ATOK8 では、ATOK7 に対してさまざまな機能が新しく追加されています。この付録では、ATOK8 で新しく追加された機能・変更された機能・削除された機能を紹介します。
ATOK8 では次の機能が追加されています。
日本語入力サーバー、辞書メンテナンスツール、環境設定ツールに関するヘルプメッセージを利用することができます。
8 つの色を利用して入力文字列やメニュー類を表示することができます。ただし、Callbacks 入力スタイルの場合は表示ウィンドウ側で内容が描画されるため、そのウィンドウの表示色に合わせた 2 色表示となります。その他の入力スタイルでは、表示色に合わせて内容を描画することはできません。各スタイルの設定については、『日本語入力システムの概要とセットアップ』を参照してください。
環境設定用の GUI ツールを使用して環境をカスタマイズすることができます。「ローマ字かな対応規則」、「ATOK8 のオン・オフ割り当て」の 2 つの項目も新しくカスタマイズできるようになりました。カスタマイズ機能の詳細については、第 10 章「環境のカスタマイズ」を参照してください。
辞書に関して次の機能が追加されています。
辞書学習機能を設定すると、変換候補の使用頻度による並べ替えの他に、後変換学習・未登録語学習・複合語学習・文節区切り学習をすることができます。また、それぞれの自動登録機能を有効または無効にしたり、辞書のメンテナンス時に自動登録単語だけを処理対象にしたりすることができます。詳細は、第 9 章「辞書の管理」を参照してください。
変換に使用する辞書ファイルを 10 種類まで設定することができます。【F1】〜【F5】、 【Shift + F1】〜【Shift + F5】キーで、各辞書ファイルを利用した変換をすることができます。
単語や文章の一部となる頻度が比較的低い漢字が単漢字辞書 atok8tkj.dic として提供されています。atok8.dic に加えてこの辞書も変換に使用する辞書として設定しておくと便利です。
辞書メンテナンス機能の一部に関しては、GUI ルールだけでなく atok8dicm コマンドも用意されています。このコマンドの詳細は、第 9 章「辞書の管理」を参照してください。
変換に関して次の機能が追加されています。
アルファベットを「大文字 」->「小文字」->「最初の 1 文字のみ大文字」->「大文字」の順に変換します。
変換中の文節の最初または最後の 1 文字だけを確定します。
変換中に文節 (注目文節) を示す反転カーソルを未確定の状態で、修正したい別の文節に移動します。
入力した文字を、全角・半角のカタカナ・アルファベット・ひらがなのどの文字で表示するかを設定します。固定入力とは異なり、入力された文字は変換することができます。この機能が追加されたため、ATOK7 の英字漢字変換モード (R漢モード) は、ATOK8 では提供されなくなりました。
環境設定ツールや辞書メンテナンスツール上でファイル名を指定する場合、ファイル指定リストを使用して、すでに存在するファイルを選択することができます。手動でファイル名を入力することもできます。
ATOK8 では次のように機能が変更されています。
辞書に関して次のように機能が変更されています。
ATOK7 の辞書はシステム辞書とユーザー辞書に分かれていました。ATOK8 の辞書では、この区別はなくなり統合されました。この変更に伴って、辞書メンテナンスツールの辞書区分 (システム辞書・ユーザー辞書) もなくなりました。
ATOK8 で提供される、ATOK7 辞書から ATOK8 辞書への移行コマンド (atok8migd) は、システム辞書でもユーザー辞書でも扱うことができます。このコマンドの詳細については、『日本語入力システムの概要とセットアップ』を参照してください。
ATOK7 では辞書メンテナンスツールの辞書作成機能で空の辞書を作成することができました。ATOK8 では空辞書として atok8you.dic ファイルが提供されます。この変更に伴って辞書メンテナンスツールの辞書作成機能は提供されなくなりました。
ATOK7 ではコマンド行から辞書メンテナンスツールを起動することができました。ATOK8 では ATOK8 ウィンドウから起動する方法だけに変更されました。
ATOK7 では単語を 29 の品詞に分類していました。ATOK8 では単語を 33 の品詞に分類しています。品詞番号が変更されていることに特に注意してください。
ATOK8 では atok8migd(1) の品詞指定だけを ATOK7 の品詞体系で行います。その他の操作は、ATOK8 の品詞体系で行います。ATOK8 の品詞の詳細については、第 9 章「辞書の管理」の表 9-2を参照してください。
表 A-1 ATOK8 と ATOK7 の品詞番号
ATOK8 の品詞番号 |
ATOK8 の品詞 |
ATOK7 の品詞番号 |
---|---|---|
1 |
一般名詞 |
1 |
2 |
固有人名 |
2 |
3 |
固有地名 |
2 |
4 |
固有組織 |
2 |
5 |
固有一般 |
21 |
6 |
名詞サ変 |
3 |
7 |
名詞ザ変 |
4 |
