Logical Domains 1.2 リリースノート

一般的な問題

この節では、固有のバグ番号よりも広い範囲で、LDoms ソフトウェアの今回のリリースに関して一般的に知られている問題について説明します。回避方法がある場合は、一緒に記載しています。

サービスプロセッサとシステムコントローラは読み替え可能な用語

Logical Domains のドキュメントの説明では、サービスプロセッサ (SP) とシステムコントローラ (SC) という用語は同じ意味で使用されます。

サポートされていないカード

次のカードは、LDoms 1.2 ソフトウェアリリースではサポートされていません


注意 – 注意 –

このようなサポートされていない構成が LDoms 1.2 とともに使用されている場合は、制御ドメインを再起動する前に、すべての論理ドメインを停止してバインドを解除してください。この操作を行わないと、システム内のアクティブな論理ドメインがすべて失われ、システムがクラッシュする可能性があります。


特定の状況で、ゲストドメインの SVM 構成またはメタデバイスが失われることがある

サービスドメインが Solaris 10 5/09 より前のバージョンの Solaris 10 OS で動作しており、このサービスドメインからゲストドメインに仮想ディスクとして物理ディスクスライスをエクスポートしている場合、このゲストドメインではその仮想ディスクが不適切なデバイス ID で表示されます。その後、このサービスドメインを Solaris 10 5/09 にアップグレードすると、このゲストドメインでは、仮想ディスクとしてエクスポートされた物理ディスクスライスはデバイス ID がない状態で表示されます。

仮想ディスクのデバイス ID を削除すると、仮想ディスクのデバイス ID を参照しようとするアプリケーションで問題が発生する可能性があります。特に、これが原因で Solaris Volume Manager (SVM) がその構成を確認できなくなったり、メタデバイスにアクセスできなくなったりする可能性があります。

回避方法: サービスドメインを Solaris 10 5/09 にアップグレードしたあとで、ゲストドメインでその SVM 構成またはメタデバイスを確認できない場合は、次の手順を実行してください。

Procedureゲストドメインの SVM 構成またはメタデバイスを確認する

  1. ゲストドメインを起動します。

  2. 次の行を /kernel/dr/md.conf ファイルに追加して、SVM の devid 機能を無効にします。


    md_devid_destroy=1;
    md_keep_repl_state=1;
  3. ゲストドメインを再起動します。

    ドメインが起動したあとで、SVM 構成とメタデバイスが確認できるようになるはずです。

  4. SVM 構成が正しいことを確認します。

  5. 手順 2 で追加した 2 行を /kernel/drv/md.conf ファイルから削除して、SVM の devid 機能を再度有効にします。

  6. ゲストドメインを再起動します。

    再起動時に次のようなメッセージが表示されます。


    NOTICE: mddb: unable to get devid for 'vdc', 0x10

    これらのメッセージは正常で、問題を報告するものではありません。

論理ドメインチャネル (LDC) と論理ドメイン

論理ドメインで使用できる LDC の数には制限があります。UltraSPARC T1 ベースのプラットフォームでは、この制限は 256 です。ほかのすべてのプラットフォームでの制限は 512 です。実際には、この制限が問題になるのは制御ドメインのみです。これは、制御ドメインには I/O サブシステムの少なくとも一部が割り当てられているためです。また、仮想 I/O データ通信と Logical Domains Manager によるその他の論理ドメインの制御の両方に対して多数の LDC が作成される可能性があるため、この制限が問題になる場合があります。


注 –

この節では、UltraSPARC T1 ベースのプラットフォームを使用した場合の例を示します。ただし、サポートされるほかのプラットフォームで制限を超えた場合でも、同じ動作になります。


サービスの追加やドメインのバインドを実行しようとすると LDC チャネルの数が制御ドメインで制限を超えるため、処理は失敗し、次のようなエラーメッセージが表示されます。


13 additional LDCs are required on guest primary to meet this request,
but only 9 LDCs are available

    次のガイドラインによって、制御ドメインで LDC 機能がオーバーフローする可能性のある構成を作成することを防止できます。

  1. 制御ドメインは、ハイパーバイザ、障害管理アーキテクチャー (FMA)、およびシステムコントローラ (SC) とのさまざまな通信用に、12 個の LDC を割り当てます。これは、構成済みのほかの論理ドメインの数には依存しません。

  2. 制御ドメインは、制御ドメイン自身を含む各論理ドメインに対して、制御トラフィック用に LDC を 1 つ割り当てます。

  3. 制御ドメインの各仮想 I/O サービスは、そのサービスに接続されているクライアントごとに LDC を 1 つ使用します。

たとえば、制御ドメインが 1 つとそれ以外の論理ドメインが 8 つある場合について考えます。各論理ドメインには少なくとも次のものが必要です。

前述のガイドラインに従うと、次のような結果になります。丸括弧内の数字は、値の算出に用いた前述のガイドラインの番号に対応しています。

12 (1) + 9 (2) + 8 × 3 (3) = LDC の合計数 45

次に、ドメインの数が 8 ではなく 32 で、各ドメインに 3 つの仮想ディスク、3 つの仮想ネットワーク、および 1 つの仮想コンソールがある場合について考えます。この場合、数式は次のようになります。

