メールエイリアスとは、単一の名前によってまとめられたユーザ名の集合です。
メールを同一のユーザグループに繰り返し送信する場合は、メールエイリアスを使うと便利です。たとえば、 hank@fretful、george@lonesome、 sally@dakota という 3 ユーザに頻繁にメールを送信する場合は、amigos というメールエイリアスを作成できます。それ以降 amigos 宛てにメールを送信すると、この 3 ユーザがすべてそのメールを受信することになります。
メールエイリアスは、次の 2 箇所で設定できます。
.mailrc ファイル
/etc/aliases ファイル
.mailrc ファイルで設定されたメールエイリアスと /etc/aliases ファイルで設定されたメールエイリアスとでは、その働きが異なります。それらの相違点は、この節の終わりにある表 7-1 にまとめてあります。
.mailrc ファイルでメールエイリアスを設定する場合は、次の点に注意してください。
.mailrc 内のメールエイリアスはユーザ専用です。つまり、そのエイリアスを使えるのは、それを設定したユーザ自身に限られます。たとえば、あるユーザが .mailrc ファイル内で設定した amigos というメールエイリアスに対して他のユーザがメールを送信しようとすると、「unknown user」というエラーメッセージが出力されます。
メールが送信されると、.mailrc 内のメールエイリアスはそれが示す全ユーザ名に自動的に展開されます。たとえば、amigos にメールを送信すると、そのメールは amigos 内の全ユーザ名を受信者として指定した場合とまったく同様に送信されます。受信者側からは、メールの送信にメールエイリアスが使われたかどうかはわかりません。
.mailrc ファイルは、各ユーザのホームディレクトリ内にあります。このファイルには、mailx とメールツールの動作を制御する多数の設定が入っています。
.mailrc にメールエイリアスを追加するには、次のように入力します。
$ vi ‾/.mailrc |
.mailrc ファイルの編集には任意のテキストエディタを使えます。上記の例は、vi エディタを使って編集する方法を示しています。vi に慣れていない場合は、第 6 章「vi エディタの使い方」を参照してください。
各メールエイリアスは、.mailrc ファイル内で 1 行ごとに記述されています。つまり、複数の行に渡っていても、途中にキャリッジリターンが入っていることはありません。各メールエイリアスには、以下の情報をスペースで区切って記述しなければなりません。
「alias」というワード
メールエイリアスの名前 (1 ワードのみ)
メールエイリアスに含まれる受信者 (ログイン名とマシン名) で、それぞれスペースで区切る
下記の例は、2 つのメールエイリアスを示しています。最初の amigos には 3 ユーザ、2 番目の softball には 8 ユーザが含まれています。softball の行では、名前が画面上では複数行に渡って表示されていますが、Return キーが入力されていない限り問題はありません。
alias amigos hank@fretful george@lonesome sally@dakota alias softball earl@woofer tex@twister elmer@farmhouse jane@freeway hank@fretful jj@walker sally@dakota steve@hardway |
.mailrc ファイル内のエイリアスに含まれるユーザにメールを送信する場合は、そのメールエイリアスをアドレスに指定し、マシン名は指定しないようにします。たとえば、次のようにして送信します。
$ mail amigos Subject: Let's eat Hey Compadres. How about getting together for lunch on Friday? Anyone interested? |
受信者は、次のようなメールを受け取ります。To: の行が展開されていることに注意してください。
To: hank@fretful george@lonesome sally@dakota Subject: Let's eat Hey Compadres. How about getting together for lunch on Friday? Anyone interested? |
/etc/aliases ファイルでメールエイリアスを設定する場合は、次の点に注意してください。
/etc/aliases 内のメールエイリアスは公共用です。つまり、/etc/aliases 内で softball というメールエイリアスを設定すれば、全ユーザがこのエイリアスを利用して softball@your-machinename 宛てにメールを送信できます。
メールが送信されても、/etc/aliases 内のメールエイリアスは展開されません。たとえば、softball@machinename にメールを送信すると、エイリアスは展開されずそのままの形で受信されます。受信者側には、メールエイリアスの名前は分かりますが、そのエイリアスに含まれる他のユーザ名は分かりません。
/etc/aliases で作成されるメールエイリアスの形式は、.mailrc の形式とは若干異なります。/etc/aliases 内の各エイリアスは、次の形式でなければなりません。
メールエイリアスの名前とその後のコロン (:)
コンマで区切った受信者 (ログイン名とマシン名)。メールエイリアスの指定は複数行に渡ってもかまいません。
/etc/aliases ファイルを変更するには、最初に root ユーザになる必要があります。root がパスワードで保護されている場合は、root のパスワードが必要です。
次のコマンドを入力してシステムの root ユーザになります。
$ su Password: # |
root ユーザになるとコマンドプロンプトが変わることに注意してください。
次の例は、メールエイリアス softball@texas をデフォルトの /etc/aliases ファイルに追加する方法を示しています。
/etc/aliases ファイルの編集には任意のテキストエディタを使えます。上記の例は、vi エディタを使って編集する方法を示しています。vi に慣れていない場合は、第 6 章「vi エディタの使い方」を参照してください。
/etc/aliase ファイル内のポンド記号 (#) は、その後のテキストやエイリアスの例が注釈であることを示しています。先頭にポンド記号が付いた行の情報は、実際のエイリアスとしては処理されません。
意図的にエイリアスを使わないようにする場合以外は、このファイルに追加するエイリアスの前にはポンド記号を付けないでください。
/etc/aliases 内のエイリアスに含まれるユーザに対してメールを送信する場合は、そのエイリアスとマシン名をメールのアドレスとして指定します。たとえば、次のようにして送信します。
$ mail softball@texas Subject: Practice Today Let's meet at the diamond behind Building 4 after work tonight. Goodness knows we can use the practice for Saturday's game! Be there as early as you can. |
受信者は、次のようなメールを受け取ります。
To: softball@texas Subject: Practice Today Let's meet at the diamond behind Building 4 after work tonight. Goodness knows we can use the practice for Saturday's game! Be there as early as you can. |
To: の行が展開されていないことに注意してください。
/etc/aliases で設定されたメールエイリアスを使ってメールを送信する場合は、そのエイリアスが設定されているマシン名を必ず指定します。たとえば、マシン freeway 上で riders というメールエイリアスを設定した場合は、riders@freeway と指定してメールを送信しなければなりません。
.mailrc で設定されたメールエイリアスと /etc/aliases で設定されたメールエイリアスとの相違点を表 7-1 にまとめます。
表 7-1 .mailrc と /etc/aliases のメールエイリアス比較
|
.mailrc |
/etc/aliases |
---|---|---|
変更するために root になる必要性 |
なし |
あり |
メッセージを送信するときのアドレス |
alias |
alias@machinename |
To: 行と Cc: 行で受信者の一覧がつくか |
つく |
つかない |
名前をコンマで区切るか |
区切らない |
区切る |
すべての名前を 1 行内に記述するか |
する |
しない |
他のユーザがメールエイリアスを使えるか |
使えない |
使える |
メールエイリアスについての詳細は、システムプロンプトに対して man aliases または man addresses と入力してマニュアルページを参照してください。