この章では、Sun Cluster HA for SAP データサービスの計画と、それを Sun Cluster の各ノード上で設定および構成する手順について説明します。
この章の内容は、次のとおりです。
次の表に、必要なインストール作業や構成作業の説明のある節を示します。
表 9-1 作業マップ: Sun Cluster HA for SAP のインストールと構成
作業 |
参照先 |
---|---|
SAP インストールの計画 | |
SAP およびデータベースのインストールと構成 |
「SAP とデータベースのインストールを確認する (コアインスタンス)」 「SAP とデータベースのインストールを確認する (アプリケーションサーバー)」 |
Sun Cluster HA for DBMS の構成 | |
Sun Cluster HA for S1AP データサービスの構成 |
「Sun Cluster HA for SAP の登録と構成を行う (コアインスタンス)」 「Sun Cluster HA for SAP の登録と構成を行う (アプリケーションサーバー)」 |
SAP 拡張プロパティの構成 | |
Sun Cluster HA for SAP 障害モニター情報の表示 |
Sun Cluster HA for SAP データサービスでは、障害監視機能と自動フェイルオーバー機構がサポートされます。したがって、SAP アプリケーションでは、SAP システムの単一障害点を排除できます。次の表に、Sun Cluster 構成における SAP コンポーネントと、それを最もよく保護するデータサービスを示します。
表 9-2 SAP コンポーネントの保護
SAP コンポーネント |
SAP コンポーネントを保護するデータサービス |
---|---|
SAP データベース |
Sun Cluster HA for Oracle (データベースが Oracle の場合) |
SAP コアインスタンス |
Sun Cluster HA for SAP (リソースタイプは SUNW.sap_ci) |
SAP アプリケーションサーバー |
Sun Cluster HA for SAP (リソースタイプは SUNW.sap_as) |
NFS ファイルシステム |
Sun Cluster HA for NFS |
Sun Cluster HA for SAP データサービスのインストールには、scinstall(1M) コマンドを使用します。Sun Cluster HA for SAP データサービスをインストールするためには、クラスタに最初のクラスタフレームワークがすでにインストールされ、クラスタが動作している必要があります。クラスタやデータサービスの初期インストールについては、『Sun Cluster 3.0 U1 ソフトウェアのインストール』を参照してください。Sun Cluster と SAP ソフトウェアの基本コンポーネントをインストールした後、Sun Cluster HA for SAP データサービスを登録します。
Sun Cluster HA for SAP 構成の設計にあたっては次の点に注意してください。
Sun Cluster 3.0 に対応する SAP ソフトウェアバージョンを使用する - Solaris 8 オペレーティング環境では、この Sun Cluster ソフトウェアがサポートされています。
自動的な待ち行列化、再接続機構を備えた SAP ソフトウェアバージョンを使用する - Sun Cluster HA for SAP データサービスでは、この機能が必要です。SAP 4.0 ソフトウェア (パッチが必要) およびそれ以降のリリースでは、この機能がサポートされています。
Solaris プラットフォームにインストールする SAP ソフトウェアリリースとデータベースに関するすべての注意を SAP オンラインサービスシステムで読む - 既知の問題や修正がないか調べます。
メモリーとスワップの要件について SAP ソフトウェアのマニュアルを調べる - SAP ソフトウェアでは、大量のメモリーとスワップ空間が必要です。
コアインスタンス、データベースインスタンス、アプリケーションサーバー (アプリケーションサーバーを内部的に持つ場合) が動作する全ノードの合計負荷を余裕をもって見積もる - フェイルオーバーが起こったときに、コアインスタンス、データベースインスタンス、アプリケーションサーバーがすべて同じノードにあるようなクラスタを構成する場合には、この指針は特に重要です。
アプリケーションサーバーをコアインスタンスが動作するクラスタにインストールするか、別のクラスタにインストールするか - Sun Cluster HA for SAP データサービスでは、クラスタ環境の外にインストールおよび構成されたアプリケーションサーバーの障害は監視されません。したがって、アプリケーションサーバーの再起動やフェイルオーバーは、自動的には行われません。このようなアプリケーションサーバーは、手動で起動し、シャットダウンする必要があります。
