Sun Cluster 3.1 データサービスのインストールと構成

第 13 章 Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成

この章では、Sun Cluster HA for SAP liveCache をインストールし、構成する手順について説明します。

この章の内容は次のとおりです。

Sun Cluster HA for SAP liveCache の概要

この節の情報を使用して、Sun Cluster HA for SAP liveCache が liveCache をどのように高可用性にするかを理解してください。

フェイルオーバーおよびスケーラブルサービスの概念情報については、『Sun Cluster 3.1 の概念』を参照してください。

Sun Cluster HA for SAP liveCache は、SAP Advanced Planner & Optimizer (APO) System におけるシングルポイント障害を排除するために、liveCache に障害監視機能と自動フェイルオーバー機能を提供し、SAP xserver に障害監視機能と自動再起動機能を提供します。次の表に、Sun Cluster 構成において SAP Supply Chain Management (SCM) コンポーネントを最もよく保護するデータサービスを示します。また、図 13–1 に、Sun Cluster 構成において SAP SCM コンポーネントを最もよく保護するデータサービスを図示します。

表 13–1 liveCache コンポーネントの保護

liveCache コンポーネント 

SAP コンポーネントを保護するデータサービス 

SAP APO セントラルインスタンス 

Sun Cluster HA for SAP 

リソースタイプは、SUNW.sap_ci_v2

このデータサービスの詳細については、第 9 章「Sun Cluster HA for SAP のインストールと構成」を参照してください。

SAP APO データベース 

Sun Cluster ソフトウェアで、SAP によりサポートされる高可用性なすべてのデータベース 

SAP APO アプリケーションサーバー 

Sun Cluster HA for SAP 

リソースタイプは、SUNW.sap_as_v2

このデータサービスの詳細については、第 9 章「Sun Cluster HA for SAP のインストールと構成」を参照してください。

SAP liveCache AP xserver 

 

Sun Cluster HA for SAP liveCache 

リソースタイプは、SUNW.sap_xserver

SAP liveCache データベース 

Sun Cluster HA for SAP liveCache 

リソースタイプは、SUNW.sap_livecache

NFS ファイルシステム 

Sun Cluster HA for NFS 

リソースタイプは、SUNW.nfs

このデータサービスの詳細については、第 7 章「Sun Cluster HA for Network File System (NFS) のインストールと構成」を参照してください。

図 13–1 liveCache コンポーネントの保護

この図は、liveCache コンポーネントの保護を説明しています。前述の表は、これらのコンポーネントの保護について概説しています。

Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成

表 13–2 は、Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成のための作業を示しています。ここに示されている順に作業を実行してください。

表 13–2 作業マップ: Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成

作業 

参照箇所 

Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールの計画 

SAP のマニュアル 

第 1 章「Sun Cluster データサービスの計画」

 

Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成の計画

 

ノードとディスクの準備 

ノードの準備

 

liveCache のインストールと構成 

liveCache のインストールと構成

 

liveCache のクラスタ上での動作可能化

 

liveCache のインストールと構成の確認 

liveCache のインストールと構成の確認

 

Sun Cluster HA for SAP liveCache パッケージのインストール 

Sun Cluster HA for SAP liveCache パッケージのインストール

 

Sun Cluster HA for SAP liveCache をフェイルオーバーデータサービスとして登録および構成 

Sun Cluster HA for SAP liveCache の登録と構成

 

Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成の確認 

Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成の確認

 

Sun Cluster HA for SAP liveCache 障害モニターの理解 

Sun Cluster HA for SAP liveCache の障害モニターとは

 

Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成の計画

この節では、Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成の計画に必要な情報について説明します。


注 –

まだ SAP のマニュアルを読んでいない場合は、Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成の計画を始める前に SAP のマニュアルを読んでください。SAP のマニュアルには、Sun Cluster のマニュアルで概説されたり Sun Cluster ソフトウェアでは指示されない構成上の制限および要件について説明されているからです。


構成要件


注意 – 注意 –

これらの要件を厳守しなければ、データサービスの構成がサポートされない可能性があります。


この節で説明する要件を使用して、 Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成を計画します。これらの要件は、Sun Cluster HA for SAP liveCache のみに適用されます。Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成を行う前に、これらの要件を満たす必要があります。

