Sun Java Communications Suite 5 配備計画ガイド

第 27 章 Connector for Microsoft Outlook インストール前の考慮事項の理解

この章では、Connector for Microsoft Outlook をインストールする前に考慮する必要のある事項について説明します。

この章の内容は次のとおりです。

Connector for Microsoft Outlook のインストールの考慮事項

配備ツールキットにはさまざまな配備オプションと動作オプションがあり、ほとんどどのような環境、状況、管理者の優先設定に対しても適切な移行戦略を考案して実装できる高い柔軟性を提供しています。この節のトピックでは、最も一般的なシナリオを示し、それらに移行ツールでどのように対応できるかを説明します。

ユーザーによる対話式インストール (セルフサービス)

セットアップウィザードは、エンドユーザー自身で簡単に実行できるように設計されています。セットアップウィザードはファイルサーバーに置くことができるので、エンドユーザーのワークステーションに個別にインストールする必要はありません。ただし、ユーザーのデスクトップにプラグインを物理的にインストールするには特定のアクセス権が必要ですが、多くの場合、これらはエンドユーザーの多くまたはほとんどに許可されていません。ユーザーが自分のデスクトップに対してインストールの権限を持っていない場合は、次のどちらかの方針を使用できます。

ユーザーのデスクトップにソフトウェアが物理的にコピーされたら、ユーザーはセットアップウィザードを実行して、ソフトウェアの設定と、既存の個人フォルダ (.pst) ファイルの変換を行うことができます。

変換プログラムを実行するエンドユーザーは、自分の資格をサーバーに提示します。したがって、この方法では、パスワードで保護されている .pst ファイル (後述の 「パスワードで保護された Outlook の個人ストア」 を参照) の変換が可能で、ユーザーはどの個人ストアをプラグインで使用できるように変換するかを指定できます。

ユーザーは、未変換の電子メールメッセージを読むことはできますが、未変換のアドレスは新しいサーバーで認識されないため、これらに返信することはできません。非常に古い個人ストアがあり、将来返信する必要はほとんどないと考えられる場合、ユーザーはそのようなファイルを変換しないでおくこともできます。変換はバックグラウンドで実行できるため、ユーザーのコンピュータでほかの作業を行うことができます。ただし、変換プロセスによって、ほかのアプリケーションのパフォーマンスが低下する可能性があります。

ユーザーによる対話式インストールの大きな欠点は次のとおりです。

個別のデスクトップインストール

管理者は、一部のユーザーに対しては前述のユーザー自身によるインストールの実行を許可し、ほかのユーザーに対しては管理者がデスクトップにアクセスして、インストール作業と設定作業の一部またはすべてをユーザーに代わって実行することもできます。この方法を使用すると、自分では移行作業を実行するのが難しい組織幹部や技術スキルの低いユーザーにも、スムーズな移行を確実に提供できます。配備計画では、このような管理者によるアクセスを組織内の任意のユーザーに関して保証するかどうか、また、どのユーザーに関して保証するかを検討するようにしてください。

構成管理ツールを使用した自動インストール

ユーザーのデスクトップにソフトウェアをインストールするには特定のアクセス権が必要ですが、多くの場合、これらはエンドユーザーの多くまたはほとんどに許可されていません。このようなネットワークの管理者のほとんどは、Microsoft の SMS などの構成管理ツールを使用して、複数のユーザーのデスクトップにソフトウェアを「プッシュ」します。これは、ユーザーのアクセス権の要件を回避する方法です。エンドユーザーがソフトウェアをインストールできない「ロックされた」Windows 環境がネットワーク内で使用されている場合は、この種の自動構成管理を使用すると、管理者が多数のユーザーデスクトップへ個別にアクセスする必要がなくなります。

「プッシュ」配布を実行するには、配備設定プログラムを使用して 2 つの異なるバンドル版インストールパッケージをユーザーごとに作成します。このパッケージは、続けて実行する必要があります。最初のパッケージは必要なソフトウェアの「プッシュ」インストールを実行し、2 番目のパッケージは対話型プロセスを実行します。ユーザーはこの対話型プロセスで、インストールされたソフトウェアの設定や自分の既存データファイルの変換について選択を行うことができます。この「プッシュ」メソッドは、エンドユーザーの変換プロセスを完全に自動化する場合にも使用できます。ただし、パッケージを起動するときに各エンドユーザーに固有の情報 (ユーザーの資格など) を指定する必要があるため、何らかのスクリプトが必要になります。

