図 1-7 に示す Solstice PPP の主な構成要素について、以降の節で説明します。
PPP STREAMS モジュールは、RFC 1661 規定のポイントツーポイントプロトコルに準拠する標準実装です。このモジュールは、シリアルポイントツーポイントリンクのデータリンクレベル接続を確立して構成し、PPP フレームとして伝送できるように IP データグラムをカプセル化します。
IP ダイヤルアップ層は、Solstice PPP と Solaris TCP/IP プロトコル群の境界に位置します。この層には、PPP リンクにおけるデータグラムの送信で IP 層が使用する論理 IP インタフェースを維持し監視する接続マネージャ (ipdcm) と IP インタフェースがあります。Solstice PPP と関連する IP インタフェースには、以下の 2 種類があります。
これらのインタフェースの詳細については、「PPP 上における IP の確立」を参照してください。
PPP リンクマネージャ (pppd) は、Solstice PPP によって確立されたすべての通信リンクを制御します。Solstice PPP 構成ファイルにある情報を読み取り、IP ダイヤルアップ層と PPP STREAMS モジュールを構成します。
PPP ログインサービス (pppls) は、リモートユーザーからの着信接続を受け付けます。UNIX 標準ログイン方式によってユーザー名とパスワードの検証を行い、有効な PPP 接続が存在することをユーザーの受け付け時に PPP リンクマネージャに通知します。
Solstice PPP が実装されているマシンが着信呼を受け付け可能にするには、システム管理者が各リモートユーザーのユーザーアカウントを作成しておく必要があります。このアカウントはユーザー名とパスワードを持つ必要があります。また、デフォルトログインシェルとして /usr/sbin/pppls を起動する必要があります。
PPP ログインサービスを使用するためにユーザーアカウントを作成する方法については、「着信接続のためのユーザーアカウントの追加」を参照してください。
Solstice PPP には、PPP STREAMS モジュールから取り出した情報を表示する 2 つの診断ユーティリティがあります。PPP トレースユーティリティ /usr/bin/ppptrace は PPP フレーム情報を表示し、統計収集ユーティリティ /usr/bin/pppstat は Solstice PPP が起動されてから送受信した PPP フレームの数と種類の累積記録を表示します。
PPP 初期設定スクリプト /usr/bin/pppinit は、ネットワークの基本構成を作成します。複雑な PPP ネットワークを作成する場合は、まず pppinit を使用して Solstice PPP を構成してから構成ファイルを変更します。
Solstice PPP の構成情報は、2 つの構成ファイルに格納されます。これらのファイルは、基本構成情報に基づいた PPP 初期設定スクリプト (pppinit) を使用して作成します。より複雑な構成の詳細を追加するには、これらのファイルを変更します。
ファイル /etc/opt/SUNWconn/ppp/ppp.conf は、PPP における IP 接続に使用する同期パスと非同期パスを定義します。ファイル /etc/opt/SUNWconn/ppp/link.conf は PPP リンクの確立に使用できる各種のシリアルデバイスを定義し、発信接続が可能なようにこれらのデバイスとリモートホストとをマッピングします。
これらのファイルの詳細については、第 4 章「構成ファイルの編集」を参照してください。
デフォルトでは、CHAT (接続) スクリプトは、ディレクトリ /etc/opt/SUNWconn/ppp/script に存在します。CHAT スクリプトの内容は、ローカルホストが送信するログイン識別子とログインパスワードなど、リモートホストへの非同期接続を開始するときに使用するログインダイアログを定義する情報です。接続対象となる各リモートホストに、固有の CHAT スクリプトを作成する必要があります。
CHAT スクリプトに含まれる情報の一部は、リモートホストのオペレーティングシステムに依存します。PPP 初期設定スクリプト (pppinit) を使用すると、Solaris 環境を実装するホストとの接続を開始する CHAT スクリプトを作成することができます。
PPP リンクマネージャが生成するステータスメッセージとエラーメッセージは、ファイル /var/adm/log/ppp.log に記録されます。このファイルにあるメッセージの詳細については、「ステータスメッセージとエラーメッセージ」を参照してください。