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Sun Java Enterprise System 2004Q2 技術の概要 

第 1 章
概要

Sun JavaTM Enterprise System は、ネットワークを介して、またはインターネット環境で分散しているエンタープライズ版アプリケーションをサポートするために必要なサービスを提供するソフトウェアインフラストラクチャです。このマニュアルでは、このようなアプリケーションを「分散型のエンタープライズアプリケーション」と呼びます。

Java Enterprise System は、Sun ソフトウェアのリリース、配信の方法論、およびビジネスと価格設定の戦略でもあります。ただし、このマニュアルではソフトウェアシステムとしての Java Enterprise System に重点を置いています。

この章では、Java Enterprise System およびシステムの使用に関連する作業を紹介します。次のトピックが含まれます。


Java Enterprise System のサービス

現在のビジネスでは、ネットワークまたはインターネット環境を介して分散する、高いレベルのパフォーマンス、可用性、セキュリティ、スケーラビリティ、および保守性を備えたソフトウェアソリューションが必要とされています。Java Enterprise System では、このようなソフトウェアソリューションをサポートするサービスを提供します。

これらのソフトウェアソリューションは、次のような特徴を持つアプリケーションによって構成されます。

分散型のエンタープライズアプリケーションには、基本となるインフラストラクチャが必要です。これに基づいて、分散しているコンポーネント間で相互に通信したり、それぞれの動作を調整したり、セキュリティ保護されたアクセスを実装することなどができます。このインフラストラクチャは、多数の分散型サービスによって構成されます。

さらに、これらの分散型インフラストラクチャサービスは、コンピューティングノードおよびネットワークリンクのハードウェア環境によってサポートされています。この環境には、SPARC と X86 (Intel および AMI) のハードウェアアーキテクチャが含まれます。

次の図に、全体的なスキーマを示します。

図 1-1 分散型のエンタープライズアプリケーションに必要なサポート

分散型のエンタープライズアプリケーションは分散型インフラストラクチャサービスの上位に位置していること、およびこれらはネットワーク化されたハードウェア環境上に構築されていることを示す図

Java Enterprise System は、図 1-1 に示す分散型インフラストラクチャサービス層を提供します。Java Enterprise System のインフラストラクチャサービスは、幅広いビジネスサービスとビジネスアプリケーションをサポートします。Java Enterprise System によって提供されるインフラストラクチャサービスには、以下のものがあります。

1 つまたは複数のインフラストラクチャサービスを配備することもできます。このとき、各インフラストラクチャサービスに多数の Java Enterprise System コンポーネントが含まれる場合があります。


Java Enterprise System のコンポーネント

Java Enterprise System は、以前には独立していた Sun ソフトウェア製品を 1 つのソフトウェアシステムに統合したものです。

このシステムのコンポーネント (コンポーネント製品) に対するテストが実施されていて、各コンポーネント間の相互動作が保証されています。次のような多数のシステムレベルの機能によって、これらの統合が可能になりました。

次の表に、Java Enterprise System の主要なコンポーネントおよびこれによって提供されるインスラストラクチャサービスを示します。各種のコンポーネントの詳細については、「Java Enterprise System サーバーコンポーネント」を参照してください。

表 1-1 Java Enterprise System のコンポーネント 

システムコンポーネント

提供されるサービス

Sun Cluster

Java Enterprise System の高可用性サービスとスケーラビリティサービス、Java Enterprise System インフラストラクチャの最上部で実行されるアプリケーション、およびサービスとアプリケーションの両方が配備されるハードウェア環境を提供する

Sun ONE Application Server

セッション Beans、エンティティ Beans、メッセージ駆動型 Beans など、EJB (Enterprise JavaBeansa) コンポーネントの J2EE コンテナサービスを提供する。コンテナは、密接に結合された分散コンポーネント間の対話に必要なインフラストラクチャサービスを提供し、これを e-コマースアプリケーションおよび Web サービスを開発および実行するためのプラットフォームにする。Application Server も、Web コンテナサービスを提供する

Sun Java System Calendar Server

エンドユーザーおよびエンドユーザーのグループにカレンダーサービスおよびスケジューリングサービスを提供する。Calendar Server には、ブラウザからサーバーとの対話を行なうクライアントが含まれている

Sun Java System Directory Proxy Server

企業ファイアウォールの外から Directory Server 向けのセキュリティサービスを提供する。Directory Proxy Server は、強化されたディレクトリアクセス制御、スキーマ互換性、ルーティング、および複数の Directory Server インスタンスのロードバランスを提供する

Sun Java System Directory Server

アイデンティティプロファイル (従業員、顧客、仕入先など)、ユーザーの信用情報 (公開鍵の証明書、パスワード、PIN 番号)、アクセス特権、アプリケーションリソース情報、ネットワークリソース情報などのイントラネット情報およびインターネット情報を格納および管理するための中央リポジトリを提供する