すべてのデータサービスに適用される要件については、データサービス固有の要件の識別を参照してください。

標準のデータサービス構成

Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成を計画するときは、この節で説明する標準構成を使用します。Sun Cluster HA for SAP liveCache は、この節で説明する標準構成をサポートしています。Sun Cluster HA for SAP liveCache は、このほかの構成もサポートします。サポートされるほかの構成については、Sun サービスのプロバイダにお問い合わせください。

図 13–2 は、SAP APO セントラルインスタンス、APO アプリケーションサーバー、データベース、および liveCache からなる 4 ノードクラスタを示しています。APO セントラルインスタンス、データベース、および liveCache は、フェイルオーバーデータサービスとして構成されます。APO アプリケーションサーバーおよび SAP xserver は、スケーラブルデータサービスとして構成されます。

図 13–2 4 ノードクラスタ

図中の説明: 前述のコンテキストはこの図を説明しています。

構成の検討事項

この節で説明する情報を使用して、Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成を計画します。この節の情報は、Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成における決定事項が与える影響について検討するのに役立ちます。

構成計画の確認事項

この節の確認事項を使用して、Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成を計画します。これらの確認事項に対する答えを、『Sun Cluster 3.1 ご使用にあたって』のデータサービスワークシートに記入します。これらの確認事項については、構成の検討事項を参照してください。

ノードおよびディスクの準備

この節では、ノードおよびディスクを準備する手順について説明します。

ノードの準備

次の手順を使用して、liveCache のインストールと構成用にノードを準備します。

  1. すべてのノードでスーパーユーザーになります。

  2. /etc/nsswitch.conf ファイルを構成します。

    1. liveCache リソースをマスターできる各ノードで、/etc/nsswitch.conf ファイルに groupproject、および passwd データベースエントリ用に、次のエントリの 1 つを指定します。


      database:
      database: files 
      database: files [NOTFOUND=return] nis
      database: files [NOTFOUND=return] nisplus
    2. liveCache リソースをマスターできる各ノードで、/etc/nsswitch.conf ファイルの protocols データベースエントリで files が先頭になるように指定します。

      例:


      protocols: files nis

    Sun Cluster HA for SAP liveCache は、liveCache の起動と停止に su - user コマンドと dbmcli コマンドを使用します。

    クラスタノードのパブリックネットワークに障害が発生すると、ネットワーク情報ネームサービスが使用不能になることがあります。前述の変更を /etc/nsswitch.conf ファイルに適用することで、su(1M) コマンドと dbmcli コマンドは、NIS/NIS+ ネームサービスを参照しなくなります。

liveCache のインストールと構成

この節では、liveCache をインストールし構成する手順について説明します。

liveCache のインストールと構成

次の手順を使用して、liveCache のインストールと構成を行います。

  1. SAP APO System のインストールと構成を行います。

    Sun Cluster ソフトウェア上に SAP APO System をインストールして構成する方法については、Sun Cluster HA for SAP のインストールと構成を参照してください。

  2. liveCache をインストールします。


    注 –

    必要な論理ホストをまだ作成していない場合は、物理ホスト名を使用して liveCache をインストールしてください。


    詳細については、SAP のマニュアルを参照してください。

  3. 次のコマンドを使用して、SAP APO 管理者ユーザーと liveCache 管理者ユーザー用に .XUSER.62 ファイルを作成します。


    # dbmcli -d LC-NAME -n logical-hostname -us user,passwd
    
    LC-NAME

    liveCache データベースインスタンスの大文字名

    logical-hostname

    liveCache リソースで使用される論理ホスト名


    注意 – 注意 –

    このファイルを正しく作成しないと、SAP APO トランザクション LC10 も Sun Cluster HA for SAP liveCache も正常に機能しません。


  4. liveCache をインストールしたノードの /usr/spool/sql を liveCache リソースが動作するすべてのノードにコピーします。これらのファイルの所有権と、liveCache をインストールしたノード上にあるファイルの所有権が、すべてのノードで同じであることを確認します。

    例:


    # tar cfB - /usr/spool/sql | rsh phys-schost-1 tar xfB -
    

liveCache のクラスタ上での動作可能化

標準の SAP インストール時に、liveCache は物理ホスト名を使用してインストールされます。Sun Cluster 環境で liveCache が 動作するには、論理ホスト名を使用するように liveCache を変更する必要があります。次の手順を使用して、クラスタで liveCache を実行できるようにします。

  1. ネットワークリソースと liveCache リソースを保持するためのフェイルオーバーリソースグループを作成します。


    # scrgadm -a -g livecache-resource-group [-h nodelist]
  2. 使用するすべてのネットワークリソースがネームサービスデータベースに追加されているかどうかを確認します。

  3. フェイルオーバーリソースグループにネットワークリソース (論理ホスト名) を追加します。


    # scrgadm -a -L -g livecache-resource-group\ -l lc-logical-hostname [-n netiflist]
  4. フェイルオーバーリソースグループを有効にします。


    # scswitch -Z -g livecache-resource-group
    
  5. liveCache リソースグループをホストするノードにログオンします。

  6. liveCache リソースグループをホストするノードで SAP xserver を手動で起動します。


    # su - lc-nameadm
    # x_server start
    
    lc-name

    liveCache データベースインスタンスの小文字名

  7. SAP GUI を使用してユーザー DDIC で SAP APO System にログオンします。

  8. トランザクション LC10 に進み、liveCache ホストを 手順 3 で定義した論理ホスト名に変更します。


    liveCache host: lc-logical-hostname
    

liveCache のインストールと構成の確認

この節では、liveCache のインストールと構成を確認する手順について説明します。

liveCache のインストールと構成の確認

次の手順を使用して、liveCache のインストールと構成の確認を行います。この手順では、まだデータサービスをインストールしていないため、アプリケーションが高可用性であることの確認は行いません。

  1. SAP GUI を使用してユーザー DDIC で SAP APO System にログオンします。

  2. トランザクション LC10 へ進みます。

  3. liveCache の状態をチェックできることを確認します。

  4. 次の dbmcli コマンドがユーザー lc_nameadm で機能することを確認します。


    # dbmcli -d LC_NAME -n logical-hostname db_state
    # dbmcli -d LC_NAME -n logical-hostname db_enum
    

Sun Cluster HA for SAP liveCache パッケージのインストール

この節では、Sun Cluster HA for SAP liveCache パッケージのインストール手順について説明します。

Sun Cluster HA for SAP liveCache パッケージのインストール

次の手順を使用して、Sun Cluster HA for SAP liveCache パッケージをインストールします。この手順を実行するには、Sun Cluster Agents CD-ROM が必要です。この手順では、Sun Cluster の初期インストール時にデータサービスパッケージがインストールされていないことを前提としています。

  1. Sun Cluster Agents CD-ROM を CD-ROM ドライブに挿入します。

  2. オプションは指定せずに、scinstall ユーティリティーを実行します。

    scinstall ユーティリティーが対話型モードで起動します。

  3. 「新しいデータサービスのサポートをこのクラスタノードに追加」メニューオプションを選択します。

    scinstall ユーティリティーにより、ほかの情報を入力するためのプロンプトが表示されます。

  4. Sun Cluster Agents CD-ROM のパスを指定します。

    このユーティリティーには、この CD-ROM は “data services cd” と示されます。

  5. インストールするデータサービスを指定します。

    選択したデータサービスが scinstall ユーティリティーによって示され、この選択内容の確認が求められます。

  6. scinstall ユーティリティーを終了します。

  7. ドライブから CD-ROM を取り出します。

Sun Cluster HA for SAP liveCache の登録と構成

この節では、Sun Cluster HA for SAP liveCache を構成する手順について説明します。

Sun Cluster HA for SAP liveCache 拡張プロパティ

表 13–3表 13–4 の拡張プロパティを使用して、リソースを作成します。リソースを作成するときは、次のコマンド行を使用して拡張プロパティを構成します。


scrgadm -x parameter=value 
すでにリソースを作成してある場合は、第 15 章「データサービスリソースの管理」 の手順を使用して拡張プロパティを構成してください。拡張プロパティの中には動的に変更できるものもありますが、それ以外の拡張プロパティは、リソースを作成するか無効にするときにしか更新できません。表 13–3表 13–4 の「調整」の欄は、各プロパティをいつ更新できるかを示しています。Sun Cluster の全プロパティの詳細は、付録 A を参照してください。