ノード名や論理ホスト名を 8 文字以内にする - これは SAP ソフトウェアの制限です。
サポートされる SAP バージョンの最新情報については、Enterprise Services の担当者にお問い合わせください。次の図は、Sun Cluster HA for SAP データサービスの構成例です。
図 9-2 は、以前の Sun Cluster リリースのもとでよく使用されていた構成です。Sun Cluster 3.0 ソフトウェアの機能を十全に使用する場合は、図 9-1 または 図 9-3 の構成に従ってください。
SAP ソフトウェアをインストールする前に、「SAP およびデータベースのインストールと構成」を読み、クラスタに関連する次の点を検討してください。
SAP バイナリと SAP ユーザーのホームディレクトリをインストールする - SAP バイナリと SAP ユーザーのホームディレクトリをクラスタファイルシステムにインストールします。ただし、クラスタファイルシステムにインストールすると、SAP ソフトウェアのリリースアップグレードに関して不都合な点がいくつかあります。これらの点については、「アプリケーションバイナリの格納先の決定」を参照してください。
データベース用のファイルシステムと SAP 用のファイルシステムをすべて作成したら、マウントポイントを作成し、これをすべてのクラスタノードの /etc/vfstab ファイルに指定する - データベースおよび SAP ファイルシステムの設定手順については、SAP のインストールマニュアル『Installation of the SAP R/3 on UNIX』と『R/3 Installation on UNIX-OS Dependencies』を参照してください。
必要なグループとユーザーをすべてのクラスタノードに作成する - 『Installation of the SAP R/3 on UNIX』と『R/3 Installation on UNIX-OS Dependencies』に従って、SAP ソフトウェアに必要なグループとユーザーをすべてのクラスタノードに作成します。
外部 SAP アプリケーションサーバーをインストールする場合は、コアインスタンスを収容するクラスタに Sun Cluster HA for NFS データサービスを構成する - Sun Cluster HA for NFS の構成手順については、「Sun Cluster HA for NFS のインストールと構成」を参照してください。
スイッチオーバーやフェイルオーバーでデータサービスが正しく起動、停止するように /etc/nsswitch.conf ファイルを設定する - Sun Cluster HA for SAP データサービスが動作する論理ホストをマスターできる各ノードの /etc/nsswitch.conf ファイルには、次の group エントリのどれかが必要です。
group: group: files group: files [NOTFOUND=return] nis group: files [NOTFOUND=return] nisplus |
Sun Cluster HA for SAP データサービスは、su user コマンドを使ってデータベースノードの起動や停止を行います。一方、クラスタノードのパブリックネットワークに障害が発生すると、ネットワーク情報ネーミングサービスが使用不能になることがあります。上の group エントリを追加しておけば、このような状況になったときに su(1M) コマンドが NIS/NIS+ ネームサービスを参照することはありません。
この節の手順では、次の作業を行います。
SAP とデータベースをインストールする。
SAP をクラスタで実行できるようにする。
SAP とデータベースのインストールを確認する。
この手順では、SAP とデータベースをインストールおよび構成し、SAP をクラスタで動作するように設定します。
クラスタのノードでスーパーユーザーになります。このノードは、コアインスタンスをインストールする先のノードでなければなりません。
クラスタファイルシステムにすべての SAP バイナリをインストールします。
SAP ソフトウェアをクラスタファイルシステムにインストールする前に、Sun Cluster ソフトウェアが完全に機能することを scstat(1M) コマンドで確認してください。
SAP とデータベースのインストールが終わったら、「SAP をクラスタで実行するための準備をする」に進みます。
