle Collaboration Suiteのサマリー・ビュー 表4-3にこれらのサマリー・ビューの詳細が示されています。 |
脚注1 ホスト構成情報のデフォルト収集時間は24時間です。
脚注2 データベース構成情報のデフォルト収集時間は12時間です。
脚注3 詳細は、この章の「クライアント構成」を参照してください。
脚注4 詳細は、この章の「エンタープライズ構成」を参照してください。
Grid Controlを使用すると、ホスト、データベース、アプリケーション、サーバー、クライアントなどのターゲットに次の操作を実行できます。
最後に収集および保存された構成の表示
構成ファイルまたは管理リポジトリへの構成の保存
収集済構成データの検索
構成変更の履歴の表示
構成の比較(詳細は、この章の「構成の比較」を参照)
表4-2 各種ターゲットの構成の表示
ターゲット・タイプ | 構成を表示する手順 |
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ホスト |
そのホストのホームページで、「構成」サブタブをクリックします。WebLogic ServerなどのFusion Middlewareターゲットの場合、「WebLogic Serverホーム」ページに移動し、メニューから「構成」→「最新収集」オプションを選択します。 |
データベース |
データベースのホームページで、「メンテナンス」サブタブをクリックし、次に「ソフトウェアのデプロイ」、「構成」で「最新の構成情報」リンクをクリックします。 |
アプリケーション・サーバー |
アプリケーション・サーバーのホームページで、「管理」サブタブをクリックし、次に「構成」で「最新の構成情報」リンクをクリックします。 |
クライアント |
「デプロイ」タブで、「クライアント構成」リンクをクリックします。 |
エンタープライズ |
「デプロイ」タブで、「デプロイ・サマリー」にある「表示」リストからサマリー・ビューを選択します。サマリー・ビューは、表4-3を参照してください。 |
Grid Controlにより、同じターゲット・タイプの構成間で比較を実行するツールが提供されます。これらの比較は、2つ以上の構成間の相違を迅速に検出する場合に有効です。
次のような比較ができます。
管理リポジトリの2つの構成
2つの保存済構成ファイル
1つの構成対複数の構成
管理リポジトリの構成対保存済構成ファイル
2つのターゲット構成を比較する場合、収集された構成情報のすべてのカテゴリが考慮されます。Grid Controlでは、比較結果のサマリーは表形式で表されます。詳細情報はその結果のサマリーからドリルダウンして入手できます。
複数の構成の比較は、Enterprise Managerのジョブ・システムを使用して実行する必要があります。
関連項目: Grid Controlのオンライン・ヘルプの比較に関するトピック |
Grid Controlでは、エンタープライズの複数のサマリー・ビューが提供され、これをホストおよびターゲット構成の状態の監視に使用できます。エンタープライズとはホストとターゲットの完全セットのことを指します。これらのホストとターゲットの構成情報は、管理リポジトリに格納されます。エンタープライズ構成情報を、事前定義済またはカスタム検索を使用して検索することもできます。
表4-3に、利用可能なエンタープライズ構成のサマリー・ビューを示します。
表4-3 エンタープライズ構成のサマリー・ビュー
サマリー・ビュー | 説明 |
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様々なホスト・ハードウェア、および各ハードウェア・タイプを使用するホストの数が示されます。 サマリー・ビューからは次のものにドリルダウンできます。
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オペレーティング・システム |
様々なオペレーティング・システム、各タイプを実行している稼働のホストの数、およびオペレーティング・システム・パッチが適用されたかどうかが示されます。 サマリー・ビューからは次のものにドリルダウンできます。
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データベースおよびFusion Middlewareのインストール |
OracleデータベースまたはWebLogic Serverのそれぞれの様々なバージョン、および各バージョンのターゲットおよびインストールの数が示されます。 各データベースまたはWebLogic Serverのバージョンのサマリー・ビューでは、次のものにドリルダウンできます。
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Collaboration Suiteのインストール |
