Sun Java Enterprise System 5 インストールガイド (UNIX 版)

Java ES インストーラのしくみ

Sun Java Enterprise System (Java ES) は、いくつかの Sun のサーバー側製品を統合し、分散型のエンタープライズアプリケーションをサポートします。このマニュアルでは、これらの製品を「Java ES 製品コンポーネント」と呼びます。共有コンポーネントと呼ばれる一連のサポートソフトウェアも含まれています。Java ES インストーラを実行すると、Java ES 製品コンポーネントと共有コンポーネントがさまざまに組み合わされて一度に 1 つのホストにインストールされます。これらのコンポーネント間には複雑な相互関係が存在するため、それらをインストールする際には、単一の製品コンポーネントをインストールする場合よりも多くのインストール前作業やインストール後作業が必要となります。

Java ES インストーラでは、コンポーネントパッケージ (Solaris OS)、RPM (Linux)、または Depot (HP-UX) がローカルホストに追加されます。製品コンポーネントをアンインストールするために、設定を解除するためのインタフェースが表示されるアンインストールユーティリティーが用意されています。操作の途中に、ログレコードが生成されてファイルに保存されます。

ここで説明する内容は、次のとおりです。

Java ES インストールユーティリティー

インストールユーティリティー (installer) は、/jes5install/Solaris_sparc などの、Java ES をインストールするプラットフォームディレクトリにあります。Product ディレクトリ、release_info という名前のテキストファイル、および installer スクリプト実行可能ファイルが入っています。インストーラにパッチが適用されている場合を除いて、インストーラはここから起動します。

別のディレクトリには、パッチを適用するために使用されるパッケージ版のインストーラが入っています。パッチインストールスクリプト (install) は、ログビューアユーティリティー ( viewlog) と一緒に次のディレクトリにあります。

installer にバグがある場合は、Sun が installer を修正して、そのインストーラパッケージ用のパッチを作成することがあります。パッチの適用以降は、そのリリースにはパッケージ版のインストーラを使用するようにしてください。つまり、パッチによる修正が含まれるインストーラを起動することになります。


注 –

使用している配備環境で、パッチを適用した Java ES インストーラを使用する場合にのみ、パッチユーティリティーを使用します。


インストールが完了すると、Java ES のアンインストールユーティリティー (uninstall) が次の場所に配置されます。

Java ES インストールユーティリティーの構文と例は、付録 B 「インストールコマンド」 に記載されています。

このリリースで使用される Java ES コンポーネント

Java ES ソフトウェアは、Sun のサーバー側製品とそれらをサポートする共有コンポーネントで構成されています。これらは、ネットワーク上に分散されたアプリケーションをサポートするために、連携して動作するようになっています。Java ES 5 リリースでは、次のコンポーネントを選択することができ、さらにその多くのコンポーネントでサブコンポーネントを選択することができます。

このマニュアルで使用されている代替名または省略名は、コンポーネント名とバージョンのあとに括弧で囲まれています。


注 –

HP-UX では、Sun Cluster コンポーネント、Directory Preparation Tool、HADB、またはサードパーティーの Web コンテナはサポートされません。Linux で「今すぐ設定」設定オプションを使用する場合、Sun Cluster コンポーネントはサポートされず、サードパーティーコンテナは BEA WebLogic のみがサポートされます。



注 –

Directory Preparation Tool は Communications 製品でのみ使用されます。便宜上 Java ES リリースでは Directory Server に含まれています。Directory Preparation Tool については、『Sun Java Communications Suite 5 インストールガイド』の第 8 章「Directory Preparation Tool (comm_dssetup.pl) 」を参照してください。


Java ES インストーラに表示されるサービスおよびサブコンポーネントの完全な一覧については、付録 A 「このリリースの Java ES コンポーネント」を参照してください。この付録では、今回のリリースで提供する共有コンポーネントの一覧も示します。

利用できるインストーラモード

Java ES インストーラは、Solaris pkgadd、Linux rpm、HP-UX swinstall のいずれかのユーティリティーを使ってJava ES ソフトウェアをシステムに転送するためのインストールフレームワークです。Java ES のインストールは、対話的に実行することも、再利用可能なスクリプトを使用して実行することもできます。


ヒント –

ソフトウェアをインストールせずに Java ES インストーラを実行することができます。これは、ホスト上の Java ES ソフトウェアを調査する場合に便利です。


言語の選択のしくみ

対話式 Java ES インストーラは、ホストのオペレーティングシステムのロケール設定で指定されている言語で実行されます。次の言語を利用できます。

オペレーティングシステムの言語がこのリストに含まれていない場合、インストーラは英語で実行されます。インストーラにより、英語版の Java ES のコンポーネントがすべて自動的にインストールされます。デフォルトでは、インストールするコンポーネントを選択すると、多言語パッケージ が選択されます。

