Sun Java System Communications Express 6.3 管理ガイド

第 7 章 アドレス帳サーバーへの個人用アドレス帳データの移行

従来、個人用アドレス帳 (PAB) は Sun Java System Messaging Server でユーザーの連絡先を格納するために使用されており、PAB は、Messaging Server 上に配備された Web ベースのクライアントからしかアクセスできませんでした。Communications Express 用の Messaging Server は、ユーザーの連絡先詳細を格納するために、PAB ではなくアドレス帳サーバーを使用します。そのため、既存の Messaging Server インストールを使用して Communications Express にアクセスするユーザーは、PAB データをアドレス帳サーバーに移行する必要があります。

移行配備のシナリオ

    移行は、次の環境から実行できます。

  1. デフォルトの単一 PAB ホストを指している単一 Messenger Express インスタンス

  2. 複数の PAB ホストを指している単一 Messenger Express インスタンス

  3. デフォルトの PAB ホストセットを含む複数の PAB ホストを指している単一 Messenger Express インスタンス

  4. 単一の PAB ホストを指している複数の Messenger Express インスタンス

  5. 複数の PAB ホストを指している複数の Messenger Express インスタンス

移行シナリオ

データの移行は、次の 2 つの方法で行われます。

動的移行

既存の Messenger Express ユーザーが Communications Express にログインすると、動的移行が実行されます。移行が完了すると、ユーザーは電子メールを受信します。

    動的移行プロセスでは、次の処理が行われます。

  1. アプリケーションは、pab_mig_required パラメータを確認することによって、移行が uwcuath.properties ファイルで有効になっているかどうかを確認します。

    pab_mig_required パラメータが true に設定されている場合は、移行プロセスが開始されます。

  2. 次に、ログインロジックがユーザーの LDAP エントリ内の nswmextendedprefs 属性を比較します。mepabmigration の値を確認して、ユーザーのデータが以前に移行されているかどうかを判断します。

  3. PAB 移行が完了すると、アドレス帳サーバーは移行プロセスが完了したことを示すため、ログインしているユーザーエントリの nswmextendedprefs および mepabmigration プロパティーを「1」に設定します。

  4. ユーザーは PAB データがアドレス帳サーバーに移行すると、メールを受信します。

メールを受信するには、migrate.properties ファイルにパラメータを設定する必要があります。

表 7–1 PAB 移行電子メールパラメータ

パラメータ 

デフォルト値 

説明 

emailReqd

True 

PAB データが正常に移行された後、メールを送信できるようにします。 

設定可能な値は、「True」および「False」です。 

smtphost

ローカルメールホスト 

次に例を示します。budgie.siroe.com

SMTP リレーホスト名を指定します。 

smtpport

25 

SMTP リレーポートを指定します。 

mailsubject

PAB 移行状態 

メールの件名を指定します。 

from

admin@hostname

送信者の名前を指定します。 


ヒント –

最初のログイン中に PAB データの移行が開始されること、そのため初期セッション中にアドレス帳データを参照できなくなることを通知する電子メールを、管理者がすべてのユーザーに送信することをお勧めします。その後 2、3 日してもユーザーがデータを見ることができなくなった場合は、管理者に連絡する必要があります。


バッチ移行

バッチ移行プロセスでは、エンドユーザーが介入することなく、移行はサーバーレベルで行われます。管理者は runMigrate.sh バッチスクリプトを実行して、指定したドメインにあるメールユーザーの PAB データを移行します。複数ドメインに存在するメールユーザーに対して、管理者は各ドメインで runMigrate.sh スクリプトを呼び出し、ユーザーの PAB データを指定された inetDomainBaseDN からアドレス帳サーバーに移行する必要があります。

バッチ移行を実行する

runMigrate.sh スクリプトに次のパラメータを設定します。このスクリプトは、uwc-deployed-path/WEB-INF/classes ディレクトリにあります。

バッチ移行スクリプトを実行します。


# ./runMigrate.sh

バッチ移行に失敗した場合は、例外がコマンド行プロンプトに表示されます。

単一ユーザーおよび複数ユーザーのセットの移行

移行スクリプトを使用すると、管理者はすべてのユーザー、単一のユーザー、または複数のユーザーのセットを移行できます。いずれのオプションも指定しないでバッチ移行スクリプトを実行すると、ユーザーのセット全体が移行されます。単一のユーザーを移行するには、そのユーザーのユーザー ID を指定してください。複数ユーザーのセットを移行するには、テキストファイルでユーザーのリストを指定するようにしてください。runMigrate.sh コマンドの構文は、次のとおりです。

./runMigrate.sh{ [-u < [uid] |  [-f <uids-file]} [-h]

ここで使用されているオプション、変数は次のとおりです。

データ移行プロセス

Communications Express では移行スクリプトを使用して、ユーザーの Messenger Express アドレス帳データをCommunications Express の一部であるアドレス帳サーバーに移行します。

図 7–1 データ移行プロセスの概要

データ移行

Messenger Express の LDAP PAB ツリーに格納されているデータは、アドレス帳サーバーの LDAP PAB ツリーに移行されます。下の例は、この移行プロセスを示しています。

ドメイン siroe.comUser1 に、移行を必要とする Entry1 のような PAB 内のエントリがある場合、図 7–2 で示すように、そのエントリは PAB ツリーの ou=User1 の下にあります。

図 7–2 PAB ツリーでの Entry1 の場所

PAB ツリー構造

移行後は、図 7–3 で示すように、新規に作成されたアドレス帳サーバーエントリが、アドレス帳サーバーツリーの o=siroe.com, piEntryID=Entry 1 の下に追加されます。

