Sun Cluster 3.0 12/01 データサービスのインストールと構成

第 9 章 Sun Cluster HA for SAP のインストールと構成

この章では、Sun Cluster HA for SAP の計画と、このソフトウェアを Sun Cluster の各ノード上で設定および構成する手順について説明します。

この章の内容は、次のとおりです。

Sun Cluster HA for SAP のインストールと構成

表 9-1 に、インストールと構成作業について説明している節を示します

表 9-1 作業マップ: Sun Cluster HA for SAP のインストールと構成

作業 

参照箇所 

SAP インストールの計画 

「Sun Cluster HA for SAP の概要」

「Sun Cluster HA for SAP の構成指針」

「構成例」

「インストール前の注意点」

SAP およびデータベースのインストールと構成 

「SAP とデータベースをインストールする」

「SAP をクラスタで実行するための準備をする」

「SAP とデータベースのインストールを確認する (コアインスタンス)」 「SAP とデータベースのインストールを確認する (アプリケーションサーバー)」

Sun Cluster HA for DBMS の構成 

「Sun Cluster HA for DBMS の構成」

Sun Cluster HA for SAP の構成 

「Sun Cluster HA for SAP の登録と構成を行う (コアインスタンス)」

「Sun Cluster HA for SAP の登録と構成を行う (アプリケーションサーバー)」

「Sun Cluster HA for SAP のインストールを確認する (コアインスタンス)」

「Sun Cluster HA for SAP のインストールを確認する (アプリケーションサーバー)」

SAP 拡張プロパティの構成  

「SAP 拡張プロパティの構成」

Sun Cluster HA for SAP 障害モニター情報の表示 

「Sun Cluster HA for SAP の障害モニター」

Sun Cluster HA for SAP の概要

Sun Cluster HA for SAP は、SAP アプリケーションを対象とした障害監視と自動フェイルオーバー機能を提供することにより、SAP システムにおけるシングルポイント障害を排除します。次の表に、Sun Cluster 構成における SAP コンポーネントと、それを最もよく保護するデータサービスを示します。

表 9-2 SAP コンポーネントの保護

SAP コンポーネント 

SAP コンポーネントを保護するデータサービス 

SAP データベース 

Sun Cluster HA for Oracle (データベースが Oracle の場合) 

SAP コアインスタンス 

Sun Cluster HA for SAP (リソースタイプは SUNW.sap_ci)

SAP アプリケーションサーバー 

Sun Cluster HA for SAP (リソースタイプは SUNW.sap_as)

NFS ファイルシステム 

Sun Cluster HA for NFS 

Sun Cluster HA for SAP のインストールには、scinstall(1M) コマンドを使用してください。Sun Cluster HA for SAP をインストールするためには、クラスタに最初のクラスタフレームワークがすでにインストールされ、クラスタが動作している必要があります。クラスタやデータサービスの初期インストールについては、『Sun Cluster 3.0 12/01 ソフトウェアのインストール』を参照してください。Sun Cluster と SAP ソフトウェアの基本コンポーネントをインストールしたあとで、Sun Cluster HA for SAP を登録してください。

Sun Cluster HA for SAP の構成指針

Sun Cluster HA for SAP 構成の設計にあたっては次の点に注意してください。

構成例

サポートされる SAP バージョンの最新情報については、Enterprise Services の担当者にお問い合わせください。次に、Sun Cluster HA for SAP の構成例を示します。

図 9-1 コアインスタンス (CI)、アプリケーションサーバー、データベースからなる 4 ノード構成

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図 9-2 コアインスタンス (CI)、NFS、非 HA 外部アプリケーションサーバーからなる 2 ノード構成

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注 -

図 9-2 は、以前の Sun Cluster リリースのもとでよく使用されていた構成です。Sun Cluster 3.0 ソフトウェアの機能を最大限に使用するには、図 9-1 または図 9-3 の構成に従ってください。


