この章では、Sun Cluster HA for iPlanet Web Server のインストールと構成手順について説明します。このデータサービスは、以前 Sun Cluster HA for Netscape HTTP と呼んでいたものです。アプリケーションから出力される一部のエラーメッセージで、Netscape という名前が使用されることがありますが、これは、iPlanet Web Server のことを示しています。
この章の内容は次のとおりです。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server は、フェイルオーバーサービスまたはスケーラブルサービスとして構成することができます。データサービス、リソースグループ、リソース、関連事項については、第 1 章「Sun Cluster データサービスの計画」および『Sun Cluster 3.0 の概念』を参照してください。
Sun Cluster 構成で複数のデータサービスを実行している場合は、任意の順序でデータサービスを設定できます。ただし、Sun Cluster HA for iPlanet Web Server が Sun Cluster HA for DNS に依存する場合を除きます。この場合は、DNS を先に設定する必要があります。詳細は、第 6 章「Sun Cluster HA for Domain Name Service (DNS) のインストールと構成」を参照してください。DNS ソフトウェアは、Solaris オペレーティング環境に含まれています。クラスタが別のサーバーから DNS サービスを取得する場合は、最初に、クラスタが DNS クライアントになるように構成してください。
インストール後は、クラスタ管理コマンドの scswitch(1M) を使用する場合を除き、手作業で iPlanet Web Server を起動したり、停止しないでください。詳細は、マニュアルページを参照してください。iPlanet Web Server は、起動後は Sun Cluster によって制御されます。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server のインストールと構成を行う前に、『Sun Cluster 3.0 ご使用にあたって』にあるワークシートをチェックリストとして使用し、以降の手順を実行してください。
インストールを開始する前に、以下の点を検討します。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server をフェイルオーバーサービスとして実行するのか、スケーラブルサービスとして実行するのか。この 2 種類のサービスについては、『Sun Cluster 3.0 の概念』を参照してください。スケーラブルサービスとして実行する場合は、以下の点を検討します。
どのノードがスケーラブルサービスをホストするのか。ほとんどの場合はノード全体にしますが、サービスをホストするノードを制限することもできます。
iPlanet Web Server インスタンスが、スティッキー IP を必要とするかどうか。これは、Load_balancing_policy のリソースプロパティ設定です。クライアント状態がメモリーに格納されるため、同じノードからの戻りトラフィックは、常に同じクラスタノードに行きます。負荷均衡ポリシーは任意のものを選択できます。詳細は、付録 A 「標準プロパティ」のリソースプロパティの表を参照してください。
Load_balancing_policy が LB_STICKY または LB_STICKY_WILD に設定されているオンラインスケーラブルサービスの場合、Load_balancing_weights を変更するには注意が必要です。サービスがオンラインのときにこれらのプロパティを変更すると、既存のクライアントとの関連がリセットされます。したがって、そのクライアントが以前にクラスタ内の別のノードからサービスを受けていても、異なるノードがそのクライアントの要求を処理します。
同様に、サービスの新しいインスタンスがクラスタで起動された場合は、既存のクライアントとの関連がリセットされることがあります。
Web サーバーのルートをどこに置くか。
Web サーバーは、別の高可用性アプリケーションにデータを提供するかどうか。データを提供する場合は、リソースの一方がもう一方よりも先に起動し停止するように、リソース間の依存性が必要になります。この依存性を設定するリソースプロパティの Resource_dependencies については、付録 A 「標準プロパティ」を参照してください。
ネットワークアドレスおよびアプリケーションリソースに使用するリソースグループ、およびそれらの間に存在する依存性を決定する。これらの依存性を設定するリソースグループプロパティの RG_dependencies については、付録 A 「標準プロパティ」を参照してください。
データサービスへのアクセスにクライアントが使用する論理ホスト名 (フェイルオーバーサービスの場合) または共有アドレス (スケーラブルサービスの場合) を指定する。
iPlanet Web Server は INADDR_ANY にバインドするように構成できるため、iPlanet Web Server の複数のインスタンス、または同じノード上の複数のデータサービスを実行する予定の場合は、各インスタンスが一意のネットワークリソースとポート番号にバインドする必要があります。
