この付録では、削除、一時停止、取消し、再試行、再実行、実行しきい値など、深く関連する用語間のセマンティクスの違いについて説明します。次のトピックについて説明します。
ここでは、各種ジョブ操作のセマンティクスの違いをまとめます。図B-1に各種ジョブ操作を示します。
ここに、繰返しスケジュールのジョブがあります。ジョブは、毎日午前0時に実行されるようにスケジュールされ、再試行期間が1時間、実行しきい値が6時間、ブラックアウト・ウィンドウが毎日午前6時から午前0時までに設定されています。
ジョブの削除
ジョブを削除するとジョブ定義が削除されるため、その後ジョブは実行されません。たとえば、ジョブが月曜日の午前2時に削除された場合、その後にスケジュールされていたすべての実行は削除され、ジョブは火曜日も水曜日も、その後も永久に実行されません。ジョブの削除時にジョブが実行されていた場合、実行が終了してからジョブが削除されます。現在実行中のジョブを即座に停止するには、ジョブを取り消す必要があります。
ジョブの削除の詳細は、2.3項を参照してください。
ジョブの取消し
ジョブを取り消すと、実行中のジョブが停止します。現在実行中のジョブを停止するにはこの方法しかありません。取り消したジョブを後で再実行する場合は、再試行期間を指定する必要があります。
ジョブの取消しの詳細は、第6章を参照してください。
ジョブの一時停止
ジョブを一時停止すると、ジョブを再開するまで、一時停止以降にスケジュールされていたジョブの実行がスキップされます。たとえば、ジョブを月曜日の午前2時に一時停止し、火曜日の午前2時に再開した場合、火曜日の午前0時にスケジュールされていたジョブはスキップされます。
スキップされたジョブを実行するには、ジョブ再開時の再実行をtrueに設定します。これで、ジョブの再開時にスキップされたジョブが実行されます。再実行をfalseに設定すると、スキップされたジョブは無視され、実行されません。
再実行では、スキップされた1つのジョブしか実行されないので注意が必要です。繰返しスケジュールのジョブがあり、複数のジョブがスキップされた場合、再実行では最初にスキップされたジョブのみが実行され、残りのジョブはすべて無視されます。
ジョブの一時停止の詳細は、第5章を参照してください。
ジョブの再試行
ジョブの実行に失敗した場合、ジョブの再試行によって、指定された時間の経過後にもう一度ジョブが実行されます。たとえば、月曜日の午前0時のジョブが停電のために失敗した場合、そのジョブは午前1時にもう一度実行されます。その実行にも失敗した場合、ジョブは無視され、次にスケジュールされている実行時間(火曜日の午前0時)まで実行されません。
ジョブの再試行の詳細は、3.2項を参照してください。
実行しきい値
実行しきい値は、基本的にはジョブを実行するまでの制限時間です。指定された時間内にジョブが実行されない場合、そのジョブは無視され、次にスケジュールされている時間まで実行されません。たとえば、午前0時に実行予定のジョブの実行しきい値が6時間だとします。ジョブがその日の午前6時までに開始されない場合、そのジョブは無視され、次の午前0時まで実行されません。
実行しきい値の詳細は、3.2項を参照してください。
ブラックアウト・ウィンドウ
ブラックアウト・ウィンドウは、すべてのジョブを抑止する期間です。たとえば、午前6時から午前0時までに発生するように(直接、または再試行や再実行によって間接的に)スケジュールされているジョブは、ブラックアウト・ウィンドウが終了するまで抑止されます。
ブラックアウト・ウィンドウの詳細は、第4章を参照してください。
ジョブ・セマンティクス(ジョブの再試行やブラックアウト・ウィンドウなど)と関連する操作(一時停止と再開など)を組み合せるには、ジョブ・スケジュール全体の精度を確保し、競合の発生を回避するための優先順位が必要です。
たとえば、次のシナリオを考えてみます。
ブラックアウト・ウィンドウが有効な時間中に、ジョブが再実行によって再開されます。このジョブは実行されるでしょうか。
ジョブが失敗し、再試行されます。再試行にも実行しきい値は適用されるでしょうか。
ジョブが一時停止され、再実行によって再開されます。再実行にも実行しきい値は適用されるでしょうか。
表B-1にこれらの操作の優先順位を示します。
表B-1 ジョブ・スケジューラの操作の優先順位
優先順位 | 属性/操作 | 説明 |
---|---|---|
1(高) |
ブラックアウト・ウィンドウ |
ブラックアウト・ウィンドウがアクティブな時間は、すべてのジョブの実行が抑止されます。 |
2 |
再実行によるジョブの再開 |
再実行パラメータがtrueに設定されているためにジョブの実行が再開された場合、ジョブは下位の属性または操作に関係なく実行されます。 |
3 |
ジョブの再試行 |
ジョブの実行に失敗した場合、再試行は実行しきい値または(繰返し)スケジュールの終了日より優先されます。ジョブの開始後、再試行期間の前に一時停止された場合も同じルールが適用されます。 |
4 |
ジョブの実行しきい値 |
実行しきい値はジョブの最初の実行にのみ適用され、再試行(失敗による)と再実行(再開による)には適用されません。 |
5 |
ジョブの一時停止 |
ジョブの実行を一時停止した場合、ジョブを再開するまで実行を延期できます。再試行および再実行が優先されます。 |
6(低) |
スケジュールの最終日 |
ジョブが一時停止されず、実行しきい値(指定されている場合)内で発生した場合に実行されます。 |