図 9-3 コアインスタンス (CI) と開発ノードからなる 2 ノードクラスタ

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インストール前の注意点

SAP ソフトウェアをインストールする前に、「SAP およびデータベースのインストールと構成」を読み、クラスタに関連する次の点を検討してください。

SAP およびデータベースのインストールと構成

この節の手順では、次の作業を行います。

SAP とデータベースをインストールする

この手順では、SAP とデータベースをインストールおよび構成し、SAP をクラスタで動作するように設定します。

  1. クラスタのノードでスーパーユーザーになります。このノードは、コアインスタンスをインストールする先のノードでなければなりません。

  2. クラスタファイルシステムにすべての SAP バイナリをインストールします。


    注 -

    SAP ソフトウェアをクラスタファイルシステムにインストールする前に、Sun Cluster ソフトウェアが完全に機能することを scstat(1M) コマンドで確認してください。


    1. SAP アプリケーションを実行するすべてのクラスタノードで /etc/system ファイルを編集し、すべての SAP に必要なカーネルパラメータの変更を行います。

      /etc/system ファイルの編集が終わったら各ノードを再起動する必要があります。カーネルパラメータの変更については、SAP のマニュアル『R/3 Installation on UNIX-OS Dependencies』を参照してください。

    2. コアインスタンスとデータベースのインストール手順については、SAP のマニュアル『Installation of the SAP R/3 on UNIX』を参照してください。

SAP をクラスタで実行するための準備をする

SAP のインストール中に、SAP コアインスタンスをインストールしたサーバーにファイルやシェルスクリプトが作成されます。これのファイルやスクリプトでは、物理サーバー名が使用されています。Sun Cluster ソフトウェアのもとで SAP ソフトウェアを使用する場合は、物理サーバーへの参照をネットワークリソース (論理ホスト名または共有アドレス) への参照で置き換える必要があります。以下の各手順では、変数 physicalserver は物理サーバーを、変数 logical-hostname はネットワークリソースをそれぞれ表します。

次の手順に従って、SAP をクラスタで実行するための準備をします。


注 -

この後の手順で変更するファイルのバックアップコピーを取ってください。


  1. SAP ソフトウェアがインストールされているノードにログインします。

  2. SAP コアインスタンスとデータベースをシャットダウンします。


    注 -

    SAP コアインスタンスやデータベースの他に、動作しているアプリケーションサーバーがある場合は、それもシャットダウンしてください。


  3. 次のディレクトリのすべてのファイルについて、その名前に物理サーバー名が含まれている場合は、それを変更します。

    • sapsidadm ホームディレクトリ - ファイルを編集する前に sapsidadm ユーザーになる必要があります。

    • orasapsid ホームディレクトリ - ファイルを編集する前に orasapsid ユーザーになる必要があります。

    • SAP プロファイルディレクトリ - ファイルを編集する前に sapsidadm ユーザーになる必要があります。

    たとえば、.sapenv_physicalserver.csh ファイルを .sapenv.csh という名前に変更します。

  4. ログファイルを除く次のディレクトリのすべてのファイルについて、その内容が物理サーバー名を参照している場合は、それを変更します。

    • sapsidadm ホームディレクトリ - ファイルを編集する前に sapsidadm ユーザーになる必要があります。

    • orasapsid ホームディレクトリ - ファイルを編集する前に orasapsid ユーザーになる必要があります。

    • SAP プロファイルディレクトリ - ファイルを編集する前に sapsidadm ユーザーになる必要があります。

    たとえば、起動スクリプトやシャットダウンスクリプトに physicalserver の参照がある場合は、それを論理ホスト名の参照に変更します。

  5. sapsidadm ユーザーで、次の例に示すような SAPLOCALHOST パラメータのエントリを追加します。


    SAPLOCALHOST=logical-hostname
    

    このエントリは、/sapmnt/SAPSID/profile ディレクトリの SAPSID_Service-StringSystem-Number_logical-hostname プロファイルファイルに追加する必要があります。

    このエントリを追加すると、外部アプリケーションサーバーはネットワークリソース (論理ホスト名または共有アドレス) を使用してコアインスタンスの場所を見つけることができるようになります。

SAP とデータベースのインストールを確認する (コアインスタンス)

