NFS サービスの機能を高めるため、いくつかのパラメータを設定できます。これらのパラメータは /etc/system で定義することができ、システムのブート時に読み込まれます。各パラメータは、それが入っているカーネルモジュール名と、それを識別する記号名で識別できます。
記号の名前、それらが常駐するモジュールおよびデフォルト値は、リリースごとに異なる場合があります。変更を加えたり、前のリリース版の値を適用するときは、あらかじめ適切な SunOS バージョンの関連ドキュメントを確認してください。
次にこの章の内容を示します。
表 B-1 nfs モジュール用の NFS パラメータ
記号名 |
説明 |
デフォルト設定 |
---|---|---|
nfs_32_time_ok |
この記号は NFS クライアントまたはサーバーが Y2038 以上のファイル時刻表示を可能にするかどうかを決定する |
デフォルトはオフ (0)。いずれかのファイルの時刻表示が負の場合で、それでもファイルにアクセスしたい場合はこの記号を使用する。この時刻表示が負の場合は日付が 1970 年より前であることを示している |
nfs_acl_cache |
この記号は NFS_ACL プロトコルを使用中のクライアントで、ACL をキャッシュするかどうかを制御する |
デフォルトはオフ (0)。これは安全に有効 (1) 設定でき、Solaris の将来のリリースではオンがデフォルトになる予定 |
nfs_cots_timeo |
NFS バージョン 2 クライアントによる接続指向トランスポートに対する操作の、デフォルトのタイムアウト |
600 * 1/10 秒 |
nfs3_cots_timeo |
NFS バージョン 3 クライアントによる接続指向トランスポートに対する操作の、デフォルトのタイムアウト |
600 * 1/10 秒 |
nfs_do_symlink_cache |
この記号は NFS バージョン 2 を使用してマウントしたファイルシステムで、シンボリックリンクをキャッシュするかどうかを制御する |
デフォルトはオン (1)。システムで amd などを使用する場合には無効 (0) にできる。これが無効に設定されていると、クライアントシステムの性能が低下する場合がある |
nfs3_do_symlink_cache |
この記号は NFS バージョン 3 を使用してマウントしたファイルシステムで、シンボリックリンクをキャッシュするかどうかを制御する |
デフォルトはオン (1)。これは無効 (0) に設定できるが、クライアントシステムの性能が低下する可能性がある |
nfs_dynamic |
この記号は NFS バージョン 2 を使用してマウントしたファイルシステムで、動的再転送のサポートを使用するかどうかを制御する |
デフォルトはオン (1)。 安全にオフ (0) にできるが、処理の遅いサーバーや 8K バイトの読み書き転送を完全にサポートできないサーバーでは、相互運用に問題が生じる可能性がある |
nfs3_dynamic |
この記号は NFS バージョン 3 を使用してマウントしたファイルシステムで、動的再転送のサポートを使用するかどうかを制御する |
デフォルトはオフ (0)。これは変更しないこと |
nfs_lookup_neg_cache |
この記号は NFS バージョン 2 を使用してマウントしたファイルシステムで、失敗した検索要求をキャッシュさせるかどうかを制御する |
デフォルトはオフ (0)。安全に有効 (1) に設定できるが、正常なディレクトリ名のキャッシュ処理に悪影響が生じることもある |
nfs3_lookup_neg_cache |
この記号は NFS バージョン 3 を使用してマウントしたファイルシステムで、失敗した検索要求をキャッシュさせるかどうか制御をする |
デフォルトはオフ (0)。安全に有効 (1) に設定できるが、正常なディレクトリ名のキャッシュ処理に悪影響が生じる可能性がある |
nfs_max_threads |
この記号は NFS バージョン 2 を使用してマウントしたファイルシステムごとに、非同期スレッドを起動する最大数を制御する |
デフォルトは 8。この数字はファイルシステムごとのスレッド数に影響するので、ファイルシステムの多いクライアントでは、大きな変更を行うと性能を大幅に劣化させる原因になる |
nfs3_max_threads |
この記号は NFS バージョン 3 を使用してマウントしたファイルシステムごとに、非同期スレッドを起動させる最大数を制御する |
デフォルトは 8。この数字はファイルシステムごとのスレッド数に影響するので、ファイルシステムの多いクライアントでは、大きな変更を行うと性能を大幅に劣化させる原因になる |
nfs3_max_transfer_size |
この記号は NFS バージョン 3 のクライアントファイルのブロックサイズを制御する |
デフォルトは 32K バイト。変更はできるだけ行わないこと |
nfs_nra |
この記号は NFS バージョン 2 を使用してマウントしたファイルシステムで、読み込まれる先読みブロックの数を制御する |
デフォルトは 4。値を大きくしても性能は向上せず、クライアント側でのメモリー利用が増大する |
nfs3_nra |
この記号は NFS バージョン 3 を使用してマウントしたファイルシステムについて、読み込まれる先読みブロックの数を制御する |
