SunOS 4.x システムからSolaris 2.6 環境への変換プロセスは 3 つの段階で構成されており、インストール前 (データのバックアップ)、Solaris 環境のインストール、およびインストール後 (データの復元) があります。
この章では、1 つのシステム、またはネットワーク全体でのインストール前とインストール後の段階について説明します。Solaris 2.6 とSunOS 4.x クライアントの両方に対応できる環境の設定方法については、第 10 章「SunOS 4.x クライアントをサポートする Solaris 2.6 サーバの設定」を参照してください。
Solaris 2.6 には、システムへのソフトウェアのインストール方法に多くの変更が行われています。したがって、SunOS 4.x ソフトウェアのインストール方法とは異なります。変更点は、次のとおりです。
Solaris 2.6 の配布媒体は、コンパクトディスク (CD) だけです。したがって、システム管理者はソフトウェアをインストールするのに、CD-ROM ドライブにアクセスできなければなりません。しかし、CD-ROM ドライブが接続されているシステムをインストールサーバとして利用することにより、ネットワークを通してインストールすることができます。ネットワークを経由したインストールの詳細は『Solaris のインストール (上級編)』を参照してください。
Solaris 2.6 は、パッケージと呼ばれる複数のモジュールに入って出荷されます。システム管理者は、実際のシステムに合わせてパッケージを選択し、インストールの際に必要なディスク空間を制御し、また個別のシステムで利用できるアプリケーションを指定することができます。
Solaris 2.6 のパッケージは、クラスタという単位にグループ化されています。この結果、各パッケージを個別に選択するのではなく、関連するパッケージ一式を選択することができます。
Solaris 2.6 のインストールでは、セットになったソフトウェアグループ、つまり典型的なユーザを想定した複数のパッケージとクラスタも提供します。個別のパッケージやクラスタを選択するのではなく、システムを動作させるために必要なソフトウェアグループを選択することができます。これは、テストの目的で、Solaris 2.6 を限定された環境で最初にインストールするときに役立ちます。そのシステムで経験を積んだ後で、パッケージ単位で追加や削除を行うことができます。
Solaris 2.6 は、SunOS の従来のリリースで提供されていた一般的なカーネル構成ではなく、アーキテクチャ固有のカーネルを提供します。カーネルは、/vmunix ではなく、/kernel にインストールされます。
Solaris 2.6 のインストレーションプログラムは、ステップごとにインストールプロセスを実行できるように構成されています。
Solaris 2.6 環境には、インストール作業を自動化するためのカスタムのJumpStartTM 技術が用意されています。このため、多数のシステムにインストールしなければならない場合に、時間を節約できます。詳しくは、『Solaris のインストール (上級編)』を参照してください。
インストールプログラムを実行してソフトウェアをロードすることだけが SunOS 4.x を Solaris 2.6 に移行するときに必要な作業ではありません。通常は、SunOS 4.x のシステム内にデータが存在するので、それらのデータを Solaris 2.6 システムに転送しなければなりません。これらのデータとしては、/home のようにファイルシステム全体の場合や、/etc/hosts や /etc/passwd のように、ローカルごとにカスタマイズされたシステムファイルの場合があります。
データ転送についてどのような方法を計画する場合でも、インストールを始める前に、フルダンプを行なって全ディスクパーティションをバックアップしてください。Solaris 2.6 環境ではデバイス名の規則が変更されているため、誤認が発生して、Solaris 2.6 をインストールしたディスクを間違える可能性もあります。インストールを開始する前にファイルシステムをバックアップすることにより、このようなミスを未然に防ぐことができます。デバイス命名規則の詳細については、「デバイス命名規則」を参照してください。
ファイルシステムのフォーマットについて、次のことに注意してください。
Solaris 2.6 の Extended Fundamental Types (EFT) を使用していない場合、SunOS 4.x で使用されているファイルシステムフォーマットは、ソフトウェアで上位互換、または、場合によっては同じフォーマットになります。
QuickCheck や Backup CoPilotTM をインストールして SunOS 4.1.1 を実行している場合や、SunOS 4.1.2 を実行している場合は、ファイルシステムのフォーマットは同じです。
QuickCheck や Backup CopilotTM をインストールせずに SunOS 4.1.1 を使用している場合、または SunOS 4.0.x や SunOS 4.1 を使用している場合は、フォーマットはすべて同じとは限りませんが、上位互換と下位互換のフォーマットとなります。
