配備ツールキットにはさまざまな配備オプションと動作オプションがあり、ほとんどどのような環境、状況、管理者の優先設定に対しても適切な移行戦略を考案して実装できる高い柔軟性を提供しています。この節のトピックでは、最も一般的なシナリオを示し、それらに移行ツールでどのように対応できるかを説明します。
セットアップウィザードは、エンドユーザー自身で簡単に実行できるように設計されています。セットアップウィザードはファイルサーバーに置くことができるので、エンドユーザーのワークステーションに個別にインストールする必要はありません。ただし、ユーザーのデスクトップにプラグインを物理的にインストールするには特定のアクセス権が必要ですが、多くの場合、これらはエンドユーザーの多くまたはほとんどに許可されていません。ユーザーが自分のデスクトップに対してインストールの権限を持っていない場合は、次のどちらかの方針を使用できます。
管理者が個々のユーザーのデスクトップにプラグインを物理的にインストールする。
構成管理ツールを使用して、複数のユーザーのデスクトップにソフトウェアを「プッシュ」する (「構成管理ツールを使用した自動インストール」を参照)。
ユーザーのデスクトップにソフトウェアが物理的にコピーされたら、ユーザーはセットアップウィザードを実行して、ソフトウェアの設定と、既存の個人フォルダ (.pst) ファイルの変換を行うことができます。
変換プログラムを実行するエンドユーザーは、自分の資格をサーバーに提示します。したがって、この方法では、パスワードで保護されている .pst ファイル (後述の 「パスワードで保護された Outlook の個人ストア」 を参照) の変換が可能で、ユーザーはどの個人ストアをプラグインで使用できるように変換するかを指定できます。
ユーザーは、未変換の電子メールメッセージを読むことはできますが、未変換のアドレスは新しいサーバーで認識されないため、これらに返信することはできません。非常に古い個人ストアがあり、将来返信する必要はほとんどないと考えられる場合、ユーザーはそのようなファイルを変換しないでおくこともできます。変換はバックグラウンドで実行できるため、ユーザーのコンピュータでほかの作業を行うことができます。ただし、変換プロセスによって、ほかのアプリケーションのパフォーマンスが低下する可能性があります。
ユーザーによる対話式インストールの大きな欠点は次のとおりです。
組織のヘルプデスクへのサポート依頼が増え、ユーザーの技術スキルや「変更前」と「変更後」のネットワーク構成の複雑さによっては、かなりの量になる場合があります。
管理者が複数のユーザーのワークステーションにアクセスして、ユーザーのデスクトップにソフトウェアを物理的にコピーする必要があり、時間と労力がかかります (ユーザー自身がその作業を実行する権限を持っていない場合)。
管理者は、一部のユーザーに対しては前述のユーザー自身によるインストールの実行を許可し、ほかのユーザーに対しては管理者がデスクトップにアクセスして、インストール作業と設定作業の一部またはすべてをユーザーに代わって実行することもできます。この方法を使用すると、自分では移行作業を実行するのが難しい組織幹部や技術スキルの低いユーザーにも、スムーズな移行を確実に提供できます。配備計画では、このような管理者によるアクセスを組織内の任意のユーザーに関して保証するかどうか、また、どのユーザーに関して保証するかを検討するようにしてください。
ユーザーのデスクトップにソフトウェアをインストールするには特定のアクセス権が必要ですが、多くの場合、これらはエンドユーザーの多くまたはほとんどに許可されていません。このようなネットワークの管理者のほとんどは、Microsoft の SMS などの構成管理ツールを使用して、複数のユーザーのデスクトップにソフトウェアを「プッシュ」します。これは、ユーザーのアクセス権の要件を回避する方法です。エンドユーザーがソフトウェアをインストールできない「ロックされた」Windows 環境がネットワーク内で使用されている場合は、この種の自動構成管理を使用すると、管理者が多数のユーザーデスクトップへ個別にアクセスする必要がなくなります。
「プッシュ」配布を実行するには、配備設定プログラムを使用して 2 つの異なるバンドル版インストールパッケージをユーザーごとに作成します。このパッケージは、続けて実行する必要があります。最初のパッケージは必要なソフトウェアの「プッシュ」インストールを実行し、2 番目のパッケージは対話型プロセスを実行します。ユーザーはこの対話型プロセスで、インストールされたソフトウェアの設定や自分の既存データファイルの変換について選択を行うことができます。この「プッシュ」メソッドは、エンドユーザーの変換プロセスを完全に自動化する場合にも使用できます。ただし、パッケージを起動するときに各エンドユーザーに固有の情報 (ユーザーの資格など) を指定する必要があるため、何らかのスクリプトが必要になります。
『Sun Java System Connector for Microsoft Outlook 7.2 Administration Guide』には、このソフトウェア配布の「プッシュ」メソッドを Microsoft の SMS を使用して実装する手順が記載されています。『Administration Guide』には、SMS スクリプトでコマンド行スイッチを使用して、ユーザーの個人フォルダ (.pst) ファイルに必要なユーザーパスワードをデスクトップインストールプログラムに渡すことにより、プロセスを完全に自動化する方法も説明されています。
Sun Java System Connector セットアップウィザードは、前述したほかのデスクトップインストール方法や 『Sun Java System Connector for Microsoft Outlook 7.2 Administration Guide』の「Command-Line Switches for the User Installation Package」で説明されている SMS スクリプトと組み合わせて使用できる、コマンド行スイッチをサポートしています。
インストールパッケージでは、次のコマンド行スイッチがサポートされます。
/USERNAME=xxx この xxx は Sun サーバーでのユーザー名です /PASSWORD=xxx この xxx は Sun サーバーでのパスワードです /FULLNAME=xxx この xxx はユーザーの表示名です /EMAILADDRESS=xxx この xxx はユーザーの電子メールアドレスです /DN=xxx この xxx は Sun サーバーでのユーザー DN です /NEWPROFILENAME=xxx この xxx は作成されるプロファイルの名前です /SAVEPASSWORD=n この n は 1 (保存する) または 0 (保存しない) です
次のスイッチは、Exchange プロファイルを変換する場合に役立ちます。
/OLDDOMAIN=xxx この xxx は Exchange のドメインです /OLDUSERNAME=xxx この xxx は Exchange のユーザー名です /OLDPASSWORD=xxx この xxx は Exchange のパスワードです
Outlook のユーザーは、自分の個人フォルダ (.pst) ファイルにパスワードを割り当てることができます。ただし、このようなファイルを新しい Connector ソフトウェアと Sun Java System サーバーで使用できるように変換するには、Sun Java System Connector セットアップウィザードでファイルを開いて変更する必要があります。したがって、エンドユーザーは、変換したいすべての .pst ファイルに対してパスワードを指定する必要があります。
パスワードが必要なときは、セットアップウィザードから自動的にプロンプトが表示されます。ただし、これには当然ながらユーザーの操作が必要となるため、サイレントモードでのセットアップは不可能です。セットアップをサイレントモードで実行することが重要な場合は、変換中にそのようなパスワードをすべて削除するようユーザーに指示するか、パスワードが準備された状態でウィザードを実行できるようにします。セットアップウィザードは、サイレントモードで実行された場合、パスワードで保護されているファイルを検出すると、ファイルの変換は行わず、変換されなかったファイルがあることを報告します。管理者の配備設定ツール内の設定によっては、セットアップウィザードでこのイベントがエラーとしてログに記録される場合もあります。