オプションは、DHCP サーバーがクライアントに伝えるネットワーク設定パラメータのキーワードです。Solaris DHCP サービスでは、作成、削除、または変更できるオプションは、Solaris DHCP サービスで標準オプションに指定されていないものだけです。そのため、初めて DHCP サービスを設定すると、サイト用のオプションを作成するまでは、DHCP Manager の「オプション」タブは空です。
DHCP サーバー上でオプションを作成する場合、DHCP クライアント上でもそのオプションに関する情報を追加する必要があります。Solaris DHCP クライアントに対しては、/etc/dhcp/inittab ファイルを編集して、新しいオプションに関するエントリを追加する必要があります。Solaris DHCP 以外のクライアントを使用している場合は、新しいオプションまたはシンボルの追加に関する情報について、使用しているクライアント用のマニュアルを参照してください。Solaris DHCP でのオプションの詳細については、「オプションについて」を参照してください。
DHCP Manager または dhtadm コマンドを使用して、オプションを作成したり変更したりまたは削除したりできます。
DHCP の文献では、オプションを「シンボル」と呼びます。dhtadm コマンドとマニュアルページでもオプションをシンボルと呼びます。
次の作業マップに、DHCP オプションを作成、変更、削除する際に必要な作業と、その手順を一覧表示します。
表 11-8 DHCP オプションの作業マップ
作業 |
説明 |
参照先 |
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DHCP オプションの作成 |
標準的な DHCP オプションで扱わない情報に関する新しいオプションを追加する | |
DHCP オプションの変更 |
作成済みの DHCP オプションの属性を変更する | |
DHCP オプションの削除 |
作成済みの DHCP オプションを削除する |
オプションを作成する前に、表 11-9 に一覧表示してあるオプションの属性をよく理解しておく必要があります。
表 11-9 DHCP オプションの属性
オプションの属性 |
説明 |
---|---|
カテゴリ |
オプションのカテゴリは、次のいずれかにする必要がある ベンダー - クライアントのベンダーのプラットフォームに固有のオプションであり、ハードウェアかソフトウェアになる サイト - サイトに固有のオプション 拡張 - DHCP プロトコルに追加された比較的新しいオプションだが、まだ Solaris DHCP の標準オプションとして実装されていない |
コード |
コードは、オプションに割り当てる一意の番号。同じオプションカテゴリ内の他のオプションで、同じコードを使用することはできない。コードはオプションカテゴリに適している必要がある ベンダー - 各ベンダークラスにつき 1 〜 254 のコード値 サイト - 128 〜 254 のコード値 拡張 - 77 〜 127 のコード値 |
データ型 |
データ型は、そのオプションの値として割り当てることができるデータの種類を指定する。有効なデータ型は次の通り ASCII - テキスト文字列値 BOOLEAN - このブール型のデータ型に関連する値はない。このオプションが存在すれば条件は真となり、存在しなければ偽となる。たとえば、標準オプションであり変更できない「Hostname」オプションはブール型。「Hostname」オプションがマクロに含まれている場合は、そのオプションは DHCP サーバーに、割り当てられたアドレスに関連するホスト名が存在するかどうかを調べるよう通知する IP - ドットで区切られた 10 進法形式 (xxx.xxx.xxx.xxx) の 1 つまたは複数のアドレス NUMBER - 署名のない番号。たとえば、MTU オプションは 1500 のような数字を受け付ける OCTET - 2 進データを翻訳されない 16 進 ASCII で表示したもの。たとえば、クライアント ID は、この 16 進形式のデータ型を使用する |
最小値 |
オプション値全体を表すために必要なデータ型の「インスタンス」の個数を指定する。たとえば、IP のデータ型で最小値が 2 の場合、オプション値には 2 つの IP アドレスが含まれる必要がある。NUMBER のデータ型では、最小値がそれぞれ 1、2、4、または 8 のオクテットを指定できる |
最大値 |
オプションについて指定可能な値の最大値。前の例を基にすると、最大値が 2、最小値が 2 で、データ型が IP の場合、オプション値には、最大 2 組の IP アドレスを含むことができる |
ベンダークライアントクラス |
このオプションは、オプションカテゴリがベンダーの場合のみ利用できる。このオプションは、ベンダーオプションが関連するクライアントクラスを識別する。クラスは、たとえば SUNW.Javastation のように、クライアントのマシンタイプやオペレーティングシステムを表す ASCII 文字列。このオプションのタイプによって、同一クラスのすべてのクライアントとそのクラスのクライアントだけに伝えられる設定パラメータが定義できる 複数のクライアントクラスを指定することができる。指定されたクライアントクラスと一致するクライアントクラス値の DHCP クライアントだけが、そのクラスに含まれるオプションを受け取る IA-32 ベースのマシンについては、ベンダークライアントクラスは常に SUNW.i86pc。Sparc ベースのマシンについては、ベンダークライアントクラスは、クライアントで uname -i と入力すると取得できる。ベンダークライアントクラスを指定するには、uname コマンドで返される文字列の中のすべてのカンマをピリオドに置き換える。たとえば、uname -i コマンドによって文字列 SUNW,Ultra-1 が返される場合、ベンダークライアントクラスを SUNW.Ultra-1 と指定する |
DHCP プロトコルの既存のオプションにはないクライアント情報を伝える必要がある場合は、オプションを作成することができます。Solaris DHCP で定義されたすべてのオプションのリストについて、dhcptab(4) のマニュアルページを参照してから独自のオプションを作成してください。