SAP のインストール中に、SAP コアインスタンスをインストールしたサーバーにファイルやシェルスクリプトが作成されます。これのファイルやスクリプトでは、物理サーバー名が使用されています。Sun Cluster ソフトウェアのもとで SAP ソフトウェアを使用する場合は、物理サーバーへの参照を論理ホスト名への参照で置き換える必要があります。以下の各手順では、変数 physicalserver は物理サーバーを、変数 logical-hostname は論理ホスト名をそれぞれ表します。「論理ホスト名」という表現は、データベースとアプリケーションサーバー間のトラフィックが発生する論理ホスト名を表します。論理ホストの詳細については『Sun Cluster 3.0 U1 の概念』を参照してください。
次の手順に従って、SAP をクラスタで実行するための準備をします。
この後の手順で変更するファイルのバックアップコピーを取ってください。
SAP ソフトウェアがインストールされているノードにログインします。
SAP コアインスタンスとデータベースをシャットダウンします。
SAP コアインスタンスやデータベースの他に、動作しているアプリケーションサーバーがある場合は、それもシャットダウンしてください。
次のディレクトリのすべてのファイルについて、その名前に物理サーバー名が含まれている場合は、それを変更します。
sapsidadmホームディレクトリ - ファイル名を変更する前に sapsidadm ユーザーになる必要があります。
orasapsid ホームディレクトリ - ファイル名を変更する前に orasapsid ユーザーになる必要があります。
SAP プロファイルディレクトリ - ファイル名を変更する前に sapsidadm ユーザーになる必要があります。
たとえば、.sapenv_physicalserver.csh ファイルを .sapenv_logical-hostname.csh に変更します。
ログファイルを除く次のディレクトリのすべてのファイルについて、その内容が物理サーバー名を参照している場合は、それを変更します。
sapsidadm ホームディレクトリ - ファイルを編集する前に sapsidadm ユーザーになる必要があります。
orasapsid ホームディレクトリ - ファイルを編集する前に orasapsid ユーザーになる必要があります。
SAP プロファイルディレクトリ - ファイルを編集する前に sapsidadm ユーザーになる必要があります。
たとえば、起動スクリプトやシャットダウンスクリプトに physicalserver の参照がある場合は、それを論理ホスト名の参照に変更します。
sapsidadm ユーザーで、次の例に示すような SAPLOCALHOST パラメータのエントリを追加します。
SAPLOCALHOST logical-hostname |
このエントリは、/sapmnt/SAPSID/profile ディレクトリの SAPSID_Service-StringSystem-Number_logical-hostname プロファイルファイルに追加する必要があります。
外部アプリケーションサーバーは、このエントリの論理ホスト名を使ってコアインスタンスの場所を見つけます。
SAP をクラスタで実行するための準備が終わったら、「SAP とデータベースのインストールを確認する (コアインスタンス)」に進みます。
この手順では、コアインスタンスが動作する可能性があるすべてのノードで SAP コアインスタンスの起動と停止をテストします。
ネットワーク論理ホスト名リソースとコアインスタンスリソースを保持するフェイルオーバーリソースグループを作成します。
# scrgadm -a -g sap-ci-resource-group |
SAP コアインスタンスを特定のノード群で実行する場合は、scrgadm(1M) コマンドに -h オプションを指定します。
# scrgadm -a -g sap-ci-resource-group -h nodelist |
使用するすべての論理ホスト名がネームサービスデータベースに追加されているかどうかを確認します。
scrgadm コマンドを実行し、論理ホスト名をフェイルオーバーリソースグループに追加します。
# scrgadm -a -L -g sap-ci-resource-group -l logical-hostname -n nafo0@node1, nafo0@node2 |
リソースグループを有効にします。
scswitch(1M) コマンドを実行してリソースグループを管理状態に移行し、これをオンラインにします。
# scswitch -Z -g sap-ci-resource-group |
コアインスタンスリソースグループを持つクラスタメンバーにログインします。
コアインスタンスとデータベースを起動します。
SAP GUI を起動し、SAP の初期化が正しく行われるかどうか確認します。
デフォルトのディスパッチャポートは 3200 です。
コアインスタンスとデータベースを停止します。