この手順では、コアインスタンスが動作する可能性があるすべてのノードで SAP コアインスタンスの起動と停止をテストします。

  1. ネットワークリソースとコアインスタンスリソースを保持するフェイルオーバーリソースグループを作成します。


    # scrgadm -a -g sap-ci-resource-group
    

    注 -

    SAP コアインスタンスを特定のノード群で実行する場合は、scrgadm(1M) コマンドに -h オプションを指定します。



    # scrgadm -a -g sap-ci-resource-group [-h nodelist]
  2. 使用するすべてのネットワークリソースがネームサービスデータベースに追加されているかどうかを確認します。

  3. scrgadm コマンドを実行し、フェイルオーバーリソースグループにネットワークリソース (論理ホスト名または共有アドレス) を追加します。


    # scrgadm -a -L -g sap-ci-resource-group -l logical-hostname [-n nafo0@node1,nafo0@node2]
  4. リソースグループを有効にします。

    scswitch(1M) コマンドを実行し、リソースグループを管理状態に移行し、これをオンラインにします。


    # scswitch -Z -g sap-ci-resource-group
    
  5. コアインスタンスリソースグループを持つクラスタメンバーにログインします。

  6. コアインスタンスとデータベースを起動します。

  7. SAP GUI を起動し、SAP の初期化が正しく行われるかどうか確認します。

    デフォルトのディスパッチャポートは 3200 です。

  8. コアインスタンスとデータベースを停止します。

  9. scswitch コマンドを実行します。

    次の例の変数 sap-ci-resource-group は、コアインスタンスリソースのネットワークリソース (論理ホスト名または共有アドレス) を保持するリソースグループを示します。このリソースグループを、コアインスタンスを収容できる別のクラスタメンバーに切り替えます。


    # scswitch -z -h node -g sap-ci-resource-group
    
  10. 手順 5 から 手順 7 を繰り返し実行し、コアインスタンスを収容できるすべてのクラスタノードでコアインスタンスの起動と停止ができることを確認します。

SAP とデータベースのインストールを確認する (アプリケーションサーバー)

アプリケーションサーバーのインストールと構成を前に行っている場合は、アプリケーションサーバーが動作する可能性があるすべてのノードでこの手順を実行します。この手順では、アプリケーションサーバーの起動と停止をテストします。

  1. ネットワークリソースおよびアプリケーションサーバーリソースを保持するフェイルオーバーリソースグループを作成します。


    # scrgadm -a -g sap-as-resource-group
    

    注 -

    アプリケーションサーバーを特定のノード群で実行する場合は、scrgadm コマンドに -h オプションを指定します。



    # scrgadm -a -g sap-as-resource-group [-h nodelist]
  2. 使用するすべてのネットワークリソースがネームサービスデータベースに追加されているかどうかを確認します。

  3. scrgadm コマンドを実行し、フェイルオーバーリソースグループにネットワークリソース (論理ホスト名または共有アドレス) を追加します。


    # scrgadm -a -L -g sap-as-resource-group -l logical-hostname [-n nafo0@node1,nafo0@node2]
  4. リソースグループを有効にします。

    scswitch(1M) コマンドを実行し、リソースグループを管理状態に移行し、これをオンラインにします。


    # scswitch -Z -g sap-as-resource-group
    
  5. アプリケーションサーバーリソースグループを持つクラスタメンバーにログインします。

  6. アプリケーションサーバーを起動します。

  7. SAP GUI を起動し、SAP アプリケーションサーバーの初期化が正しく行われるかどうかを確認します。

  8. アプリケーションサーバーを停止します。

  9. scswitch コマンドを実行します。

    次の例の変数 sap-as-resource-group は、アプリケーションサーバーリソースのネットワークリソース (論理ホスト名または共有アドレス) を保持するリソースグループを示します。このリソースグループを、アプリケーションサーバーを収容できる別のクラスタメンバーに切り替えます。


    # scswitch -z -h node -g sap-as-resource-group
    
  10. 手順 5 から手順 7 を繰り返し実行し、アプリケーションサーバーを収容できるすべてのクラスタノードでアプリケーションサーバーの起動と停止ができることを確認します。

次の作業

SAP とデータベースをインストールするすべての手順が終わったら、「Sun Cluster HA for SAP の登録と構成を行う (コアインスタンス)」に進みます。

Sun Cluster HA for DBMS の構成

SAP では、さまざまなデータベースがサポートされます。使用する高可用性データベースのリソースタイプや、リソースグループ、リソースを構成する手順については、このマニュアルの適切な章を参照してください。たとえば、SAP と Oracle を使用する場合は、「Sun Cluster HA for Oracle のインストールと構成」を参照してください。