以前にインストールしたコンポーネントに対し、インストーラを使用して追加言語パッケージをインストールすることはできません。ただし、pkgaddrpm、または swinstall ユーティリティーを使用して、いつでもローカライズ版パッケージをインストールできます。言語パッケージの一覧は、『Sun Java Enterprise System 5 インストールリファレンス (UNIX 版)』の第 5 章「インストール可能なパッケージの一覧」にあります。

インストーラが既存のコンポーネントをチェックするしくみ

インストール時に、Java ES インストーラは、インストールするホスト上にすでにインストールされているソフトウェアを調べ、次のコンポーネントを識別します。

インストーラがコンポーネントの依存性を確認するしくみ

製品コンポーネントの多くは、主要な機能を提供するために、ほかのコンポーネントの存在に依存しています。インストール時に選択した製品コンポーネントが共存して正常に機能するように、インストーラはコンポーネント間のチェックを広範囲に行います。このため、ユーザーの選択に応じて、特定の製品コンポーネントをインストールに含めるよう求められます。

通常、インストーラは、次の規則を使用して Java ES 製品コンポーネント間の依存性を処理します。

インストーラがシステムの準備ができているかどうかを確認するしくみ

選択したコンポーネントをインストールできることがわかり、インストール先ディレクトリを指定すると、選択したコンポーネントの要件をホストが満たしているかどうかを確認するために、Java ES インストーラによるシステムチェックが実行されます。

インストーラは、選択したコンポーネントと指定されたインストールディレクトリに基づいて、ディスク容量、メモリー、スワップ空間、オペレーティングシステムのパッチ、オペレーティングシステムのリソースをチェックします。次のメッセージを使用してホストの状態を通知します。

インストーラが設定タイプとパラメータを設定するしくみ

Java ES の製品コンポーネントの多くは、インストール時にある程度の設定を行う必要があります。インストール時に実行する必要のある設定の範囲は、選択した製品コンポーネントおよびインストールタイプによって異なります。


注 –

次のコンポーネントは Java ES インストーラでは設定できないので、インストール後に設定する必要があります。Directory Proxy Server、Java DB、Monitoring Console、Service Registry、および Sun Cluster コンポーネント。


インストーラで、次の設定タイプを使用できます。

インストール時の設定やインストール後の設定を行うときは、設定情報の値を記録しておくことが重要になります。多くの製品コンポーネントが正しく機能するかどうかは、ほかのコンポーネントの設定パラメータの値によって決まります。「今すぐ設定」インストールの終わりに表示される「インストールの要約」を見れば、指定した設定パラメータを確認できます。

共通サーバー設定は、複数の製品に影響するパラメータです。たとえば、ほとんどの製品コンポーネントでは、管理 ID およびパスワードを指定する必要があります。これらの共通の値を設定することで、インストールする製品コンポーネントの管理 ID とパスワードのデフォルト値を設定します。

製品コンポーネント設定は、特定の製品コンポーネントに適用するパラメータを設定します。これらの設定は、インストール時に「今すぐ設定」タイプを選択した場合にのみ要求されます。これらの設定の一部は、共通サーバー設定から取り込まれます。

アップグレードのしくみ

Java ES インストーラは、選択した製品コンポーネントの共有コンポーネントを自動的にアップグレードして、Java ES のリリースに必要なレベルに一致させます。共有コンポーネントを手動でアップグレードする場合は、インストーラを終了し、共有コンポーネントをアップグレードしてから、インストーラを再度使用する必要があります。共有コンポーネントのインストールまたはアップグレードは、共有コンポーネントだけをインストールして現在のリリースと同期をとるだけの専用インストールセッションを使って行うこともできます。「共有コンポーネント」項目をインストールする場合は、Java ES リリースに必要なすべての共有コンポーネントがインストールまたはアップグレードされます。


注 –

疎ルートファイルシステムを使用して非大域 Solaris ゾーンでインストーラを実行する場合は、「共有コンポーネント」項目は選択できません。


Solaris OS では、一部の製品コンポーネントはすでにオペレーティングシステムにインストールされています。その場合は、Java ES インストーラを使用してこれらの製品コンポーネントをアップグレードできます。グラフィカルモードのインストールセッションでは、アップグレード可能な製品コンポーネントがホスト上で検出されると、「ソフトウェアコンポーネントの選択」ページの「状況」列に「アップグレード可」と表示されます。テキストベースのインストーラの場合は、アップグレード可能な製品コンポーネントの一覧が別のウィンドウに表示されます。次の表は、インストーラでアップグレードできるコンポーネントの一覧です。該当する場合は、Solaris ゾーンの問題も説明しています。

表 1–1 Java ES インストーラのアップグレードサポート

構成要素 

Java ES インストーラでアップグレードできる状況 

Solaris ゾーンの問題 

Application Server 

Application Server 7.0 が Solaris 9 にバンドルされている場合  

Application Server 8.0 が Solaris 10 にバンドルされている場合  

Application Server 8.1.0 が Java ES 3 (2005Q1) と一緒にインストールされた場合  

Application Server 8.1.2 が Java ES 4 (2005Q4) と一緒にインストールされた場合  

Application Server を非大域疎ルートゾーンにインストールする前に、バンドルされた Application Server を大域ゾーンから削除する必要があります。 