scswitch コマンドを実行します。
次の例の変数 sap-ci-resource-group は、コアインスタンスリソースの論理ホスト名リソースを保持するリソースグループです。このリソースグループを、コアインスタンスを収容できる別のクラスタメンバーに切り替えます。
# scswitch -z -h node -g sap-ci-resource-group |
手順 5 から 手順 7 を繰り返し実行し、コアインスタンスを収容できるすべてのクラスタノードでコアインスタンスの起動とシャットダウンができることを確認します。
SAP とデータベースのインストール (コアインスタンス) を確認したら、「Sun Cluster HA for SAP のインストールを確認する (アプリケーションサーバー)」に進みます。
アプリケーションサーバーのインストールと構成を前に行っている場合は、アプリケーションサーバーが動作する可能性があるすべてのノードでこの手順を実行します。この手順では、アプリケーションサーバーの起動と停止をテストします。
ネットワーク論理ホスト名リソースとアプリケーションサーバーリソースを保持するフェイルオーバーリソースグループを作成します。
# scrgadm -a -g sap-as-resource-group |
アプリケーションサーバーを特定のノード群で実行する場合は、scrgadm コマンドに -h オプションを指定します。
# scrgadm -a -g sap-as-resource-group -h nodelist -n nafo0@node1,nafo0@node2 |
使用するすべての論理ホスト名がネームサービスデータベースに追加されているかどうかを確認します。
scrgadm コマンドを実行し、論理ホスト名をフェイルオーバーリソースグループに追加します。
# scrgadm -a -L -g sap-as-resource-group -l logical-hostname |
リソースグループを有効にします。
scswitch(1M) コマンドを実行し、リソースグループを管理状態に移行し、これをオンラインにします。
# scswitch -Z -g sap-as-resource-group |
アプリケーションサーバーリソースグループを持つクラスタメンバーにログインします。
アプリケーションサーバーを起動します。
SAP GUI を起動し、SAP アプリケーションサーバーの初期化が正しく行われるかどうかを確認します。
アプリケーションサーバーを停止します。
scswitch コマンドを実行します。
次の例の変数 sap-as-resource-group は、アプリケーションサーバーリソースの論理ホスト名リソースを保持するリソースグループです。このリソースグループを、アプリケーションサーバーを収容できる別のクラスタメンバーに切り替えます。
# scswitch -z -h node -g sap-as-resource-group |
手順 5 から 手順 7 を繰り返し実行し、アプリケーションサーバーを収容できるすべてのクラスタノードでアプリケーションサーバーの起動とシャットダウンができることを確認します。
SAP とデータベースをインストールするすべての手順が終わったら、「Sun Cluster HA for SAP の登録と構成を行う (コアインスタンス)」に進みます。
SAP では、さまざまなデータベースがサポートされます。使用する高可用性データベースのリソースタイプや、リソースグループ、リソースを構成する手順については、このマニュアルの適切な章を参照してください。たとえば、SAP と Oracle を使用する場合は、「Sun Cluster HA for Oracle のインストールと構成」を参照してください。
使用するデータベース用に構成するその他のリソースタイプについては、このマニュアルやデータベースのインストールマニュアルの適切な章を参照してください。このマニュアルでは、このようなリソースタイプに関し、Oracle データベースに関連するものの構成手順を説明しています。たとえば、Oracle を使用する場合は、リソースタイプ SUNW.HAStorage を設定する必要があります。詳細は、「SUNW.HAStorage リソースタイプを構成する」の手順を参照してください。
この節の手順では、次の作業を行います。
Sun Cluster HA for SAP データサービスの登録と構成
Sun Cluster HA for SAP インストールの確認
Sun Cluster HA for SAP データサービスの登録と構成 (コアインスタンス) は、次の手順で行います。
コアインスタンスを収容するクラスタのノードの 1 つでスーパーユーザーになります。
SAP データサービスのリソースタイプを登録します。
コアインスタンスの場合は、scrgadm コマンドを実行してリソースタイプ SUNW.sap_ci を登録します。
