この章では、Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアが有効になった 2 つのクラスタ間のパートナーシップの管理手順を示します。
この章では、次の内容について説明します。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアを実行している 2 つのクラスタがパートナー関係にある場合、これらのクラスタ間でハートビートの監視が行われます。パートナー関係にあるクラスタは、ハートビートを交換して互いの存在を確認します。
パートナーシップを作成するには、geops(1m) コマンドを使用します。パートナーシップの作成が終わると、このコマンドを使用してパートナーシップのプロパティーを変更できます。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアによって管理されるアプリケーションリソースグループの名前は、両方のパートナークラスタで同じでなければいけません。これらのリソースグループ名は、手動で設定することも、scsnapshot コマンドを使用して設定することもできます。
scsnapshot コマンドには、リソースグループ、リソースタイプ、およびリソースが構成されていないクラスタ上に構成データを複製する機能があります。scsnapshot コマンドを実行すると、実行したクラスタから構成データが取得され、scriptfile という名前のスクリプトが生成されます。構成データを複製したいクラスタに固有な特徴に合わせてこのスクリプトを編集します。たとえば、スクリプトに含まれている IP アドレスとホスト名を変更する場合は、構成データを複製するクラスタの任意のノードからスクリプトを起動できます。このコマンドの詳しい使用方法については、scsnapshot(1M) のマニュアルページを参照してください。
パートナーシップを設定できるのは 2 つのクラスタ間だけです。また、クラスタのペア 1 組に定義できるパートナーシップは 1 つだけです。個々のクラスタは、複数のパートナーシップに参加できます。
2 つのクラスタ間にパートナーシップを作成するには、次の条件が満たされているかをまず確認する必要があります。
パートナーシップを作成するクラスタが起動し、稼働中である。
そのクラスタとパートナークラスタ上で、geoadm start コマンドが実行されている。geoadm start コマンドの使用方法については、「Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアの有効化」を参照してください。
パートナークラスタのクラスタ名がわかっている。
ローカルホストファイルにパートナークラスタのホスト情報が定義されている。ローカルクラスタからパートナークラスタに到達する方法がわかっている必要があります。
適切な証明書をインストールすることによって、2 つのクラスタ上にセキュリティーが構成されている。
詳細は、「セキュリティー証明書によるセキュリティー保護されたクラスタ通信の構成」を参照してください。
複数のパートナーシップの作成または参加処理を行う場合、ほかのパートナーシップによって使用されているポート番号を使用しないでください。tcp_udp 要求はすべて RPC サーバーを経由し、ローカルクラスタに定義されているポート番号を持つリモートクラスタ上に tcp_udp_resp が作成されます。未使用のポート番号を使用し、そのポート番号が IANA (Internet Assigned Numbers Authority) に登録されていないことを確認してください。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアは、XML ファイルからの読み取りは行わず、CCR テーブル内のポートを使用します。このため、ポート番号を変更する場合は、パートナーシップを削除することによって構成をリセットし、手動で XML 情報を更新する必要があります。
クラスタノードの 1 つにログインします。
この手順を行うには、Geo Management RBAC 権利プロファイルがユーザーに割り当てられている必要があります。RBAC の詳細は、「Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアと RBAC」を参照してください。
デフォルトのポートが現在別のアプリケーションで使用されている場合や、1 つのクラスタに対して複数のパートナーシップを作成する場合は、ポート番号を次のように変更します。
パートナーシップが存在する場合は、そのパートナーシップから離脱します。
# geops leave-partnership paris-newyork-ps |
クラスタの全ノードで、/etc/opt/SUNWcacao/modules/com.sun.cluster.agent.geocontrol.xml ファイルの tcp_udp.port の値を変更し、パートナーシップで使用するポートを指定します。
デフォルトポートを使用できるのは 1 つのハートビートだけです。あるパートナーシップのハートビートがデフォルトポートを使用している場合は、他方のパートナーシップのハートビートは特定のポートを指定して作成する必要があります。このファイルには、Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェア以外のアプリケーションで使用されていないポートを指定する必要があります。
