JFP は、複数バイト言語国際化のために拡張された mailx (/usr/SUNWale/bin/mailx) を提供しています。以降、簡単な日本語メールの送受信を例にして、mailx の使い方とコード変換について説明します。
説明の中で、いくつかの mailx のコマンドと変数が登場しますが、それらの詳しい使い方については、国際化のために拡張された mailx(1) のマニュアルページまたは『OpenWindows ユーザーズガイド (上級編)』を参照してください。
まず、第 3 章「日本語対応 SunOS のユーザー環境設定」の「コマンド検索パスの設定」を参考にして、/usr/SUNWale/bin/mailx を起動するように設定します。以下に述べるコード変換は、LC_CTYPE のロケールが環境変数 LANG または LC_CTYPE を介してja または japanese に設定されている場合に行われます。また、環境変数 LC_MESSAGES が ja または japanese に設定されている場合は、mailx からの警告メッセージなどは日本語となります (メッセージ自体は JFP が提供します)。
メールを送るときは、mailx の引数に送り先のユーザー名を指定します。たとえば、grape というユーザーにメールを送る場合は、次のように指定します。
lemon% mailx grape Subject: |
mailx は Subject: の入力を要求してきます。Subject: にメールの用件を入力した後、メールのメッセージ本体を入力します。JFP の提供する日本語機能などを利用して日本語のメッセージを入力できます。
lemon% mailx grape Subject: Next Lecture 葡萄さん: 次回の講習会は 10月1日(木) 午後2:00開始 に変更されました。 |
メッセージをテキストエディタを使って作成することもできます。次のように ‾v を実行すると vi が起動されます。起動されるエディタは VISUAL 変数で指定します。デフォルトは vi です。mailx の変数は mailx を起動中、または起動ファイル (通常、ユーザーのホームディレクトリにある .mailrc) 内で設定できます。シェルの変数としても設定できますが、mailx を起動中の値および起動ファイルの値が優先されます。
Subject: Next Lecture 葡萄さん: 次回の講習会は 10月1日(木) 午後2:00開始 に変更されました。 ‾v |
‾v を実行すると、ただちに vi の画面に変わります。
To: grape Subject: Next Lecture 葡萄さん: 次回の講習会は 10月1日(木) 午後2:00開始 に変更されました。 ‾ ‾ ‾ ‾ ‾ ‾ ‾ "/tmp/Re8570" 7 行、121 バイト |
ここで、日本語を追加入力してみます。
To: grape Subject: Next Lecture 葡萄さん: 次回の講習会は 10月1日(木) 午後2:00開始 に変更されました。 会場は未定です。 檸檬 ‾ ‾ ‾ ‾ ‾ ‾ ‾ ‾ :wq |
vi を終了すると元の mailx に戻ります。しかし、ここでは vi での編集イメージが画面に残っています。作成したメッセージを始めから見たい場合は、‾p を実行するとメッセージが再表示されます。メッセージのサイズが大きい場合は画面が流れてしまい、内容をゆっくり読むことができません。それを防ぐために crt 変数と PAGER 変数をあらかじめ設定しておき、ページごとに表示させる方法があります。たとえば、mailx コマンド起動中に以下を設定します。
? set crt=20 ? set PAGER=/usr/bin/more |
行頭の ? は mailx からのプロンプトです。
このような設定は、ユーザーのホームディレクトリにある .mailrc の中であらかじめ記述しておくと mailx 起動時に常に実行されるので便利です。
‾p ------- メッセージの内容: To: grape Subject: Next Lecture 葡萄さん: 次回の講習会は 10月1日(木) 午後2:00開始 に変更されました。 会場は未定です。 檸檬 (つづく) |
作成したメールは、行の先頭での「 . 」(ピリオド) 入力または CTRL-D により送信されます。mailx は終了してシェルに戻ります。メールの作成は日本語 EUC で行われてきましたが、送信時は 7 ビット JIS コードに変換されてから送られます。
‾p ------- メッセージの内容: To: grape Subject: Next Lecture 葡萄さん: 次回の講習会は 10月1日(木) 午後2:00開始 に変更されました。 会場は未定です。 檸檬 (つづく) . 作成終了 lemon% |
作成の途中でメール送信を中止したいときは、割り込みキー (通常、CTRL-C) を入力してください。その場合、1 回目の割り込みキー入力で本当に途中で中止してよいかどうか尋ねてきます。そこでもう一度割り込みキーを入力すると、作成は中止されシェルに戻ります。このとき、途中まで作成されていたメッセージの内容が、dead.letter と呼ばれるファイル (あらかじめ設定されていない場合はユーザーのホームディレクトリにある dead.letter) に日本語 EUC で確保されます。
lemon% mailx grape Subject: Next Lecture 葡萄さん: 次回の講習会は 10月1日(木) 午後2:00開始 に変更されました。^C (割り込み -- メッセージ送信をやめるにはもう一度) ^C"/home/garden/lemon/dead.letter" 4/63 lemon% |
