Solaris スマートカードの管理

第 6 章 OCF サーバーとクライアントの追加構成 (概要)

この章では、ocfserv の概要、およびスマートカードの初期の設定後に変更を行いたい場合のクライアント構成について記述します。

この章では、次の内容について説明します。

Solaris スマートカードでは属性グループを変更して、ocfserv とクライアントアプリケーションがどのように動作するかをシステムごとに定義できます。

SmartCard Console からの OCF サーバー属性の変更

ocfserv は、システム上でのスマートカードの操作を行います。SmartCard Console から ocfserv 属性を変更するには、基本的に次の手順を使用します。

  1. ナビゲーション区画で「OCF サーバー」アイコンをクリックします。

  2. ローカルシステムを表しているアイコンをダブルクリックして、「OCF サーバー構成」ダイアログボックスを表示します。

  3. 「OCF サーバー構成」ダイアログボックスで OCF サーバー属性を定義します。

    これらの属性は、サーバーのデフォルトの動作を定義します。クライアントアプリケーション用に定義された属性で上書きされない限り、この属性が優先されます。

    「OCF サーバー構成」ダイアログボックスには、次の 3 つのフォルダがあります。

    • リソース - 「リソース」フォルダは、ローカルシステム上における OCF サーバーのデフォルトの動作を決定する属性を定義します。このフォルダには、「利用可能なリソース」リストと「デフォルト」リストがあります。

    • デバッグ - 「デバッグ」フォルダは、OCF サーバーのデバッグ属性を設定します。デバッグ属性はオプション (省略可能) です。

    • クラスパス - 「クラスパス」フォルダは、OCF サーバーが認識する .jar ファイルを追加または削除します。

    SmartCard Console の使用方法については、「SmartCard Console の使用」を参照してください。

OCF サーバーの属性の概要

この節では、デフォルトの属性がサイトに適合しない場合に変更する必要がある ocfserv の属性の概要について説明します。次のような場合は、OCF サーバーの属性を変更する必要があることがあります。

OCF サーバーの属性を変更する手順については、第 7 章「OCF サーバーとクライアントの追加構成 (タスク)」を参照してください。

この節では、各 ocfserv 属性について説明し、そのデフォルト値を示します。OCF サーバーの属性を表示するには、SmartCard Console または smartcard -c admin コマンドを使用します。

有効なスマートカードとデフォルトのスマートカードのサーバー属性

ocf.server.default.validcards」属性は、どのスマートカードのタイプがシステム上で有効であるかを指定します。デフォルトでは、3 つのスマートカードのタイプすべてが有効です。

この属性を変更する手順については、「サーバーに有効なスマートカードを変更するには (SmartCard Console)」を参照してください。

ocf.client.default.defaultcard」属性は、どのスマートカードがデフォルトであるかを ocfserv に指定します。デフォルトでは、Solaris スマートカードには指定されているスマートカードはありません。

この属性を変更する手順については、「サーバーのデフォルトのスマートカードを変更するには (SmartCard Console)」を参照してください。

サポートされているカードリーダーの属性

OpenCard.terminals」属性は、そのシステムでサポートされているカードリーダーを定義します。たとえば、Sun SCRI External Card Reader 1 を持つシステムの場合、「OpenCard.terminals」の値は次のようになります。


OpenCard.terminals         = com.sun.opencard.terminal.scm.SCMStc 
.SCMStcCardTerminalFactory|MySCM|SunSCRI|dev/cua/b

上記の例では、OpenCard.terminals は現在構成されているカードリーダーとして Sun SCRI External Card Reader 1 を定義しています。カードリーダーを追加すると、smartcard -c admin コマンドで「OpenCard.terminals」属性が表示されます。

カードリーダーを追加する手順については、第 3 章「カードリーダーの設定 (タスク)」を参照してください。

Open Card サービスの属性

OpenCard.services 属性は、スマートカードに固有なモジュールの位置を指定します。各スマートカードのタイプには、次のモジュールが定義されています。


OpenCard.services          = com.sun.opencard.service.cyberflex.CyberFlex 
ServiceFactory com.sun.opencard.service.ibutton.IButtonServiceFactory com.
sun.opencard.service.payflex.PayFlexServiceFactory