インストールを開始する前に、システム内の既存のディスクパーティションのハードコピーを出力してください。このような情報をディスク上に保存すると、インストールの際に上書きされる可能性があります。Solaris 2.6 システムを構成するときに多くの決定を下す必要がありますが、既存のディスクパーティション情報を保存しておくと、決定を下す際の参考資料となります。ディスクパーティション情報を出力する方法の 1 つを説明します。
ディスクパーティション情報を保存します。
各ディスクにコード化された形で記録されているパーティション情報を調べるために、dkinfo(8) コマンドを使用します。この出力をプリンタへパイプにより接続します。または、他のシステムに保存するために、リダイレクト先のファイルを指定します。
このコマンドを使用した場合、構成が行われているパーティションの情報だけが得られます。構成が行われていないすべてのパーティションは、「No such device or address.」というメッセージとともに表示されます。
ファイルシステム名 (例: /usr、/home) とデバイス名 (例: /dev/sd0g) とのマッピングは、構成ファイル /etc/fstab に常駐しています。先に進む前に、/etc/fstab ファイルの印刷コピーを 1 部作成しておき、Solaris 2.6 ファイルの作成に役立ててください。
アンバンドル製品である SPARCserverTM Manager や Solstice DiskSuite を実行しているシステムをアップグレードする場合は、この節を読んでください (これらの製品は、複数のディスクのミラーリング、連結、ストライピングを行うために使用します)。
これらの製品を使用しないでシステムをアップグレードする場合、多重パーティションの構成を単一パーティションに変更しなければなりません。特に、連結やストライピングが行われていたファイルシステムは 1 つのディスクに再構成しなければなりません。また、多重パーティションで使用していたパーティションやミラーリング用のパーティションは使用できなくなります。
アップグレードを行いたいシステムで、SPARCserverTM Manager や Solstice DiskSuite を動作させている場合は、Solaris 2.6 ソフトウェアをインストールする前に、メタデバイスの構成情報を保存してください。こうすることにより、Solaris 2.6 ソフトウェアをインストールした後で、メタデバイスの状態を復元できるほか、システムに接続されるディスクのリストを作成する際に、参照することができます。
次の例のように metastat(8) コマンドを使用して、情報をプリンタに出力します。
# /etc/metastat -p | lpr |
たとえば、次のように入力します。
# /etc/metadb -i | lpr |
metadb の出力からは、状態データベースの構成情報がわかります。Solstice DiskSuite を再度インストールする場合は、状態データベースを再構築するために、この情報が必要になります。
バックアップして、Solaris 2.6 ソフトウェアのインストール後に復元したい SunOS 4.x ファイルとファイルシステムのリストを作成する必要があります。
既存の SunOS 4.x 環境にあるすべてのシステムコンポーネントのリストを作成して、ユーザのシステムにとって重要なものを決定します。次のことを考慮してください。
ローカルに開発されたアプリケーション
バンドルされていないすべてのソフトウェア製品
サードパーティのアプリケーション
サードパーティの周辺装置とドライバ (たとえば、8mm テープドライバおよび SBus カード)
次のガイドラインに従って、保存するファイルシステムのリストを作成してください。
ローカルに変更されたデータファイル、および管理データ用としてサーバが依存するファイルは、抽出して保存してください。後者の例としては、/etc/hosts などいくつかの /etc ファイル、エクスポートされたファイルシステム (exportfs コマンドでリスト表示可能)、/trtpboot ディレクトリなどが挙げられます。これらは安全のために保存すべきファイルです。
spool やユーザのホームディレクトリのような、ローカルに生成されたデータだけを持つファイルシステムは完全に保存してください。
SunOS 4.x クライアント用にサーバを移行している場合は、クライアントに関する情報を持つファイルシステムを保存してください。このようなファイルの代表例は /export です。
Solaris プラットフォーム用にマージしたり変換できる SunOS 4.x システム構成ファイルはたくさんあります。以下の例のリストを使って、バックアップしたいシステム構成ファイルの選択に役立ててください。
このリストには推奨されるファイルが含まれています。各項目をよく調べた上で、サイトの構成に応じて項目をリストに追加したり、リストから削除してください。たとえば、サードパーティのソフトウェアベンダのディレクトリに特殊なファイルが含まれている場合は、それを保存する必要があります。
システムが NIS マスタサーバの場合は、NIS マスタディレクトリ (例: /etc) に入っているファイルをすべて保存する必要があります。さらに、NIS に追加したその他のマスタファイルもすべて保存してください。バックアップするファイルとして、次のものを推奨します。
./.cshrc
./.profile
./.login
./.logout
./.rhosts