使用するデータベース用に構成するその他のリソースタイプについては、このマニュアルやデータベースのインストールマニュアルの適切な章を参照してください。このマニュアルでは、このようなリソースタイプに関し、Oracle データベースに関連するものの構成手順を説明しています。たとえば、Oracle を使用する場合は、リソースタイプ SUNW.HAStorage を設定する必要があります。詳細は、SUNW.HAStorage をリソースタイプを構成する」の手順を参照してください。

Sun Cluster HA for SAP の登録と構成

この節の手順では、次の作業を行います。

Sun Cluster HA for SAP の登録と構成を行う (コアインスタンス)

Sun Cluster HA for SAP の登録と構成 (コアインスタンス) は、次の手順で行います。

  1. コアインスタンスを収容するクラスタのノードの 1 つでスーパーユーザーになります。

  2. SAP データサービスのリソースタイプを登録します。

    コアインスタンスの場合は、scrgadm コマンドを実行してリソースタイプ SUNW.sap_ci を登録します。


    # scrgadm -a -t SUNW.sap_ci
    
  3. scrgadm コマンドを実行し、このフェイルオーバーリソースグループ内に SAP アプリケーションリソースを作成します。


    # scrgadm -a -j sap-ci-resource -g sap-ci-resource-group -t SUNW.sap_ci  -x SAPS
      ID=SAPSID  -x Ci_startup_script=ci-startup-script
      -x Ci_shutdown_script=ci-shutdown-script
    
  4. scswitch コマンドを実行し、SAP コアインスタンスリソースが含まれているリソースグループを有効にします。


    # scswitch -Z -g sap-ci-resource-group
    

Sun Cluster HA for SAP の登録と構成を行う (アプリケーションサーバー)

Sun Cluster HA for SAP の登録と構成 (アプリケーションサーバー) は、次の手順で行います。

  1. アプリケーションサーバーが収容されているクラスタのノードの 1 つでスーパーユーザーになります。

  2. SAP データサービスのリソースタイプを登録します。

    アプリケーションサーバーの場合は、scrgadm コマンドを実行してリソースタイプ SUNW.sap_as を登録します。


    # scrgadm -a -t SUNW.sap_as
    
  3. scrgadm コマンドを実行し、このフェイルオーバーリソースグループ内に SAP アプリケーションサーバーリソースを作成します。


    # scrgadm -a -j sap-as-resource -g sap-as-resource-group -t SUNW.sap_as -x 
    SAPSID=SAPSID  -x As_instance_id=as-instance-id-x As_startup_script=as-startup-script
     -x As_shutdown_script=as-shutdown-script
    
  4. scswitch コマンドを実行し、SAP アプリケーションサーバーリソースが含まれているリソースグループを有効にします。


    # scswitch -Z -g sap-as-resource-group
    

Sun Cluster HA for SAP のインストールを確認する (コアインスタンス)

この手順では、Sun Cluster HA for SAP (コアインスタンス) のインストールと Sun Cluster HA for DBMS のインストールおよび構成を確認します。

  1. SAP コアインスタンスリソースのリソースグループがあるノードにログインします。

  2. ユーザー sapsidadm になります。

  3. SAP GUI を起動し、Sun Cluster HA for SAP が正しく動作していることを確認します。

  4. コアインスタンスの stopsap スクリプトを使って SAP コアインスタンスを停止します。

    Sun Cluster ソフトウェアがコアインスタンスを再起動するはずです。これは、Sun Cluster ソフトウェアが SAP ソフトウェアを制御しているからです。

  5. scswitch コマンドを実行し、SAP リソースグループを別のクラスタメンバーに切り替えます。


    # scswitch -z -h node2 -g sap-ci-resource-group
    
  6. SAP コアインスタンスがこのノードで起動されることを確認します。

  7. 手順 1 から 手順 6 を繰り返し実行し、SAP コアインスタンスが動作する可能性があるすべてのノードをテストします。

Sun Cluster HA for SAP のインストールを確認する (アプリケーションサーバー)

SAP アプリケーションサーバーのインストールと構成が終わったら、次の手順に従って Sun Cluster HA for SAP のインストールと構成 (アプリケーションサーバー) を確認します。

  1. SAP アプリケーションサーバーリソースのリソースグループがあるノードにログインします。

  2. ユーザー sapsidadm になります。

  3. SAP GUI を起動し、Sun Cluster HA for SAP が正しく動作していることを確認します。

  4. アプリケーションサーバーの stopsap スクリプトを使って SAP アプリケーションサーバーを停止します。

    Sun Cluster ソフトウェアがアプリケーションサーバーを再起動するはずです。これは、Sun Cluster ソフトウェアが SAP ソフトウェアを制御しているからです。