図 7–3 アドレス帳サーバーツリーの Entry1 の場所

アドレス帳サーバーツリー


注 –

移行ユーティリティーは、ユーザーが最初にログインしたときに、Messenger Express の PAB にあるすべてのデータを Communications Express のアドレス帳に移行します。ただし、データがアドレス帳に移行されると、Messenger Express を使用して新たに作成した連絡先またはグループは、Communications Express のアドレス帳に表示されません。逆も同じです。


設定後の手順

移行を有効にするには、Communications Express を設定する必要があります。


注 –

移行に必要な設定パラメータは、管理者が手動で指定する必要があります。


次の表は、移行スクリプトが依存している設定ファイルを一覧表示しています。

表 7–2 設定ファイルと各ファイルの目的

ファイル名 

説明 

migrate.properties

データを PAB からアドレス帳サーバーに移行するために必要なパラメータが含まれています。 

uwcauth.properties

移行が必要かどうかを判定するために、移行ユーティリティーによって参照されます。 

移行ツールは、pab_mig_required の値を確認します。この値が true の場合は、動的移行が実行されます。

uwcconfig.properties

管理者はログレベルを指定して、障害追跡のためにロギングを有効にすることができます。デフォルトでは、ログレベルパラメータ log.level は無効 (0 に設定) になっています。

runMigrate.sh

(バッチ移行でのみ有効) 

このスクリプトは、バッチ移行の実行に使用されます。このスクリプトは必要な変数を設定し、以下の 3 つの引数で java プログラム MigratePab を呼び出します。

# migrate.properties ファイルの絶対パス。デフォルトパスは、次のように設定されています。../WEB-INF/config/migrate.properties

# uwcauth.properties およびその他の設定ファイルがある設定ディレクトリの絶対パス。デフォルトパスは、次のように設定されています。../WEBINF/config

# ユーザーの inetDomainBaseDN

このファイルは、必要なパスと引数を示すように適切に編集する必要があります。 

xlate-pabperson.xml ()

xlate-pabgroup.xml ()

移行ユーティリティーは、Communications Express のアドレス帳 API を内部的に使用して、Messenger Express の PAB からデータを読み込みます。 

xlate ファイルは、PAB の LDAP 属性を、アドレス帳サーバーのアドレス帳属性にマップするために必要です。これらのファイルは、uwc-deloyed-path/WEB-INF/config/ /ldapstore/migrate にあります。

ユーザーのメールホストに応じて、下記の表 に一覧表示されている PAB 設定エントリが取得され、PAB サーバーへの接続が確立されます。

表 7–3 PAB 移行用に設定可能な migrate.properties 内のパラメータ

パラメータ 

デフォルト値 

説明 

hostname.pabldappoolmin

PAB LDAP 用に作成される LDAP ユーザー接続の最小数を指定します。 

hostname.pabldappoolmax

20 

PAB LDAP 用 に作成される LDAP ユーザー接続の最大数を指定します。 

hostname.pabldappooltimeout

50 

LDAP 接続がタイムアウトするまでの秒数を指定します。 

hostname.alwaysusedefaulthost

PAB URI で指定したユーザーの PAB ホストを使用するか、または保持するリストから最初の完全修飾 PAB ホスト名を使用するかを指定します。 

1 に設定すると、PAB エントリの取得に最初の完全修飾 PAB ホストが使用されます。

delete_pabentry

移行の正常終了後に PAB エントリおよび PAB URI を削除できるようにします。 

maxthreads

10 

移行のスレッド数を指定します。 

mailhost.pabhosts

メールホスト名は、PAB エントリが存在する PAB ホストのリストに割り当てられます。 

PAB ホストのリストを指定します。 

mailhost.pabports

 

PAB ホストのポート番号を指定します。 

mailhost.pabbinddns

 

PAB のバインド DN を指定します。 

mailhost.pabpasswds

 

PAB にバインドしているユーザーのパスワードを指定します。 

<pabhost.pabport>. abhostport=< abldaphost>:< abldapport>

 

migrate.properties ファイル内のルックアップテーブルで使用可能な pabhost および pabport エントリを指定します。

このパラメータでは、<pabhost.pabport> がソースディレクトリインスタンスを示し、<abldaphost> <abldaport> が PAB データを移行する必要があるターゲットディレクトリインスタンスを示します。

表 7–4 連絡先のフィールドマッピング

PAB 

アドレス帳 

cn

DisplayName

sn

sn

givenName

givenName

telephonenumber

piPhone1Type:work

piPhone1:

homephone

piPhone2Type:home

piPhone2;

pager

piPhone4Type:pager

piPhone4:

mobile

piPhone3Type:mobile

piPhone3:

facsimiletelephonenumber

piPhone5Type:fax

piPhone5:

mail

piEmail1Type:work

piEmail1:

   

postoffice+street

homePostalAddress

l

homecity

st

homeState

postalcode

homePostalCode

co

homeCountry

labeleduri

piWebsite1

description

description

   

memberofpabgroup

memberOfOIGroup

dateOfBirth

dateOfBirth


注意 – 注意 –

Messenger Express の制約上、MM/DD/YY 以外の形式で誕生日を指定すると、このプロパティーの移行時にエラーが発生する場合があります。ただし、移行後にこのプロパティーを編集して、正しい日付に設定できます。この設定方法については、オンラインヘルプを参照してください。


表 7–5 グループのフィールドマッピング

PAB 

アドレス帳 

cn

displayName

description

description