カードサービスの有効化または無効化については、「カードサービスを無効または有効にするには (SmartCard Console)」を参照してください。

非公開鍵属性

Solaris スマートカードの非公開鍵の機能を使用するには、公開鍵インフラストラクチャ (PKI) をサイトに設定しておく必要があります。スマートカード上で非公開鍵を作成する手順については、「スマートカード上で非公開鍵を作成するには (コマンド行)」を参照してください。


注 -

スマートカードに格納できる非公開鍵は 1 つだけです。


非公開鍵属性がどのように機能するか

スマートカードの PIN とパスワードを認証した後、ocfservkey_file_name で指定されたファイルをスマートカードにコピーします。これ以降、そのスマートカードでは、非公開鍵を補助的な認証として使用して、データに署名できるようになります。ユーザーがデータに署名するコマンド (AMI の amisign など) を実行すると、そのコマンドはユーザーのスマートカード上にある非公開鍵を使用して、署名付きデータを作成します。

サイトのポリシーによっては、システムに格納されているユーザーの非公開鍵ファイルを削除したい場合もあります。このファイルを削除すると、非公開鍵はユーザーのスマートカード上だけに存在することになります。

その他の OCF サーバーの属性

次の表に、変更してはならない属性を示します。

表 6-1 変更してはならない OCF サーバー属性

属性名 

説明 

initializerlocations

アプレット初期設定機能を持つ Java Class ディレクトリの位置 

initializerlocations = com.sun.opencard.cmd.IButtonInit

cardservicelocations

カードサービスモジュールがある Java Class ディレクトリの位置 

cardservicelocations = com.sun.opencard.service.common

ocfserv.protocol

ocfserv が使用する TCP プロトコル:

ocfserv.protocol = rpc

authservicelocations

認証モジュールがある Java Class ディレクトリの位置 

authservicelocations = com.sun.opencard.service.auth

SmartCard Console からの OCF クライアント属性の変更

必要に応じて、次の基本手順を使用して SmartCard Console から OCF クライアント属性を変更します。

  1. ナビゲーション区画で「OCF クライアント」アイコンをクリックします。

  2. ナビゲーション区画で「CDE」アイコンをダブルクリックします。

  3. 「クライアントの構成: CDE」ダイアログボックスで、クライアント属性を変更します。

    「クライアントの構成」ダイアログボックスには、次の 4 つのフォルダがあります。

    • カード/認証 - 「カード/認証」フォルダは、クライアントアプリケーションに有効なスマートカードと認証シーケンスを定義します。

    • デフォルト - 「デフォルト」フォルダは、クライアントアプリケーションのデフォルトの属性を定義します。

      このフォルダには ocfserv のデフォルトの定義に使用したものと同じオプションがいくつか含まれていますが、こちらはクライアントのデフォルトを定義しています。

    • Timeouts - 「Timeouts」フォルダは、スマートカードが取り外された後、認証プロセスが再起動するまでの、アプリケーションが待機する時間の長さを定義します。

    • Options - 「Options」フォルダは、クライアントアプリケーションの動作中にスマートカードが取り外された場合のクライアントアプリケーションの動作を定義します。

    SmartCard Console の使用方法については、「SmartCard Console の使用」を参照してください。

OCF クライアント属性の概要

この節では、ユーザーのスマートカードの構成に基づいて変更することができるクライアント属性について説明します。これらの属性は、SmartCard Console により、または smartcard -c admin コマンドにより表示することができます。

以下の属性が OCF クライアントにデフォルトで定義されています。


ClientName.PropertyName     Value 
  -----------------------     ----- 
  default.validcards        = CyberFlex IButton PayFlex 
  default.authmechanism     = Pin=UserPin 
  default.defaultaid        = A000000062030400

クライアントのデフォルトのスマートカードとカードリーダー

ocf.client.defaultcard」属性は、(すべての有効なスマートカードのタイプから) クライアントのアプリケーションで使用する必要のある特定のスマートカードのタイプを定義します。Solaris スマートカードでサポートされるスマートカードのタイプは次のとおりです。

「利用可能なリソース: カードリーダー」カテゴリを使用して、クライアントアプリケーションが認識するデフォルトのカードリーダーを定義します。

これらの属性を変更する手順については、「クライアントのデフォルトのスマートカードを定義するには (SmartCard Console)」「クライアントのデフォルトのスマートカードリーダーを定義するには (SmartCard Console)」を参照してください。