  5. scswitch コマンドを実行し、SAP アプリケーションサーバーリソースのリソースグループを別のクラスタメンバーに切り替えます。


    # scswitch -z -h node2 -g sap-as-resource-group
    
  6. SAP アプリケーションサーバーがこのノードで起動されることを確認します。

  7. 手順 1 から 手順 6 を繰り返し実行し、アプリケーションサーバーが動作する可能性があるすべてのノードをテストします。

SAP 拡張プロパティの構成

この節では、Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティ (コアインスタンスおよびアプリケーションサーバー) の構成手順を説明します。通常、拡張プロパティは、コアインスタンスリソースまたはアプリケーションサーバーリソースを作成するときに、コマンド行から scrgadm -x parameter=value を実行して構成します。拡張プロパティは、第 13 章「データサービスリソースの管理」に示す手順を使ってあとで構成することもできます。

すべての Sun Cluster 拡張プロパティの説明を見る場合は、r_properties(5) と rg_properties(5) のマニュアルページを参照してください。

表 9-3 に、コアインスタンス用に設定できる SAP 拡張プロパティを示します。拡張プロパティによっては、動的に更新できるものもあります。ただし、それ以外の拡張プロパティは、SAP リソースを作成または無効にするときにしか更新できません。「調整」の欄は、各プロパティをいつ更新できるかを示しています。

表 9-3 Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティ (コアインスタンス)

プロパティカテゴリ 

プロパティ名 

説明 

SAP 構成 

 

 

SAPSID

SAP システム名または SAPSID。

デフォルト: なし

調整: 無効化されたとき

Ci_instance_ id

2 桁の SAP システム番号。 

デフォルト: 00

調整: 無効化されたとき

Ci_services_ string

コアインスタンスサービスの文字列。 

デフォルト: DVEBMGS

調整: 無効化されたとき

 

SAP の起動 

 

Ci_start_ retry_ interval

データベースへの接続を試みてからコアインスタンスを起動するまでの時間 (秒数)。 

デフォルト: 30

調整: 無効化されたとき

Ci_startup_ script

SIDadm ホームディレクトリにあるこのインスタンスに対する SAP 起動スクリプトの名前。

デフォルト: なし

調整: 無効化されたとき

SAP の停止 

 

Stop_sap_ pct

SAP プロセスの停止に使用される停止タイムアウト変数の割合。SAP シャットダウンスクリプトによってプロセスがまず停止されてから、Process Monitor Facility (PMF) の呼び出しによって、プロセスが停止され、次に消去されます。 

デフォルト: 95

調整: 無効化されたとき

Ci_shutdown_ script

SIDadm ホームディレクトリにあるこのインスタンスに対する SAP シャットダウンスクリプトの名前。

デフォルト: なし

調整: 無効化されたとき

検証 

Message_ server_name

SAP メッセージサーバーの名前。  

 

デフォルト: sapmsSAPSID

調整: 無効化された時

Lgtst_ms_ with_ logicalhostname

SAP lgtst ユーティリティーで SAP メッセージサーバーを検査する方法。lgtst ユーティリティーでは、SAP メッセージサーバーの場所としてホスト名 (IP アドレス) が必要です。このホスト名は、Sun Cluster の論理ホスト名か、localhost (ループバック) 名です。このリソースプロパティに TRUE を設定すると論理ホスト名が、そうでない場合は localhost 名が使用されます。

 

デフォルト: TRUE

調整: 任意の時点

Check_ms_retry

SAP メッセージサーバーの検査に何回失敗したら、これを完全な失敗として報告し、Resource Group Manager (RGM) を起動するか。 

 

デフォルト: 2

調整: 無効化されたとき

Probe_ timeout

検証のタイムアウト値 (秒)。 

 

デフォルト: 60

調整: 任意

Monitor_ retry_count

障害モニターのために行える PMF 再起動の回数。  

 

デフォルト: 4

調整: 任意

Monitor_ retry_ interval

障害モニターを再起動する間隔 (分)。 

 

デフォルト: 2

調整: 任意

開発システム 

 

 

 