表 13–3 Sun Cluster HA for SAP liveCache (SUNW.sap_xserver) 拡張プロパティ

名前/データタイプ 

説明 

Confdir_List (オプション) 文字列

liveCache ソフトウェアのためのディレクトリ、およびインスタンスディレクトリ。 

デフォルト:/sapdb

範囲: なし

調整:作成時

Monitor_retry_count

障害モニターに許されている PMF 再起動の回数。 

 

デフォルト:4

調整:任意の時点

Monitor_retry_ interval

障害モニターを再起動する間隔 (分単位)。 

 

デフォルト:2

調整: 任意の時点

Probe_timeout

検証のタイムアウト値 (秒)。 

 

デフォルト:120

調整: 任意の時点

Soft_Stop_Pct (オプション) 整数

SAP xserver の停止に使用される停止タイムアウトの割合。 SAP ユーティリティー x_server stop を使用して SAP xserver を停止した後、SIGKILL を使用して SAP xserver のすべてのプロセスを停止します。

デフォルト:50

範囲: 1-100

調整:無効になっている時

Xserver_User (オプション) 文字列

SAP xserver システム管理者のユーザー名。 

デフォルト:root

範囲: なし

調整:作成時

表 13–4 Sun Cluster HA for SAP liveCache (SUNW.sap_livecache) 拡張プロパティ

名前/データタイプ 

説明 

Confdir_list (オプション) 文字列

liveCache ソフトウェアのためのディレクトリ、およびインスタンスディレクトリ。 

デフォルト:/sapdb

範囲: なし

調整:作成時

Livecache_name (必須) 文字列

liveCache データベースインスタンスの名前。 

デフォルト:なし

範囲: なし

調整:作成時

Monitor_retry_count

障害モニターに許されている PMF 再起動の回数。 

 

デフォルト:4

調整:任意の時点

Monitor_retry_interval

障害モニターを再起動する間隔 (分単位)。 

 

デフォルト:2

調整: 任意の時点

Probe_timeout

検証のタイムアウト値 (秒)。 

 

デフォルト:90

調整: 任意の時点

Sun Cluster HA for SAP liveCache の登録と構成

次の手順を使用して、Sun Cluster HA for SAP liveCache を liveCache データベースのフェイルオーバーデータサービスとして構成し、SAP xserver をスケーラブルデータサービスとして構成します。この手順では、データサービスパッケージがすでにインストール済みであることを前提としています。Sun Cluster の初期インストール時に Sun Cluster HA for SAP liveCache パッケージをインストールしていない場合は、Sun Cluster HA for SAP liveCache パッケージのインストールに進み、データサービスパッケージをインストールしてください。インストール済みの場合は、この手順を使用して Sun Cluster HA for SAP liveCache を構成します。


注意 – 注意 –

同じクラスタ上に複数の SAP xserver リソースを構成しないでください。1 つの SAP xserver は複数の liveCache インスタンスにサービスを提供します。同じクラスタ上で複数の SAP xserver リソースが動作すると、SAP xserver リソース間で衝突が生じます。このような衝突が生じると、SAP xserver リソースがすべて利用できなくなります。SAP xserver を 2 度起動しようとすると、Address already in use というエラーメッセージが表示されます。


  1. liveCache リソースをホストするクラスタ内のノードの 1 つでスーパーユーザーになります。

  2. lccluster ファイルを lcinit ファイルと同じ場所にコピーします。


    # cp /opt/SUNWsclc/livecache/bin/lccluster \
    /sapdb/LC-NAME/db/sap
    
    LC-NAME

    liveCache データベースインスタンスの大文字名

  3. lccluster ファイルを編集して、put-LC_NAME-hereput-Confdir_list-here の値を置き換えます。

    1. lccluster ファイルを開きます。


      # vi /sapdb/LC-NAME/db/sap/lcclusterLC_NAME="put-LC_NAME-here"
      CONFDIR_LIST="put-Confdir_list-here"
    2. put-LC_NAME-here を liveCache インスタンス名で置き換えます。liveCache インスタンス名は、Livecache_Name 拡張プロパティで定義した値になります。