./etc (システムが NIS クライアントであるか、またはネームサービスを使っていない場合)
./var/spool/calendar
./var/spool/cron
./var/spool/uucp
./var/nis (システムが NIS マスタサーバである場合)
./tftpboot 内のブートプログラム
Solaris 2.6 アップグレードに移したいファイルシステムのディスク空間の所要量リストを作成します。Solaris 2.6 インストレーションプログラムの実行時に SunOS 4.x ファイルシステム用にディスク空間を区分できるため、Solaris 2.6 ソフトウェアをインストールする時にこのリストを参照してください。
ネットワークを移行するときは、ユーザにとって最も便利な状況を想定して、SunOS 4.x からSolaris 2.6 ソフトウェアをインストールするシステムの順序を決定します。たとえば、サーバのアップグレードを始める前に、すべてのクライアントをアップグレードしたいと考えることもあります。最初にアップグレードするシステムとして、CD-ROM ドライブがローカル接続されている、スタンドアロンのシステムを選択するようにしてください。
しばらくの間は、SunOS 4.x と Solaris 2.6 システムの両方が混在するネットワークを管理することになるでしょう。そのため、計画の一部として、どちらを優先するか決定しておくべきです。たとえば、1 つのドメインをアップグレードし、システム管理のテストや内部で開発されたアプリケーションの移植を行なった後、ネットワーク環境全体をアップグレードすることも考えられます。
SunOS 4.x システムからバックアップしなければならないファイルまたはファイルシステムが決まったら、SunOS 4.x マニュアルに記載されている標準のコマンドとプロシージャを使ってバックアップを実行できます。使用するコマンドは、テープドライバがローカルかリモートかによって異なります。データの転送をどのように処理するかには関係なく、インストールプロセスを開始する前に完全なダンプを行って、すべてのディスクパーティションをバックアップするようお勧めします。
Solaris 2.6 ソフトウェアをサーバやスタンドアロンシステムにインストールするときは、『Solaris 2.6 インストールの手引き (SPARC 版)』または『Solaris 2.6 インストールの手引き (Intel 版)』に記載されているインストールの手順に従います。
Solaris 2.6 インストールプログラムには、インストール中に既存のファイルを保存するための、保存画面があります。このため、SunOS 4.x ファイルをそのまま保存できるので、復元する必要がありません。
SunOS 4.x ファイルシステムを保存できない、または保存したくない (システムディスクのパーティションを変更するため) 場合、復元する SunOS 4.x ファイルシステム用に十分なディスク容量を準備して新しいファイルを作成します。Solaris をインストールした後、新しいファイルシステムに SunOS 4.x ファイルシステムを復元します。
この節では、Solaris 2.6 ソフトウェアをインストールする前にバックアップしたユーザデータとシステムデータの復元に関する項目を説明します。
Solaris 2.6 のインストール時に作成した新しいファイルシステムに保存できなかったり、保存しないように選択した SunOS 4.x ファイルシステムは、復元することができます。バックアップおよび復元手順の詳細については、『Solaris のシステム管理』を参照してください。
先に進む前に、目的のスライスが復元しようとしているファイルシステムを収容するのに十分な大きさであることを確認してください。
バックアップした SunOS 4.x ユーザファイルをどれでも復元し、それを新しいシステムにコピーします。
最初に、SunOS 4.x システム構成ファイルを Solaris 2.6 システムの一時ディレクトリに復元する必要があります。この情報をシステムの一時ディレクトリに復元したあとで、それが Solaris 2.6 の動作環境で使用できるようにしなければなりません。データの中にはファイルにマージするだけでよいものもありますが、データのタイプによっては新しいフォーマットに変換しなければなりません。
システムの構成により、どちらのタイプを使用するかが決まります。次の指示に従って、ファイルの結合か変換を行い、復元を完了させてください。
ネームサービスを利用しないシステム: システムがネームサービスを利用しない場合、/etc や /var に配置されていた、該当するすべてのファイルの結合や変換を行います。
NIS クライアントのシステム: システムが NIS クライアントの場合は、/etc と /var に配置されていた、ローカルのシステム構成ファイルだけの結合や変換を行います。これらのファイルは、NIS ネームサービス経由では提供されません。
NIS マスタサーバのシステム: システムが NIS マスタサーバの場合は、NIS マスタディレクトリ (たとえば、/etc) に配置されていた、すべてのファイルの結合や変換を行います。さらに、/etc や /var にある他のローカル構成ファイルも更新します。