# scrgadm -a -t SUNW.sap_ci |
scrgadm コマンドを実行し、このフェイルオーバーリソースグループ内に SAP アプリケーションリソースを作成します。
# scrgadm -a -j sap-ci-resource -g sap-ci-resource-group -t SUNW.sap_ci -x SAPS ID=SAPSID -x Ci_startup_script=ci-startup-script -x Ci_shutdown_script=ci-shutdown-script |
scswitch コマンドを実行し、SAP コアインスタンスリソースが含まれているリソースグループを有効にします。
# scswitch -Z -g sap-ci-resource-group |
Sun Cluster HA for SAP の登録と構成 (コアインスタンス) が終わったら、「Sun Cluster HA for SAP の登録と構成を行う (アプリケーションサーバー)」に進みます。
Sun Cluster HA for SAP データサービスの登録と構成 (アプリケーションサーバー) は、次の手順で行います。
アプリケーションサーバーが収容されているクラスタのノードの 1 つでスーパーユーザーになります。
SAP データサービスのリソースタイプを登録します。
アプリケーションサーバーの場合は、scrgadm コマンドを実行してリソースタイプ SUNW.sap_as を登録します。
# scrgadm -a -t SUNW.sap_as |
scrgadm コマンドを実行し、このフェイルオーバーリソースグループ内に SAP アプリケーションサーバーリソースを作成します。
# scrgadm -a -j sap-as-resource -g sap-as-resource-group -t SUNW.sap_as -x SAPSID=SAPSID -x As_instance_id=as-instance-id-x As_startup_script=as-startup-script -x As_shutdown_script=as-shutdown-script |
scswitch コマンドを実行し、SAP アプリケーションサーバーリソースが含まれているリソースグループを有効にします。
# scswitch -Z -g sap-as-resource-group |
Sun Cluster HA for SAP の登録と構成 (アプリケーションサーバー) が終わったら、「Sun Cluster HA for SAP のインストールを確認する (コアインスタンス)」に進みます。
この手順では、Sun Cluster HA for SAP (コアインスタンス) のインストールと Sun Cluster HA for DBMS のインストールおよび構成を確認します。
SAP コアインスタンスリソースのリソースグループがあるノードにログインします。
ユーザー sapsidadm になります。
SAP GUI を起動し、Sun Cluster HA for SAP データサービスが正しく動作していることを確認します。
コアインスタンスの stopsap スクリプトを使って SAP コアインスタンスをシャットダウンします。
Sun Cluster ソフトウェアがコアインスタンスを再起動するはずです。これは、Sun Cluster ソフトウェアが SAP ソフトウェアを制御しているからです。
scswitch コマンドを実行し、SAP リソースグループを別のクラスタメンバーに切り替えます。
# scswitch -z -h node2 -g sap-ci-resource-group |
SAP コアインスタンスがこのノードで起動されることを確認します。
手順 1 から 手順 6 を繰り返し実行し、SAP コアインスタンスが動作する可能性があるすべてのノードをテストします。
Sun Cluster HA for SAP のインストール (コアインスタンス) の確認が終わったら、「Sun Cluster HA for SAP のインストールを確認する (アプリケーションサーバー)」に進みます。
SAP アプリケーションサーバーのインストールと構成が終わったら、次の手順に従って Sun Cluster HA for SAP のインストールと構成 (アプリケーションサーバー) を確認します。
SAP アプリケーションサーバーリソースのリソースグループがあるノードにログインします。
ユーザー sapsidadm になります。
AP GUI を起動し、Sun Cluster HA for SAP データサービスが正しく動作していることを確認します。
アプリケーションサーバーの stopsap スクリプトを使って SAP アプリケーションサーバーをシャットダウンします。
