従来、個人用アドレス帳 (PAB) は Sun Java System Messaging Server でユーザーの連絡先を格納するために使用されており、PAB は、Messaging Server 上に配備された Web ベースのクライアントからしかアクセスできませんでした。Communications Express 用の Messaging Server は、ユーザーの連絡先詳細を格納するために、PAB ではなくアドレス帳サーバーを使用します。そのため、既存の Messaging Server インストールを使用して Communications Express にアクセスするユーザーは、PAB データをアドレス帳サーバーに移行する必要があります。
移行は、次の環境から実行できます。
デフォルトの単一 PAB ホストを指している単一 Messenger Express インスタンス
複数の PAB ホストを指している単一 Messenger Express インスタンス
デフォルトの PAB ホストセットを含む複数の PAB ホストを指している単一 Messenger Express インスタンス
単一の PAB ホストを指している複数の Messenger Express インスタンス
複数の PAB ホストを指している複数の Messenger Express インスタンス
データの移行は、次の 2 つの方法で行われます。
既存の Messenger Express ユーザーが Communications Express にログインすると、動的移行が実行されます。移行が完了すると、ユーザーは電子メールを受信します。
動的移行プロセスでは、次の処理が行われます。
アプリケーションは、pab_mig_required パラメータを確認することによって、移行が uwcuath.properties ファイルで有効になっているかどうかを確認します。
pab_mig_required パラメータが true に設定されている場合は、移行プロセスが開始されます。
次に、ログインロジックがユーザーの LDAP エントリ内の nswmextendedprefs 属性を比較します。mepabmigration の値を確認して、ユーザーのデータが以前に移行されているかどうかを判断します。
PAB 移行が完了すると、アドレス帳サーバーは移行プロセスが完了したことを示すため、ログインしているユーザーエントリの nswmextendedprefs および mepabmigration プロパティーを「1」に設定します。
ユーザーは PAB データがアドレス帳サーバーに移行すると、メールを受信します。
メールを受信するには、migrate.properties ファイルにパラメータを設定する必要があります。
表 7–1 PAB 移行電子メールパラメータ
パラメータ |
デフォルト値 |
説明 |
---|---|---|
emailReqd |
True |
PAB データが正常に移行された後、メールを送信できるようにします。 設定可能な値は、「True」および「False」です。 |
smtphost |
ローカルメールホスト 次に例を示します。budgie.siroe.com |
SMTP リレーホスト名を指定します。 |
smtpport |
25 |
SMTP リレーポートを指定します。 |
mailsubject |
PAB 移行状態 |
メールの件名を指定します。 |
from |
admin@hostname |
送信者の名前を指定します。 |
最初のログイン中に PAB データの移行が開始されること、そのため初期セッション中にアドレス帳データを参照できなくなることを通知する電子メールを、管理者がすべてのユーザーに送信することをお勧めします。その後 2、3 日してもユーザーがデータを見ることができなくなった場合は、管理者に連絡する必要があります。
バッチ移行プロセスでは、エンドユーザーが介入することなく、移行はサーバーレベルで行われます。管理者は runMigrate.sh バッチスクリプトを実行して、指定したドメインにあるメールユーザーの PAB データを移行します。複数ドメインに存在するメールユーザーに対して、管理者は各ドメインで runMigrate.sh スクリプトを呼び出し、ユーザーの PAB データを指定された inetDomainBaseDN からアドレス帳サーバーに移行する必要があります。
runMigrate.sh スクリプトに次のパラメータを設定します。このスクリプトは、uwc-deployed-path/WEB-INF/classes ディレクトリにあります。
BASE_DIR: このパラメータを、Communications Express インストールの uwc-deployed-path に設定します。
JAVA_HOME: このパラメータを Java がインストールされているディレクトリに設定します。
o=siroe.com, o=isp: siroe.com と isp の値を、設定されたドメインの inetDomainBaseDN に置き換えます。
バッチ移行スクリプトを実行します。
# ./runMigrate.sh |
バッチ移行に失敗した場合は、例外がコマンド行プロンプトに表示されます。
移行スクリプトを使用すると、管理者はすべてのユーザー、単一のユーザー、または複数のユーザーのセットを移行できます。いずれのオプションも指定しないでバッチ移行スクリプトを実行すると、ユーザーのセット全体が移行されます。単一のユーザーを移行するには、そのユーザーのユーザー ID を指定してください。複数ユーザーのセットを移行するには、テキストファイルでユーザーのリストを指定するようにしてください。runMigrate.sh コマンドの構文は、次のとおりです。
./runMigrate.sh{ [-u < [uid] | [-f <uids-file]} [-h]
ここで使用されているオプション、変数は次のとおりです。
-u オプションは、単一ユーザーを移行するように runMigrate スクリプトに指示します。—u オプションは、移行するユーザーのユーザー ID の前に来るようにしてください。次に例を示します。
./runMigrate.sh -u user1
-f オプションは、ファイルに指定したユーザーのセットを移行するように、runMigrate スクリプトに指示します。—f オプションは、移行するユーザーが選択されたセットのユーザー ID が含まれるファイルの名前の前に来るるようにしてください。次に例を示します。
./runMigrate.sh -f usersToMigrate.txt
usersToMigrate.txt ファイルでは、1 行に 1 つのユーザー ID が含まれるようにしてください。次に例を示します。
user1 user2 user3 ... .... and so on..