大域ゾーンの Application Server をアップグレードすると、大域ゾーンの既存のバージョンと、完全ルートまたは疎ルートゾーンのすべてのバージョンが置き換えられます。 

HADB 

HADB が Java ES 2005Q1 (リリース 3) と一緒にインストールされた場合  

HADB が Java ES 2005Q4 (リリース 4) と一緒にインストールされた場合  

 

Message Queue 

Message Queue が Solaris 9 にバンドルされている場合 

Message Queue が Solaris 10 にバンドルされている場合 

Message Queue が Java ES 3 (2005Q1) と一緒にインストールされた場合 

Message Queue が Java ES 4 (2005Q4) と一緒にインストールされた場合 

Message Queue は、大域ゾーンまたは完全ルート非大域ゾーンにのみインストールできます。 

大域ゾーンの Message Queue は、常に非大域ゾーンに伝播されます。 

互換性のない製品コンポーネントバージョンのうち、アップグレードできないものがインストーラによって検出された場合は、それらの製品コンポーネントを削除するか手動でアップグレードしないとインストールを続行できないというメッセージが表示されます。このようなアップグレードについては、『Sun Java Enterprise System 5 アップグレードガイド (UNIX 版)』に詳しく記載されています。

ログのしくみ

インストールまたはアンインストールの実行中に、実行される処理のログレコードが生成されます。これらのレコードは、1 つのファイルに ULF (Unified Logging Format) 形式と呼ばれる形式で保存されます。Java ES インストーラのログビューアユーティリティー (viewlog) には、これらのログレコードを調べるための使いやすいインタフェースが用意されています。Java ES インストールの完了後、ログビューアは次の場所に格納されています。

アンインストール後に、viewlog ユーティリティーは削除されます。ULF ログ自体は削除されず、次の場所に残ります。

Java ES ログとログビューアの使用手順については、「インストールログファイルの検証」を参照してください。

Java ES レポータのしくみ

Java ES レポータは、対話式の Java ES インストールセッションが正常に完了後、匿名の製品登録を実行するコマンド行ユーティリティーです。Java ES コンポーネントがインストールされるとすぐに、レポータのインストールが開始されます。コマンド行で、レポータがインターネット経由で Sun にアクセスするために使用するプロキシの URL または IP アドレスを入力することを求められます。インストールはメッセージを表示せずに続行され、それ以上の操作は必要ありません。

レポータをインストールしない場合は、Java ES インストールセッションの起動時に、installer コマンドに -noreporter オプションを指定できます。 –noreporter オプションの使用後、または Java ES のサイレントインストール後にレポータのみをインストールするには、UNIX プラットフォームで別のオプションを使用できます (-reporter)。Java ES インストーラのレポータオプションについては、「installer または install コマンド」を参照してください。

レポータのインストール後、設定ファイルを編集してレポータを有効または無効にすることができます。これらの手順は、「Java ES レポータのインストール後の設定」に記載されています。

レポータはインストーラの Java ES コンポーネントではないため、Java ES アンインストーラを使用してアンインストールできません。レポータをアンインストールする手順は、「Java ES レポータのアンインストール」に記載されています。

アンインストールのしくみ

Java ES には、Java ES インストーラを使用してローカルホストにインストールしたコンポーネント製品を消去するためのアンインストールユーティリティー (uninstall) が用意されています。Java ES アンインストーラは、アンインストーラが稼働しているホストで製品の依存関係をチェックし、他の製品への依存が検出された場合は警告メッセージを出力します。一部の製品コンポーネントについては、アンインストール後に特定のファイルが残り、手動での削除が必要となる場合があります。アンインストールに関する各製品コンポーネントに固有の事項については、「Java ES 製品コンポーネントのアンインストール動作の確認」を参照してください。

アンインストーラは、グラフィカル、テキストベース、またはサイレントの各モードで実行できます。Java ES インストールの完了後、アンインストーラは次の場所に格納されています。

アンインストール後に、uninstall ユーティリティーはホストから削除されます。アンインストーラの使用手順については、第 8 章「アンインストール」を参照してください。

共有コンポーネントは、Java ES アンインストーラを使用して削除できません。共有コンポーネントは、新しいバージョンの Java ES をインストールするときに Java ES インストーラによってアップグレードされます。一部の共有コンポーネントは、『Sun Java Enterprise System 5 アップグレードガイド (UNIX 版)』に記載されている手順を使用して手動でアップグレードできます。Java ES レポータをアンインストールする手順は、「Java ES レポータのアンインストール」に記載されています。

インストール済みの Sun Cluster ソフトウェアのバージョンを Java ES アンインストーラを使用して削除することはできません。Sun Cluster ソフトウェアのアンインストールについては、「Sun Cluster ソフトウェアのアンインストール」および 「Sun Cluster ソフトウェアと Sun Cluster Geographic Edition のアンインストール動作」を参照してください。