Solaris DHCP の管理

DHCP オプションの使用

オプションは、DHCP サーバーがクライアントに渡すネットワーク構成パラメータのキーワードです。Solaris DHCP サービスでは、作成、削除、または変更できるオプションは、Solaris DHCP サービスで標準オプションに指定されていないものだけです。そのため、初めて DHCP サービスを設定すると、サイト用のオプションを作成するまでは、DHCP マネージャの「オプション (Options)」タブは空です。

DHCP サーバー上でオプションを作成する場合、DHCP クライアント上でもそのオプションに関する情報を追加する必要があります。Solaris DHCP クライアントに対しては、/etc/dhcp/inittab ファイルを編集して、新しいオプションに関するエントリを追加する必要があります。このファイルについての詳細は、dhcp_inittab のマニュアルページを参照してください。

Solaris DHCP 以外のクライアントを使用している場合、新しいオプションまたはシンボルを追加する方法については、使用しているクライアント用のマニュアルを参照してください。Solaris DHCP でのオプションについての詳細は、オプションについてを参照してください。

DHCP マネージャまたは dhtadm コマンドを使用して、オプションを作成、変更、削除できます。


注 –

DHCP の文献では、オプションを「シンボル」と呼びます。dhtadm コマンドとマニュアルページでもオプションをシンボルと呼びます。


次の作業マップに、DHCP オプションを作成、変更、削除する際に必要な作業とその手順を示します。

表 4–8 DHCP オプション (作業マップ)

作業 

説明 

参照先 

DHCP オプションの作成 

標準的な DHCP オプションで扱わない情報に関する新しいオプションを追加する 

DHCP オプションを作成する方法 (DHCP マネージャ)

DHCP オプションを作成する方法 (dhtadm)

Solaris DHCP クライアントのオプション情報の変更

DHCP オプションの変更 

作成済みの DHCP オプションの属性を変更する 

DHCP オプションの属性を変更する方法 (DHCP マネージャ)

DHCP オプションの属性を変更する方法 (dhtadm)

DHCP オプションの削除 

作成済みの DHCP オプションを削除する 

DHCP オプションを削除する方法 (DHCP マネージャ)

DHCP オプションを削除する方法 (dhtadm)

オプションを作成する前に、次の表に示すオプションの属性をよく理解しておく必要があります。

表 4–9 DHCP オプションの属性

オプションの属性 

説明 

カテゴリ 

オプションのカテゴリは、次のいずれかにする必要がある 

ベンダー – クライアントのベンダーのプラットフォームに固有のオプションであり、ハードウェアかソフトウェアになる 

サイト – サイトに固有のオプション 

拡張 – DHCP プロトコルに追加された比較的新しいオプションだが、まだ Solaris DHCP の標準オプションとして実装されていない 

コード 

コードは、オプションに割り当てる一意の番号。同じオプションカテゴリ内の他のオプションで、同じコードを使用することはできない。オプションカテゴリに対して適切なコードにする必要がある  

ベンダー – ベンダークラスごとに 1 から 254 のコード値 

サイト – 128 から 254 のコード値 

拡張 – 77 から 127 のコード値 

データ型 

データ型は、そのオプションの値として割り当てることができるデータの種類を指定する。有効なデータ型は次の通り 

ASCII – テキスト文字列値 

BOOLEAN – ブール型のデータ型に関連値はない。このオプションが存在すれば条件は真となり、存在しなければ偽となる。たとえば、標準オプションであり変更できない「Hostname」オプションはブール型。「Hostname」オプションがマクロに含まれている場合は、そのオプションは DHCP サーバーに、割り当てられたアドレスに関連するホスト名が存在するかどうかを調べるよう通知する 

IP – ドットで区切られた 10 進法形式 (xxx.xxx.xxx.xxx) の 1 つまたは複数のアドレス

OCTET – 2 進データを翻訳されない 16 進 ASCII で表示したもの。たとえば、クライアント ID は、この 16 進形式のデータ型を使用する 

UNUMBER8, UNUMBER16, UNUMBER32, UNUMBER64, SNUMBER8, SNUMBER16, SNUMBER32, または SNUMBER64 の数値。 単語の先頭にある U または S は、数字が unsigned (符号なし) または signed (符号付き) であることを示す。単語の末尾にある数字 (8 から 64) は、数値のビット数を示す  

最小値 (Granularity) 