クラスタを複数のパートナーシップに参加させる場合は、必ず他方のパートナーと異なるポート番号になるようにしてください。
クラスタの全ノードで、共通エージェントコンテナを再起動します。
# /opt/SUNWcacao/bin/cacaoadm restart |
パートナーシップを作成します。
# geops create -c remote-partner-cluster-name [-h heartbeat-name] \ [-p property-setting [-p...]] partnership-name |
パートナーシップに参加するリモートクラスタの名前を指定します
この名前は、リモートクラスタ上の Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーで使用されている論理ホスト名と一致します。
パートナークラスタが使用できる状態か監視するためにパートナーシップ内で使用されるカスタムハートビートを指定します
このオプションを省略した場合、Sun Cluster Geographic Edition のデフォルトのハートビートが使用されます。
カスタムハートビートは特殊な用途向けであり、構成時には注意が必要です。使用中のシステムでカスタムハートビートを使用する必要がある場合は、Sun の技術担当者に問い合わせてください。カスタムハートビートの構成方法については、第 12 章「ハートビートの管理」を参照してください。
このオプションで指定するカスタムハートビートの構成は、geops コマンドを実行する前に済ませておく必要があります。
カスタムハートビートが存在する場合、パートナーシップを作成している間、デフォルトのハートビートは使用されません。パートナーシップでデフォルトのハートビートを使用するには、geops create コマンドの実行前にカスタムハートビートを削除する必要があります。
文字列 property=value の形式でパートナーシップのプロパティーを設定します
Description プロパティーを使用してパートナーシップの説明を指定します。
ハートビート喪失通知は、Notification_emailaddrs プロパティーと Notification_actioncmd プロパティーを使用して構成できます。ハートビート喪失通知を構成する方法の詳細については、「ハートビート喪失通知の構成」を参照してください。
設定できるプロパティーについての詳細は、付録 A 「Sun Cluster Geographic Edition の標準プロパティー」を参照してください。
パートナーシップの名前を指定します
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアでサポートされる名前と値については、付録 B 「Sun Cluster Geographic Edition エンティティーに使用できる名前と値」を参照してください。
geops コマンドについては、geops(1M)> のマニュアルページを参照してください。
パートナーシップが作成されたことと、そのパートナーシップの状態を確認します。
# geoadm status |
次に、cluster-paris 上でパートナーシップ paris-newyork-ps を作成する例を示します。
# geops create -c cluster-newyork -p Description=Transatlantic \ -p Notification_emailaddrs=sysadmin@companyX.com paris-newyork-ps # geoadm status |
クラスタノードの 1 つにログインします。
この手順を行うには、Geo Management RBAC 権利プロファイルがユーザーに割り当てられている必要があります。RBAC の詳細は、「Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアと RBAC」を参照してください。
パートナーシップのプロパティーを変更します。
# geops set-prop -p property-setting [-p...] partnership-name |
文字列 property=value の形式でパートナーシップのプロパティーを設定します
Description プロパティーを使用してパートナーシップの説明を指定します。
ハートビート喪失通知は、Notification_emailaddrs プロパティーと Notification_actioncmd プロパティーを使用して構成できます。ハートビート喪失通知を構成する方法の詳細については、「ハートビート喪失通知の構成」を参照してください。
設定できるプロパティーについての詳細は、付録 A 「Sun Cluster Geographic Edition の標準プロパティー」を参照してください。
パートナーシップの名前を指定します
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアでサポートされる名前と値については、付録 B 「Sun Cluster Geographic Edition エンティティーに使用できる名前と値」を参照してください。
geops コマンドについては、geops(1M) のマニュアルページを参照してください。
