TCP/IP とデータ通信

情報を送受信する主体 : ホスト

経験を積んだ Solaris ユーザなら、もちろん「ホスト」という言葉はよくご存じのことでしょう。この言葉は、しばしば「コンピュータ」または「マシン」の同義語として使われます。TCP/IP の視点から見れば、ネットワーク上に存在する実体は、ルータとホストの 2 つだけです。

ルータは、ネットワークから別のネットワークへとパケットを転送するマシンです。これを行うには、ルータは少なくとも 2 つのネットワークインタフェースを備えていることが必要です。ネットワークインタフェースが 1 つしかないマシンは、パケットを転送できません。このようなマシンはホストとみなされます。ネットワーク上に設定するマシンは、ほとんどがホストになります。

複数のネットワークインタフェースを持ち、しかもルータとして働かないマシンがある場合があります。この種のマシンをマルチホームホストと呼びます。マルチホームホストは、備えているネットワークインタフェースを用いて複数のネットワークに直接的に接続されます。しかし、1 つのネットワークから別のネットワークへとパケットを転送する働きはしません。

あるホストが通信を開始したとき、それを送信側ホスト、または単に送信者と呼びます。たとえば、あるホストのユーザが rlogin を入力するか、または他のユーザに電子メールメッセージを送ると、そのホストは通信を開始します。通信の宛先となるホストを、受信側ホスト、または単に受信者と呼びます。たとえば、rlogin への引数として指定されたリモートホストは、そのログイン要求の受信者です。

各ホストは、ネットワーク上の他の対等ホストに自身を識別させるための、下記の 3 つの特性を備えています。

ホスト名

ホスト名 は、ローカルマシンの名前と所属組織の名前を組み合わせたものです。多くの組織では、ユーザが各自のマシンのホスト名を選定します。sendmailrlogin などのプログラムは、ネットワーク上のリモートマシンを指定するときにホスト名を使用します。ホスト名に関する説明は、 Solaris のシステム管理に収めてあります。

マシンのホスト名は、一次ネットワークインタフェースの名前にもなります。この概念は、ネットワークデータベースを設定したりルータを構成したりするときに重要な意味を持ちます。

ネットワークを設定するときは、そのネットワークに関与するすべてのマシンのホスト名を入手する必要があります。ネットワークデータベースを設定するときに、 第 4 章「ネットワーク上での TCP/IP の構成」の説明に従ってホスト名を使用します。

IP アドレス

「IP アドレス」は、TCP/IP ネットワーク上で各マシンが持っている 2 種類のアドレスの 1 つで、そのマシンをネットワーク上の他の対等ホストに識別させるためのものです。このアドレスには、特定のホストがネットワーク上のどこに位置しているかを、対等ホストに知らせる役割もあります。ネットワーク上のマシンに Solaris オペレーティング環境をインストールしてある場合は、インストールの時に IP アドレスを指定したことを覚えていることでしょう。IP アドレス指定は TCP/IP の重要な局面の 1 つであり、これについては、「IP アドレス指定方針の設計」で詳しく説明します。

ハードウェアアドレス

ネットワーク上の各ホストはハードウェアアドレスを持っており、これもそのホストを他の対等ホストに識別させるために使用されます。このアドレスは、製造元でマシンの CPU またはネットワークインタフェースに物理的に割り当ててあります。ハードウェアアドレスはどれも一意なものです。

このマニュアルでは、ハードウェアアドレスをイーサネットアドレスという言葉で表しています。イーサネットは、Solaris ベースのネットワーク上で最も一般的に使われているネットワークメディアなので、このマニュアルでは、Solaris ホストのハードウェアアドレスがイーサネットアドレスであるものと想定して、説明を進めます。FDDI など他のネットワークメディアを使用している場合は、そのメディアに付属しているマニュアルの中の、ハードウェアアドレス指定に関する部分を参照してください。