この章では、Sun Cluster データサービスのインストールと構成を計画するにあたってのガイドラインを説明します。
この章の内容は次のとおりです。
データサービス、リソースタイプ、リソースグループについての概念的な情報については、『Sun Cluster 3.0 の概念』を参照してください。
Sun Cluster データサービスとして現在提供されていないアプリケーションについては、『Sun Cluster 3.0 データサービス開発ガイド』を参照してください。アプリケーションを高可用性データサービスとして構成する方法について説明されています。
表 1-1 に、Sun Cluster データサービスのインストールと構成について説明している章を示します。
表 1-1 作業マップ: Sun Cluster データサービスのインストールと構成
作業 |
参照箇所 |
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Sun Cluster HA for Oracle のインストールと構成 | |
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server のインストールと構成 | |
Sun Cluster HA for Netscape Directory Server のインストールと構成 |
第 4 章「Sun Cluster HA for Netscape Directory Server のインストールと構成」 |
Sun Cluster HA for Apache のインストールと構成 | |
Sun Cluster HA for Domain Name Service (DNS) のインストールと構成 |
第 6 章「Sun Cluster HA for Domain Name Service (DNS) のインストールと構成」 |
Sun Cluster HA for Network File System (NFS) のインストールと構成 |
第 7 章「Sun Cluster HA for Network File System (NFS) のインストールと構成」 |
Sun Cluster HA for Oracle Parallel Server のインストールと構成 | |
データサービスリソースの管理 | |
データサービスの障害モニター |
この節では、Sun Cluster データサービスを構成するためのガイドラインを説明します。
アプリケーションソフトウェアおよびアプリケーション構成ファイルは、各クラスタノードのローカルディスク上、またはクラスタファイルシステム上にインストールできます。クラスタノードごとにソフトウェアと構成ファイルを置いた場合には、アプリケーションソフトウェアを後でアップグレードするときに、クラスタを停止せずに行えるという利点があります。ただし、ソフトウェアや構成ファイルの異なるコピーが存在するため、保守や管理をするファイルが増えるという欠点があります。
アプリケーションバイナリをクラスタファイルシステムに格納した場合、保守や管理をするコピーが 1 つだけになります。ただし、アプリケーションソフトウェアをアップグレードするためには、クラスタ全体でデータサービスを停止する必要があります。アップグレード時に多少の時間停止できるようであれば、アプリケーションおよび構成ファイルの 1 つのコピーをクラスタファイルシステムに格納するようにしてください。
クラスタファイルシステムの作成については、『Sun Cluster 3.0 ソフトウェアのインストール』の計画に関する章を参照してください。
nsswitch.conf ファイルは、ネームサービスの検索用の構成ファイルです。このファイルは、ネームサービスの検索に使用する Solaris 環境内のデータベースと、データベースの検索順序を決定します。
一部のデータサービスについては、「group」検索の対象をまず「files」に変更してください。ファイル内の「group」行を変更し、「files」エントリが最初にリストされるようにします。「group」行を変更するかどうかを判断するには、構成するデータサービスに関する章を参照してください。
Sun Cluster 環境の nsswitch.conf ファイルの構成方法については、『Sun Cluster 3.0 ソフトウェアのインストール』の計画に関する章を参照してください。
データサービスによっては、Sun Cluster の要件を満たす必要があります。特別な検討事項が必要かどうかを判断するには、そのデータサービスに関する章を参照してください。
クラスタファイルシステムの作成については、『Sun Cluster 3.0 ソフトウェアのインストール』の計画に関する章を参照してください。
Sun Cluster は、ディスクデバイスグループとリソースグループに関し、ノードリストという概念を持っています。これらのノードリストには、ディスクデバイスグループまたリソースグループの潜在的マスターであるノードが順にリストされています。ノードリストに関連付けられるのが、フェイルバックポリシーです。フェイルバックポリシーは、ディスクデバイスグループまたはリソースグループをマスターするノード (主ノード) が構成から切り離され、再度接続したときの動作を示します。つまり、再度クラスタに結合したときに、ディスクデバイスグループまたはリソースグループがその主ノードによって再度マスターされるかどうかを定義します。