変更内容に間違いがないことを確認します。
# geops list |
次に、cluster-paris の電子メール通知の宛先アドレスを変更する例を示します。
# geops set-prop -p Notification_emailaddrs=operations@companyX.com \ paris-newyork-ps # geops list |
パートナーシップの定義と構成を行う際には、このパートナーシップのメンバーとなる二次クラスタを指定します。続いて、この二次クラスタを構成して、パートナー シップに参加させる必要があります。
クラスタをパートナーシップに参加させるには、次の条件が満たされているかをまず確認する必要があります。
ローカルクラスタ上で Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアを実行できる状態である。
クラスタを参加させるパートナーシップが、別のクラスタ (cluster-paris) 上で定義され、構成が行われている。さらに、ローカルクラスタ (cluster-newyork) がこのパートナーシップのメンバーとして指定されている。
適切な証明書をインストールすることによってクラスタ上にセキュリティーが構成されている。
詳細は、「セキュリティー証明書によるセキュリティー保護されたクラスタ通信の構成」を参照してください。
複数のパートナーシップの作成または参加処理を行う場合、ほかのパートナーシップによって使用されているポート番号を使用しないでください。tcp_udp 要求はすべて RPC サーバーを経由し、ローカルクラスタに定義されているポート番号を持つリモートクラスタ上に tcp_udp_resp が作成されます。未使用のポート番号を使用し、そのポート番号が IANA (Internet Assigned Numbers Authority) に登録されていないことを確認してください。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアは、XML ファイルからの読み取りは行わず、CCR テーブル内のポートを使用します。このため、ポート番号を変更する場合は、パートナーシップを削除することによって構成をリセットし、手動で XML 情報を更新する必要があります。
パートナーシップに参加させるクラスタのノードの 1 つにログインします。
この手順を行うには、Geo Management RBAC 権利プロファイルがユーザーに割り当てられている必要があります。RBAC の詳細は、「Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアと RBAC」を参照してください。
パートナーシップに参加させるクラスタ cluster-paris がその論理ホスト名で到達可能であることを確認します。
# ping lh-paris-1 |
クラスタの論理ホスト名については、「Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアを有効にする方法」を参照してください。
既存のパートナーシップに参加させます。
# geops join-partnership [-h heartbeat-name] remote-cluster-name partnership-name |
パートナークラスタが使用できる状態であるかを監視するためにローカルクラスタが使用できる、パートナークラスタ上のカスタムハートビートプラグインの識別子を指定する
カスタムハートビートは特殊な用途向けであり、構成時には注意が必要です。使用中のシステムでカスタムハートビートを使用する必要がある場合は、Sun の技術担当者に問い合わせてください。カスタムハートビートの構成方法については、第 12 章「ハートビートの管理」を参照してください。
このオプションを省略した場合、Sun Cluster Geographic Edition のデフォルトのハートビートが使用されます。
対象のパートナーシップに現在参加しているクラスタの名前を指定します (このクラスタからパートナーシップの構成情報が取得される)
パートナーシップの名前を指定します
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアでサポートされる名前と値については、付録 B 「Sun Cluster Geographic Edition エンティティーに使用できる名前と値」を参照してください。
geops コマンドについては、geops(1M) のマニュアルページを参照してください。
クラスタがパートナーシップに追加されパートナーシップのプロパティーが正しく定義されたことを確認します。
# geops list # geoadm status |
次に、例 5–1 で作成した cluster-paris 上のパートナーシップに cluster-newyork を参加させる例を示します。
# geops join-partnership cluster-paris paris-newyork-ps # geops list # geoadm status |
パートナーシップからクラスタを除去し、そのパートナーシップの関連リソースをすべて解放するときも、geops コマンドを使用できます。
このコマンドを実行すると、ローカルのパートナーシップ構成情報が破棄されます。このため、パートナーシップから最後のメンバーが離脱する時点で、このパートナーシップは消滅します。