8 |
名詞形動 |
5 |
9 |
独立語 |
6 |
10 |
単漢字 |
7 |
11 |
連体詞 |
8 |
12 |
接続詞 |
9 |
13 |
感動詞 |
10 |
14 |
接頭語 |
11 |
15 |
接尾辞 |
12 |
16 |
数詞 |
13 |
17 |
カ行五段 |
14 |
18 |
ガ行五段 |
15 |
19 |
サ行五段 |
16 |
20 |
タ行五段 |
17 |
21 |
ナ行五段 |
18 |
22 |
ハ行五段 |
|
23 |
バ行五段 |
19 |
24 |
マ行五段 |
20 |
25 |
ラ行五段 |
21 |
26 |
ワ行五段 |
22 |
27 |
一段動詞 |
23 |
28 |
カ変動詞 |
24 |
29 |
サ変動詞 |
25 |
30 |
ザ変動詞 |
26 |
31 |
形容詞 |
27 |
32 |
形容動詞 |
28 |
33 |
副詞 |
29 |
ATOK7 で 2 (固有名詞) に分類されている単語は、ATOK8 では、5 (固有一般) として登録されます。
ATOK8 では ATOK7 からキーの標準設定が一部変更されています。
表 A-2 キーの標準設定 (キー別)
キー名 |
ATOK7 での機能 |
ATOK8 での機能 |
---|---|---|
【PgDn】 |
変換候補の次候補を表示する。 【変換】キーと同等 |
文節変換候補から最後の文字に確定する |
【PgUp】 |
変換候補の前候補を表示する。 【Shift + 変換】キーと同等 |
文節変換候補から先頭の文字に確定する |
【Ctrl + @】 |
日本語入力モードに切り替える |
割り当て機能なし。 日本語入力モードに切り替えるには、 【日本語 On-Off】キー、または【Ctrl + スペース】キーを使用する |
表 A-3 キーの標準設定 (機能別)
機能 |
ATOK7 でのキー |
ATOK8 でのキー |
---|---|---|
単語登録ウィンドウを表示する (ATOK7 では複数、ATOK8 では 1 つだけ表示できる) |
【Shift + F6】 |
【Ctrl + F6】 |
辞書ファイルを変更する |
【Shift + F8】 |
【Ctrl + F8】 |
固定入力選択メニューを表示する |
【Shift + F9】 |
【Ctrl + F9】 |
句読点モード選択メニューを表示する |
【Shift + F10】 |
【Ctrl + F10】 |
一般ユーザーの権限で、変換サーバー部分を含めて動作させることができるようになりました。なお、変換サーバー部分のみ他のマシンで動作させる形のリモート使用はできませんが、入力サーバー部分も含め他のマシンで動作させることは可能です。この機能の詳細は、第 11 章「ATOK8 の起動と終了」を参照してください。
ATOK7 の入力スタイル設定で PreeditNothing、または StatusNothing を選択した場合、未確定文字列やモード状態は各クライアントで共用するウインドウに表示されていました。ATOK8 でそのようなスタイルを選択した場合、各クライアントウインドウの外側下部に作成されるウインドウに未確定文字列やモード状態が表示されます。そのウィンドウはクライアント間で共用されません。各スタイルの設定については、『日本語入力システムの概要とセットアップ』を参照してください。
ATOK8 では次の機能が削除されています。
辞書に関して次の機能が削除されました。
ATOK7 辞書メンテナンスツールの次の機能が削除されました。
読みフィールドに指定する 1 文字を一覧表から選択する機能
設定項目をすべて無効にする機能
ATOK7 では【Shift + F6】キーで単語登録ポップアップウィンドウを複数起動することができました。ATOK8 では【Ctrl + F6】キーで単語登録ポップアップウィンドウを 1 つしか起動することができません。そのため、すでに他のクライアントから起動している場合、新たにウィンドウを起動することはできません。なお、単語登録ポップアップウィンドウは日本語入力モードをオフにしても中止ボタンをクリックしない限り終了しません。
ATOK7 では、【Ctrl + W】で候補一覧を 2 次元表示することができました。この機能はATOK8 では削除されました。
ATOK7 は mle(1) を使用して、TTY 環境で利用することができました。ATOK8 は TTY 環境で利用することはできません。
ATOK8 をリセットする場合は、ATOK8 を終了してから起動し直してください。
モードの状態表示に関して次の機能が削除されました。
ルートウィンドウ入力スタイル (StatusNothing) が選択されている場合、日本語入力モード以外では状態が表示されません。また、クライアントが入力フォーカスを得るまでは、すべての入力スタイルで状態が表示されません。
ATOK7 では、入力フォーカスを失った場合の状態表示方法としてデフォルトの網掛けの他に「表示しない」、「そのまま」という選択肢がありました。ATOK8 では入力フォーカスを失った場合の状態表示方法は網掛けに固定です。