Solaris 2.x への移行

第 3 章 SunOS 4.x システムから Solaris 2.6 環境への変換

SunOS 4.x システムからSolaris 2.6 環境への変換プロセスは 3 つの段階で構成されており、インストール前 (データのバックアップ)、Solaris 環境のインストール、およびインストール後 (データの復元) があります。

この章では、1 つのシステム、またはネットワーク全体でのインストール前とインストール後の段階について説明します。Solaris 2.6 とSunOS 4.x クライアントの両方に対応できる環境の設定方法については、第 10 章「SunOS 4.x クライアントをサポートする Solaris 2.6 サーバの設定」を参照してください。

インストールに関する変更点

Solaris 2.6 には、システムへのソフトウェアのインストール方法に多くの変更が行われています。したがって、SunOS 4.x ソフトウェアのインストール方法とは異なります。変更点は、次のとおりです。

Solaris をインストールする前に行うこと

インストールプログラムを実行してソフトウェアをロードすることだけが SunOS 4.x を Solaris 2.6 に移行するときに必要な作業ではありません。通常は、SunOS 4.x のシステム内にデータが存在するので、それらのデータを Solaris 2.6 システムに転送しなければなりません。これらのデータとしては、/home のようにファイルシステム全体の場合や、/etc/hosts/etc/passwd のように、ローカルごとにカスタマイズされたシステムファイルの場合があります。

データ転送についてどのような方法を計画する場合でも、インストールを始める前に、フルダンプを行なって全ディスクパーティションをバックアップしてください。Solaris 2.6 環境ではデバイス名の規則が変更されているため、誤認が発生して、Solaris 2.6 をインストールしたディスクを間違える可能性もあります。インストールを開始する前にファイルシステムをバックアップすることにより、このようなミスを未然に防ぐことができます。デバイス命名規則の詳細については、「デバイス命名規則」を参照してください。

ファイルシステムのフォーマットについて、次のことに注意してください。

ディスクパーティション情報の保存

インストールを開始する前に、システム内の既存のディスクパーティションのハードコピーを出力してください。このような情報をディスク上に保存すると、インストールの際に上書きされる可能性があります。Solaris 2.6 システムを構成するときに多くの決定を下す必要がありますが、既存のディスクパーティション情報を保存しておくと、決定を下す際の参考資料となります。ディスクパーティション情報を出力する方法の 1 つを説明します。

  1. システムに接続しているディスクの名前を調べます。

    システムに接続しているディスクの名前を調べるには、format(8) コマンドを使用します。

  2. ディスクパーティション情報を保存します。

    各ディスクにコード化された形で記録されているパーティション情報を調べるために、dkinfo(8) コマンドを使用します。この出力をプリンタへパイプにより接続します。または、他のシステムに保存するために、リダイレクト先のファイルを指定します。


    注 -

    このコマンドを使用した場合、構成が行われているパーティションの情報だけが得られます。構成が行われていないすべてのパーティションは、「No such device or address.」というメッセージとともに表示されます。


ファイルシステム情報の保存

ファイルシステム名 (例: /usr/home) とデバイス名 (例: /dev/sd0g) とのマッピングは、構成ファイル /etc/fstab に常駐しています。先に進む前に、/etc/fstab ファイルの印刷コピーを 1 部作成しておき、Solaris 2.6 ファイルの作成に役立ててください。

メタデバイス構成情報の保存

アンバンドル製品である SPARCserverTM Manager や Solstice DiskSuite を実行しているシステムをアップグレードする場合は、この節を読んでください (これらの製品は、複数のディスクのミラーリング、連結、ストライピングを行うために使用します)。

これらの製品を使用しないでシステムをアップグレードする場合、多重パーティションの構成を単一パーティションに変更しなければなりません。特に、連結やストライピングが行われていたファイルシステムは 1 つのディスクに再構成しなければなりません。また、多重パーティションで使用していたパーティションやミラーリング用のパーティションは使用できなくなります。