クラスタをパートナーシップから離脱させるには、次の条件が満たされているかをまず確認する必要があります。
ローカルクラスタが、離脱するパートナーシップのメンバーである。
このパートナーシップに保護グループが存在しない。
クラスタノードの 1 つにログインします。
この手順を行うには、Geo Management RBAC 権利プロファイルがユーザーに割り当てられている必要があります。RBAC の詳細は、「Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアと RBAC」を参照してください。
パートナーシップに保護グループが含まれていないことを確認します。
# geopg list |
パートナーシップに保護グループが含まれていることが判明した場合は、geopg delete コマンドを実行して削除できます。Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 の保護グループを削除する方法については、「Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 保護グループを削除する方法」を参照してください。Hitachi TrueCopy の保護グループを削除する方法については、「Hitachi TrueCopy 保護グループを削除する方法」を参照してください。
パートナーシップのメンバーであるクラスタの任意のノードで、パートナーシップを除去します。
# geops leave-partnership partnership-name |
パートナーシップの名前を指定します
geops leave-partnership コマンドを実行すると、カスタムハートビートも含め、パートナーシップ用に構成されたハートビートが削除されます。
詳細は、 geops(1M) のマニュアルページを参照してください。
次に、paris-newyork-ps パートナーシップからcluster-paris を離脱させる例を示します。
phys-paris-1# geops leave-partnership paris-newyork-ps |
上記の例の方法で paris-newyork-ps パートナーシップから cluster-paris を離脱させると、パートナーシップに残ったメンバーは cluster-newyork だけになります。この時点で、次に示す方法でこの最後のメンバー cluster-newyork を離脱させることで、paris-newyork-ps パートナーシップを削除できます。
phys-newyork-1# geops leave-partnership paris-newyork-ps |
パートナーシップ内の他方のクラスタで、この手順を繰り返します。
災害が発生した場合、復旧するまでの間、両パートナーは切り離された状態になります。この場合、管理者は、両パートナーが共有している保護グループのテイクオーバーを実施する必要があります。両方のクラスタが再びオンライン状態になった時点で、両方のパートナークラスタはそれ自体を保護グループの主クラスタと報告します。ローカル保護グループの構成情報を、パートナーから取得した構成情報と再同期させる必要があります。
パートナーシップに参加しているクラスタに障害が発生した場合、このクラスタはその再起動時に、停止していた間にパートナーシップのパラメタが変更されていないかを確認します。管理者は、障害が発生したクラスタの情報、またはフェイルオーバークラスタ上の情報で、どちらのパートナーシップ構成情報を保持するかを決定します。続いて、必要に応じ、パートナーシップ構成を再同期させます。
パートナーシップの再同期が必要かどうかは、geoadm status コマンドの出力から判断できます。Configuration 状態に「Synchronization Status Error」と表示されている場合、パートナーシップを再同期させる必要があります。Local status に「Partnership Error」と表示されている場合は、パートナーシップを再同期させるべきではありません。この場合は、ハートビートの交換が行われるまで待機してください。
パートナーシップを再同期させるためには、次の条件が満たされているかをまず確認する必要があります。方法
ローカルクラスタで Sun Cluster Geographic Edition を使用できる。
障害が発生するまで、ローカルクラスタはそのパートナーシップのアクティブメンバーであった。
パートナーシップを再同期させると、コマンドの実行元クラスタのパートナーシップ構成がパートナークラスタの情報によって上書きされます。
パートナークラスタから取得した情報を使用して同期をとる必要があるクラスタの任意のノードにログインします。
この手順を行うには、Geo Management RBAC 権利プロファイルがユーザーに割り当てられている必要があります。RBAC の詳細は、「Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアと RBAC」を参照してください。
パートナーシップを再同期させます。
# geops update partnership-name |
パートナーシップの名前を指定します
次に、パートナーシップを再同期させる例を示します。
# geops update paris-newyork-ps |