クライアントアプリケーションに有効なスマートカードのタイプとデフォルトのスマートカードのタイプ

2 つのカード属性「defaultcard」と「validcards」により、特定のクライアントアプリケーションまたはシステム上のすべてのクライアントアプリケーションにログインするときに、使用するスマートカードのタイプを指定します。

validcards」属性では、特定のアプリケーションに有効なスマートカードのタイプをすべて指定します。一方、「defaultcard」属性では、デフォルトのカードとして指定したスマートカードをカードリーダーに挿入するまで、アプリケーションが起動しないように指定できます。

たとえば、アプリケーション B の「validcards」属性として iButton、CyberFlex、およびカード A を指定して、「defaultcard」属性として CyberFlex を指定していると仮定します。アプリケーション B がデフォルトのスマートカードだけを受け付ける場合、ユーザーがカード A を使ってアプリケーション B にログインしようとすると、次のようなメッセージが表示されます。


Waiting for Default Card

アプリケーション B へのログインは、ユーザーが CyberFlex カードをカードリーダーに挿入するまでブロックされます。

これらの値は、smartcard -c admin を実行すると表示されます。


default.validcards        = CyberFlex IButton PayFlex

これらの属性を変更する手順については、「クライアントアプリケーションに有効なスマートカードを変更するには (コマンド行)」「クライアントアプリケーションにデフォルトのスマートカードを割り当てるには (コマンド行)」を参照してください。

クライアントアプリケーションのデフォルトの認証機構

default.authmechanism」属性では、すべてのクライアントアプリケーションのデフォルトの認証機構を指定します。すべてのクライアントアプリケーションのデフォルトは、Pin=UserPin です。また、authmechanism を使用すると、特定のクライアントアプリケーションのデフォルトの認証機構を定義できます。

すべてのクライアントアプリケーションのデフォルトの認証機構を設定する手順については、「サーバーとクライアントアプリケーションのデフォルトの認証機構を設定するには (コマンド行)」を参照してください。

有効なスマートカードのデフォルトのクライアント認証シーケンス

ocf.client.default.authmechanism」属性は、クライアントアプリケーションにログインするときに、すべての有効なスマートカードで使用されるデフォルトの認証シーケンスを決定します。

「クライアントの構成: CDE」ダイアログボックスの「使用されるスマートカード」チェックリストには、現在 ocfserv に有効化されているすべてのスマートカードのタイプが表示されます。

card_name 認証」リストには、「使用されるスマートカード」リストから選択したスマートカードのタイプに有効な認証機構が表示されます。

card_name 認証」リストにおける認証機構の順番は、ユーザーが当該クライアントアプリケーションにアクセスするときに ocfserv が実際に試行する認証シーケンスの順番です。

この属性を変更する手順については、「有効なスマートカードのデフォルトのクライアント認証シーケンスを変更するには (SmartCard Console)」を参照してください。

デフォルトのクライアントアプレットの ID 属性

default.defaultaid 属性は、すべてのアプリケーションに対して実行されるデフォルトのスマートカードアプレットに割り当てられている ID 番号です。デフォルトの ID 番号は、smartcard -c admin を実行すると表示されます。


default.defaultaid        = A000000062030400

この値は、Solaris スマートカードが実行するデフォルトのアプレット SolarisAuthApplet の AID 属性です。

defaultaid 属性をサイト用にカスタムビルドしたアプレットで置き換える必要がある場合にのみ、defaultaid 属性を変更してください。defaultaid を変更する必要がある場合は、smartcard(1M) のマニュアルページを参照してください。

クライアントアプリケーションとスマートカードの取り外しタイムアウトの変更

「Timeouts」フォルダは、スマートカードが取り外された後、認証プロセスが再起動するまでの、アプリケーションが待機する時間の長さを定義します。

手順については、「クライアントアプリケーションとスマートカードの取り外しタイムアウトを定義するには (SmartCard Console)」を参照してください。

スマートカードが取り外された場合のクライアントアプリケーションの動作の変更

「Options」フォルダは、クライアントアプリケーションの動作中にスマートカードが取り外された場合のクライアントアプリケーションの動作を定義します。

手順については、「スマートカードが取り外された場合のクライアントアプリケーションの動作を変更するには (SmartCard Console)」を参照してください。