Confdir_list および Port_list プロパティのエントリを決定する。フェイルオーバーサービスの場合、この 2 つのプロパティに登録できるエントリは、それぞれ 1 つだけです。スケーラブルサービスの場合は、複数のエントリを登録できます。ただし、登録するエントリの数を同じにし、指定した順に相互にマップする必要があります。詳細は、「Sun Cluster HA for iPlanet Web Server を登録して構成する」を参照してください。
ログファイル、エラーファイル、PID ファイルをローカルファイルシステムのどこに置くかを決定する。
コンテンツをクラスタファイルシステムのどこに置くかを決定する。
表 3-1 に、インストールと構成作業について説明している節を示します。
表 3-1 作業マップ: Sun Cluster HA for iPlanet Web Server のインストールと構成
作業 |
参照箇所 |
---|---|
iPlanet Web Server のインストール | |
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server データサービスパッケージのインストール | |
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server データサービスの構成 | |
リソース拡張プロパティの構成 |
この節では、setup コマンドを使用した iPlanet Web Server のインストール手順と、それを Sun Cluster HA for iPlanet Web Server データサービスとして実行する方法について説明します。
Web サーバーに対する URL マッピングの設定では、いくつかの取り決めに従う必要があります。たとえば、CGI ディレクトリを設定する場合、可用性を維持するには、マップしたディレクトリをクラスタファイルシステムに配置する必要があります。たとえば、CGI ディレクトリを /global/pathname/cgi-bin にマップします。
CGI プログラムが、RDBMS などのバックエンドサーバーにアクセスするような状況では、そのバックエンドサーバーも Sun Cluster によって制御されていることを確認してください。そのサーバーが、Sun Cluster がサポートする RDBMS の場合には、高可用性 RDBMS パッケージのいずれか 1 つを使用します。サポートされない RDBMS の場合は、API を使用してそのサーバーを Sun Cluster の制御下に置きます。API については、『Sun Cluster 3.0 データサービス開発ガイド』を参照してください。
この手順を実行するには、構成に関する次の情報が必要になります。
サーバーのルートディレクトリ (アプリケーションバイナリへのパス)。バイナリは、ローカルディスクまたはクラスタファイルシステムにインストールできます。これらの場所にインストールした場合の長所と短所については、「アプリケーションバイナリの格納先の決定」を参照してください。
データサービスへのアクセスにクライアントが使用する論理ホスト名 (フェイルオーバーサービスの場合) または共有アドレス (スケーラブルサービスの場合)。これらのアドレスを構成し、オンラインにしなければなりません。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server サービスと別の HTTP サーバーを実行しており、これらが同じネットワークリソースを使用している場合は、それぞれ異なるポートで待機するように構成してください。異なるポートで待機するように構成しないと、2 つのサーバーの間でポートの衝突が発生します。
クラスタ内のノードでスーパーユーザーになります。
CD の iPlanet インストールディレクトリから setup コマンドを実行します。
プロンプトが表示されたら、iPlanet サーバーバイナリをインストールする場所を入力します。
インストール場所には、クラスタファイルシステム上またはローカルディスク上の場所を指定します。ローカルディスクにインストールする場合は、次の手順で指定するネットワークリソース (論理ホスト名または共有アドレス) の潜在的主ノードになるすべてのクラスタノード上で setup を実行してください。
マシン名の入力が求められたら、iPlanet サーバーが依存する論理ホスト名と適切な DNS ドメイン名を入力します。
完全な論理ホスト名は、network-resource.domainname の形式になります (例: schost-1.sun.com)。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server が正しくフェイルオーバーするには、マシン名の入力を求められたときには、常に、物理ホスト名ではなく、論理ホスト名または共有アドレスリソース名のいずれかを使用する必要があります。
問い合わせが表示されたら、「Run admin server as root」を選択します。
管理サーバー用に iPlanet インストールスクリプトによって選択されたポート番号を書き留めておいてください。後で iPlanet Web Server のインスタンスを構成するときに、このデフォルト値を使用する場合があります。デフォルト値を使用しない場合は、別のポート番号を指定することもできます。
問い合わせが表示されたら、サーバー管理者 ID とパスワードを入力します。