12 + 33 + 32 × 7 = LDC の合計数 269

使用するプラットフォームでサポートされる LDC の数に応じて、Logical Domains Manager が構成を受け入れるか拒否するかが決まります。

メモリーサイズの要件

Logical Domains ソフトウェアでは、ドメインの作成時にメモリーサイズの制限がありません。メモリーサイズの要件は、ゲストオペレーティングシステム特有のものです。Logical Domains の機能によっては、現在のメモリー容量が推奨サイズより少ないと動作しない場合があります。メモリーサイズの推奨要件と最小要件については、使用しているオペレーティングシステムのインストールガイドを参照してください。『Solaris 10 5/09 Installation Guide: Planning for Installation and Upgrade』「System Requirements and Recommendations」 を参照してください。

OpenBootTM PROM では、ドメインの最小サイズに関する制限があります。現在、制限値は 12M バイトです。このサイズより小さいドメインが存在すると、Logical Domains Manager はそのドメインのサイズを自動的に 12M バイトに引き上げます。メモリーサイズの要件については、使用しているシステムファームウェアのリリースノートを参照してください。

多数のドメインの起動

使用しているプラットフォームに応じて、次の数のドメインを起動できます。

未割り当ての仮想 CPU を使用できる場合は、それらをサービスドメインに割り当てて、仮想 I/O 要求の処理に役立てます。32 を超えるドメインを作成する場合は、サービスドメインに 4 ~ 8 個の仮想 CPU を割り当ててください。ドメインの最大構成ではサービスドメインに CPU が 1 つしか含まれない場合、ドメインを構成して使用する際は、この単一の CPU に余分な負荷を与えないようにします。仮想スイッチ (vsw) サービスは、マシンで使用できるネットワークアダプタ全体に接続する必要があります。たとえば、Sun SPARC Enterprise T5240 サーバーで 128 のドメインを起動する場合、4 つの vsw サービスを作成し、各サービスで 32 の仮想ネット (vnet) インスタンスを処理します。1 つの vsw サービスで 32 を超える vnet インスタンスを処理しないでください。1 つの vsw に 32 を超えるインスタンスを関連付けると、サービスドメインでハードハングが発生する可能性があるためです。

最大構成を実行するには、使用しているプラットフォームに応じて次の容量のメモリーをマシンに搭載して、ゲストドメインに適切なメモリー容量を割り当てられるようにする必要があります。

ゲストドメインのメモリーおよびスワップ空間の使用率は、そのドメインで使用する vsw サービスが、複数のドメインで多数の仮想ネットワークにサービスを提供する場合に増加します。これは、vswに接続するすべての vnet の間のピア・ツー・ピア接続によるものです。サービスドメインでは、追加のメモリーを設定すると役立ちます。64 を超えるドメインが動作する場合は、4G バイト以上にすることをお勧めします。10 以下のドメインをグループにまとめて起動し、起動が完了するまで待機してから次のグループを起動します。この方法は、ドメインにオペレーティングシステムをインストールする際にも適用されます。

Logical Domains システムの正常な停止と電源の再投入

最後に構成を SC に保存してから構成に変更を加えた場合は、Logical Domains システムの電源を切って再投入する前に、保持する必要のある最新の構成を必ず保存してください。

Procedureアクティブなドメインが複数存在するシステムの電源を切る

  1. I/O ドメイン以外のすべてのドメインを停止して、バインドを解除します。

  2. アクティブな I/O ドメインをすべて停止して、バインドを解除します。

  3. primary ドメインを停止します。

    ほかにバインドされているドメインは存在しないため、ファームウェアは自動的にシステムの電源を切ります。

Procedureシステムの電源を再投入する

  1. I/O ドメイン以外のすべてのドメインを停止して、バインドを解除します。

  2. アクティブな I/O ドメインをすべて停止して、バインドを解除します。

  3. primary ドメインを再起動します。

    ほかにバインドされているドメインは存在しないため、システムを再起動する前に、ファームウェアは自動的にシステムの電源を再投入します。システムの再起動時には、最後に保存された、または明示的に設定された Logical Domains 構成で起動します。

要求されたメモリーサイズが割り当てられたメモリーサイズと異なる場合がある

特定の状況では、Logical Domains Manager は、要求されたメモリー割り当てを 8K バイトまたは 4M バイトの倍数のいずれかに切り上げます。次の ldm list-domain -l コマンドの出力例では、制約値が実際に割り当てられるサイズより小さくなっていることがわかります。