『Sun Java System Connector for Microsoft Outlook 7.2 Administration Guide』には、このソフトウェア配布の「プッシュ」メソッドを Microsoft の SMS を使用して実装する手順が記載されています。『Administration Guide』には、SMS スクリプトでコマンド行スイッチを使用して、ユーザーの個人フォルダ (.pst) ファイルに必要なユーザーパスワードをデスクトップインストールプログラムに渡すことにより、プロセスを完全に自動化する方法も説明されています。

デスクトップインストールのコマンド行スイッチ

Sun Java System Connector セットアップウィザードは、前述したほかのデスクトップインストール方法や 『Sun Java System Connector for Microsoft Outlook 7.2 Administration Guide』「Command-Line Switches for the User Installation Package」で説明されている SMS スクリプトと組み合わせて使用できる、コマンド行スイッチをサポートしています。

インストールパッケージでは、次のコマンド行スイッチがサポートされます。

/USERNAME=xxx この xxx は Sun サーバーでのユーザー名です
/PASSWORD=xxx この xxx は Sun サーバーでのパスワードです
/FULLNAME=xxx この xxx はユーザーの表示名です
/EMAILADDRESS=xxx この xxx はユーザーの電子メールアドレスです
/DN=xxx この xxx は Sun サーバーでのユーザー DN です
/NEWPROFILENAME=xxx この xxx は作成されるプロファイルの名前です
/SAVEPASSWORD=n この n は 1 (保存する) または 0 (保存しない) です

次のスイッチは、Exchange プロファイルを変換する場合に役立ちます。

/OLDDOMAIN=xxx この xxx は Exchange のドメインです
/OLDUSERNAME=xxx この xxx は Exchange のユーザー名です
/OLDPASSWORD=xxx この xxx は Exchange のパスワードです

パスワードで保護された Outlook の個人ストア

Outlook のユーザーは、自分の個人フォルダ (.pst) ファイルにパスワードを割り当てることができます。ただし、このようなファイルを新しい Connector ソフトウェアと Sun Java System サーバーで使用できるように変換するには、Sun Java System Connector セットアップウィザードでファイルを開いて変更する必要があります。したがって、エンドユーザーは、変換したいすべての .pst ファイルに対してパスワードを指定する必要があります。

パスワードが必要なときは、セットアップウィザードから自動的にプロンプトが表示されます。ただし、これには当然ながらユーザーの操作が必要となるため、サイレントモードでのセットアップは不可能です。セットアップをサイレントモードで実行することが重要な場合は、変換中にそのようなパスワードをすべて削除するようユーザーに指示するか、パスワードが準備された状態でウィザードを実行できるようにします。セットアップウィザードは、サイレントモードで実行された場合、パスワードで保護されているファイルを検出すると、ファイルの変換は行わず、変換されなかったファイルがあることを報告します。管理者の配備設定ツール内の設定によっては、セットアップウィザードでこのイベントがエラーとしてログに記録される場合もあります。

Exchange から Communications Suite への移行の考慮事項

この節では、Microsoft Exchange Server から Communications Suite に移行する前に考慮すべき事項について説明します。

メッセージだけでない重要なサーバーデータの移行

Exchange Server には貴重なユーザー情報が保存されているため、効率的な移行ではこの情報を抽出し、新しい Communications Suite サーバーでのユーザーアカウントのプロビジョニングに使用します。古いサーバーには、ユーザーの古いメールメッセージに加え、カレンダ、作業、個人用アドレス帳、および連絡先も保存されています。また、ユーザーの名前、プライマリインターネットアドレス、インターネットエイリアス、電話番号、住所のほかに、ユーザーの部署や肩書きといった記述情報、さらには企業の共通配布リストもすべて保存されています。

サーバーデータの移行について詳細に説明することはこのマニュアルの目的には含まれませんが、古いサーバーは貴重なデータリソースであり、Communications Suite サーバーでのユーザーのプロビジョニングやメールルーティングの変更を効率よく行うために利用できます。Sun Professional Services を利用すると、サーバーデータの移行について理解し配備計画に取り入れることができます。サードパーティー他社では、サーバーデータの移行を容易にするための技術と専門知識コンサルティングを提供しています。

