Solaris 10 10/08 インストールガイド (Solaris Live Upgrade とアップグレードの計画)

第 7 章 Solaris Live Upgrade ブート環境の管理 (作業)

この章では、ブート環境のファイルシステムを最新の状態に維持したり、ブート環境を削除するなど、さまざまな管理作業について説明します。この章の内容は次のとおりです。


注 –

この章では、UFS ファイルシステム用の Solaris Live Upgrade について説明します。管理作業の内容は、ZFS ブート環境でも同じです。UFS ファイルシステムを ZFS ルートプールに移行する、または ZFS ルートプールを作成およびインストールする手順については、第 13 章ZFS ルートプールのブート環境の作成を参照してください。


Solaris Live Upgrade 管理作業の概要

表 7–1 Solaris Live Upgrade 管理作業の概要

作業  

説明 

参照先 

(省略可能) ステータスを表示します。 

  • ブート環境の状態 (アクティブ、アクティブ化の処理中、アクティブになるようにスケジュールされている、比較処理中) を表示します 。

 
  • アクティブブート環境と非アクティブブート環境を比較します。

 
  • アクティブブート環境の名前を表示します。

 
  • ブート環境の構成を表示します。

(省略可能) 非アクティブブート環境を更新します。 

ファイルシステムの構成を変更することなく、アクティブブート環境からファイルシステムを再度コピーします。 

「以前に構成されたブート環境の更新」

(省略可能) その他の作業。 

  • ブート環境を削除します。

 
  • ブート環境の名前を変更します。

 
  • ブート環境の名前に関連付ける説明を作成または変更します。

 
  • スケジュールされているジョブを取り消します。

すべてのブート環境のステータスの表示

ブート環境についての情報を表示するには、lustatus コマンドを使用します。ブート環境を指定しない場合は、システム上のすべてのブート環境のステータス情報が表示されます。

各ブート環境について、次の詳細情報が表示されます。

Procedureすべてのブート環境のステータスを表示する

  1. スーパーユーザーになるか、同等の役割を引き受けます。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. 次のように入力します。


    # lustatus BE_name
    
    BE_name

    ステータスを表示する非アクティブブート環境の名前を指定します。BE_name を省略すると、lustatus によりシステム内のすべてのブート環境のステータスが表示されます。

    この例では、すべてのブート環境のステータスが表示されます。


    # lustatus
    boot environment   Is        Active  Active     Can	    Copy
    Name               Complete  Now	 OnReboot   Delete	 Status
    ------------------------------------------------------------------------
    disk_a_S9           yes       yes     yes        no       -    
    disk_b_S10database   yes       no      no         yes      COPYING  
    disk_b_S9a          no        no      no         yes      - 

    注 –

    disk_b_S9adisk_b_S10database に対してコピー、名前変更、アップグレードの各処理を行うことができません。これは、disk_b_S9a は未完了の状態で、disk_b_S10database は Solaris Live Upgrade による処理中だからです。


以前に構成されたブート環境の更新

「Copy」メニューまたは lumake コマンドを使用して、以前に構成されたブート環境の内容を更新できます。アクティブ (ソース) ブート環境のファイルシステムがターゲットブート環境にコピーされます。ターゲット上にあったデータは破棄されます。コピー元のブート環境のステータスは、「complete」である必要があります。ブート環境のステータスを確認する方法については、「すべてのブート環境のステータスの表示」を参照してください。

コピー作業はあとで行われるようにスケジュールできます。スケジュールできるのは一度に 1 つのジョブだけです。スケジュールされたコピー処理を取り消す方法については、「スケジュールされた処理 (作成/アップグレード/コピー) の取り消し」を参照してください。

Procedure以前に構成されたブート環境を更新する

この手順では、以前に作成されたブート環境上の古いファイルを上書きしてソースファイルをコピーします。

  1. スーパーユーザーになるか、同等の役割を引き受けます。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. 次のように入力します。