dhtadm -A -s コマンドまたは DHCP Manager の「オプションの作成 (Create Option)」ダイアログボックスを使用して、新しいオプションを作成することができます。
図 11-17 は、DHCP Manager の「オプションの作成 (Create Option)」ダイアログボックスを示します。
「オプション」タブを選択します。
「編集」メニューから「作成」を選択します。
「オプションの作成 (Create Option)」ダイアログボックスが開きます。
新しいオプションの略式記述名を入力します。
この名前には、空白文字以外で 8 文字までの英数字を含めることができます。
ダイアログボックスの各設定について、タイプまたは値の選択をします。
各設定の詳細については、表 11-9 を参照してください。
オプションの作成が終わったら、「DHCP サーバーに変更を通知」を選択します。
「了解 (OK)」をクリックします。
これでオプションをマクロに追加し、クライアントに伝えるオプションに値を割り当てることができます。
DHCP サーバーシステムでスーパーユーザーになります。
次のフォーマットでコマンドを入力します。
# dhtadm -A -s option-name-d 'category,code,data-type,granularity,maximum' |
各項目には、次の内容を入力します。
8 文字以内の英数字文字列
Site、Extend、または Vendor=list-of-classes。 list-of-classes は、オプションが適用されるベンダークライアントクラスの空白文字で区切られたリスト。ベンダークライアントクラス判定の詳細については、表 11-9 を参照のこと。
表 11-9 で説明されているように、オプションカテゴリに適する数値
ASCII、IP、BOOLEAN、NUMBER、または OCTET
表 11-9 で説明されているように、負にならない数字
表 11-9 で説明されているように、負にならない数字
次の 2 つのコマンドは、2 つの例です。
# dhtadm -A -s NewOpt -d 'Site,130,NUMBER,1,1' # dhtadm -A -s NewServ -d 'Vendor=SUNW.Ultra-1 SUNW.SPARCstation10,200,IP,1,1' |
DHCP サービス用にオプションを独自に作成した場合は、DHCP Manager または dhtadm コマンドを使用して、オプションの属性を変更できます。
dhtadm -M -s コマンドまたは DHCP Manager の「オプションの属性」ダイアログボックスを使用して、オプションを変更できます。
Solaris DHCP クライアントのオプション情報を変更して、DHCP サービスに加えたのと同様の変更を反映する必要があることに注意してください。「Solaris DHCP クライアントのオプション情報の変更」を参照してください。
図 11-18 は、DHCP Manager の「オプションの属性 (Option Properties)」ダイアログボックスを示します。
「オプション」タブを選択します。
属性を変更するオプションを選択します。
「編集」メニューから「属性」を選択します。
「オプションの属性 (Option Properties)」ダイアログボックスが開きます。
必要に応じて属性を編集します。
これらの属性の詳細については、表 11-9 を参照してください。
オプションの変更が終わったら、「DHCP サーバーに変更を通知」を選択します。
「了解 (OK)」をクリックします。
DHCP サーバーシステムでスーパーユーザーになります。
次のフォーマットでコマンドを入力します。
# dhtadm -M -s option-name-d 'category,code,data-type,granularity,maximum' |
各項目には、次の内容を入力します。
定義を変更するオプション名
Site、Extend、または Vendor=list-of-classes。 list-of-classes は、オプションが適用されるベンダークライアントクラスの空白文字で区切られたリスト。たとえば、SUNW.Ultra-1 SUNW.i86pc となる。
表 11-9 で説明されているように、オプションカテゴリに適する数値
ASCII、IP、BOOLEAN、NUMBER、または OCTET
表 11-9 で説明されているように、負にならない数字
表 11-9 で説明されているように、負にならない数字
変更する属性だけでなく、DHCP オプション属性すべてを -d スイッチで指定する必要があることに注意してください。
次の 2 つのコマンドは、2 つの例です。
# dhtadm -M -s NewOpt -d 'Site,135,NUMBER,1,1' # dhtadm -M -s NewServ -d 'Vendor=SUNW.Ultra-1 SUNW.i86pc,200,IP,1,1' |
標準的な DHCP オプションは削除できませんが、DHCP サービス用のオプションを独自に定義した場合、DHCP Manager または dhtadm コマンドを使用して、それらのオプションを削除できます。
新しい DHCP オプションを DHCP サーバーに追加する場合、各 DHCP クライアントのオプション情報に、補足エントリを追加する必要があります。Solaris DHCP クライアント以外の DHCP クライアントを使用している場合は、オプションまたはシンボルの追加の詳細について、そのクライアント用のマニュアルを参照してください。
Solaris DHCP クライアントでは、/etc/default/inittab ファイルを編集し、DHCP サーバーに追加するオプションごとにエントリを追加する必要があります。そのオプションをサーバー上であとから変更する場合は、その変更に応じてクライアントの /etc/default/inittab ファイルのエントリを変更する必要があります。
/etc/default/inittab ファイルの構文の詳細については、dhcp_inittab(4) のマニュアルページを参照してください。
Solaris DHCP の以前のリリースで、dhcptags ファイルに DHCP オプションを追加した場合は、そのオプションを /etc/default/inititab ファイルに追加する必要があります。詳細については、「DHCP オプション情報」を参照してください。