サーバーの移行期間中のメールルーティング

古いサーバーから新しいサーバーへのユーザーの移行は、すべてのユーザーに対して同時に行われるわけではありません。ユーザーが実際に移行される前に、新しいサーバーでユーザーアカウントの作成とプロビジョニングが行われます。そのため、移行期間中は、古いサーバーと新しいサーバーの両方に、同じアドレスを持つユーザーメールボックスが同時に存在することになります。したがって、移行期間中には一時的なメール転送ルールを定義して、ユーザーのメールが正しくルーティングされるようにする必要があります。

組織で新しいインターネットアドレスを実装する場合でも、古いアドレスを古いサーバーに保持しておく必要があります。これは、ユーザーの古いプライマリインターネットアドレスによって引き続き正しいサーバーに配信される場合のみ、古いメッセージへの返信が配信可能になるためです。特定のドメインへのインターネットメールはすべて、関連する MX レコードで指定されている単一のサーバーに配信される必要があるため、組織では、新しい Sun Java System サーバーを指すように MX レコードを更新するタイミングを決定する必要があります。

移行期間の最初に MX レコードを Communications Suite サーバーに切り替える場合は、Communications Suite サーバーを設定して、ローカルメールボックスに配信できないメールをすべて古いサーバー上の対応するメールボックスに送るようにしてください。また、Communications Suite サーバーで新しいユーザーのプロビジョニングを行うたびに、新しいサーバー上で転送ルールを定義して、通常なら新しいメールボックスに配信されるべきメールを、すべて古いサーバー上の対応するユーザーメールボックスに転送するようにしてください。各ユーザーが新しいサーバーに移行されるたびに、新しいサーバー上の最初の転送ルールを削除し、古いサーバー上で新しいルールを定義して、そのユーザーのメールをすべて対応する Communications Suite メールボックスに転送するようにしてください。

反対に、移行期間の最後まで MX レコードで古いサーバーを指し続ける場合は、古いサーバーを設定して、ローカルに配信できないメールを Communications Suite サーバー上の対応するユーザーメールボックスに送るようにしてください。ユーザーが新しいサーバーに移行されるたびに、古いサーバー上で新しいルールを定義して、ほかのユーザーから古いサーバーに送信されたメールを Communications Suite サーバー上の新しいユーザーアカウントに転送するようにしてください。

移行中のグローバルアドレス帳の同期化

大規模な組織では、数週間から数ヶ月を要して段階的に移行を完了することが多く、移行期間中は同じユーザーが両方のシステムに存在する場合があります。多くの組織は、すべてのユーザーが常に正確な企業ディレクトリ (ホワイトページ、グローバルアドレス帳) にアクセスできるよう希望しますが、正確さを維持するには、従業員の採用、異動、退職などにつれて 2 つのサーバーのディレクトリを絶えず同期化する必要があります。したがって、配備計画では、移行期間全体にわたって 2 つのディレクトリを定期的に同期化するための何らかのメカニズムを指定するようにしてください。

この問題への対処には Sun Professional Services を利用できます。ディレクトリの同期化を実行するための製品もいくつかあります。

Sun Java System サーバー用の新しいユーザー ID とパスワード

ほとんどのネットワークシステムは、ユーザーのパスワードが他者に知られることを防止するように設計されており、Microsoft Exchange は特にこれに該当します。これらのセキュリティー対策のため、古いサーバーから新しいサーバーにユーザーを移行するときに、ユーザーの既存のパスワードを自動的に維持することは不可能になります。

一方、多くの組織は、インターネットアドレスの形式を標準化するか、Communications Suite への移行の際にドメインを組み合わせることを希望します。したがって、組織では、アカウント名やインターネットアドレスを派生させる方法とユーザーの新しいパスワードを割り当てる方法を、事前に決定する必要があります。

また、ネットワーク管理者は、これらのユーザー資格をユーザーと企業ヘルプデスクの両方に通知する方法も考案する必要があります。一般的な手法は、グループを移行する直前に電子メールマージを準備して、そのグループが新しいサーバーにはじめてログインする直前に各メンバーがそれぞれ自分の資格を受け取るようにすることです。

Connector for Microsoft Outlook の詳細情報の参照先

管理者の Connector for Microsoft Outlook 用デスクトップ配備設定ツールキットをインストールする方法については、『Sun Java System Connector for Microsoft Outlook 7.2 Installation Guide』を参照してください。Connector for Microsoft Outlook の設定と管理を行う方法については、『Sun Java System Connector for Microsoft Outlook 7.2 Administration Guide』を参照してください。

Connector for Microsoft Outlook で使用する Calendar Server の設定方法については、『Configuring Calendar Server for Connector for Microsoft Outlook』を参照してください。