Solaris 10 IBM BladeCenter サーバーインストールガイド

Solaris インストールパラメータ用の DHCP オプションとマクロの作成

インストールサーバー上で add_install_client -d スクリプトを使ってクライアントを追加する場合、このスクリプトは標準出力に DHCP 構成情報を報告します。この情報は、ネットワークインストール情報をクライアントに伝えるために必要なオプションとマクロを作成する際に使用できます。DHCP オプションとマクロは、次のいずれかの方法で作成できます。

DHCP サーバーを使用して DHCP クライアントをネットワークインストールする場合は、DHCP オプションを作成して、Solaris OS のインストールに必要な情報を渡す必要があります。DHCP サービス内のマクロをカスタマイズして、次の種類のインストールを実行できます。

これらのオプションとマクロは、次の方法で作成できます。

ネットワークインストールで DHCP サーバーを使用するようにクライアントを設定する場合の詳細については、『Solaris のシステム管理 (IP サービス)』「DHCP サービスを使用した Solaris ネットワークインストールのサポート」を参照してください。

DHCP オプションの詳細については、『Solaris のシステム管理 (IP サービス)』「DHCP オプションを使用した作業 (作業マップ)」を参照してください。

システムの構成とインストールには、表 1–6 に示されている標準 DHCP オプションを使用できます。これらのオプションはプラットフォーム固有のものではなく、さまざまな x86 システムで Solaris OS をインストールするのに使用できます。DHCP を使用してシステムに Solaris ソフトウェアをインストールするには、これらのオプションを使用します。標準オプションの完全な一覧については、dhcp_inittab(4) のマニュアルページを参照してください。

表 1–6 標準的な DHCP オプションの値

オプション名 

コード 

データ型 

データの単位数 (Granularity) 

最大値 

説明 

BootFile

なし 

ASCII 

クライアントのブートファイルへのパス 

BootSrvA

なし 

IP アドレス 

ブートサーバーの IP アドレス 

DNSdmain

15 

ASCII 

DNS ドメイン名 

DNSserv

IP アドレス 

DNS ネームサーバーの一覧 

NISdmain

40 

ASCII 

NIS ドメイン名 

NISservs

41 

IP アドレス 

NIS サーバーの IP アドレス 

NIS+dom

64 

ASCII 

NIS+ ドメイン名 

NIS+serv

65 

IP アドレス 

NIS+ サーバーの IP アドレス 

Router

IP アドレス 

ネットワークルーターの IP アドレス 

オプションの作成が完了したら、それらのオプションを含むマクロを作成できます。Solaris クライアントインストールをサポートするために作成できるマクロの例を、次の表に示します。

表 1–7 ネットワークインストールクライアントをサポートするマクロの例

マクロ名 

含まれるオプションとマクロ 

Solaris

SrootIP4SrootNMSinstIP4 SinstNM

i86pc

Solaris マクロ、SrootPTHSinstPTH SbootFIL

PXEClient:Arch:00000:UNDI:002001

BootSrvABootFile

xxx.xxx.xxx.xxx ネットワークアドレスマクロ

BootSrvA オプションは既存のネットワークアドレスマクロに追加できます。BootSrvA の値は tftboot サーバーを示します。

01client-MAC-address クライアント固有のマクロ (たとえば、010007E9044ABF)

BootSrvABootFile

この表のマクロ名は、ネットワークからインストールされるクライアントの、ベンダークライアントクラスと一致します。これらの名前は、ネットワーク上にあるクライアントの例です。

特定のクライアントに提供されているベンダーオプションは、オプションコードや長さの情報も含めて、合計のサイズが 255 バイトを超えてはいけません。この制限は、現在の Solaris DHCP プロトコルの実装によるものです。一般に、必要最小限のベンダー情報を伝える必要があります。パス名を必要とするオプションには、短いパス名を使用してください。長いパス名に対してシンボリックリンクを作成すると、短いリンク名を使用できます。

dhtadm を使用してオプションとマクロを作成するスクリプトの作成

この節の例を使って Korn シェルスクリプトを作成し、記載されているすべてのオプションとほかのいくつかの有用なマクロを作成できます。引用符に囲まれたすべての IP アドレスと値を、実際のネットワークの IP アドレス、サーバー名、およびパスに変更してください。また、Vendor= キーを編集して、使用するクライアントのクラスを示してください。add_install_client -d の情報を使って、スクリプトを変更するために必要なデータを取得します。