Sun Cluster ソフトウェアがアプリケーションサーバーを再起動するはずです。これは、Sun Cluster ソフトウェアが SAP ソフトウェアを制御しているからです。
scswitch コマンドを実行し、SAP アプリケーションサーバーリソースのリソースグループを別のクラスタメンバーに切り替えます。
# scswitch -z -h node2 -g sap-as-resource-group |
SAP アプリケーションサーバーがこのノードで起動されることを確認します。
手順 1 から 手順 6 を繰り返し実行し、アプリケーションサーバーが動作する可能性があるすべてのノードをテストします。
この節では、Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティ (コアインスタンスおよびアプリケーションサーバー) の構成手順を説明します。通常、拡張プロパティは、コアインスタンスリソースまたはアプリケーションサーバーリソースを作成するときに、コマンド行から scrgadm -x parameter=value を実行して構成します。拡張プロパティは、第 11 章「データサービスリソースの管理」に示す手順を使って後で構成することもできます。
すべての Sun Cluster 拡張プロパティの説明を見る場合は、r_properties(5) と rg_properties(5) のマニュアルページを参照してください。
表 9-3 に、コアインスタンス用に設定できる SAP 拡張プロパティを示します。拡張プロパティによっては、動的に更新できるものもあります。ただし、それ以外の拡張プロパティは、SAP リソースを作成または無効にするときにしか更新できません。次の表の「調整」列は、各プロパティをいつ更新できるかを示しています。
表 9-3 Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティ (コアインスタンス)
プロパティカテゴリ |
プロパティ名 |
デフォルト |
調整 |
説明 |
---|---|---|---|---|
SAP 構成
|
SAPSID |
なし |
無効化された時 |
SAP システム名または SAPSID。 |
Ci_instance_ id |
00 |
無効化された時 |
2 桁の SAP システム番号。 |
|
Ci_services_ string |
DVEBMGS |
無効化された時 |
コアインスタンスサービスの文字列。 |
|
SAP の起動
|
Ci_start_ retry_ interval |
30 |
無効化された時 |
データベースへの接続を試みてからコアインスタンスを起動するまでの時間 (秒数)。 |
Ci_startup_ script |
なし |
無効化された時 |
SIDadm ホームディレクトリにあるこのインスタンスに対する SAP 起動スクリプトの名前。 |
|
SAP の停止
|
Stop_sap_ pct |
95 |
無効化された時 |
SAP プロセスの停止に使用される停止タイムアウト変数の割合。SAP シャットダウンスクリプトによってプロセスがまず停止されてから、Process Monitor Facility (PMF) の呼び出しによって、プロセスが停止され、次に消去されます。 |
Ci_shutdown_ script |
なし |
無効化された時 |
SIDadm ホームディレクトリにあるこのインスタンスに対する SAP シャットダウンスクリプトの名前。 |
|
検証 |
Message_ server_name |
sapmsSAPSID |
無効化された時 |
SAP メッセージサーバーの名前。 |
Lgtst_ms_ with_ logicalhostname |
TRUE |
任意の時点 |
SAP lgtst ユーティリティで SAP メッセージサーバーを検査する方法。lgtst ユーティリティでは、SAP メッセージサーバーの場所としてホスト名 (IP アドレス) が必要です。このホスト名は、Sun Cluster の論理ホスト名か、localhost (ループバック) 名です。このリソースプロパティに TRUE を設定すると論理ホスト名が、そうでない場合は localhost 名が使用されます。 |
|
Check_ms_retry |
2 |
無効化された時 |
SAP メッセージサーバーの検査に何回失敗したら、これを完全な失敗として報告し、Resource Group Manager (RGM) を起動するか。 |
|
Probe_timeout |
60 |
任意の時点 |
検証に対するタイムアウト値 (秒)。 |
|
Monitor_ retry_count |
4 |
任意の時点 |
障害モニターのために行うことができる PMF 再起動の回数。 |
|