システムのガイドラインに従います。
管理サーバーが起動されることを示すメッセージが表示されたら、構成の準備は完了です。
Web サーバーを構成するには、「iPlanet Web Server を構成する」を参照してください。
この手順では、iPlanet Web Server のインスタンスを構成し、高可用性を実現する方法について説明します。この手順では、Web ブラウザを使用します。
手順を実行する前に、次の点に注意します。
開始する前に、クラスタが存在するネットワークにアクセスできるマシン上に Netscape ブラウザがインストールされていることを確認してください。ブラウザは、クラスタノードまたはクラスタの管理ワークステーションにインストールできます。
構成ファイルは、ローカルファイルシステムまたはクラスタファイルシステムのいずれかに配置できます。
サービスが開始された後、セキュアインスタンスを実行している場合は、インストールされた証明書を各クラスタノードからインストールする必要があります。このインストールには、各ノードでの管理コンソールの実行が含まれます。したがって、クラスタに n1、n2、n3、n4 のノードがある場合には、インストール手順は次のようになります。
ノード n1 で管理サーバーを起動します。
Web ブラウザから、次のように管理サーバーに接続します。http://n1.domain:port (例: http://n1.eng.sun.com:8888 または、管理サーバーポートとして指定したポート)。通常、ポートは 8888 です。
証明書をインストールします。
ノード n1 の管理サーバーを停止し、ノード n2 から管理サーバーを起動します。
Web ブラウザから、次のように新しい管理サーバーに接続します。http://n2.domain:port (例: http://n2.eng.sun.com:8888).
この手順を n3 と n4 のノードに対して繰り返します。
管理ワークステーションまたはクラスタノードから、Netscape ブラウザを起動します。
クラスタノードのいずれか 1 つで、https-admserv ディレクトリに移動し、iPlanet 管理サーバーを起動します。
# cd https-admserv # ./start |
iPlanet 管理サーバーの URL を Netscape ブラウザに入力します。
URL は、サーバーのインストール手順 (手順 4) の iPlanet インストールスクリプトによって確立される物理ホスト名とポート番号で構成されます (例: n1.eng.sun.com:8888)。手順 2 を実行すると、./start コマンドで管理 URL が表示されます。
プロンプトが表示されたら、サーバーのインストール手順 (手順 6) で指定したユーザー ID とパスワードを使用し、iPlanet 管理サーバーインタフェースにログインします。
作成された iPlanet Web Server インスタンスの管理を開始します。別のインスタンスが必要な場合は、ここで作成します。
管理グラフィカルインタフェースでは、iPlanet サーバー構成の詳細を含むフォームが提供されます。以下の項目を除き、このフォームのデフォルト値のまま使用できます。
すべてのノードのローカルディスクにディレクトリを作成し、iPlanet Web Server が管理するログ、エラーファイル、PID ファイルを保持できるようにします。
iPlanet が正しく動作するためには、これらのファイルが、クラスタファイルシステムではなく、クラスタ内の各ノードに配置されている必要があります。
クラスタ内のすべてのノードと同じローカルディスク上の場所を選択します。ディレクトリを作成する場合は、mkdir -p コマンドを使用します。このディレクトリの所有者は、nobody にします。
例:
phys-schost-1# mkdir -p /var/pathname/http_instance/logs/ |
ログファイルまたは PID ファイルのサイズが大きくなる可能性がある場合は、これらのファイルがディレクトリを圧迫するため、/var 下のディレクトリに配置しないでください。サイズの大きなファイルを扱うのに十分な空き容量のあるパーティションにディレクトリを作成してください。
magnus.conf ファイルの ErrorLog と PidLog エントリに、前の手順で作成したディレクトリを登録し、管理者のインタフェースからその変更を同期させます。
magnus.conf ファイルは、エラーファイルおよび PID ファイルの場所を指定します。このファイルを編集し、手順 5 で作成したディレクトリに場所を変更してください。magnus.conf ファイルは、iPlanet サーバーインスタンスの config ディレクトリにあります。インスタンスディレクトリがローカルファイルシステムにある場合は、magnus.conf ファイルを各ノードで変更する必要があります。
次のようにエントリを変更します。
# Current ErrorLog and PidLog entries ErrorLog /global/data/netscape/https-schost-1/logs/error PidLog /global/data/netscape/https-insecure-schost-1/logs/pid # New entries ErrorLog /var/pathname/http_instance/logs/error PidLog /var/pathname/http_instance/logs/pid |
管理者のインタフェースが変更を検知すると、次の警告メッセージが表示されます。