Shutdown_dev

RGM が開発システムをシャットダウンしてからコアインスタンスを起動すべきかどうか。 

 

デフォルト: FALSE

調整: 無効化されたとき

Dev_sapsid

開発システムの SAP システム名。Sun Cluster HA for SAP では、Shutdown_devTRUE に設定された場合、このプロパティが必要です。

 

デフォルト: なし

調整: 無効化されたとき

Dev_shutdown_ script

開発システムのシャットダウンに使用するスクリプト。Sun Cluster HA for SAP では、Shutdown_devTRUE に設定された場合、このプロパティが必要です。

 

デフォルト: なし

調整: 無効化されたとき

Dev_stop_pct

起動タイムアウトの割合がどのくらいになったら、Sun Cluster HA for SAP が開発システムをシャットダウンしてコアインスタンスを起動するか。 

 

デフォルト: 20

調整: 無効化されたとき

次の表に、SAP (アプリケーションサーバー) 用に設定できる拡張プロパティを示します。

表 9-4 Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティ (アプリケーションサーバー)

プロパティカテゴリ 

プロパティ名 

説明 

SAP 構成 

 

 

SAPSID

アプリケーションサーバーの SAP システム名または SAPSID。 

 

デフォルト: なし

調整: 無効化されたとき

As_instance_ id

アプリケーションサーバーの 2 桁の SAP システム番号。 

 

デフォルト: なし

調整: 無効化されたとき

As_services_ string

アプリケーションサーバーサービスの文字列。 

 

デフォルト: D

調整: 無効化されたとき

SAP の起動 

 

 

As_db_retry_ interval

データベースへの接続を試みてからアプリケーションサーバーを起動するまでの時間 (秒)。 

 

デフォルト: 30

調整: 無効化されたとき

As_startup_ script

アプリケーションサーバーの SAP 起動スクリプトの名前。 

 

デフォルト: なし

調整: 無効化されたとき

SAP の停止 

 

 

Stop_sap_ pct

SAP プロセスの停止に使用される停止タイムアウト変数の割合。SAP シャットダウンスクリプトによってプロセスがまず停止されてから、Process Monitor Facility (PMF) の呼び出しによって、プロセスが停止され、次に消去されます。 

 

デフォルト: 95

調整: 無効化されたとき

As_shutdown_ script

アプリケーションサーバーに対する SAP シャットダウンスクリプトの名前。 

 

デフォルト: なし

調整: 無効化されたとき

検証 

Probe_ timeout

検証のタイムアウト値 (秒)。 

 

デフォルト: 60

調整: 任意の時点

Monitor_ retry_count

障害モニターのためにこの検証で行うことができる PMF 再起動の回数。 

 

デフォルト: 4

調整: 任意の時点

Monitor_ retry_ interval

障害モニターを再起動する間隔 (分)。 

 

デフォルト: 2

調整: 任意の時点

Sun Cluster HA for SAP の障害モニター

Sun Cluster HA for SAP 障害モニターでは、SAP プロセスとデータベースが検査されます。SAP データベースが正常であるかどうかは、SAP リソースの障害履歴に影響を与えます。そし、この障害履歴は障害モニターのアクションを引き起こします。このアクションには、アクションなしと、再起動、フェイルオーバーがあります。

SAP プロセスとは異なり、データベースが正常であるかどうかは SAP リソースの障害履歴に影響を与えません。ただし、これによって、SAP 障害モニターは syslog メッセージを記録し、データベースを使用する SAP リソースの状態をそれにしたがって設定します。

Sun Cluster HA for SAP 障害検証 (コアインスタンス)

コアインスタンスの場合には、障害検証機能によって次の手順が実行されます。

  1. メッセージサーバーとディスパッチャのプロセス ID を取得します。

  2. 無限にループします (Thorough_probe_interval の間だけスリープします)。

  3. SAP リソースを検査します。

    1. 異常終了- SAP プロセスツリーの中に異常があることを PMF が検出すると、障害モニターは、これを致命的な障害とみなします。障害モニターは、リソースの障害履歴に従って、SAP リソースを再起動するか、または別のノードにフェイルオーバーします。

    2. 検証機能による SAP リソースの検査 - 検証機能は、ps(1) コマンドを使って SAP メッセージサーバーとメインディスパッチャのプロセスを検査します。これらのプロセスの中にシステムのアクティブプロセスリストに存在しないものがあると、障害モニターはこれを致命的な障害とみなします。