    # lumake -n  BE_name [-s source_BE] [-t  time] [-m email_address]
    
    -n BE_name

    ファイルシステムを書き換えるブート環境の名前を指定します。

    -s source_BE

    (省略可能) ターゲットブート環境にコピーするファイルシステムがあるソースブート環境の名前を指定します。このオプションを省略すると、lumake は現在のブート環境をソースとして使用します。

    -t time

    (省略可能) 指定されたブート環境上のファイルを指定された時刻に上書きするバッチジョブを設定します。時刻は、at(1) のマニュアルページに指定されている書式で入力します。

    -m email_address

    (省略可能) コマンドが完了した時点で、ここで指定する電子メールアドレスに lumake の出力を送ります。email_address はチェックされません。このオプションは、-t と併用する必要があります。


例 7–1 以前に構成されたブート環境の更新

この例では、first_disk のファイルシステムが second_disk にコピーされます。処理が完了した時点で、電子メールが Joe@anywhere.com 宛に送信されます。


# lumake -n  second_disk -s first_disk -m joe@anywhere.com

first_disk 上のファイルが second_disk にコピーされ、通知の電子メールが送信されます。スケジュールされたコピー処理を取り消す方法については、「スケジュールされた処理 (作成/アップグレード/コピー) の取り消し」を参照してください。


スケジュールされた処理 (作成/アップグレード/コピー) の取り消し

ブート環境のスケジュールされた処理 (作成、アップグレード、またはコピー) は、その処理の開始前に取り消すことができます。lumake コマンドを使用すれば、処理をスケジュールできます。システムでスケジュールできるジョブは一度に 1 つだけです。

Procedureスケジュールされた処理 (作成/アップグレード/コピー) を取り消す

  1. スーパーユーザーになるか、同等の役割を引き受けます。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. 次のように入力します。


    # lucancel
    

    これで、指定されている時刻に処理は実行されなくなります。

ブート環境の比較

アクティブブート環境とその他のブート環境の相違を確認するには、lucompare コマンドを使用します。比較をするためには、非アクティブブート環境は完了状態で、コピー処理がスケジュールされていない必要があります。「すべてのブート環境のステータスの表示」を参照してください。

lucompare コマンドは、非大域ゾーンの内容が含まれているブート環境の比較を行います。

lumount または mount を使用してマウントされたパーティションのあるブート環境は、指定できません。

Procedureブート環境を比較する

  1. スーパーユーザーになるか、同等の役割を引き受けます。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. 次のように入力します。


    # /usr/sbin/lucompare -i  infile (or) -t -o  outfile BE_name
    
    -i  infile

    infile 中に指定されたファイルを比較します。比較するファイルは、絶対パスで指定する必要があります。ファイルのエントリがディレクトリである場合、比較はディレクトリに対して再帰的に行われます。このオプションまたは -t のいずれか一方を使用できます (両方は使用できません)。

    -t

    バイナリ以外のファイルだけを比較します。この比較では、ファイルごとに file(1) コマンドを使用してそのファイルがテキストファイルであるかを確認します。ユーザーは、このオプションまたは -i のいずれか一方を使用できます (両方は使用できません)。

    -o  outfile

    相違についての出力を outfile にリダイレクトします。

    BE_name

    アクティブブート環境と比較するブート環境の名前を指定します。


例 7–2 ブート環境の比較

この例では、 first_disk ブート環境 (ソース) と second_disk ブート環境が比較され、結果がファイルに出力されます。


# /usr/sbin/lucompare -i  /etc/lu/compare/ \
-o /var/tmp/compare.out second_disk

非アクティブブート環境の削除

ブート環境を削除するには、ludelete コマンドを使用します。次の制限に注意してください。

Procedure非アクティブブート環境を削除する

  1. スーパーユーザーになるか、同等の役割を引き受けます。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. 次のように入力します。