Warning: Manual edits not loaded Some configuration files have been edited by hand. Use the Apply button on the upper right side of the screen to load the latest configuration files. |
問い合わせが表示されたら、「Apply」をクリックします。
管理者のインタフェースに、次のメッセージが表示されます。
Configuration files have been edited by hand. Use this button to load the latest configuration files. |
問い合わせが表示されたら、「Load Configuration Files」をクリックします。
管理者のインタフェースを使用し、アクセスログファイルの場所を設定します。
管理グラフィカルインタフェースで、「Preferences」タブをクリックし、サイドバーの「Logging Options」をクリックします。GUI にアクセスログのパラメータを構成するためのフォームが表示されます。
手順 5 で作成したディレクトリに配置するようにログファイルを変更します。
例 :
Log File: /var/pathname/http_instance/logs/access |
「Save」をクリックして変更を保存します。
「Save and Apply」をクリックしないでください。iPlanet Web Server が起動します。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server のデータサービスパッケージが、Sun Cluster データサービス CD からインストールされていない場合には、「Sun Cluster HA for iPlanet Web Server パッケージのインストール」へ進みます。パッケージがインストールされている場合は、「Sun Cluster HA for iPlanet Web Server の登録と構成」へ進みます。
scinstall(1M) ユーティリィティにより、Sun Cluster HA for iPlanet Web Server データサービスパッケージ (SUNWschtt) をクラスタにインストールします。対話型の scinstall を使用すると、Sun Cluster データサービス CD から特定のデータサービスパッケージをインストールすることができます。また、scinstall に -s オプションを指定して非対話型で使用することで、CD 内のすべてのデータサービスパッケージをインストールすることもできます。scinstall は、以下の手順に従って対話型で使用することをお勧めします。
データサービスパッケージは、Sun Cluster の初期インストール時にインストールされます。インストールされていない場合は、ここで説明する手順を使用してインストールしてください。
この手順を実行するには、Sun Cluster データサービス CD が必要です。Sun Cluster HA for iPlanet Web Server を実行するすべてのクラスタノードで、この手順を実行してください。
データサービス CD を CD-ROM ドライブに挿入します。
オプションは指定せずに、scinstall を実行します。
scinstall が対話型モードで起動します。
「Add support for new data service to this cluster node.」メニューオプションを選択します。
CD 内にある任意のデータサービスのソフトウェアを読み込むことができます。
scinstall を終了し、ドライブから CD を取り出します。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server を登録し、データサービス用にクラスタを構成するには、「Sun Cluster HA for iPlanet Web Server の登録と構成」を参照してください。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server は、フェイルオーバーサービスまたはスケーラブルサービスとして構成できます。iPlanet をスケーラブルサービスとして構成する場合には、追加の手順を実行する必要があります。この節の最初の手順では、これらの追加手順の先頭に「スケーラブルサービスのみ」と示しています。フェイルオーバーサービスおよびスケーラブルサービスの個々の例が、この節の後半にあります。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server データサービスを登録して構成するには、Sun Management Center のクラスタモジュールを使用するか、以下の手順を使用します。
この手順を実行するには、次の情報が必要になります。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server のリソースタイプの名前。この名前は、SUNW.iws です。