フェイルオーバーリソースグループの高可用性を保証するには、そのグループのノードリストと関連する任意のディスクデバイスグループのノードリストとを一致させます。スケーラブルリソースグループの場合、そのリソースグループのノードリストは必ずしもデバイスグループのノードリストと一致するとは限りません。これは、現段階では、デバイスグループのノードリストには 2 つのノードしか含むことができないためです。2 ノードを超えるクラスタの場合は、スケーラブルリソースグループのノードリストに、3 ノード以上を含むことができます。
たとえば、ノード phys-schost-1 と phys-schost-2 が含まれるノードリストを持つ、ディスクデバイスグループ dg-schost-1 があるとします。このノードリストとフェイルバックポリシーは Enabled に設定されています。さらに、 アプリケーションデータの保持に dg-schost-1 を使用する rg-schost-1 というフェイルオーバーリソースグループも持っているとします。このような場合は、rg-schost-1 を設定するときに、ノードリストに phys-schost-1 と phys-schost-1 も指定し、フェイルバックポリシーを True に設定します。
スケーラブルリソースグループの高可用性を保証するためには、そのグループのノードリストをディスクデバイスグループのノードリストのスーパーセットにします。スーパーセットにすることで、ディスクに直接接続されるノードは、スケーラブルリソースグループを実行するノードになります。この利点は、データに接続されている少なくとも 1 つのノードがクラスタで起動されているときに、スケーラブルリソースグループがこれらと同じノード上で実行されても、スケーラブルサービスは利用できることです。
ディスクデバイスグループの設定については、『Sun Cluster 3.0 ソフトウェアのインストール』を参照してください。ディスクデバイスグループとリソースグループの関連性については、『Sun Cluster 3.0 の概念』を参照してください。
リソースタイプの SUNW.HAStorage は、次の機能を提供します。
広域デバイスとクラスタファイルシステムを監視し、SUNW.HAStorage リソースを含む同じリソースグループ内の他のリソースの START メソッドを、ディスクデバイスリソースが利用可能になるまで待機させることで、起動順序を調整します。
AffinityOn を True に設定することで、リソースグループとディスクデバイスグループを同一ノード上におき、ディスクに負荷がかかることの多いデータサービスのパフォーマンスを向上します。
SUNW.HAstorage リソースがオンラインの間にデバイスグループが別のノードに切り替えられた場合、AffinityOn の設定は無視され、リソースグループはデバイスグループと共に別のノードに移行することはありません。
データサービスリソースグループ内に SUNW.HAStorage リソースを作成するかどうかを判断するには、次のことを検討してください。
データサービスリソースグループがノードリストを持っており、その一部のノードが記憶装置に直接接続されていない場合は、リソースグループ内で SUNW.HAStorage リソースを構成し、他のデータサービスリソースの依存性を SUNW.HAStorage に設定する必要があります。これは、記憶装置とデータサービス間で起動順序を調整するためのものです。
Sun Cluster HA for Oracle や Sun Cluster HA for NFS など、ディスクに負荷がかかることの多いデータサービスを使用する場合は、SUNW.HAStorage リソースをデータサービスリソースグループに追加し、データサービスリソースの依存性を SUNW.HAStorage に設定し、AffinityOn を True に設定することを推奨します。このように設定することで、リソースグループとディスクデバイスグループが同一ノード上に置かれます。一方、必要なファイルを起動時に読み込むデータサービスのように (たとえば、Sun Cluster HA for DNS)、ディスクに負荷があまりかからない場合は、SUNW.HAStorage の設定は任意です。
クラスタに含まれるのが 2 ノードだけの場合は、SUNW.HAStorage の設定は任意です。ただし、後でノードを追加してスケーラブルサービスを実行する予定の場合には、SUNW.HAStorage を設定する必要があります。このための準備として SUNW.HAStorage の設定をしておき、後でノードリストにノードを追加します。
特定の推奨事項については、このマニュアルのデータサービスに関する各章を参照してください。
SUNW.HAStorage の設定方法については、「新しいリソース用に SUNW.HAStorage リソースタイプを設定する」を参照してください。詳細は、SUNW.HAStorage(5) のマニュアルページを参照してください。
データサービスを構成するときに、3 つのノードリストを指定できます。
installed_nodes - リソースタイプのプロパティ。このプロパティには、リソースタイプの実行を許可するクラスタノード名の一覧が含まれます。