デフォルトは 4。値を大きくしても性能は向上せず、クライアント側でのメモリー利用が増大する |
nrnode |
この記号はキャッシュされる NFS rnode の数を制御する |
この記号に割り当てられる値はブート時に構成され、サーバーに適合するようスケーリングされる。1 に設定してキャッシュ処理を無効にできる |
nfs_shrinkreaddir |
この記号は回線上で、NFS バージョン 2 READDIR 要求を 1024 バイトに縮小するかどうかを制御する。一部古い NFS バージョン 2 のサーバーの中には、1024 バイト以上の READDIR 要求を正しく処理できないものがある |
デフォルトはオフ (0) で、この場合 READDIR 要求を削減しない。これは安全に有効 (1) に設定できるが、ディレクトリの読み込み中に性能に悪影響を与える恐れがある |
nfs_write_error_interval |
この記号は NFS ENOSPC によるエラーメッセージの書き込みがログされる頻度を、秒単位で制御する |
デフォルトは 5 |
nfs_write_error_to_cons_only |
この記号は NFS 書き込みのエラーメッセージが、システムコンソールか、システムコンソールおよび syslog にログされるかどうかを制御する |
デフォルトはオフ (0) で、この場合 NFS 書き込みエラーメッセージをすべて、システムコンソールと syslog にログする。この機能を有効 (1) に設定すると、NFS 書き込みエラーメッセージのほとんどが、システムコンソールでしか出力されないことになる |
表 B-2 nfssrv モジュール用の NFS パラメータ
記号名 |
説明 |
デフォルト設定 |
---|---|---|
nfs_portmon |
この記号は IP ポート番号に基づき、NFS サーバーで要求のフィルタ処理を行うかどうかを制御する。予約済みポート番号のバークレー表記法を使用する |
デフォルトはオフ (0)。有効 (1) にできるが、相互運用上の問題が発生する恐れがある |
nfsreadmap |
この記号は現在ではアクティブではなく、今ではマップの読み込みは実装していない。移行を容易にするため残されている |
デフォルトはオフ (0) |
rfs_write_async |
この記号は書き込みの処理能力を安全に高めるため、NFS バージョン 2 サーバーが、書き込みのクラスタ化機能を使用するかどうかを制御する |
デフォルトはオン (1)。無効 (0) に設定できるが、性能は低下する場合がある |
表 B-3 rpcmod モジュール用の NFS パラメータ
記号名 |
説明 |
デフォルト設定 |
---|---|---|
svc_ordrel_timeout |
カーネルが接続を強制的に切断するまでの時間 (ミリ秒)。カーネル RPC に使用されている TCP 接続が、万一終了の途中でハングした場合に使用される。接続がハングする原因には、NFS サーバーが接続に対する正常なクローズ (FIN) を試み、クライアントがそのクローズの完了 (FIN 確認) ハンドシェークに失敗した場合が考えられる |
デフォルトは 600,000 ミリ秒 (10 分)。値が小さすぎると、TCP 接続を閉じるのに十分な時間がクライアントに与えられない。大きすぎると、「欠陥のある」クライアントや害を及ぼすクライアントがサーバーと TCP 接続を結ぶことになる |
表 B-4 rpcsec パラメータ用の NFS パラメータ
記号名 |
説明 |
デフォルト設定 |
---|---|---|
authdes_cachesz |
この記号は authdescache の大きさを決定する。これは性能を向上させる機能で、この機能を使用するとセキュリティ保護された RPC 要求が発生するたびにクライアントの資格を確認する必要がなくなる |
デフォルトは 128 |
authdes_win |
この記号は、AUTH_DES を使用しているときにサーバーとクライアントの間で許容されるクロックスキューの時間を決定する |
デフォルトは 300 秒 |
authkerb_cachesz |
この記号は authkerb キャッシュの大きさを決定する |
デフォルトは 128。この値を高くし過ぎるとシステムの性能が低下する場合がある |
authkerb_win |
この記号は、AUTH_KERB を使用しているときにサーバーとクライアントの間で許容されるクロックスキューの時間を決定する |
デフォルトは 300 秒 |
clnt_authdes_cachesz |
この記号は、クライアント上の sec=ch 認証ハンドルのためのキャッシュテーブルの大きさを決定する |
デフォルトは 64 |
root になります。
/etc/system ファイルを編集し、行を追加してパラメータを設定します。
それぞれのエントリは次の形式に従ってください。
set module:symbol=value
module は、必要なパラメータを含むカーネルモジュール名で、symbol はパラメータ名、value はパラメータに割り当てる数値です。以下に例を示します。
set nfs:nfs_nra=4 |
これで NFS バージョン 2 を使用してマウントしたファイルシステムについて、読み込まれる先読みブロック数が変更になります。/etc/system については、system(4) のマニュアルページを参照してください。
システムをリブートします。