      例については、手順 c を参照してください。


      LC_NAME="liveCache-instance-name"
      
    3. put-Confdir_list-hereConfidir_list 拡張プロパティの値で置き換えます。


      CONFDIR_LIST="liveCache-software-directory"
      

    例:

    liveCache インスタンス名が LC1 で、liveCache ソフトウェアディレクトリが /sapdb の場合、lccluster スクリプトを次のように編集します。


    LC_NAME="LC1"
    CONFDIR_LIST="/sapdb"
    
  4. SAP xserver のリソースタイプを登録します。


    # scrgadm -a -t SUNW.sap_xserver
    
  5. SAP xserver のスケーラブルリソースグループを作成します。SAP xserver は、liveCache が動作するすべての潜在ノードで実行するように構成します。


    注 –

    liveCache がフェイルオーバーできるすべてのノード上で SAP xserver が起動するように、SAP xserver を構成します。この構成を実装するには、SAP xserver リソースグループと liveCache リソースグループの nodelist パラメータに同じノードが含まれている必要があります。さらに、SAP xserver リソースの desired_primariesmaximum_primaries の値は、liveCache リソースの nodelist パラメータにリストされたノードの数と同じでなければなりません。



    # scrgadm -a -g xserver-resource-group \
    -y Maximum_primaries=value \
    -y Desired_primaries=value \
    -h nodelist
    
  6. このスケーラブルリソースグループの中に SAP xserver リソースを作成します。


    # scrgadm -a -j xserver-resource\
     -g xserver-resource-group -t SUNW.sap_xserver 
    

    どのような拡張プロパティがあるかについては、Sun Cluster HA for SAP liveCache 拡張プロパティ を参照してください。

  7. SAP xserver リソースが含まれているスケーラブルリソースグループを有効にします。


    # scswitch -Z -g xserver-resource-group
  8. HAStoragePlus リソースを liveCache リソースグループに追加します。


    # scrgadm -a -t SUNW.HAStoragePlus
    # scrgadm -a -j livecache-storage-resource -g livecache-resource-group \
    -t SUNW.HAStoragePlus -x filesystemmountpoints=mountpoint,... \
    -x globaldevicepaths=livecache-device-group
    

    HAStoragePlus リソースの設定手順については、HAStoragePlus リソースタイプの設定を参照してください。

  9. liveCache リソースを有効にします。


    # scswitch -e -j livecache-storage-resource
    
  10. liveCache データベースのリソースタイプを登録します。


    # scrgadm -a -t SUNW.sap_livecache
    
  11. liveCache のクラスタ上での動作可能化で作成したフェイルオーバーリソースグループに liveCache リソースを作成します。


    # scrgadm -a -j livecache-resource -g livecache-resource-group \
    -t SUNW.sap_livecache -x livecache_name=LC-NAME \
    -y resource_dependencies=livecache-storage-resource
    
  12. SAP xserver と liveCache との間の依存性を設定します。


    # scrgadm -c -g livecache-resource-group \
    -y rg_dependencies=xserver-resource-group
    
  13. liveCache リソースが含まれているフェイルオーバーリソースグループを有効にします。


    # scswitch -Z -g livecache-resource-group
    
  14. liveCache がフェイルオーバーできるノード上で APO アプリケーションサーバーを実行しているかどうかを確認します。

    • 実行していない場合は、この手順を完了します。

    • 実行している場合は、手順 15に進みます。

  15. APO アプリケーションサーバーのリソースグループが、すでに RGOffload リソースの rg_to_offload リストに含まれているかどうかを確認します。


    # scrgadm -pvv | grep -i rg_to_offload | grep value:
    
    • 含まれている場合は、この手順を完了します。

    • 含まれていない場合は、liveCache リソースグループへの RGOffload リソースの追加を検討してください。

      この構成により、APO アプリケーションサーバーが動作していたノードに liveCache リソースがフェイルオーバーした場合、APO アプリケーションサーバーを自動的に停止することができます。

      RGOffload リソースの設定手順については、RGOffload リソースの設定を参照してください。

Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成の確認

この節では、データサービスが正しくインストールされ構成されていることを確認する手順を説明します。

Sun Cluster HA for SAP liveCache のインストールと構成の確認

次の手順を使用して、Sun Cluster HA for SAP liveCache が正しくインストールされ構成されていることを確認します。次の表の情報を使用して、liveCache データベースのさまざまな状態を理解してください。