Monitor_retry_ interval |
2 |
任意の時点 |
障害モニターを再起動する間隔 (分)。 |
|
開発システム
|
Shutdown_dev |
FALSE |
無効化された時 |
RGM が開発システムをシャットダウンしてからコアインスタンスを起動すべきかどうか。 |
Dev_sapsid |
なし |
無効化された時 |
開発システムの SAP システム名。Sun Cluster HA for SAP データサービスでは、Shutdown_dev が TRUE に設定された場合、このプロパティが必要です。 |
|
Dev_shutdown_ script |
なし |
無効化された時 |
開発システムのシャットダウンに使用するスクリプト。Sun Cluster HA for SAP データサービスでは、Shutdown_dev が TRUE に設定された場合、このプロパティが必要です。 |
|
Dev_stop_pct |
20 |
無効化された時 |
起動タイムアウトの割合がどのくらいになったら、Sun Cluster HA for SAP データサービスが開発システムをシャットダウンしてコアインスタンスを起動するか。 |
次の表に、SAP (アプリケーションサーバー) 用に設定できる拡張プロパティを示します。
表 9-4 Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティ (アプリケーションサーバー)
プロパティカテゴリ |
プロパティ名 |
デフォルト |
調整 |
説明 |
---|---|---|---|---|
SAP 構成
|
SAPSID |
なし |
無効化された時 |
アプリケーションサーバーの SAP システム名または SAPSID。 |
As_instance_ id |
なし |
無効化された時 |
アプリケーションサーバーの 2 桁の SAP システム番号。 |
|
As_services_ string |
D |
無効化された時 |
アプリケーションサーバーの文字列。 |
|
SAP の起動
|
As_db_retry_ interval |
30 |
無効化された時 |
データベースへの接続を試みてからアプリケーションサーバーを起動するまでの時間 (秒)。 |
As_startup_ script |
無効化された時 |
無効化された時 |
アプリケーションサーバーの SAP 起動スクリプトの名前。 |
|
SAP の停止
|
Stop_sap_ pct |
95 |
無効化された時 |
SAP プロセスの停止に使用される停止タイムアウト変数の割合。SAP シャットダウンスクリプトによってプロセスがまず停止されてから、Process Monitor Facility (PMF) の呼び出しによって、プロセスが停止され、次に消去されます。 |
As_shutdown_ script |
なし |
無効化された時 |
アプリケーションサーバーに対する SAP シャットダウンスクリプトの名前。 |
|
検証 |
Probe_ timeout |
60 |
任意の時点 |
検証のタイムアウト値 (秒)。 |
Monitor_ retry_count |
4 |
任意の時点 |
障害モニターのためにこの検証で行うことができる PMF 再起動の回数。 |
|
Monitor_ retry_ interval |
2 |
任意の時点 |
障害モニターを再起動する間隔 (分)。 |
Sun Cluster HA for SAP 障害モニターでは、SAP プロセスとデータベースが検査されます。SAP データベースが正常であるかどうかは、SAP リソースの障害履歴に影響を与えます。そし、この障害履歴は障害モニターのアクションを引き起こします。このアクションには、アクションなしと、再起動、フェイルオーバーがあります。
SAP プロセスとは異なり、データベースが正常であるかどうかは SAP リソースの障害履歴に影響を与えません。ただし、これによって、SAP 障害モニターは syslog メッセージを記録し、データベースを使用する SAP リソースの状態をそれにしたがって設定します。
コアインスタンスの場合には、障害検証機能によって次の手順が実行されます。
メッセージサーバーとディスパッチャのプロセス ID を取得します。
無限にループします (Thorough_probe_interval の間だけスリープします)。
SAP リソースを検査します。
異常終了 - SAP プロセスツリーの中に異常があることを PMF が検出すると、障害モニターは、これを致命的な障害とみなします。障害モニターは、リソースの障害履歴に従って、SAP リソースを再起動するか、別のノードにフェイルオーバーします。