    # ludelete BE_name
    
    BE_name

    削除する非アクティブブート環境の名前を指定します。


例 7–3 非アクティブブート環境の削除

この例では、ブート環境 second_disk が削除されます。


# ludelete second_disk

アクティブブート環境の名前の表示

現在稼動しているブート環境の名前を表示するには、lucurr コマンドを使用します。システム上に構成されたブート環境がない場合は、「No Boot Environments are defined」というメッセージが表示されます。lucurr で表示されるのは現在のブート環境の名前だけです。次のブート時にアクティブになるブート環境の名前は表示されません。ブート環境のステータスを確認する方法については、「すべてのブート環境のステータスの表示」を参照してください。

Procedureアクティブブート環境の名前を表示する

  1. スーパーユーザーになるか、同等の役割を引き受けます。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. 次のように入力します。


    # /usr/sbin/lucurr
    

例 7–4 アクティブブート環境の名前の表示

この例では、現在のブート環境の名前が表示されます。


# /usr/sbin/lucurr
solaris10

ブート環境の名前の変更

ブート環境の名前の変更は、ブート環境の Solaris リリースを別のリリースにアップグレードする場合などに便利です。たとえば、オペレーティングシステムのアップグレード処理後に、ブート環境の名前を solaris8 から solaris10 に変更できます。

非アクティブブート環境の名前を変更するには、lurename コマンドを使用します。


x86 のみ –

Solaris 10 1/06 以降のリリースでは、GRUB メニューは、「Rename」メニューまたは lurename コマンドを使用すると自動的に更新されます。更新された GRUB メニューでは、ブートエントリのリストにブート環境の名前が表示されます。GRUB メニューの詳細は、「複数のブート環境のブート」を参照してください。

GRUB メニューの menu.lst ファイルの場所を調べるには、『Solaris のシステム管理 (基本編)』の第 13 章「Solaris ブートアーカイブの管理 (手順)」を参照してください。


表 7–2 ブート環境の命名の制約

制約 

参照先 

名前の長さは、30 文字以内にする必要があります。 

 

名前は、英数字またはほかの ASCII 文字 (UNIX シェルで特別な意味を持つ文字を除く) だけで構成できます。 

sh(1) の「クォート」の節を参照してください。

名前に使用できるのは、8 ビットで表現できるシングルバイトの文字だけです。 

 

名前は、システム上で一意となるように指定する必要があります。 

 

ブート環境の名前を変更するためには、そのステータスが「complete」である必要があります。  

ブート環境のステータスを確認する方法については、「すべてのブート環境のステータスの表示」を参照してください。

lumount または mount を使用してファイルをマウントしているブート環境の名前は、変更できません。

 

Procedure非アクティブブート環境の名前を変更する

  1. スーパーユーザーになるか、同等の役割を引き受けます。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. 次のように入力します。


    # lurename -e  BE_name -n  new_name
    
    -e BE_name

    変更する非アクティブブート環境の名前を指定します。

    -n new_name

    非アクティブブート環境の新しい名前を指定します。

    この例では、second_diskthird_disk に変更されます。


    # lurename -e  second_disk  -n  third_disk
    

ブート環境名に関連付ける説明の作成または変更

ブート環境名に説明を付けることができます。この説明によって名前が置き換わることはありません。ブート環境名は長さと文字に制限がありますが、この説明は長さ、内容に制限がありません。シンプルなテキストでも、gif ファイルのような複雑なものでもかまいません。この説明は、次の時点で作成できます。

lucreate コマンドで -A オプションを使用する方法の詳細

「ブート環境をはじめて作成する」

ブート環境の作成後に説明を作成する方法の詳細 

ludesc(1M)

Procedureテキストを使用してブート環境名の説明を作成または変更する方法

  1. スーパーユーザーになるか、同等の役割を引き受けます。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. 次のように入力します。


    # /usr/sbin/ludesc -n  BE_name 'BE_description'
    
    -n BE_name ' BE_description'