データサービスをマスターするクラスタノードの名前。フェイルオーバーサービスの場合、同時にデータサービスをマスターできるノードは 1 つだけです。
データサービスへのアクセスにクライアントが使用する論理ホスト名 (フェイルオーバーサービスの場合) または共有アドレス (スケーラブルサービスの場合)。
iPlanet バイナリへのパス。バイナリは、ローカルディスクまたはクラスタファイルシステムにインストールできます。バイナリをこれらの場所にインストールした場合の長所と短所については、「アプリケーションバイナリの格納先の決定」を参照してください。
iPlanet アプリケーションリソースの Network_resources_used の設定は、iPlanet Web Server によって使用される一連の IP アドレスを決定します。また、リソースの Port_list の設定は、iPlanet Web Server で使用されるポート番号のリストを決定します。障害モニターでは、iPlanet Web Server のデーモンが IP とポートのすべての組み合わせで待機することを想定します。ポート 80 以外の別のポート番号で待機するように iPlanet Web Server の magnus.conf ファイルをカスタマイズしている場合は、magnus.conf ファイルに、IP アドレスとポートの可能なすべての組み合わせが含まれている必要があります。障害モニターは、これらの組み合わせすべてを検証し、iPlanet Web Server が IP アドレスとポートの特定の組み合わせで待機していない場合にモニターの起動に失敗します。iPlanet Web Server が IP アドレスとポートの組み合わせの一部を提供しない場合は、それを行う別のインスタンスに分割する必要があります。
この手順は、任意のクラスタメンバーで実行します。
クラスタ内のノードでスーパーユーザーになります。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server のリソースタイプを登録します。
# scrgadm -a -t SUNW.iws |
データサービスのリソースタイプを追加します。
データサービス用に事前に定儀したリソースタイプ名を指定します。
ネットワークリソースおよびアプリケーションリソースを保持するフェイルオーバーリソースグループを作成します。
フェイルオーバーサービスの場合には、このリソースグループはアプリケーションリソースも保持します。
必要に応じて、-h オプションを指定し、データサービスを実行できる一群のノードを選択することもできます。
# scrgadm -a -g fo-resource-group-name [-h nodelist] |
フェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。任意の名前を指定できますが、クラスタ内で一意のリソースグループにする必要があります。
潜在的マスターを識別する物理ノード名または ID をコンマで区切って指定します (任意)。フェイルオーバー時は、この順序で主ノードが決まります。
-h を使用してノードリストの順序を指定します。クラスタ内のすべてのノードが潜在的マスターの場合、-h オプションを使用する必要はありません。
使用しているすべてのネットワークアドレスが、ネームサービスデータベースに追加されていることを確認します。
Sun Cluster のインストールの一部として、この確認を行います。詳細は、『Sun Cluster 3.0 ソフトウェアのインストール』の計画に関する章を参照してください。
ネームサービスの検索が原因で障害が発生するのを防ぐために、サーバーおよびクライアントの /etc/hosts ファイルに、すべての論理ホスト名と共有アドレスが登録されていることを確認してください。サーバーの /etc/nsswitch.conf のネームサービスマッピングは、NIS または NIS+ にアクセスする前に、最初にローカルファイルを検査するように構成してください。
ネットワークリソース (論理ホスト名または共有アドレス) をフェイルオーバーリソースグループに追加します。
# scrgadm -a {-S | -L} -g fo-resource-group-name ¥ -l network-resource,... [-j resource-name] ¥ [-X auxnodelist=nodeid, ...] [-n network-interface-id-list] |
共有アドレスリソースには -S を、論理ホスト名リソースには -L を使用します。
フェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。
追加するネットワークリソースをコンマで区切って指定します。-j オプションを使用してリソースの名前を指定できます。このオプションを指定しない場合は、リストの最初のエントリにあるネットワークリソースの名前になります。
リソースの名前を指定します (省略可能)。リソース名を指定しない場合、ネットワークリソース名は、デフォルトで -l オプションで最初に指定した名前になります。
共有アドレスをホストできるクラスタノード (ただし、フェイルオーバー時に主ノードとして使用されない) を識別する物理ノード ID をコンマで区切って指定します (任意)。このオプションを指定した場合は、これらのノードは、リソースグループの nodelist で指定されるノードと相互に排他的になります。