Sun Java System Identity Server

アクセス管理サービスおよびデジタルアイデンティティ管理サービスを提供する。アクセス管理サービスには、シングルサインオンを含む認証、およびアプリケーションやサービスへのアクセスに対するロールに基づいた認証が含まれる。管理サービスには、個々のユーザーアカウント、ロール、グループ、およびポリシーの集中管理が含まれる

Sun Java System Instant Messaging

インスタンスメッセージング (チャット)、会議、アラート、ニュース、調査、ファイル転送など、エンドユーザー間における、セキュリティ保護されたリアルタイムの通信を提供する。このサービスには、ユーザーが現在オンラインであるかどうかと通知する Presence マネージャ、およびブラウザからサーバーとの対話を行なうクライアントが含まれる

Sun Java System Message Queue

緩やかに結合した分散コンポーネントとアプリケーション間における、信頼性の高い非同期のメッセージングを提供する。Message Queue は JMS (Java Message Service) API 仕様を実装し、セキュリティ、スケーラビリティ、遠隔管理などのエンタープライズ機能を追加する

Sun Java System Messaging Server

電子メール、FAX、ポケベル、音声、およびビデオをサポートする、セキュリティ保護された、信頼性の高い大容量の蓄積交換型メッセージングを提供する。Messaging Server は、複数のメッセージ記憶域への並行アクセスが可能であり、不要な電子メールの受信拒否やウイルスの攻撃の予防に役立つコンテンツフィルタリングを提供する

Sun Java System Portal Server

ブラウザからビジネスアプリケーションやサービスにアクセスするクライアントに対して、コンテンツの集約や個人用のカスタマイズなどの主要なポータルサービスを提供する。Portal Server は、設定可能な検索エンジンも提供する

Sun Java System Portal Server, Mobile Access

モバイルデバイスから Portal Server へのワイヤレスアクセス、および電話から Portal Server への音声アクセスを提供する

Sun Java System Portal Server, Secure Remote Access

企業ファイアウォールの外から、内部ポータルやインターネットアプリケーションを含む Portal Server のコンテンツおよびサービスへの、セキュリティ保護されたインターネットアクセスを提供する

Sun ONE Web Server

Java サーブレットコンポーネントや JSPTM (JavaServer PagesTM) コンポーネントなどの Java Web コンポーネント用の J2EETM プラットフォーム (Java 2 Platform, Enterprise Edition) Web コンテナサービスを提供する。Web Server は、CGI スクリプトや Active Server Page など、スタティックおよびダイナミックな Web コンテンツを配信するためのその他の Web アプリケーション技術もサポートしている


Java Enterprise System での作業

Java Enterprise System ソフトウェアに基づくビジネスソリューションの作成には、次の図に示すように、要件分析、配備、およびオペレーションという 3 つの段階に分類される、一連の複雑な作業が含まれます。

図 1-2 ソリューションのライフサイクルの各段階

要件分析、配備、およびオペレーションという 3 段階のライフサイクルを示す図[D]

Java Enterprise System のライフサイクルの各段階について、簡単に説明します。

これらの各段階に含まれる作業は、図 1-2 のとおりです。また、第 4 章「ライフサイクルの概念」で詳しく説明します。

図 1-2 に、Java Enterprise System でさまざまな作業を実行する必要がある Java Enterprise System ユーザーのタイプを示します。Java Enterprise System で作業を実行する場合、実行するジョブは図 1-2 に示す 1 つまたは複数のユーザーカテゴリに該当します。Java Enterprise System で実行できる各種の作業に必要なスキルおよびバックグラウンドは、次の表のとおりです。

表 1-2 Java Enterprise System での作業に関連するユーザーカテゴリ 

ユーザープロファイル

スキルとバックグラウンド

ビジネスプランナー
システムアナリスト

専門的ではなくても、一般的な技術知識を持つ
ビジネスの戦略上の方向性を理解している
ビジネスのプロセス、目的、要件を理解している

設計者

高度な技術知識を持つ
配備アーキテクチャの幅広い知識を持つ
最新の技術に精通している
ビジネスの要件および制約を理解している

システムインテグレータ
IT マネージャ
フィールドエンジニア
システム管理者

高度な技術知識を持つ
IT 環境に精通している
分散型のソフトウェアソリューションを実装した経験がある
ネットワークのアーキテクチャ、プロトコル、デバイス、セキュリティの知識を持つ
スクリプト言語およびプログラミング言語の知識を持つ

特化したシステム管理者
代行管理者

特化した技術知識または製品知識を持つ
ハードウェア、プラットフォーム、ディレクトリ、データベースに精通している
ソフトウェアの監視、トラブルシューティング、アップグレードに熟練している
UNIX システムの管理の知識を持つ



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