    ブート環境名と、ブート環境名に関連付ける新しい説明を指定します。


例 7–5 テキストを使用してブート環境名に説明を加える

この例では、second_disk というブート環境に説明が加えられています。この説明は、単一引用符で囲まれたテキストで記述されます。


# /usr/sbin/ludesc -n second_disk 'Solaris 10 10/08 test build'

Procedureファイルを使用してブート環境名の説明を作成または変更する方法

  1. スーパーユーザーになるか、同等の役割を引き受けます。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. 次のように入力します。


    # /usr/sbin/ludesc -n BE_name -f file_name
    
    -n BE_name

    ブート環境名を指定します。

    file_name

    ブート環境名に関連付ける説明が書かれているファイルを指定します。


例 7–6 ファイルを使用してブート環境名に説明を加える

この例では、second_disk というブート環境に説明が加えられています。説明は、gif ファイル内に入っています。


# /usr/sbin/ludesc -n second_disk -f rose.gif

Procedureテキストで記述された説明からブート環境名を確認する方法

次のコマンドにより、指定した説明に関連付けられたブート環境の名前が戻されます。

  1. スーパーユーザーになるか、同等の役割を引き受けます。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. 次のように入力します。


    # /usr/sbin/ludesc -A 'BE_description'
    
    -A 'BE_description'

    ブート環境名に関連付ける説明を指定します。


例 7–7 説明からブート環境名を確認する

この例では、説明を指定して -A オプションを使用することでブート環境名 second_disk を確認しています。


# /usr/sbin/ludesc -A  'Solaris 10 10/08 test build'
 second_disk

Procedureファイル内の説明からブート環境名を確認する方法

次のコマンドは、ファイルに関連付けられているブート環境名を表示します。ファイルにはブート環境の説明が含まれます。

  1. スーパーユーザーになるか、同等の役割を引き受けます。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. 次のように入力します。


    # /usr/sbin/ludesc -f  file_name
    
    -f file_name

    ブート環境の説明を含むファイルの名前を指定します。


例 7–8 ファイル内の説明からブート環境名を確認する

この例では、-f オプションと、説明を含むファイルの名前を使用することでブート環境の名前 second_disk を確認しています。


# /usr/sbin/ludesc -f rose.gif
second_disk

Procedure名前からブート環境説明を確認する方法

この手順では、コマンドで名前を指定したブート環境の説明が表示されます。

  1. スーパーユーザーになるか、同等の役割を引き受けます。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. 次のように入力します。


    # /usr/sbin/ludesc -n BE_name
    
    -n BE_name

    ブート環境名を指定します。


例 7–9 ブート環境名から説明を確認する

この例では、ブート環境名を指定して -n オプションを使用することで説明を確認しています。


# /usr/sbin/ludesc -n  second_disk 
Solaris 10 10/08 test build

ブート環境の構成の表示

ブート環境の構成を表示するには、lufslist コマンドを使用します。出力される情報は、ブート環境マウントポイントごとの、ディスクスライス (ファイルシステム)、ファイルシステムの種類、およびファイルシステムのサイズです。

Procedureブート環境の構成を表示する

  1. スーパーユーザーになるか、同等の役割を引き受けます。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. 次のように入力します。


    # lufslist -n BE_name
    
    BE_name

    ファイルシステムの詳細を表示するブート環境の名前を指定します。

    次の例ではリストを表示しています。


    Filesystem                fstype       size(Mb) Mounted on
    ------------------------------------------------------------------
    /dev/dsk/c0t0d0s1         swap           512.11 -
    /dev/dsk/c0t4d0s3         ufs           3738.29 /
    /dev/dsk/c0t4d0s4         ufs            510.24 /opt

    注 –

    非大域ゾーンが含まれているリストの例については、「ブート環境の非大域ゾーンのファイルシステムの構成を表示する」を参照してください。