この節では、Microsoft Exchange Server から Communications Suite に移行する前に考慮すべき事項について説明します。
Exchange Server には貴重なユーザー情報が保存されているため、効率的な移行ではこの情報を抽出し、新しい Communications Suite サーバーでのユーザーアカウントのプロビジョニングに使用します。古いサーバーには、ユーザーの古いメールメッセージに加え、カレンダ、作業、個人用アドレス帳、および連絡先も保存されています。また、ユーザーの名前、プライマリインターネットアドレス、インターネットエイリアス、電話番号、住所のほかに、ユーザーの部署や肩書きといった記述情報、さらには企業の共通配布リストもすべて保存されています。
サーバーデータの移行について詳細に説明することはこのマニュアルの目的には含まれませんが、古いサーバーは貴重なデータリソースであり、Communications Suite サーバーでのユーザーのプロビジョニングやメールルーティングの変更を効率よく行うために利用できます。Sun Professional Services を利用すると、サーバーデータの移行について理解し配備計画に取り入れることができます。サードパーティー他社では、サーバーデータの移行を容易にするための技術と専門知識コンサルティングを提供しています。
古いサーバーから新しいサーバーへのユーザーの移行は、すべてのユーザーに対して同時に行われるわけではありません。ユーザーが実際に移行される前に、新しいサーバーでユーザーアカウントの作成とプロビジョニングが行われます。そのため、移行期間中は、古いサーバーと新しいサーバーの両方に、同じアドレスを持つユーザーメールボックスが同時に存在することになります。したがって、移行期間中には一時的なメール転送ルールを定義して、ユーザーのメールが正しくルーティングされるようにする必要があります。
組織で新しいインターネットアドレスを実装する場合でも、古いアドレスを古いサーバーに保持しておく必要があります。これは、ユーザーの古いプライマリインターネットアドレスによって引き続き正しいサーバーに配信される場合のみ、古いメッセージへの返信が配信可能になるためです。特定のドメインへのインターネットメールはすべて、関連する MX レコードで指定されている単一のサーバーに配信される必要があるため、組織では、新しい Sun Java System サーバーを指すように MX レコードを更新するタイミングを決定する必要があります。
移行期間の最初に MX レコードを Communications Suite サーバーに切り替える場合は、Communications Suite サーバーを設定して、ローカルメールボックスに配信できないメールをすべて古いサーバー上の対応するメールボックスに送るようにしてください。また、Communications Suite サーバーで新しいユーザーのプロビジョニングを行うたびに、新しいサーバー上で転送ルールを定義して、通常なら新しいメールボックスに配信されるべきメールを、すべて古いサーバー上の対応するユーザーメールボックスに転送するようにしてください。各ユーザーが新しいサーバーに移行されるたびに、新しいサーバー上の最初の転送ルールを削除し、古いサーバー上で新しいルールを定義して、そのユーザーのメールをすべて対応する Communications Suite メールボックスに転送するようにしてください。
反対に、移行期間の最後まで MX レコードで古いサーバーを指し続ける場合は、古いサーバーを設定して、ローカルに配信できないメールを Communications Suite サーバー上の対応するユーザーメールボックスに送るようにしてください。ユーザーが新しいサーバーに移行されるたびに、古いサーバー上で新しいルールを定義して、ほかのユーザーから古いサーバーに送信されたメールを Communications Suite サーバー上の新しいユーザーアカウントに転送するようにしてください。
大規模な組織では、数週間から数ヶ月を要して段階的に移行を完了することが多く、移行期間中は同じユーザーが両方のシステムに存在する場合があります。多くの組織は、すべてのユーザーが常に正確な企業ディレクトリ (ホワイトページ、グローバルアドレス帳) にアクセスできるよう希望しますが、正確さを維持するには、従業員の採用、異動、退職などにつれて 2 つのサーバーのディレクトリを絶えず同期化する必要があります。したがって、配備計画では、移行期間全体にわたって 2 つのディレクトリを定期的に同期化するための何らかのメカニズムを指定するようにしてください。
この問題への対処には Sun Professional Services を利用できます。ディレクトリの同期化を実行するための製品もいくつかあります。
ほとんどのネットワークシステムは、ユーザーのパスワードが他者に知られることを防止するように設計されており、Microsoft Exchange は特にこれに該当します。これらのセキュリティー対策のため、古いサーバーから新しいサーバーにユーザーを移行するときに、ユーザーの既存のパスワードを自動的に維持することは不可能になります。
一方、多くの組織は、インターネットアドレスの形式を標準化するか、Communications Suite への移行の際にドメインを組み合わせることを希望します。したがって、組織では、アカウント名やインターネットアドレスを派生させる方法とユーザーの新しいパスワードを割り当てる方法を、事前に決定する必要があります。
また、ネットワーク管理者は、これらのユーザー資格をユーザーと企業ヘルプデスクの両方に通知する方法も考案する必要があります。一般的な手法は、グループを移行する直前に電子メールマージを準備して、そのグループが新しいサーバーにはじめてログインする直前に各メンバーがそれぞれ自分の資格を受け取るようにすることです。