各ノードの NAFO グループをコンマで区切って指定します (省略可能)。リソースグループの nodelist 内のすべてのノードが、network-interface-list に含まれている必要があります。このオプションを指定しない場合は、scrgadm は、nodelist 内の各ノードの hostname リストによって識別されるサブネット上からネットアダプタを見つけようとします。
スケーラブルサービスのみ: クラスタ内の希望するすべてのノードで実行するスケーラブルリソースグループを作成します。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server をフェイルオーバーデータサービスとして実行している場合は、手順 7 へ進んでください。
データサービスアプリケーションリソースを保持するリソースグループを作成します。主ノードの最大数と希望数、およびこのリソースグループと 手順 3 で作成したフェイルオーバーリソースグループとの間の依存性について指定する必要があります。この依存性によって、フェイルオーバー時に、Resource Group Manager (RGM) は、ネットワークリソースに依存する任意のデータサービスが開始される前に、ネットワークリソースを開始できます。
# scrgadm -a -g resource-group-name ¥ -y Maximum_primaries=m -y Desired_primaries=n ¥-y RG_dependencies=resource-group-name |
このリソースグループに許可するアクティブ主ノードの最大数を指定します。このプロパティに値を指定しない場合は、デフォルトの 1 になります。
このリソースグループに許可するアクティブ主ノードの希望数を指定します。このプロパティに値を指定しない場合は、デフォルトの 1 になります。
作成されたリソースグループが依存する、共有アドレスリソースを含むリソースグループを指定します。
スケーラブルサービスのみ: スケーラブルリソースグループにアプリケーションリソースを作成します。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server をフェイルオーバーデータサービスとして実行している場合は、手順 8 へ進んでください。この手順を繰り返し、複数のアプリケーションリソース (セキュアバージョンや非セキュアバージョンなど) を同じリソースグループに追加します。
必要に応じて、データサービスの負荷均衡を設定します。負荷均衡を設定するには、標準リソースプロパティの Load_balancing_policy と Load_balancing_weights を使用します。これらのプロパティの詳細については、付録 A 「標準プロパティ」を参照してください。また、この節で説明している例も参照してください。
# scrgadm -a -j resource-name -g ss-resource-group-name ¥ -t resource-type-name -y Network_resources_used= network-resource, ... ¥ -y Port_list=port-number/protocol, ... -y Scalable=True ¥ -x Confdir_list=config-directory, ... |
追加するリソースの名前を指定します。
リソースが配置されるスケーラブルリソースグループの名前を指定します。
追加するリソースの種類を指定します。
データサービスが使用する共有アドレスを識別するネットワークリソース名をコンマで区切って指定します。
使用するポート番号とプロトコルをコンマで区切って指定します (例: 80/tcp, 81/tcp)。
スケーラブルサービスに必要なブール値を指定します。
iPlanet 構成ファイルの位置をコンマで区切って指定します。iPlanet Web Server で使用する Sun Cluster HA には必須の拡張プロパティです。
1 対 1 のマッピングは、Confdir_List と Port_List に適用されます。一方のリストに含まれる各値は、指定した順に、もう一方のリストの値と一致する必要があります。
フェイルオーバーサービスのみ: フェイルオーバーリソースグループにアプリケーションリソースを作成します。
ここで説明する手順は、Sun Cluster HA for iPlanet Web Server をフェイルオーバーデータサービスとして実行している場合にのみ実行してください。Sun Cluster HA for iPlanet Web Server をスケーラブルサービスとして実行している場合は、前述の 手順 6 および 手順 7 を実行し、手順 10 へ進んでください。この手順を繰り返し、複数のアプリケーションリソース (セキュアバージョンや非セキュアバージョンなど) を追加できます。
# scrgadm -a -j resource-name -g fo-resource-group-name ¥ -t resource-type-name -y Network_resources_used=logical-hostname-list ¥ -y Port_list=port-number/protocol ¥ -x Confdir_list=config-directory |
追加するリソースの名前を指定します。