      パラメータ Check_ms_retry にゼロより大きい値が設定されていると、検証機能はメッセージサーバーの接続を検査します。拡張プロパティ Lgtst_ms_with_logicalhostname にデフォルト値 TRUE が設定されていると、検証機能は、メッセージサーバー接続のテストを lgtst ユーティリティーを使って行います。検証機能は、SAP リソースグループに指定されている論理ホスト名インタフェースを使って SAP 提供のユーティリティー lgtst を呼び出します。拡張プロパティ Lgtst_ms_with_logicalhostnameTRUE 以外に設定されていると、検証機能は、ノードの localhost 名 (ループバックアップインタフェース) を指定して lgtst を呼び出します。

      lgtst ユーティリティーの呼び出しが失敗した場合、SAP メッセージサーバーの接続が機能していません。このような場合、障害モニターはこれを部分的な障害とみなし、SAP の再起動やフェイルオーバーをすぐにはトリガーしません。しかし、部分的な障害が 2 度起こると、障害モニターは、次の条件が真であれば、これを致命的な障害とみなします。

      1. 拡張プロパティ Check_ms_retry2 が構成されている。

      2. 2 度の部分的障害が、リソースプロパティ Retry_interval に設定されている再試行期間中に発生している。

      致命的な障害では、リソースの障害履歴にもとづいてローカル再起動またはフェイルオーバーがトリガーされます。

    3. 検証機能によるデータベース接続の状態 - 検証機能は、SAP 提供のユーティリティー R3trans を使ってデータベース接続の状態を検査します。Sun Cluster HA for SAP 障害検証機能は、SAP がこのデータベースに接続できるかどうかを確認します。ただし、Sun Cluster HA for SAP は、高可用性データベースの障害検証機能を使ってデータベースが正常であるかどうかを判定します。データベース接続の状態検査で異常が検出されると、障害モニターは「Database might be down」というメッセージを syslog に書き込み、SAP リソースの状態を DEGRADED に設定します。検証機能は、データベースの状態を再び検査したときに接続が再確立されていれば、「Database is up」というメッセージを syslog に書き込み、SAP リソースの状態を OK に設定します。

  4. 障害履歴を調べます。

    障害モニターは、障害履歴に基づいて次のアクションのどれかを行います。

    • アクションなし

    • ローカル再起動

    • フェイルオーバー

Sun Cluster HA for SAP 障害検証 (アプリケーションサーバー)

アプリケーションサーバーの場合には、障害検証機能によって次の手順が実行されます。

  1. メインディスパッチャのプロセス ID を取得します。

  2. 無限にループします (Thorough_probe_interval の間だけスリープします)。

  3. SAP リソースを検査します。

    1. 異常終了 - SAP プロセスツリーの中に異常があることを PMF が検出すると、障害モニターは、これを致命的な障害とみなします。障害モニターは、リソースの障害履歴に従って、SAP リソースを再起動するか、別のノードにフェイルオーバーします。

    2. 検証機能による SAP リソースの検査 - 検証機能は、ps(1) コマンドを使って SAP メッセージサーバーとメインディスパッチャのプロセスを検査します。SAP メインディスパッチャプロセスの中にシステムのアクティブプロセスリストに存在しないものがあると、障害モニターはこれを致命的な障害とみなします。

    3. 検証機能によるデータベース接続の状態 - 検証機能は、SAP 提供のユーティリティー R3trans を使ってデータベース接続の状態を検査します。Sun Cluster HA for SAP 障害検証機能は、SAP がこのデータベースに接続できるかどうかを確認します。ただし、Sun Cluster HA for SAP は、高可用性データベースの障害検証機能を使ってデータベースが正常であるかどうかを判定します。データベース接続の状態検査で異常が検出されると、障害モニターは「Database might be down」というメッセージを syslog に書き込み、SAP リソースの状態を DEGRADED に設定します。検証機能は、データベースの状態を再び検査したときに接続が再確立されていれば、「Database is up」というメッセージを syslog に書き込み、SAP リソースの状態を OK に設定します。

  4. 障害履歴を調べます。

    障害モニターは、障害履歴に基づいて次のアクションのどれかを行います。

    • アクションなし

    • ローカル再起動

    • フェイルオーバー