表 13–5 liveCache データベースの状態

状態 

説明 

OFFLINE

liveCache が動作していません。 

COLD

管理作業用に liveCache が利用可能です。 

WARM

liveCache がオンラインです。 

STOPPED INCORRECTLY

liveCache が不正に停止されました。liveCache が起動または停止する間の中間状態の 1 つです。 

ERROR 

現在の状態を判断できません。liveCache が起動または停止している間の中間状態の 1 つです。 

UNKNOWN

liveCache が起動または停止する間の中間状態の 1 つです。 

  1. liveCache リソースが含まれているリソースグループをホストするノードにログオンし、障害モニター機能が正しく動作していることを確認します。

    1. liveCache のすべてのプロセスを停止することにより、liveCache を異常終了させます。

      この場合、Sun Cluster ソフトウェアが liveCache を再起動します。

      このように動作しない場合、Sun Cluster HA for SAP liveCache の登録と構成手順 2手順 3 が正しく実行されていない可能性があります。


      # ps -ef|grep sap|grep kernel
      # kill -9 livecache-processes
      
    2. LC10 の「Stop liveCache」ボタンを使用するか、lcinit コマンドを使用して liveCache を終了します。

      この場合 Sun Cluster ソフトウェアは、liveCache を再起動しません。ただし、liveCache リソースの状態メッセージは、LC10 の「 Stop liveCache」ボタンまたは lcinit コマンドを使用して Sun Cluster ソフトウェアの外から liveCache が停止されたことを示します。liveCache リソースの状態は、 UNKNOWN になります。LC10 の「Start liveCache」ボタンまたは lcinit コマンドを使用して liveCache を正常に起動できた場合、Sun Cluster HA for SAP liveCache 障害モニターはリソースの状態と状態メッセージを更新し、Sun Cluster ソフトウェアの制御下で liveCache が動作していることを示します。

      このように動作しない場合、Sun Cluster HA for SAP liveCache の登録と構成手順 2手順 3 が正しく実行されていない可能性があります。

  2. SAP GUI を使用してユーザー DDIC で SAP APO にログオンし、トランザクション LC10 を使用して liveCache が正常に起動されていることを確認します。

  3. ルートユーザーになって、liveCache リソースグループを別のノードに切り替えます。


    # scswitch -z -g livecache-resource-group -h node2
    
  4. liveCache リソースが動作できる各潜在ノードに対して、手順 1 から 手順 3 までを繰り返します。

  5. SAP xserver リソースをホストするノードにログオンし、障害モニターが正しく機能することを確認します。

    SAP xserver のすべてのプロセスを停止することで、SAP xserver を異常終了します。


    # ps -ef|grep xserver
    # kill -9 xserver-process
    

Sun Cluster HA for SAP liveCache の障害モニターとは

この節の情報を使用して、Sun Cluster HA for SAP liveCache 障害モニターについて理解してください。この節では、Sun Cluster HA for SAP liveCache 障害モニターの検証アルゴリズム や機能性について説明します。また、検証に失敗した場合の状況、メッセージ、回復アクションに関する説明と、検証に成功した場合の状況およびメッセージについての説明も提供します。

拡張プロパティ

Sun Cluster HA for SAP liveCache が使用する拡張プロパティについては、Sun Cluster HA for SAP liveCache 拡張プロパティを参照してください。

モニター検査メソッド

liveCache リソースの Monitor_check メソッドは、SAP xserver がこのノード上で利用可能かどうかを検査します。SAP xserver がこのノード上で利用できない場合、このメソッドはエラーを返してこのノードへの liveCache のフェイルオーバーを拒否します。

このメソッドは、SAP xserver と liveCache 間の、リソースグループを横断するリソース依存を強制するために必要です。

アルゴリズムと機能性の検証

Sun Cluster HA for SAP liveCache には、リソースタイプ毎に障害モニターがあります。

SAP xserver 障害モニター

SAP xserver の親プロセスは、プロセスモニター pmfadm の制御下にあります。親プロセスが停止または強制終了した場合、プロセスモニターは SAP xserver 障害モニターに照会し、SAP xserver 障害モニターは取るべきアクションを判断します。