次のファイル内のデータを利用できる状態にするため、Solaris 2.6 の同じ名前のファイルに、変更内容を結合してください。ただし、これらのファイルすべてが、SunOS 4.x のシステムで変更されたとは限りません。SunOS 4.x のシステムで変更されたファイルだけを見つけ、それらのファイルだけを結合してください。このリストにおいて、一部のファイル名にわずかですが変更があることに注意してください。たとえば、/etc/auto.* ファイルは、/etc/auto.* に変更されています。
次に、この章の前半の指示に従ってバックアップされた、SunOS 4.x のファイルリストの例を示します。これらのファイルは、Solaris 2.6 環境で結合の対象となるファイルです。付録 D 「システムファイルリファレンス」 を参照して、SunOS 4.x ファイルに変更がないか調べてください。
/etc/auto.master と他のファイルを含む、すべてのオートマウンタマップ
/etc/aliases
/etc/bootparams
/etc/ethers
/etc/hosts
/etc/format.dat
/etc/inetd.conf
/etc/netmasks
/etc/networks
/etc/protocols
/etc/publickey
/etc/rpc
/etc/services
/etc/hosts.equiv
/etc/remote
/.cshrc
/.profile
/.login
/.logout
/.rhosts
/var/spool/cron
/var/spool/mail
/var/spool/calendar
/etc/fstab を含む多くのシステムファイルは、Solaris 2.6 環境では別のファイルに置き換えられ、削除されています。このようなファイルに記録されていた情報を取り出し、Solaris 2.6 環境に手作業で変換しなければなりません。SunOS 4.x のファイルが変更されているかどうか調べるには、付録 D 「システムファイルリファレンス」 を参照してください。
Solaris 2.6 ソフトウェアをインストールした後は、SunOS 4.x システムのオペレーティングシステム実行可能ファイル (/usr/bin にあるシステムコマンドなど)を復元することは避けてください。
Solaris 2.6 のシステムにデータを結合する前に、次のファイルを変更しなければなりません。
/etc/uucp - UUCP システムには、いくつかの変更点があります。Config、Grades、Limits の各ファイルは、Solaris 2.6 環境で更新されています。 Devconfig、Devices、Dialcodes、Dialers、Permissions、 Poll、Sysfiles、systems の各ファイルは、SunOS 4.x でもソフトウェア Solaris 2.6 でも共通です。これらのファイルは、結合できます。このほかに、SunOS 4.x のファイルのうち、Solaris 2.6 では使用されていないものもいくつかあります。
/etc/group - このファイルの基本的なフォーマットは、SunOS 4.1 と SunOS 4.1.x で共通しています。しかし、以前のリリースでは、NIS マップから選択して取り出したエントリをグループに取り込むために、プラス (+) かマイナス (-) どちらかの記号を使用していました。Solaris 2.6 環境での互換性が必要な場合は、group(4) のマニュアルページを参照してください。
/etc/exports - Solaris 2.6 環境のネットワーク上で共有されているファイルシステムは、/etc/exports ではなく、/etc/dfs/dfstab ファイルを使用します。このファイル内のエントリは、次のようになっています。
share -F fstype -o options -d "text" pathname resource |
詳細は、dfstab(4) のマニュアルページを参照してください。
/etc/fstab - Solaris 2.6 環境でマウントされるファイルシステムは、/etc/fstab ではなく、/etc/vfstab ファイルを使用します。/etc/fstab ファイル内のエントリは、次のようになっています。
dev raw_dev mnt_pt fs_type fsck_pass auto_mnt mnt_option |
詳細は、vfstab(4) のマニュアルページを参照してください。
/etc/passwd - passwd ファイルのフォーマットは、SunOS 4.x ソフトウェアのフォーマットと同じです。ただし、ユーザのパスワードは、/etc/shadow ファイルに保存されるように変更されました。詳細は、passwd(4)と shadow(4)のマニュアルページを参照してください。
/etc/sendmail.cf - sendmail.cf のフォーマットは、SunOS 4.x のフォーマットと同じです。ただし、ファイルの位置は /etc/mail/sendmail.cf に変更されました。
/etc/ttytab - SunOS 4.x システムでは、ttytab 、シリアルポートと、シリアル回線上の端末の特性を制御するために使用されていました。Solaris 2.6 環境では、これらの特性を構成するために、サービスアクセス機能 (SAF) が使用されています。
/etc/printcap - Solaris 2.6 環境では、SVR 4 の印刷サービスを使用してプリンタの構成を行なっています。詳細は、『Solaris のシステム管理』を参照してください。