リソースが配置されるフェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。
追加するリソースの種類を指定します。
データサービスが使用する論理ホストを識別するネットワークリソースをコンマで区切って指定します。
使用するポート番号とプロトコルを指定します (例: 80/tcp)。Port_list と Confdir_list 間の 1 対 1 のマッピング規則により、フェイルオーバーサービスのための Port_list には、エントリを 1 つだけ登録します。
iPlanet 構成ファイルの場所を指定します。フェイルオーバーサービスのための Confdir_list には、エントリを 1 つだけ登録します。config-directory には、config という名前のディレクトリが含まれている必要があります。これは、必須拡張プロパティです。
必要に応じて、iPlanet データサービスに属する拡張プロパティをさらに設定し、デフォルト値を上書きできます。追加の拡張プロパティについては、表 3-2 を参照してください。
フェイルオーバーリソースグループをオンラインにします。
# scswitch -Z -g fo-resource-group-name |
ネットワークリソースと障害モニターを有効に設定し、リソースグループを管理状態に切り替え、オンラインにします。
フェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。
スケーラブルサービスのみ: スケーラブルリソースグループをオンラインにします。
# scswitch -Z -g ss-resource-group-name |
リソースとモニターを有効に設定し、リソースグループを管理状態にし、オンラインにします。
スケーラブルリソースグループの名前を指定します。
次に、スケーラブル iPlanet サービスを登録する方法を示します。
Cluster Information Node names: phys-schost-1, phys-schost-2 Shared address: schost-1 Resource groups: sa-schost-1 (共有アドレスの場合), iws-schost-1 (スケーラブル iPlanet アプリケーションリソースの場合) Resources: schost-1 (共有アドレス), iplanet-insecure (非セキュア iPlanet アプリケーションリソース). iplanet-secure (セキュア iPlanet アプリケーションリソース) (フェイルオーバーリソースグループを追加して共有アドレスを含む) # scrgadm -a -g sa-schost-1 (共有アドレスリソースをフェイルオーバーリソースグループに追加する) # scrgadm -a -S -g sa-schost-1 -l schost-1 (スケーラブルリソースグループを追加する) # scrgadm -a -g iws-schost-1 -y Maximum_primaries=2 ¥ -y Desired_primaries=2 -y RG_dependencies=sa-schost-1 (iPlanet リソースタイプを登録する) # scrgadm -a -t SUNW.iws (デフォルトの負荷均衡で、非セキュア iPlanet インスタンスを追加する) # scrgadm -a -j iplanet-insecure -g iws-schost-1 ¥ -t SUNW.iws ¥ -x Confdir_List=/opt/iplanet/https-iplanet-insecure ¥ -y Scalable=True -y Network_resources_used=schost-1 ¥ -y Port_list=80/tcp (スティッキー IP 負荷均衡で、セキュア iPlanet インスタンスを追加する) # scrgadm -a -j iplanet-secure -g iws-schost-1 ¥ -t SUNW.iws ¥ -x Confdir_List=/opt/iplanet/https-iplanet-secure ¥ -y Scalable=True -y Network_resources_used=schost-1 ¥ -y Port_list=443/tcp -y Load_balancing_policy=LB_STICKY ¥ -y Load_balancing_weight=40@1,60@2 (フェイルオーバーリソースグループをオンラインにする) # scswitch -Z -g sa-schost-1 (スケーラブルリソースグループをオンラインにする) # scswitch -Z -g iws-schost-1 |
次に、フェイルオーバー iPlanet サービスを 2 ノードクラスタで登録する例を示します。
