Sun Enterprise サーバー Alternate Pathing 2.3.1 ユーザーマニュアル

Alternate Pathing の基本概念

ここでは、AP の基本概念と用語について説明します。

物理パス

AP では、入出力デバイスはディスクまたはネットワークのどちらかです。 「入出力コントローラ」は、入出力デバイス用のコントローラカードです。 「入出力ポート」はコントローラカード上のコネクタを指します。通常、コントローラカードにはポートが 2 つ以上あります。「デバイスノード」とは、物理デバイスを指定するときに使用する、/devices または /dev ディレクトリ内でのパスです (例: /dev/dsk/c0t0d1s0)。 「物理パス」という用語は、ホストからディスクまたはネットワークへの電気的な経路を指します。

図 1-4 物理パス

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物理デバイスは、/dev/dsk/c0t0d1s0 のようなデバイスノードによって参照します。

メタディスク

メタディスク」は、2 つある物理パスのどちらかを経由してディスクにアクセスするための構造です (図 1-5 を参照)。 このとき、スクリプト内やプログラム内でどちらの物理パスも明示的に参照する必要はありません。

スクリプト内やプログラム内でメタディスクを参照する場合は、/dev/ap/dsk/mc0t1d1s0 のような AP 固有のデバイスノードを使用して参照します。 詳細については、「メタディスクのデバイスノード」を参照してください。

次の図では、現在どちらの pln ポート (pln:2 または pln:9) が入出力を処理しているかに関係なく、AP 固有のデバイスノードを使用してディスクの入出力が実行されます。

図 1-5 メタディスク

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Sun StorEdge T3 ディスクのパス最適化

T3 に対して 2 つの物理パスが利用できる場合は、T3 のシステム起動時に、それらのディスクパスグループに対してパス最適化アルゴリズムが実行されます。 デバイス障害あるいはユーザー操作によって物理パスの 1 つが無効になると、影響のあるディスクパスグループのパス最適化が無効となります。 パス最適化アルゴリズムを再度有効にするには、apconfig(1M) コマンドを使用するか、あるいはシステムを再起動します。 パス最適化は、両方の物理入出力パスが利用可能にならない限り、再度有効にすることはできません。 詳細は、「ディスクパスグループとメタディスクの操作」を参照してください。

メタネットワーク

メタネットワーク」は、2 つある物理パスのどちらかを経由してネットワークにアクセスするための構造です (図 1-6 を参照)。このとき、スクリプト内やプログラム内でどちらの物理パスも明示的に参照する必要はありません。 スクリプト内やプログラム内でメタネットワークを参照する場合は、mether1 のような「メタネットワークインタフェース」名を使用して参照します。 詳細については、「メタネットワークインタフェース」を参照してください。

次の図では、現在どのコントローラ (hme1 または qfe3) がメタネットワークの入出力を処理しているかに関係なく、mether1 を使用してメタネットワークにアクセスします。

図 1-6 メタネットワーク

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ディスクパスグループ

ディスクパスグループ」は、図 1-7 に示すように、同じディスクアレイに接続された 2 つの物理パスからなります。 物理パスは、パスグループの一部であるときには、「代替パス」と呼ばれます。 ディスクへの代替パスは、代替パスが使用するpln ポートまたは sf ポートによって一意に識別することができます。 入出力を現在処理している代替パスを「有効な代替パス」と呼びます。


注 -

T3 ディスクパスグループでパス最適化アルゴリズムを利用している場合、両方の物理パスは「有効な代替パス」となります。物理パスが無くなった場合は、どのような理由であるかにかかわらず、パス最適化は無効となります。 このような場合、1 つのパスだけが「有効な代替パス」となります。


メタディスク (/dev/ap/[r]dsk/mc?t?d?s? など) がスクリプト内やプログラム内で「個別のディスク」にアクセスするための手段を提供するのに対し、ディスクパスグループは AP コマンドを実行する際にそのディスクへの「パス」を操作するための手段を提供します。 たとえば、「切り替え」操作を実行する、すなわち、有効な代替パスを別のパスに変更するには、apconfig(1M) コマンド内でディスクパスグループを参照します。


注 -

切り替え操作を実行すると、T3 のパス最適化が自動的に無効となります。


代替パスの 1 つを「主パス」として指定します。 切り替え操作を実行すると、有効な代替パスは変更されますが、主パスはそのままです。 ディスクパスグループは、主パスに対応する pln ポート (pln:2 など) または sf ポート (sf:2 など) を指定して参照します。 pln または sf ポート名の判定についての詳細は、「メタディスクのデバイスノード」を参照してください。

ディスクパスグループの有効な代替パスを切り替えるには、以下のコマンドを使用します。


# apconfig -P sf:2 -a sf:9

次の図に、apconfig(1M) コマンドを使用してディスクパスグループの有効な代替パスを切り替えた例を示します。

図 1-7 ディスクパスグループスイッチ

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注 -

この操作によって、T3 のパス最適化は無効となります。 パス最適化を再有効化するには次のコマンドを使用します。


# apconfig -P sf:2 -a sf:2 -a sf:9


ネットワークパスグループ

ネットワークパスグループ」は、図 1-8 に示すように、同じ物理ネットワークに接続された 2 つのネットワークコントローラからなります。 「代替パス」、「有効な代替パス」、および「切り替え」という用語は、基本的にはディスクパスグループに対して使用する場合と同じ意味を持ちます。 ただし、ネットワークパスグループには、「主パス」は存在しません。

ネットワークパスグループを指定するには、対応するメタネットワークインタフェース名を、mether1 のように参照します。 メタネットワークインタフェース名は、「メタネットワークインタフェース」で説明しています。 ネットワークパスグループの有効な代替パスを切り替えるには、以下のコマンドを使用します。


#apconfig -a mether1  -a  hme1

図 1-8 に、apconfig(1M) コマンドを使用してネットワークパスグループの有効な代替パスを切り替えた例を示します。

図 1-8 ネットワークパスグループ

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