オプション値全体を表すために必要なデータ型の「インスタンス」の個数を指定する。たとえば、IP のデータ型で最小値が 2 の場合、オプション値には 2 つの IP アドレスが含まれる必要がある。 

最大値 (Maximum) 

オプションについて指定可能な値の最大値。前の例をにすると、最大値が 2、最小値が 2 で、データ型が IP の場合、オプション値には、最大 2 組の IP アドレスを含むことができる 

ベンダークライアントクラス 

このオプションは、オプションカテゴリがベンダーの場合のみ利用できる。このオプションは、 オプションが関連するクライアントクラスを識別する。クラスはクライアントのマシンタイプやオペレーティングシステムを表す ASCII 文字列である (たとえば、SUNW.Ultra5_10)。このオプションのタイプによって、同一クラスのすべてのクライアントとそのクラスのクライアントだけに渡される構成パラメータを定義できる

複数のクライアントクラスを指定することができる。指定されたクライアントクラスと一致するクライアントクラス値の DHCP クライアントだけが、そのクラスに含まれるオプションを受け取る 

クライアントクラスは DHCP クライアントのベンダーによって決定される。Solaris クライアント以外の DHCP クライアントの場合、クライアントクラスについては、DHCP クライアントのベンダーのマニュアルを参照すること 

Solaris クライアントの場合、クライアント上で uname -i と入力して、 クライアントクラスを確認できる。ベンダークライアントクラスを指定するには、uname コマンドで返される文字列の中のすべてのカンマをピリオドに置き換える。たとえば、uname -i コマンドから文字列 SUNW,Ultra5_10 が返される場合、ベンダークライアントクラスを SUNW.Ultra5_10 として指定する

DHCP オプションの作成

DHCP プロトコルの既存のオプションにはないクライアント情報を渡す必要がある場合は、オプションを作成できます。独自のオプションを作成するとき、Solaris DHCP で定義されているすべてのオプションのリストは、dhcp_inittab のマニュアルページに記載されています。

dhtadm -A -s コマンドまたは DHCP マネージャの「オプションの作成 (Create Option)」ダイアログボックスを使用すると、新しいオプションを作成することができます。

図 4–17 は、DHCP マネージャの「オプションの作成 (Create Option)」ダイアログボックスを示します。

図 4–17 「オプションの作成 (Create Option)」ダイアログボックス

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DHCP オプションを作成する方法 (DHCP マネージャ)

  1. 「オプション (Options)」タブを選択します。

  2. 「編集 (Edit)」メニューから「作成 (Create)」を選択します。

    「オプションの作成 (Create Option)」ダイアログボックスが開きます。

  3. 新しいオプションの略式記述名を入力します。

    この名前には、128 文字までの英数字 (空白文字を含む) を含めることができます。

  4. ダイアログボックスの各設定について、タイプまたは値の選択をします。

    各設定についての詳細は、表 4–9を参照してください。

  5. オプションの作成が終わったら、「DHCP サーバーに変更を通知 (Notify DHCP Server of Change)」を選択します。

  6. 「了解 (OK)」をクリックします。

    これでオプションをマクロに追加し、クライアントに渡すオプションに値を割り当てることができます。

DHCP オプションを作成する方法 (dhtadm)

  1. スーパーユーザーまたは DHCP 管理プロファイルに割り当てられたユーザーになります。

  2. 次の書式でコマンドを入力します。


    # dhtadm -A -s option-name-d 'category,code,data-type,granularity,maximum'
    

    引数は次のとおりです。

    option-name

    128 文字以内の英数字文字列 

    category

    SiteExtend、または Vendor=list-of-classeslist-of-classes は、オプションが適用されるベンダークライアントクラスの空白文字で区切られたリスト。ベンダークライアントクラスを決定する方法については、表 4–9を参照のこと。

    code

    オプションカテゴリに適する数値 (表 4–9を参照)

    data-type

    オプションと一緒に渡されるデータのタイプを示すキーワード (表 4–9を参照)

    granularity

    負でない数値 (表 4–9を参照)

    maximum

    負でない数値 (表 4–9を参照)

    次に例を 2 つ示します。

    # dhtadm -A -s NewOpt -d 'Site,130,UNUMBER8,1,1'
    

    # dhtadm -A -s NewServ -d 'Vendor=SUNW.Ultra-1 \ 
    SUNW.SPARCstation10,200,IP,1,1'
    

DHCP オプションの変更

DHCP サービス用にオプションを独自に作成した場合、DHCP マネージャまたは dhtadm コマンドを使用すると、オプションの属性を変更できます。

dhtadm -M -s コマンドまたは DHCP マネージャの「オプションの属性 (Option Properties)」ダイアログボックスを使用して、オプションを変更できます。