Cluster Information Node names: phys-schost-1, phys-schost-2 Logical hostname: schost-1 Resource group: lh-schost-1 (すべてのリソースに適用), Resources: schost-1 (論理ホスト名), iplanet-insecure (非セキュア iPlanet アプリケーションリソース), iplanet-secure (セキュア iPlanet アプリケーションリソース) (リソースグループを追加してすべてのリソースを含む) # scrgadm -a -g lh-schost-1 (論理ホスト名リソースをリソースグループに追加する) # scrgadm -a -L -g lh-schost-1 -l schost-1 (iPlanet リソースタイプを登録する) # scrgadm -a -t SUNW.iws (非セキュア iPlanet アプリケーションリソースインスタンスを追加する) # scrgadm -a -j iplanet-insecure -g lh-schost-1 ¥ -t SUNW.iws -x Confdir_list=/opt/iplanet/conf ¥ -y Scalable=False -y Network_resources_used=schost-1 ¥ -y Port_list=80/tcp (セキュア iPlanet アプリケーションリソースインスタンスを追加する) # scrgadm -a -j iplanet-secure -g lh-schost-1 ¥ -t SUNW.iws ¥ -x Confdir_List=/opt/iplanet/https-iplanet-secure ¥ -y Scalable=False -y Network_resources_used=schost-1 ¥ -y Port_list=443/tcp (フェイルオーバーリソースグループをオンラインにする) # scswitch -Z -g lh-schost-1 |
リソース拡張プロパティを設定または変更するには、「Sun Cluster HA for iPlanet Web Server 拡張プロパティの構成」を参照してください。
SUNW.HAStorage リソースタイプは、HA 記憶装置とデータサービス間の動作を同期させます。Sun Cluster HA for iPlanet Web Server はスケーラブルなので、SUNW.HAStorage を設定することを強く推奨します。
このリソースタイプの詳細については、SUNW.HAStorage(5) のマニュアルページおよび 「リソースグループとディスクデバイスグループの関連性」を参照してください。設定手順については、「新しいリソース用に SUNW.HAStorage リソースタイプを設定する」を参照してください。
フェイルオーバーの場合、データサービスは強制的に Confdir_list のサイズを 1 にします。複数の構成ファイル (インスタンス) が必要な場合は、それぞれが Confdir_list エントリを 1 つ持つ複数のフェイルオーバーリソースを作成してください。
すべての Sun Cluster プロパティについての詳細は、付録 A 「標準プロパティ」を参照してください。
通常、拡張プロパティは、iPlanet Web Server リソースの作成時に、Sun Management Center のクラスタモジュールを使用するか、scrgadm -x parameter=value コマンド行を使用して構成します。または、第 9 章「データサービスリソースの管理」で説明する手順を使用し、後で構成することもできます。
拡張プロパティには、動的に更新されるものと、リソースが作成されたときにのみ更新されるものとがあります。iPlanet サーバーリソースを作成するための必須拡張プロパティは、Confdir_list のみです。表 3-2 に、iPlanet サーバーに設定できる拡張プロパティを示します。調整の列は、いつプロパティを更新できるかを示しています。
表 3-2 Sun Cluster HA for iPlanet Web Server 拡張プロパティ
名前/データタイプ |
デフォルト |
範囲 |
調整 |
説明 |
---|---|---|---|---|
Confdir_ list (文字配列) |
なし |
なし |
作成時 |
特定の iPlanet Web Server インスタンスの、サーバールートディレクトリへのポインタ。Netscape Directory Server がセキュアモードの場合、パス名に keypass という名前のファイルを含む必要があります。このファイルには、このインスタンスの起動に必要なセキュアキーパスワードが含まれています。 |
Monitor_ retry_ count (整数) |
4 |
0 - 2,147,483,641 -1 は、再試行の数が無限であることを示す。 |
任意の時点 |
Monitor_retry_interval プロパティによって指定された時間範囲内に、プロセスモニターが障害モニターを再起動する回数。このプロパティは、障害モニターの再起動について制御するのであって、リソースの再起動を制御するわけではありません。リソースの再起動は、システム定義プロパティの Retry_interval および Retry_count によって制御されます。 |
Monitor_ retry_ interval (整数) |
2 |
0 - 2,147,483,641 -1 は、再試行の間隔が無限であることを示す。 |
任意の時点 |
障害モニターの失敗がカウントされる期間 (分)。この期間内に、障害モニターの失敗の数が、拡張プロパティ Monitor_retry_count で指定した値を超えた場合、プロセスモニターは障害モニターを再起動しません。 |
Probe_ timeout (整数) |
30 |
0 - 2,147,483,641 |
任意の時点 |
iPlanet Web Server インスタンスの検証に障害モニターが使用するタイムアウト値 (秒)。 |