検証機能による SAP リソースの検査- 検証機能は、ps(1) コマンドを使って SAP メッセージサーバーとメインディスパッチャのプロセスを検査します。これらのプロセスの中にシステムのアクティブプロセスリストに存在しないものがあると、障害モニターはこれを致命的な障害とみなします。
パラメータ Check_ms_retry にゼロより大きい値が設定されていると、検証機能はメッセージサーバーの接続を検査します。拡張プロパティ Lgtst_ms_with_logicalhostname にデフォルト値 TRUE が設定されていると、検証機能は、メッセージサーバー接続のテストを lgtst ユーティリティを使って行います。検証機能は、SAP リソースグループに指定されている論理ホスト名インタフェースを使って SAP 提供のユーティリティ lgtst を呼び出します。拡張プロパティ Lgtst_ms_with_logicalhostname が TRUE 以外に設定されていると、検証機能は、ノードの localhost 名 (ループバックアップインタフェース) を指定して lgtst を呼び出します。
lgtst ユーティリティの呼び出しが失敗した場合、SAP メッセージサーバーの接続が機能していません。このような場合、障害モニターはこれを部分的な障害とみなし、SAP の再起動やフェイルオーバーをすぐにはトリガーしません。しかし、部分的な障害が 2 度起こると、障害モニターは、次の条件が真であれば、これを致命的な障害とみなします。
拡張プロパティ Check_ms_retry に 2 が構成されている。
2 度の部分的障害が、リソースプロパティ Retry_interval に設定されている再試行期間中に発生している。
致命的な障害では、リソースの障害履歴にもとづいてローカル再起動またはフェイルオーバーがトリガーされます。
検証機能によるデータベース接続の状態 - 検証機能は、SAP 提供のユーティリティ R3trans を使ってデータベース接続の状態を検査します。Sun Cluster HA for SAP 障害検証機能は、SAP がこのデータベースに接続できるかどうかを確認します。ただし、Sun Cluster HA for SAP は、高可用性データベースの障害検証機能を使ってデータベースが正常であるかどうかを判定します。データベース接続の状態検査で異常が検出されると、障害モニターは「Database might be down」というメッセージを syslog に書き込み、SAP リソースの状態に DEGRADED を設定します。検証機能は、データベースの状態を再び検査したときに接続が再確立されていれば、「Database is up」というメッセージを syslog に書き込み、SAP リソースの状態に OK を設定します。
障害履歴を調べます。
障害モニターは、障害履歴に基づいて次のどれかのアクションを行います。
アクションなし
ローカル再起動
フェイルオーバー
アプリケーションサーバーの場合には、障害検証機能によって次の手順が実行されます。
メインディスパッチャのプロセス ID を取得します。
無限にループします (Thorough_probe_interval の間だけスリープします)。
SAP リソースを検査します。
異常終了 exit - SAP プロセスツリーの中に異常があることを PMF が検出すると、障害モニターは、これを致命的な障害とみなします。障害モニターは、リソースの障害履歴に従って、SAP リソースを再起動するか、別のノードにフェイルオーバーします。
検証機能による SAP リソースの検査 - 検証機能は、ps(1) コマンドを使って SAP メッセージサーバーとメインディスパッチャのプロセスを検査します。SAP メインディスパッチャプロセスの中にシステムのアクティブプロセスリストに存在しないものがあると、障害モニターはこれを致命的な障害とみなします。
検証機能によるデータベース接続の状態 - 検証機能は、SAP 提供のユーティリティ R3trans を使ってデータベース接続の状態を検査します。Sun Cluster HA for SAP 障害検証機能は、SAP がこのデータベースに接続できるかどうかを確認します。ただし、Sun Cluster HA for SAP は、高可用性データベースの障害検証機能を使ってデータベースが正常であるかどうかを判定します。データベース接続の状態検査で異常が検出されると、障害モニターは「Database might be down」というメッセージを syslog に書き込み、SAP リソースの状態に DEGRADED を設定します。検証機能は、データベースの状態を再び検査したときに接続が再確立されていれば、「Database is up」というメッセージを syslog に書き込み、SAP リソースの状態に OK を設定します。
障害履歴を調べます。
障害モニターは、障害履歴に基づいて次のアクションのどれかを行います。
アクションなし
ローカル再起動
フェイルオーバー