SAP xserver 障害モニターは、クラスタ内およびスケーラブルリソースグループ内の複数のノード上で動作します。SAP xserver 障害モニターは、次の手順を繰り返し実行します。

  1. Thorough_probe_interval の間、休止します。

  2. SAP ユーティリティーdbmclidb_enum を使用して SAP xserver の可用性を検査します。

    • SAP xserver が利用可能でない場合、SAP xserver の検証機能は SAP xserver リソースを再起動し、再起動の最大数に到達するとフェイルオーバーします。

    • 検査処理中にシステムエラーメッセージが syslog に書き込まれた場合、SAP xserver 検証機能は一部に失敗が生じたと判断します。probe_interval の処理中に、システムエラーメッセージの syslog への書き込みが 4 回発生した場合、SAP xserver 検証機能は SAP xserver を再起動します。

liveCache 障害モニター

liveCache 検証機能は、liveCache 親プロセスの存在、liveCache データベースの状態、およびユーザーによって liveCache が Sun Cluster ソフトウェアの外から 意図的に停止されたかどうかを検査します。ユーザーが Sun Cluster ソフトウェアの外から LC10 の「Stop liveCache」ボタンまたは lcinit コマンドを使用して liveCache を停止した場合、liveCache 検証機能は、ユーザーが Sun Cluster ソフトウェアの外から liveCache を意図的に停止したと判断します。

ユーザーが LC10 の「Stop liveCache」ボタンまたは lcinit コマンドを使用して Sun Cluster ソフトウェアの外から liveCache を意図的に停止した場合、Sun Cluster HA for SAP liveCache 障害モニターはこのアクションを反映してリソース状態と状態メッセージを更新しますが、liveCache は再起動しません。ユーザーが LC10 の「Start liveCache」ボタンまたは lcinit コマンドを使用して Sun Cluster ソフトウェアの外から正常に liveCache を起動した場合、Sun Cluster HA for SAP liveCache 障害モニターは liveCache が Sun Cluster ソフトウェアの制御下で動作していることを反映するようリソース状態と状態メッセージを更新します。また、Sun Cluster HA for SAP liveCache 障害モニターは、liveCache が OFFLINE であることを検知した場合に適切なアクションを取ります。

liveCache データベース状態によって、liveCache が動作していないか、liveCache 親プロセスの終了が報告された場合、Sun Cluster HA for SAP liveCache 障害モニターは liveCache を再起動するかまたは、フェイルオーバーします。

Sun Cluster HA for SAP liveCache 障害モニターは、次の手順を繰り返し実行します。任意の手順で liveCache is offline が返された場合、liveCache 検証機能は、liveCache を再起動するかフェイルオーバーします。

  1. Thorough_probe_interval の間、休止します。

  2. dbmcli ユーティリティーと db_state を使用して、liveCache データベース状態を検査します。

  3. liveCache がオンラインの場合、liveCache 検証機能は liveCache の親プロセスを検査します。

    • 親プロセスが終了している場合、liveCache 検証機能は liveCache is offline を返します。

    • 親プロセスがオンラインの場合、liveCache 検証機能は OK を返します。

  4. liveCache がオンラインでない場合、liveCache 検証機能は、ユーザーが LC10 の「Stop liveCache」ボタンまたは lcinit コマンドを使用して Sun Cluster ソフトウェアの外から liveCache を停止したかどうかを判断します。

  5. ユーザーが LC10 の「Stop liveCache」ボタンまたは lcinit コマンドを使用して Sun Cluster ソフトウェアの外から liveCache を停止した場合、OK が返されます。

  6. ユーザーが LC10 の「Stop liveCache」ボタンまたは lcinit コマンドを使用して Sun Cluster ソフトウェアの外から liveCache を停止していなかった場合、SAP xserver の可用性が検査されます。

    • SAP xserver が利用可能でない場合、OK が返されます。SAP xserver が利用可能でないと、検証機能は liveCache を再起動できないからです。

    • SAP xserver が利用可能な場合は、liveCache is offline が返されます。

  7. システム関数呼び出しからエラーが報告された場合は、system failure が返されます。