アップグレードを行いたいシステムで、SPARCserverTM Manager や Solstice DiskSuite を動作させている場合は、Solaris 2.6 ソフトウェアをインストールする前に、メタデバイスの構成情報を保存してください。こうすることにより、Solaris 2.6 ソフトウェアをインストールした後で、メタデバイスの状態を復元できるほか、システムに接続されるディスクのリストを作成する際に、参照することができます。

  1. 次の例のように metastat(8) コマンドを使用して、情報をプリンタに出力します。

    # /etc/metastat -p | lpr
    

  2. metadb(8) コマンドの出力を印刷します。

    たとえば、次のように入力します。

    # /etc/metadb -i | lpr
    

    metadb の出力からは、状態データベースの構成情報がわかります。Solstice DiskSuite を再度インストールする場合は、状態データベースを再構築するために、この情報が必要になります。

バックアップ内容の決定

バックアップして、Solaris 2.6 ソフトウェアのインストール後に復元したい SunOS 4.x ファイルとファイルシステムのリストを作成する必要があります。

バックアップするシステムコンポーネントのリスト作成

既存の SunOS 4.x 環境にあるすべてのシステムコンポーネントのリストを作成して、ユーザのシステムにとって重要なものを決定します。次のことを考慮してください。

バックアップするファイルとファイルシステムのリスト作成

次のガイドラインに従って、保存するファイルシステムのリストを作成してください。

バックアップする SunOS システム構成ファイルのリスト作成

Solaris プラットフォーム用にマージしたり変換できる SunOS 4.x システム構成ファイルはたくさんあります。以下の例のリストを使って、バックアップしたいシステム構成ファイルの選択に役立ててください。


注 -

このリストには推奨されるファイルが含まれています。各項目をよく調べた上で、サイトの構成に応じて項目をリストに追加したり、リストから削除してください。たとえば、サードパーティのソフトウェアベンダのディレクトリに特殊なファイルが含まれている場合は、それを保存する必要があります。


システムが NIS マスタサーバの場合は、NIS マスタディレクトリ (例: /etc) に入っているファイルをすべて保存する必要があります。さらに、NIS に追加したその他のマスタファイルもすべて保存してください。バックアップするファイルとして、次のものを推奨します。

ディスク空間の所要量の決定

Solaris 2.6 アップグレードに移したいファイルシステムのディスク空間の所要量リストを作成します。Solaris 2.6 インストレーションプログラムの実行時に SunOS 4.x ファイルシステム用にディスク空間を区分できるため、Solaris 2.6 ソフトウェアをインストールする時にこのリストを参照してください。

ネットワークのインストール順序の決定

ネットワークを移行するときは、ユーザにとって最も便利な状況を想定して、SunOS 4.x からSolaris 2.6 ソフトウェアをインストールするシステムの順序を決定します。たとえば、サーバのアップグレードを始める前に、すべてのクライアントをアップグレードしたいと考えることもあります。最初にアップグレードするシステムとして、CD-ROM ドライブがローカル接続されている、スタンドアロンのシステムを選択するようにしてください。

しばらくの間は、SunOS 4.x と Solaris 2.6 システムの両方が混在するネットワークを管理することになるでしょう。そのため、計画の一部として、どちらを優先するか決定しておくべきです。たとえば、1 つのドメインをアップグレードし、システム管理のテストや内部で開発されたアプリケーションの移植を行なった後、ネットワーク環境全体をアップグレードすることも考えられます。

インストール前のファイルとファイルシステムのバックアップ

SunOS 4.x システムからバックアップしなければならないファイルまたはファイルシステムが決まったら、SunOS 4.x マニュアルに記載されている標準のコマンドとプロシージャを使ってバックアップを実行できます。使用するコマンドは、テープドライバがローカルかリモートかによって異なります。データの転送をどのように処理するかには関係なく、インストールプロセスを開始する前に完全なダンプを行って、すべてのディスクパーティションをバックアップするようお勧めします。