Oracle Collaboration Suiteのコンポーネントの様々なバージョン、各バージョンのターゲットおよびインストールの数、および個別パッチがOPatchによって適用されたかどうかが示されます。 サマリー・ビューでは、Oracle Collaboration Suiteのコンポーネントの詳細にドリルダウンできます。 |
関連項目: Grid Controlのオンライン・ヘルプのエンタープライズ構成の参照に関するトピック |
次のように、エンタープライズ構成を検索して、エンタープライズに関する特定の質問に対する回答を確認する必要がある場合があります。
オペレーティング・システム・パッチ105181-05がインストールされていないホスト
Oracle9iリリース1(9.0.1)データベースがインストールされているホストおよびそれらのデータベースがインストールされているOracleホーム・ディレクトリ
エンタープライズ構成検索では、指定した検索基準を満たす構成情報を検出するために管理リポジトリ内のエンタープライズ構成ビューが問い合されます。
Enterprise Managerでは、次の2つのタイプのエンタープライズ構成検索を実行できます。
これらの検索は事前定義されていますが、各検索の検索基準が変更可能なため、特定の検索問合せを作成できるという柔軟性があります。検索基準に基づいて、Grid Controlでは、管理リポジトリ内のエンタープライズ構成ビューを検索するSQL問合せを作成します。
Enterprise Managerでは、次の事前定義済エンタープライズ構成検索を実行できます。
OracleホームにインストールされたOracle製品、パッチ・セットおよび個別パッチの検索
ホスト・オペレーティング・システムに登録されたソフトウェアの検索
初期化パラメータ設定および設定変更の検索
表領域、データファイル、推奨データベース設定の検索
データベース機能の使用方法の検索
ホストのオペレーティング・システム・コンポーネント、パッチ、プロパティ設定およびプロパティの変更の検索
ホストのオペレーティング・システムおよびハードウェアのサマリーの検索
ホストのファイル・システムおよびネットワーク・インタフェース・カード構成の検索
ポリシー・ライブラリの検索
VMサーバー構成データの検索
アプリケーション・サーバー構成データの検索
WebLogic管理対象サーバー構成データの検索
ユーザー定義検索では、管理リポジトリ内のエンタープライズ構成ビューを検索するSQL問合せを指定します。SQL問合せを作成する必要がない場合は、事前定義済検索のいずれかを選択し、検索基準を変更した後、「SQLを使用した検索」をクリックすると、実行されるSQL問合せを表示できます。この問合せは、実行して結果を表示した後、変更して、目的の結果が戻されるまで繰り返し実行できます。
関連項目: Grid Controlのオンライン・ヘルプのエンタープライズ構成の検索に関するトピック |
Enterprise Managerは、ターゲットの構成情報を収集し、Oracle管理リポジトリに格納します。構成の変更履歴を追跡できると、問題を診断する際に便利です。各ターゲットは、相互に通信するため、あるターゲットの変更は別の関連ターゲットの動作に影響を与える可能性があります。影響を与えた可能性のある変更に関するヒントを入手できるため、問題を診断する際に変更履歴を追跡できることは非常に重要です。したがって、複数の関連ターゲットの変更履歴を確認できることが重要です。「エンタープライズ構成履歴」オプションを使用すると、特定の期間における複数の関連ターゲットの履歴がマージされて表示されます。たとえば、あるプロパティの現在の値が別のプロパティの値に影響していると思われる場合、履歴データを確認すれば、その値が最後に変更された日時と、その時点で変更された他の値がわかります。
クライアントとは、エンド・ユーザー、すなわち顧客のシステム(独自のITインフラストラクチャには含まれないシステム)を表します。クライアント構成とは、エンド・ユーザーのシステムに関して収集された構成データを表します。この構成は、Grid Controlを使用して管理する内部デプロイメントとは異なります。
クライアント・システム・アナライザ(CSA)アプリケーションにより、Webサーバー管理者は、エンド・ユーザー・システムからのデータを収集および分析できます。クライアント・データは、アプレットにより収集され、診断されてCSAアプリケーションに戻されます。Grid ControlにプレインストールされているCSAアプリケーションを使用することも、CSAをWebサーバーに単独でデプロイすることもできます。