例 1–15 IBM BladeCenter システムへのネットワークインストールをサポートするサーバースクリプトの例


#!/bin/sh

ImageDir="/export/home/sol10_18b"
JumpStartDir="/export/home/jumpstart"
DHCPDir="/export/home/dhcp"
DHCPNetwork="192.168.70.0"
SrvAdd="192.168.70.35"

# イメージディレクトリを共有します
share -F nfs -o ro,anon=0 $ImageDir

# Jumpstart ディレクトリを共有します
share -F nfs -o ro,anon=0 $JumpStartDir


dhcpconfig -D -r SUNWfiles -p $DHCPDir -l 84600 -h files
dhcpconfig -N $DHCPNetwork

echo "Adding vendor specific symbol table"
echo ""
dhtadm -A -s SrootIP4 -d 'Vendor=SUNW.i86pc,2,IP,1,1'
dhtadm -A -s SrootNM -d 'Vendor=SUNW.i86pc,3,ASCII,1,0'
dhtadm -A -s SrootPTH -d 'Vendor=SUNW.i86pc,4,ASCII,1,0'
dhtadm -A -s SinstIP4 -d 'Vendor=SUNW.i86pc,10,IP,1,1'
dhtadm -A -s SinstNM -d 'Vendor=SUNW.i86pc,11,ASCII,1,0'
dhtadm -A -s SinstPTH -d 'Vendor=SUNW.i86pc,12,ASCII,1,0'
dhtadm -A -s SsysidCF -d 'Vendor=SUNW.i86pc,13,ASCII,1,0'
dhtadm -A -s SjumpsCF -d 'Vendor=SUNW.i86pc,14,ASCII,1,0'
dhtadm -A -s SbootURI -d 'Vendor=SUNW.i86pc,16,ASCII,1,0'

echo "Adding PXE info"
echo ""
dhtadm -A -m PXEClient:Arch:00000:UNDI:002001 -d (コマンドは次の行に続く)
':BootFile="pxegrub.I86PC.Solaris_10-1":BootSrvA=192.168.70.35:'


例 1–16 ネットワークインストールをサポートするクライアントスクリプトの例


#!/bin/sh

echo "Add install client"
echo ""
cd /export/home/sol10_18b/Solaris_10/Tools
./add_install_client -d -e 0:11:25:9b:9c:98 i86pc


echo "Creating client ID and association of macros"
echo ""
dhtadm -A -m 010011259B9C98 -d ':SinstPTH="/export/home/sol10_18b":'
dhtadm -M -m 010011259B9C98 -e 'SrootPTH="/export/home/sol10_18b/Solaris_10/Tools/Boot"'
dhtadm -M -m 010011259B9C98 -e 'SrootNM="sun10hw1"'
dhtadm -M -m 010011259B9C98 -e 'SrootIP4=192.168.70.35'
dhtadm -M -m 010011259B9C98 -e 'SinstIP4=192.168.70.35'
dhtadm -M -m 010011259B9C98 -e 'SinstNM="sun10hw1"'
dhtadm -M -m 010011259B9C98 -e 'BootSrvA=192.168.70.35'
dhtadm -M -m 010011259B9C98 -e 'SbootURI=tftp://192.168.70.35/inetboot.I86PC.Solaris_10-1'
dhtadm -M -m 010011259B9C98 -e 'SjumpsCF=192.168.70.35:/export/home/sol10_18b'
dhtadm -M -m 010011259B9C98 -e 'SsysidCF=192.168.70.35:/export/home/sol10_18b'


pntadm -A 192.168.70.44 -c sunblade1 -f PERMANENT -m (コマンドは次の行に続く)
010011259B9C98 -h sunblade1 -i 010011259B9C98 -s 192.168.70.35 192.168.70.0

スーパーユーザーになり、dhtadm コマンドをバッチモードで実行します。オプションとマクロを dhcptab に追加するためのスクリプトの名前を指定します。たとえば、スクリプトの名前が netinstalloptions の場合、次のコマンドを入力することになります。


# dhtadm -B netinstalloptions

Vendor= 文字列に指定されているベンダークライアントクラスを持つクライアントが、DHCP を使ってネットワーク経由でインストールできるようになります。

dhtadm コマンドの使用方法の詳細については、dhtadm(1M) のマニュアルページを参照してください。dhcptab ファイルの詳細は、dhcptab(4) のマニュアルページを参照してください。