Communications Express では移行スクリプトを使用して、ユーザーの Messenger Express アドレス帳データをCommunications Express の一部であるアドレス帳サーバーに移行します。
Messenger Express の LDAP PAB ツリーに格納されているデータは、アドレス帳サーバーの LDAP PAB ツリーに移行されます。下の例は、この移行プロセスを示しています。
ドメイン siroe.com の User1 に、移行を必要とする Entry1 のような PAB 内のエントリがある場合、図 7–2 で示すように、そのエントリは PAB ツリーの ou=User1 の下にあります。
移行後は、図 7–3 で示すように、新規に作成されたアドレス帳サーバーエントリが、アドレス帳サーバーツリーの o=siroe.com, piEntryID=Entry 1 の下に追加されます。
移行ユーティリティーは、ユーザーが最初にログインしたときに、Messenger Express の PAB にあるすべてのデータを Communications Express のアドレス帳に移行します。ただし、データがアドレス帳に移行されると、Messenger Express を使用して新たに作成した連絡先またはグループは、Communications Express のアドレス帳に表示されません。逆も同じです。
移行を有効にするには、Communications Express を設定する必要があります。
移行に必要な設定パラメータは、管理者が手動で指定する必要があります。
次の表は、移行スクリプトが依存している設定ファイルを一覧表示しています。
表 7–2 設定ファイルと各ファイルの目的
ユーザーのメールホストに応じて、下記の表 に一覧表示されている PAB 設定エントリが取得され、PAB サーバーへの接続が確立されます。
表 7–3 PAB 移行用に設定可能な migrate.properties 内のパラメータ
パラメータ |
デフォルト値 |
説明 |
---|---|---|
hostname.pabldappoolmin |
4 |
PAB LDAP 用に作成される LDAP ユーザー接続の最小数を指定します。 |
hostname.pabldappoolmax |
20 |
PAB LDAP 用 に作成される LDAP ユーザー接続の最大数を指定します。 |
hostname.pabldappooltimeout |
50 |
LDAP 接続がタイムアウトするまでの秒数を指定します。 |
hostname.alwaysusedefaulthost |
1 |
PAB URI で指定したユーザーの PAB ホストを使用するか、または保持するリストから最初の完全修飾 PAB ホスト名を使用するかを指定します。 1 に設定すると、PAB エントリの取得に最初の完全修飾 PAB ホストが使用されます。 |
delete_pabentry |
0 |
移行の正常終了後に PAB エントリおよび PAB URI を削除できるようにします。 |
maxthreads |
10 |
移行のスレッド数を指定します。 |
mailhost.pabhosts |
メールホスト名は、PAB エントリが存在する PAB ホストのリストに割り当てられます。 |
PAB ホストのリストを指定します。 |
mailhost.pabports |
PAB ホストのポート番号を指定します。 |
|
mailhost.pabbinddns |
PAB のバインド DN を指定します。 |
|
mailhost.pabpasswds |
PAB にバインドしているユーザーのパスワードを指定します。 |
|
<pabhost.pabport>. abhostport=< abldaphost>:< abldapport> |
migrate.properties ファイル内のルックアップテーブルで使用可能な pabhost および pabport エントリを指定します。 このパラメータでは、<pabhost.pabport> がソースディレクトリインスタンスを示し、<abldaphost> と <abldaport> が PAB データを移行する必要があるターゲットディレクトリインスタンスを示します。 |
表 7–4 連絡先のフィールドマッピング
PAB |
アドレス帳 |
---|---|
cn |
DisplayName |
sn |
sn |
givenName |
givenName |
telephonenumber |
piPhone1Type:work piPhone1: |
homephone |
piPhone2Type:home piPhone2; |
pager |
piPhone4Type:pager piPhone4: |
mobile |
piPhone3Type:mobile piPhone3: |
facsimiletelephonenumber |
piPhone5Type:fax piPhone5: |
|
piEmail1Type:work piEmail1: |
postoffice+street |
homePostalAddress |
l |
homecity |
st |
homeState |
postalcode |
homePostalCode |
co |
homeCountry |
labeleduri |
piWebsite1 |
description |
description |
memberofpabgroup |
memberOfOIGroup |
dateOfBirth |
dateOfBirth ![]() Messenger Express の制約上、MM/DD/YY 以外の形式で誕生日を指定すると、このプロパティーの移行時にエラーが発生する場合があります。ただし、移行後にこのプロパティーを編集して、正しい日付に設定できます。この設定方法については、オンラインヘルプを参照してください。 |
表 7–5 グループのフィールドマッピング
PAB |
アドレス帳 |
---|---|
cn |
displayName |
description |
description |