プレインストールされたアプリケーションを使用すると、別個にWebサーバーを設定することなくクライアント・データを収集できます。管理エージェントは、クライアント・データの収集、分析およびそのデータの管理リポジトリへのアップロードを実行します。エンド・ユーザーは、Grid Controlにアクセスするためのログイン資格証明が必要ありません。次のような使用例が想定されています。
ヘルプ・デスクをコールするエンド・ユーザーは、即時利用可能なCSAページにナビゲートしてシステム情報をアップロードするよう要求されることがあります。テクニカル・サポートは、このシステム情報を確認してソリューションを提供できます。
クライアントのアプリケーションを、Grid Controlのアプリケーションのクライアント・システム・アナライザにシステム情報のアップロード・リンクを提供するように変更できます。このリンクは、クライアント・システム・アナライザを実行した後に戻るためのURLなど、特定の構成パラメータを指定できます。
クライアントのアプリケーションを、ログイン時またはログイン以外の時点で、そのユーザーをGrid Controlページのクライアント・システム・アナライザにリダイレクトするよう変更できます。収集された情報をGrid Control内から使用して、クライアント・システムに関する様々な情報を入手できます。例には、最も一般的なブラウザのバージョン、あるいは必要なオペレーティング・システム・パッチを適用していないシステムまたはRAMが不足しているシステムがあります。
CSAは、単独でJ2EE対応Webサーバーにデプロイできます。このデプロイメント計画は、次の場合に適切です。
CSAにアクセスするクライアントが、たとえばファイアウォールが原因でGrid Controlのデプロイメントにアクセスできないかアクセスが制限される場合
たとえば次のように、CSAアプリケーションをさらにカスタマイズする必要がある場合
CSAアプリケーションにカスタム・ルールを提供して、システムが一定の制約を満たしているかどうかについてエンド・ユーザーがすぐにフィードバックするようにします。
アプレットの動作を変更して、追加情報を収集するか、エンド・ユーザーに追加または別のインタフェースを提示するようにします。
管理サービスWebサーバーの負荷を削減する必要があります。
プレインストールおよびスタンドアロンの両タイプのデプロイメントでは、クライアント構成収集タグと呼ばれる構成可能な識別子がすべてのクライアント構成収集に割り当てられます。クライアント構成データがクライアント構成収集アプレットによって収集され、CSAアプリケーションによって指定されたWebサーバーのディレクトリに書き込まれた後、クライアント構成データを収集して管理リポジトリにアップロードするようGrid Controlを構成する必要があります。
関連項目: Grid Controlのオンライン・ヘルプのクライアント構成の参照に関するトピックGrid Controlのオンライン・ヘルプのクライアント構成の収集のためのEnterprise Managerの構成に関するトピック |
Grid Controlの各構成ページへアクセスするには、「デプロイ」タブをクリックして「構成」セクションの下にある次のリンクをクリックします。
検索
構成の比較
複数の構成と比較(ジョブ)
保存された構成を表示
構成のインポート
ホスト構成収集時の問題
ホスト構成のリフレッシュ
構成履歴
これらのリンクによって、様々なターゲットの構成を検索、表示および比較するページに移動します。
Enterprise Manager Configuration Change Consoleでは、ベスト・プラクティス・ポリシーがサポートされており、設定済のIT統制に対するユーザー・アクションの検証を可能にすることで、ITインフラストラクチャへの未承認の変更および制御されていないアクセスの削減を図ることができます。重要なアプリケーションおよびインフラストラクチャ・コンポーネントの変更を自動監視し、検出された変更と予定されていた変更を比較することで、アクティビティの追跡、レポートの生成、アラート通知のトリガーおよびポリシー違反の特定が可能になります。 Configuration Change ConsoleをITコンプライアンスの取組みの一環として使用すると、企業のベスト・プラクティス・ポリシーに対する変更の監視、管理および監査により重要なシステムをサポートし、内部統制への確実な順守を促進できます。この製品は、IT統制の検証およびコンプライアンスに重点を置いていますが、次のようなその他の重要なITの運用もサポートしています。
変更の監視: インフラストラクチャ内の変更を可視化し、チケットが生成された変更を実際の変更に関連付けます。
トラブルシューティング/調査: 停止または問題の原因となった可能性のある変更を特定し、その予防措置を取ります。重要な構成ファイルをアーカイブして、問題のある変更をロールバックすることもできます。