DHCP マネージャを使用したインストールオプションとマクロの作成

この節では、DHCP マネージャを使用してインストールオプションおよびマクロを作成する、2 つの手順を説明します。最初の手順では、DHCP マネージャを使ってインストールオプションを作成する方法を説明します。2 つめの手順では、DHCP マネージャを使ってインストールマクロを作成する方法を説明します。

ProcedureSolaris のインストールをサポートするオプションを作成する方法 (DHCP マネージャ)

始める前に

インストール用の DHCP オプションを作成する前に、次の作業を実行してください。

  1. DHCP サーバーで、スーパーユーザーになるか、同等の役割になります。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細は、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. DHCP マネージャを起動します。


    # /usr/sadm/admin/bin/dhcpmgr &
    

    「DHCP マネージャ (DHCP Manager)」ウィンドウが表示されます。

  3. 「オプション (Options)」タブを選択します。

  4. 「編集 (Edit)」メニューから「作成 (Create)」を選択します。

    「オプションの作成 (Create Option)」ダイアログボックスが開きます。

  5. 最初のオプションのオプション名を入力し、そのオプションに値を入力します。

    add_install_client コマンドの出力と、この節の表にある、作成する必要があるオプションのオプション名と値をチェックするための情報を使用します。ベンダークライアントクラスは推奨値に過ぎないことに注意してください。表 1–7 を参照してください。DHCP サービスから Solaris インストールパラメータを取得する必要がある、実際のクライアントのタイプを示すクラスを作成します。クライアントのベンダークライアントクラスを調べる方法については、『Solaris のシステム管理 (IP サービス)』「DHCP オプションを使用した作業 (作業マップ)」を参照してください。

  6. すべての値を入力したら、「了解 (OK)」をクリックします。

  7. 「オプション (Options)」タブで、今作成したオプションを選択します。

  8. 「編集 (Edit)」メニューから「複製 (Duplicate)」を選択します。

    「オプションの複製 (Duplicate Option)」ダイアログボックスが開きます。

  9. 別のオプションの名前を入力し、その他の値を適宜変更します。

    コード、データ型、データの単位数、最大値は通常は変更する必要があります。表 1–6 を参照してください。

  10. すべてのオプションを作成するまで、手順 7 から手順 9 を繰り返してください。

    次の手順の説明に従って、ネットワークインストールクライアントにオプションを渡すマクロを作成できます。


    注 –

    これらのオプションはすでに Solaris クライアントの /etc/dhcp/inittab ファイルに含まれているので、あらためて追加する必要はありません。


ProcedureSolaris のインストールをサポートするマクロを作成する方法 (DHCP マネージャ)

始める前に

インストール用の DHCP マクロを作成する前に、次の作業を実行してください。

  1. DHCP サーバーで、スーパーユーザーになるか、同等の役割になります。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細は、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. DHCP マネージャを起動します。


    # /usr/sadm/admin/bin/dhcpmgr &
    

    「DHCP マネージャ (DHCP Manager)」ウィンドウが表示されます。

  3. 「マクロ (Macros)」タブを選択します。

  4. 「編集 (Edit)」メニューから「作成 (Create)」を選択します。

    「マクロの作成 (Create Macro)」ダイアログボックスが開きます。

  5. マクロの名前を入力します。

  6. 「選択 (Select)」ボタンをクリックします。

    「オプションの選択 (Select Option)」ダイアログボックスが開きます。

  7. 「カテゴリ (Category)」リストで「ベンダー (Vendor)」を選択します。

    前に作成した「ベンダー (Vendor)」オプションがリストされます。

  8. マクロに追加するオプションを選択して、「了解 (OK)」をクリックします。

  9. オプションの値を入力します。

    このオプションのデータタイプを 「Solaris インストールパラメータ用の DHCP オプションとマクロの作成」で確認し、add_install_client -d によってレポートされる情報を参照してください。

  10. 指定するオプションごとに、手順 6 と 7 を繰り返します。

    別のマクロを追加するには、オプション名に Include と入力し、オプション値にそのマクロ名を入力します。

  11. マクロが完成したら、「了解 (OK)」をクリックします。