この節では、DR モデル 2.0 または 3.0 のドメイン上で DR 操作を実行する前に行っておく必要がある構成作業について説明します。ただし、使用するシステムボードの種類、および実行する DR 操作の種類によっては、この節で説明しているすべての作業を行う必要はありません。
DR を構成した後、また、DR 構成を変更した後は、ドメインを必ず再起動してください。再起動させるドメインの数を最小限に抑えるには、まず、ユーザーの DR 環境に適用する構成作業の組み合わせを決め、各ドメインに該当する構成作業を実行してからドメインを再起動するようにします。
DR 切り離し操作を行う場合は、カーネルケージを有効にするで説明している手順に従って、カーネルケージを使用可能にします。
デバイスに対しては、以下の作業を行います。
ネットワーク構成のパラメタを設定する場合は、ネットワークドライバのドライバパラメタを保持するで説明している手順に従って、これらの設定を固定します。
soc および pln デバイスを使用している場合は、soc および pln ドライバのデバイス一時停止を使用可能にするで説明している手順に従って、デバイスの一時停止を有効にします。
一時停止に対して危険なデバイスを使用している場合は、システムの休止が行えなくなりますので、危険なドライバのリストでそのデバイスを指定しておきます。
詳細については、危険なドライバのリストを指定するを参照してください。
サンがサポートしていないテープデバイスを使用する場合は、そのデバイスを切り離しに対して安全にします。
詳細については、サポートされていないテープデバイスを切り離しに対して安全にするを参照してください。
ドメイン上で実行する DR モデルを決めます。場合によっては、DR モデルを選択するで説明している手順に従って、DR モデルを切り替えます。
マルチパスを使用する場合は、ドメインをマルチパス用に構成し、そのドメインに適したマルチパスソフトウェアを実行します。
それぞれの DR モデルと互換性を持つマルチパスソフトウェアについては、DR モデル 2.0および DR モデル 3.0を参照してください。
ドメインを再起動して、構成の変更を反映させます。
DR の構成になんらかの変更を加えた場合は、必ずドメインを再起動してください。再起動の回数を最小限に抑えるには、各種の構成作業を一度に行ってからドメインを再起動するようにしてください。
再起動が正常に行われたら、/var/adm/messages ファイルを開いて、DR 構成が確実に変更されたことを示すメッセージを見つけます。
たとえば、カーネルケージを有効に変更し、DR モデルを 2.0 から 3.0 へ切り替えると、以下のようなメッセージが生成されます。
NOTICE:DR Kernel Cage is Enabled . . . NOTICE:Next Generation DR Model (3.0) is enabled |
ケージ化されたカーネルは、ページング不可能なメモリーを最小システムボード台数 (通常は 1 台) に制限します。デフォルトでは、カーネルケージは無効に設定されており、DR 切り離し操作は行えません。DR 切り離し操作を行う場合は、以下で説明している手順に従って、system(4) 変数 kernel_cage_enableを使用してカーネルケージを有効にする必要があります。
ただし、kernel_cage_enable 変数の設定に関わらず、DR 接続 (addboard) 操作はデフォルトで使用可能になっています。
Solaris 7 オペレーティング環境より前のリリースでは、dr-max-mem 変数を使用して DR を使用可能にしていました。この変数は、Solaris 7 および Solaris 8 オペレーティング環境では使用されなくなりました。
テキストエディタを使用して、ドメインの /etc/system ファイルを開き、kernel_cage_enable 変数の値を 1 に変更します。
set kernel_cage_enable=1 |
すべての DR 構成作業が終了したら、必ず、ドメインを再起動して上記の構成を有効にします。
/var/adm/messages ファイルを開いて、構成が変更されていることを確認します。
messages ファイルの一部を下記に示します。この例は、カーネルケージが有効になっていることを示しています。
NOTICE:DR Kernel Cage is Enabled |
ndd(1M) コマンドを使用して、ネットワークデバイスのドライバ構成パラメタを設定しても、DR 操作が終了するとこれらのパラメタは保持されません。
システムボードに soc および pln デバイスが搭載されている場合、以下の手順を行ってドライバを一時停止に対して安全にします。
テキストエディタを使用して /etc/system ファイルを開き、以下の例に示すように、pln_enable_detach_suspend 変数と soc_enable_detach_suspend 変数の値を 1 に変更します。
set pln:pln_enable_detach_suspend=1 set soc:soc_enable_detach_suspend=1 |
すべての DR 構成作業が終了したら、必ず、ドメインを再起動して上記の構成を有効にします。
dr.conf ファイル (DR モデル 2.0 ドメインの場合)、および ngdr.conf ファイル (DR モデル 3.0 ドメインの場合) に「危険なドライバのリスト」を指定することにより、システム内に存在する一時停止に対して危険なデバイスに関する情報を Solaris オペレーティング環境に与えることができます。
DR は、オペレーティング環境の一時停止を行う際にこのリストを読み込み、ページング不可能なメモリーを搭載しているボードを切り離せるようにしています。危険なドライバのリストから、現在動作しているドライバを DR が見つけると、DR は操作を中止してエラーメッセージを返します。このメッセージには、現在動作している危険なドライバが特定されています。手動によりそのデバイスを一時停止させ、DR 操作が行えるようにします。
テキストエディタを使用して下記のファイルを開き、例に示すように、一時停止に対して危険なデバイスドライバを指定します。
/platform/SUNW,Ultra-Enterprise-10000/kernel/drv/dr.conf
/platform/SUNW,Ultra-Enterprise-10000/kernel/drv/ngdr.conf
unsupported-io-drivers="ドライバ 1","ドライバ 2","ドライバ 3"; |
ここで、ドライバは、一時停止に対して危険なデバイスドライバの名称を示します。
DR モデルを切り替えるかどうかに関わらず、危険なドライバをすべてdr.conf ファイルと ngdr.conf ファイルの両方にリストすることを推奨します。このようにしておくと、後から DR モデルを切り替えることになっても、両方の構成ファイルにすべての危険なドライバの参照が組み込まれていることになります。
すべての DR 構成作業が終了したら、必ずドメインを再起動して上記の構成を有効にします。
Solaris 8 オペレーティング環境の場合、サンが元々サポートしているテープデバイスは一時停止および切り離しに対して安全なデバイスです。サンがサポートしているドライブのリストについては、st(7D) に関するマニュアルページを参照してください。切り離そうとしているシステムボードにサンがサポートしているテープデバイスが搭載されている場合、デバイスを一時停止しなくても、そのボードを安全に切り離すことができます。
サンがサポートしていないテープデバイスでも使用することは可能ですが、以下の手順を行って、そのテープデバイスを切り離しに対して安全にする必要があります。
/kernel/drv/st.conf ファイルを開き、ST_UNLOADABLE (0x0400) フラグをエントリに設定します。詳細については、st(7D) に関するマニュアルページを参照してください。
すべての DR 構成作業が終了したら、必ず、ドメインを再起動して上記の構成を有効にします。
ドメインを DR モデル 2.0 から モデル 3.0 へ、または DR モデル 3.0 から モデル 2.0 へ変更するには、ngdr.conf ファイルの変更と、ドメインの再起動といった作業が必要です。