IT全体の管理: 重要なアプリケーションのCPU使用率やディスク使用率などの傾向を特定し、システムの停止が発生する前に潜在的な問題を管理者に通知します。
どのインフラストラクチャ・コンポーネントを監視するかはユーザーが選択します。Configuration Change Consoleでは、選択されたコンポーネントのデータが、ユーザーによって定義されたデータ収集ルールに従って収集され、そのルールに従い通知が生成されます。また、そのインフラストラクチャ・コンポーネントに対して行われた変更のデータベースが管理されます。そのデータは、コンプライアンスまたは調査の目的で検索および分析できます。変更情報を時間に基づく情報モデルで表示し、変更内容や変更日時を正確に追跡できます。ユーザー・インタフェースには、グラフィカルな視覚化ツール、および特定のデバイス、時間間隔およびイベントにドリルダウンする機能が備わっています。このソリューションでは、パッケージとアドホックの両方のレポート作成機能が提供されます。詳細は、Configuration Change Consoleのユーザーズ・ガイドを参照してください。
Enterprise Manager Application Configuration Consoleは、インフラストラクチャの構成データを新しい方法で表示および管理するための構成管理ツールです。このツールは、Java EEベースのエンタープライズ・アプリケーションの複雑なインフラストラクチャ構成を構築および管理するために必要なIT構成プロセスをライフサイクル全体にわたり自動化します。Application Configuration Consoleでは、次のことが可能です。
様々なサーバーおよびシステムからApplication Configuration Consoleに構成データをロードすることにより構成管理を集中化できます。
構成データを権限およびワークフローに合わせて配置することで効率性が向上します。構成情報は、ユーザーが理解しやすい方法で配置されて表示されます。
各環境のシステムを並べて視覚的に表示することで、大規模で複雑なインフラストラクチャを把握できます。
システム構成がプロパティ・レベルまで比較され、相違点が自動的にハイライト表示されるため、時間を節約できます。
構成に変更を加え、その後その変更をリモート・システムにプロビジョニングできます。
バージョンの自動追跡を使用して長期間にわたり変更を確認できます。バージョンを比較し、必要に応じて前のバージョンにロールバックできます。
変更がないかどうか構成を追跡することにより、構成基準を強化できます。
各企業ごとの理想的な基準に基づく新しいシステム構成を作成し、その構成を新規システムにデプロイすることで、デプロイメントを標準化できます。
他のユーザーに対して変更レポート履歴および比較をそれぞれのWebブラウザから表示することを許可できます。
追跡機能により、構成または外部リソースへの変更があった場合に、ユーザーにアラートを表示したり、電子メールを送信することができます。誤検出、つまり不要なアラートの発生を削減するために、追跡機能は、アセットおよび構成に設定されたすべてのメタデータを検討する比較機能を採用しており、比較の結果に影響を及ぼすかを判断しています。たとえば、コンテナまたは要素のメタデータCOMPARISON_IGNORE_CONTAINER_INSTANCE
がTRUE
に設定されている場合、比較機能により、このコンテナまたは要素は無視されます。
比較機能により、2つ以上のコンテナまたは構成を比較し、迅速に構成の相違を特定できます。この相違は、多くの場合アプリケーションの問題の原因となります。比較は、個々の構成またはコンテナ・ツリー全体に対して実行できます。また、アセットまたは構成を外部のリソースと比較して、Application Configuration Consoleのデータと外部リソース間の相違を確認することもできます。
比較は、簡単に再実行できるように保存できます。保存された比較には、比較されたコンテナのリストおよび無視されたプロパティのリストが含まれます。保存された比較はいつでも実行できるように、他のユーザーと共有できます。また、保存された比較は、ブラウザベースのWebレポート・インタフェースから実行することもできます。保存された比較は、定期的に実行するようにスケジュールできます。スケジュールされた比較の実行中に相違が検出されると、比較アラートが発生します。
Application Configuration Consoleによって相違が検出された場合、行われた変更をApplication Configuration Consoleに書き込むか(プロビジョニング)、または外部ファイルを再ロードして(更新)、変更を同期化する機能があります。