Solaris ソフトウェアのインストール

Solaris 2.6 ソフトウェアをサーバやスタンドアロンシステムにインストールするときは、『Solaris 2.6 インストールの手引き (SPARC 版)』または『Solaris 2.6 インストールの手引き (Intel 版)』に記載されているインストールの手順に従います。

保存オプション

Solaris 2.6 インストールプログラムには、インストール中に既存のファイルを保存するための、保存画面があります。このため、SunOS 4.x ファイルをそのまま保存できるので、復元する必要がありません。

SunOS 4.x ファイルシステムを保存できない、または保存したくない (システムディスクのパーティションを変更するため) 場合、復元する SunOS 4.x ファイルシステム用に十分なディスク容量を準備して新しいファイルを作成します。Solaris をインストールした後、新しいファイルシステムに SunOS 4.x ファイルシステムを復元します。

インストール後のファイルとファイルシステムの復元

この節では、Solaris 2.6 ソフトウェアをインストールする前にバックアップしたユーザデータとシステムデータの復元に関する項目を説明します。

SunOS 4.x ファイルシステムとユーザファイルの復元

Solaris 2.6 のインストール時に作成した新しいファイルシステムに保存できなかったり、保存しないように選択した SunOS 4.x ファイルシステムは、復元することができます。バックアップおよび復元手順の詳細については、Solaris のシステム管理を参照してください。


注 -

先に進む前に、目的のスライスが復元しようとしているファイルシステムを収容するのに十分な大きさであることを確認してください。


バックアップした SunOS 4.x ユーザファイルをどれでも復元し、それを新しいシステムにコピーします。

SunOS 4.x システム構成ファイルの復元

最初に、SunOS 4.x システム構成ファイルを Solaris 2.6 システムの一時ディレクトリに復元する必要があります。この情報をシステムの一時ディレクトリに復元したあとで、それが Solaris 2.6 の動作環境で使用できるようにしなければなりません。データの中にはファイルにマージするだけでよいものもありますが、データのタイプによっては新しいフォーマットに変換しなければなりません。

システムの構成により、どちらのタイプを使用するかが決まります。次の指示に従って、ファイルの結合か変換を行い、復元を完了させてください。

結合すべきファイル

次のファイル内のデータを利用できる状態にするため、Solaris 2.6 の同じ名前のファイルに、変更内容を結合してください。ただし、これらのファイルすべてが、SunOS 4.x のシステムで変更されたとは限りません。SunOS 4.x のシステムで変更されたファイルだけを見つけ、それらのファイルだけを結合してください。このリストにおいて、一部のファイル名にわずかですが変更があることに注意してください。たとえば、/etc/auto.* ファイルは、/etc/auto.* に変更されています。

次に、この章の前半の指示に従ってバックアップされた、SunOS 4.x のファイルリストの例を示します。これらのファイルは、Solaris 2.6 環境で結合の対象となるファイルです。付録 D 「システムファイルリファレンス」 を参照して、SunOS 4.x ファイルに変更がないか調べてください。

変換すべきファイル

/etc/fstab を含む多くのシステムファイルは、Solaris 2.6 環境では別のファイルに置き換えられ、削除されています。このようなファイルに記録されていた情報を取り出し、Solaris 2.6 環境に手作業で変換しなければなりません。SunOS 4.x のファイルが変更されているかどうか調べるには、付録 D 「システムファイルリファレンス」 を参照してください。


注意 - 注意 -

Solaris 2.6 ソフトウェアをインストールした後は、SunOS 4.x システムのオペレーティングシステム実行可能ファイル (/usr/bin にあるシステムコマンドなど)を復元することは避けてください。


Solaris 2.6 のシステムにデータを結合する前に、次のファイルを変更しなければなりません。

share -F fstype -o options -d "text" pathname resource

詳細は、dfstab(4) のマニュアルページを参照してください。

dev raw_dev mnt_pt fs_type
fsck_pass auto_mnt mnt_option

詳細は、vfstab(4) のマニュアルページを参照してください。