Memory:
          Constraints: 1965 M
          raddr          paddr5          size
          0x1000000      0x291000000     1968M

論理ドメイン変数の持続性

ドメイン化が有効になっていると、変数の更新は再起動の場合には保持されますが、電源を再投入した場合には、制御ドメインの OpenBoot ファームウェアから開始されるか、変数の更新後に SC に構成が保存されていないかぎり保持されません。

ここでは、次のような制御ドメインの再起動によって、システムの電源の再投入が開始される可能性があることに注意することが重要です。

ドメインの LDom 変数は、次のいずれかの方法で指定できます。

これらいずれかの方法で更新された変数がドメインを再起動しても必ず保持されるようにすることが目標です。また、更新された変数がこのあと SC に保存されたすべての論理ドメイン構成に必ず反映されるようにします。

LDoms 1.2 ソフトウェアでは、更新された変数が期待どおりに保持されない場合がいくつかあります。

これらの問題を解決するために、バグ ID 652004165403686540937、および 6590259 が報告されています。

Sun SNMP Management Agent は複数ドメインをサポートしない

Sun Simple Management Network Protocol (SNMP) Management Agent は複数ドメインをサポートしません。単一のグローバルドメインのみをサポートします。

特定のシステムで LDoms が有効になっていると、sysfwdownload ユーティリティーの実行時間が大幅に長くなる

UltraSPARC T1 プロセッサに基づくシステムで sysfwdownload ユーティリティーを Logical Domains 環境内から実行すると、実行時間が大幅に長くなります。LDoms ソフトウェアが有効な状態で sysfwdownload ユーティリティーを使用すると、この状況が発生します。

回避方法: このユーティリティーを使用する前に、LDoms ソフトウェアを無効にした状態で factory-default 構成で起動してください。

コンテナ、プロセッサセット、およびプールは CPU Power Management と互換性がない

CPU の動的再構成 (DR) を使用した仮想 CPU の電源切断は、プロセッサセット、資源プール、またはゾーンの専用 CPU 機能とともに機能しません。

CPU Power Management をエラスティックモードで使用している場合、Solaris OS のゲストは電源が入っているドメインに割り当てられた CPU のみを確認できます。つまり、現在電源が管理されている CPU の数に応じて、psrinfo(1M) コマンドの出力が動的に変わります。これが原因で、プロセッサセットとプールで問題が発生します。プロセッサセットとプールではそれらのセットへの割り当てが可能になるように実際の CPU ID を静的にする必要があります。また、ゾーンの専用 CPU 機能に影響を及ぼす場合もあります。

回避方法: Power Management ポリシーをパフォーマンスモードに設定します。

いずれかのドメインが移行状態の場合に CPU Power Management が実行されない

ドメインは、起動中、停止中、ok プロンプトの表示中、またはカーネルデバッガの実行中は移行状態になります。ゲストドメインが移行状態かどうかを判断するには、ldm list コマンドを使用します。このコマンドの出力で、移行状態のすべてのドメインに t フラグが表示されます。その他のドメインで CPU Power Management を有効にするには、移行状態のゲストドメインを起動するか、または ldm stop コマンドを使用してゲストドメインを停止します。

Fault Management (障害管理アーキテクチャー)

FMA および CPU の電源管理に関して、いくつかの問題があります。エラスティックモードで動作中の CPU に障害が発生した場合、障害が発生した CPU が回復するまでパフォーマンスモードに切り替えてください。障害が発生したすべての CPU が回復したら、エラスティックモードを再度使用できます。

障害が発生したリソースの詳細は、OpenSolaris の「Fault Management」Web ページ を参照してください。

遅延再構成

primary ドメインが遅延再構成状態にある場合、CPU の電源は、primary ドメインが再起動したあとに管理されます。つまり、primary ドメインが再起動して遅延再構成状態がクリアされるまで、そのドメインが高負荷で使用されている場合は CPU Power Management によって別の CPU が追加でオンラインになることはありません。

エラスティックモードでのドメインの移行はサポートされていない

エラスティックモードのソースマシンまたはターゲットマシンに対するドメインの移行はサポートされていません。パフォーマンスモードで移行が行われており、Power Management ポリシーがエラスティックモードに設定されている場合、ポリシーの切り替えは移行が完了するまで遅延されます。ソースマシンまたはターゲットマシンのいずれかがエラスティックモードの場合にドメインの移行を試みると、migration コマンドはエラーを返します。

暗号化装置

Power Management 機能が動作するには、動的な CPU DR が必要です。そのため、ドメインに暗号化装置がバインドされる場合は、Integrated Lights Out Management (ILOM) の Power Management 機能を使用しないでください。現在、Solaris OS での暗号化 DR のサポートでは、ゲストの再起動を行わない CPU DR はサポートされていません。