Solaris DHCP クライアントのオプション情報を変更して、DHCP サービスに加えたのと同じ変更内容を反映する必要が。Solaris DHCP クライアントのオプション情報の変更を参照してください。

次に、DHCP マネージャの「オプションの属性 (Option Properties)」ダイアログボックスを示します。

図 4–18 「オプションの属性 (Option Properties)」ダイアログボックス

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DHCP オプションの属性を変更する方法 (DHCP マネージャ)

  1. 「オプション (Options)」タブを選択します。

  2. 属性を変更するオプションを選択します。

  3. 「編集 (Edit)」メニューから「属性 (Properties)」を選択します。

    「オプションの属性 (Option Properties)」ダイアログボックスが開きます。

  4. 必要に応じて属性を編集します。

    これらの属性についての詳細は、表 4–9を参照してください。

  5. オプションの変更が終わったら、「DHCP サーバーに変更を通知 (Notify Server of Change)」を選択します。

  6. 「了解 (OK)」をクリックします。

DHCP オプションの属性を変更する方法 (dhtadm)

  1. スーパーユーザーまたは DHCP 管理プロファイルに割り当てられたユーザーになります。

  2. 次の書式を使用してコマンドを入力します。


    # dhtadm -M -s option-name-d 'category,code,data-type,granularity,maximum'
    

    引数は次のとおりです。

    option-name

    定義を変更するオプション名 

    category

    SiteExtend、または Vendor=list-of-classeslist-of-classes は、オプションが適用されるベンダークライアントクラスの空白文字で区切られたリスト。たとえば、SUNW.Ultra5_10 SUNW.Ultra-1 SUNWi86pc

    code

    オプションカテゴリに適する数値 (表 4–9を参照)

    data-type

    オプションと一緒に渡されるデータのタイプを示すキーワード (表 4–9を参照)

    granularity

    負でない数値 (表 4–9を参照)

    maximum

    負でない数値 (表 4–9を参照)

    変更する属性だけでなく、DHCP オプション属性すべてを -d スイッチで指定する必要があることに注意してください。

    次に例を 2 つ示します。

    # dhtadm -M -s NewOpt -d 'Site,135,UNUMBER8,1,1'
    # dhtadm -M -s NewServ -d 'Vendor=SUNW.Ultra-1 \
    SUNW.i86pc,200,IP,1,1'
    

DHCP オプションの削除

標準的な DHCP オプションは削除できません。しかし、独自のオプションを DHCP サービス用に定義した場合、DHCP マネージャまたは dhtadm コマンドを使用すると、それらのオプションを削除できます。

DHCP オプションを削除する方法 (DHCP マネージャ)

  1. 「オプション (Options)」タブを選択します。

  2. 「編集 (Edit)」メニューから「削除 (Delete)」を選択します。

    「オプションの削除 (Delete Options)」ダイアログボックスが開きます。

  3. 「了解 (OK)」をクリックして削除を確認します。

DHCP オプションを削除する方法 (dhtadm)

  1. スーパーユーザーまたは DHCP 管理プロファイルに割り当てられたユーザーになります。

  2. 次のコマンドを入力します。


    # dhtadm -D -s option-name
    

Solaris DHCP クライアントのオプション情報の変更

新しい DHCP オプションを DHCP サーバーに追加する場合、各 DHCP クライアントのオプション情報に、補足エントリを追加する必要があります。Solaris DHCP クライアント以外の DHCP クライアントを使用している場合、オプションまたはシンボルを追加する方法については、そのクライアントのマニュアルを参照してください。

Solaris DHCP クライアントでは、/etc/dhcp/inittab ファイルを編集して、DHCP サーバーに追加するオプションごとにエントリを追加する必要があります。後にそのオプションをサーバー上で変更する場合、クライアントの /etc/dhcp/inittab ファイルのエントリも変更する必要があります。

/etc/dhcp/inittab ファイルの構文についての詳細は、dhcp_inittab のマニュアルページを参照してください。


注 –

以前のリリースの Solaris DHCP で dhcptags ファイルに DHCP オプションを追加していた場合、それらのオプションを /etc/dhcp/inittab ファイルに追加する必要があります。詳細については、DHCP オプション情報を参照してください。