nodelist - リソースグループのプロパティ。優先順位に基づいて、グループをオンラインにできるクラスタノード名の一覧が含まれます。これらのノードは、リソースグループの潜在的な主ノードまたはマスターノードになります。フェイルオーバーサービスについては、リソースグループノードリストを 1 つだけ設定します。スケーラブルサービスの場合は、2 つのリソースグループを設定するため、ノードリストも 2 つ必要になります。一方のノードリストには、共有アドレスをホストするノードが含まれます。このノードリストは、スケーラブルリソースが依存するフェイルオーバーリソースグループになります。もう一方のノードリストには、アプリケーションリソースをホストするノードの一覧が含まれます。共有アドレスを含むリソースグループ用のノードリストは、アプリケーションリソース用のノードリストのスーパーセットになる必要があります。アプリケーションリソースは、共有アドレスに依存するからです。
auxnodelist - 共有アドレスを含むリソースグループのプロパティ。このプロパティは、クラスタノードを識別する物理ノード ID の一覧が含まれます。このクラスタノードは共有アドレスをホストできますが、フェイルオーバー時に主ノードになることはありません。これらのノードは、リソースグループのノードリストで識別されるノードとは、相互に排他的な関係になります。これらの補助ノードは、リソースグループのマスターノードになることはありません。このノードリストは、スケーラブルサービスにのみ適用されます。
データサービスをインストールして構成するには、次の 3 つの手順を使用します。
Sun Cluster データサービス CD からデータサービスパッケージをインストールする。
クラスタ環境で実行するアプリケーションをインストールして構成する。
データサービスが使用するリソースおよびリソースグループを構成する。データサービスを構成するときは、Resource Group Manager (RGM) によって管理される、リソースタイプ、リソース、リソースグループを指定します。これらの手順は、各データサービスに関する章で説明されています。
データサービスのインストールと構成を開始する前に、『Sun Cluster 3.0 ソフトウェアのインストール』を参照してください。このマニュアルには、データサービスソフトウェアパッケージのインストール方法、ネットワークリソースが使用するネットワークアダプタフェイルオーバー (NAFO) グループの構成方法についての説明があります。
表 1-2 に、Sun Cluster フェイルオーバーデータサービスのインストールおよび構成作業と、その手順が説明されている参照先を示します。
表 1-2 作業マップ: Sun Cluster データサービスのインストールと構成
作業 |
参照箇所 |
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Solaris と Sun Cluster のインストール | |
NAFO グループの設定 | |
多重ホストディスクの設定 | |
リソースとリソースグループの計画 | |
アプリケーションバイナリの格納先の決定 (nsswitch.conf の構成) | |
アプリケーションソフトウェアのインストールと構成 |
データサービスに関する各章 |
データサービスソフトウェアパッケージのインストール |
『Sun Cluster 3.0 ソフトウェアのインストール』、データサービスに関する各章 |
データサービスの登録と構成 |
データサービスに関する各章 |
この節では、高可用性フェイルオーバーデータサービスとして設定されている Oracle アプリケーション用に、リソースタイプ、リソース、リソースグループを設定する方法を紹介します。
この例とスケーラブルデータサービスの例では、ネットワークリソースを含むフェイルオーバーリソースグループが異なります。さらに、スケーラブルデータサービスには、アプリケーションリソースごとに別のリソースグループ (スケーラブルリソースグループ) が必要です。
Oracle アプリケーションは、サーバーとリスナーの 2 つのコンポーネントを持ちます。Sun Cluster HA for Oracleis は、Sun が提供するデータサービスです。したがって、これらのコンポーネントは、すでに Sun Cluster リソースタイプにマップされています。これら両方のリソースタイプが、リソースとリソースグループに関連付けられます。
この例は、フェイルオーバーデータサービスの例なので、論理ホスト名ネットワークリソースを使用します。つまり、主ノードから二次ノードにフェイルオーバーする IP アドレスを使用します。フェイルオーバーリソースグループに論理ホスト名リソースを入れ、Oracle サーバーリソースとリスナーリソースを同じリソースグループに入れます。この順に入れることで、フェイルオーバーを行うすべてのリソースが 1 つのグループになります。
高可用性 (HA) Oracle データサービスをクラスタで実行するには、次のオブジェクトを定義する必要があります。
LogicalHostname リソースタイプ ― このリソースタイプは組み込まれているため、明示的に定義する必要はありません。
Oracle リソースタイプ ― Sun Cluster HA for Oracle は、2 つの Oracle リソースタイプ (データベースサーバーとリスナー) を定義します。
論理ホスト名リソース ― これらのリソースは、ノードで障害が発生した場合にフェイルオーバーする IP アドレスをホストします。
Oracle リソース ― Sun Cluster HA for Oracle 用に、2 つのリソースインスタンス (サーバーとリスナー) を指定する必要があります。
フェイルオーバーリソースグループ ― 1 つのグループでフェイルオーバーを行う、Oracle サーバーとリスナー、および論理ホスト名リソースで構成されています。