送信に先立ち record 変数が設定されていると、送信するメッセージが record 変数で指定したフォルダに保存されます。record はデフォルトでは設定されていません。また、record 変数が設定されている場合に、mailx の変数 folderconv が設定されていると日本語 EUC で保存され、設定されていないと転送時の変換イメージ (7 ビット JIS コード) で保存されます。folderconv はデフォルトで設定されています。たとえば、record フォルダが ‾/.record の場合は以下のようにして、すでに送信したメッセージを参照できます。
行の先頭の ? は mailx からのプロンプトです。現在 2 個のメッセージがあります。先程転送したメール (Subject: Next Lecture) は 2 番目にあります。メッセージを読むコマンドはいくつかありますが、ここではメッセージ番号をそのまま入力する方法で実行します。
? 2 Message 2: From lemon Tue Sep 29 21:47:01 1992 To: grape Subject: Next Lecture 葡萄さん: 次回の講習会は 10月1日(木) 午後2:00開始 に変更されました。 会場は未定です。 檸檬 ? lemon% |
今度は、先程送ったメールをユーザー grape 側から読んでみます。メールボックスに届いたメールを読むには、mailx を引数なしで起動します。メールボックスにメールが届いていると、次のように表示されます。なお、この場合も LC_CTYPE および LC_MESSAGES が環境変数 LANG、または LC_CTYPE および LC_MESSAGES を介して ja または japanese に設定されているものとします。
メッセージは日本語 EUC ではなく、7 ビット JIS コードに変換されて到着していますが、表示されるときには自動的に日本語 EUC にコード変換されます。
? 2 Message 2: From lemon Tue Sep 29 21:47 JST 1992 Date: Tue, 29 Sep 92 21:47:02 JST From: lemon (A.Lemon) To: grape Subject: Next Lecture 葡萄さん: 次回の講習会は 10月1日(木) 午後2:00開始 に変更されました。 会場は未定です。 檸檬 ? |
この場合も「メッセージの作成」の項で行なったように、変数 crt および PAGER を設定しておくと、大きなサイズのメッセージも画面上で流れることなく、ページごとに見ることができます。
到着したメッセージを保存するために、いくつかの mailx のコマンドが用意されています。s (save)、c (copy)、w (write) コマンドは、変数 folderconv が設定されていると到着したメッセージを日本語 EUC にコード変換して保存します。save と copy はフォルダの形式でヘッダ情報をつけて保存します。write はメッセージ本体だけを保存します。また、save を実行するとそのメッセージはメールボックスから取り除かれますが、copy の場合は保存後もメールボックスに残ります。
? save 2 folder.1 "folder.1" [新規ファイル] 22/481 |
save コマンドにより、メッセージ番号 2 のメッセージは folder.1 に保存されました。このときは日本語 EUC にコード変換されています。到着したメッセージを変換しないでそのままフォルダに保存したいときは、nsave または ncopy コマンドを利用して保存します。
? nsave 2 folder.2 "folder.2" [新規ファイル] 22/523 |
nsave コマンドにより、メッセージ番号 2 のメッセージは folder.2 にコード変換されずに保存されました。
一度読んだメールは特に明示的に保存しないと、mailx 終了時に mbox と呼ばれるフォルダ (あらかじめ設定していない場合はユーザーのホームディレクトリにある mbox) に保存されるように設定されています (この設定は mailx の変数の値と終了コマンドの種類によって変わります)。mbox に保存される場合も、日本語 EUC にコード変換されてから保存されます。
? visual 2 |
v (visual) コマンドにより、到着したメッセージをテキストエディタを使って編集できます。起動されるエディタは VISUAL 変数で指定されます。デフォルトは vi です。このとき、編集するメッセージは日本語 EUC にコード変換された上でエディタが起動されます。
次のように、実際にメッセージを変更すると、変更後は日本語 EUC でメールボックスに保存されます。
「メッセージの読み取り」に戻り、返事を出してみます。
r コマンドを実行すると、自動的に差出人宛てのメールを作成する状態になります。ここからは「メッセージの作成」の項で示したとおりに、‾p、‾v などを利用してメッセージを作成できます。返事の中に、現在読んでいるメッセージまたは別のメッセージを挿入したいときは、‾m または ‾f を実行します。どちらの場合も、挿入メッセージが日本語 EUC にコード変換されて挿入されます。
? r To: lemon Subject: Re: Next Meeting ‾m メッセージ挿入: 2 (つづく) |
‾m の入力時に特にメッセージ番号を指定しなかったので、現在読んでいる 2 番のメッセージが挿入されました。つづいて vi を起動して (‾v コマンドの実行) 返事を書きます。
挿入したメッセージは、各行の先頭にタブが挿入され段落がつけられています。この自動的に挿入される文字列は、変数 indentfix で設定されます。デフォルトはタブです。また、この文字列の段落付けは ‾f でメッセージを挿入するときには適用されません。
:wq "/tmp/Re8580" 21 行、333 バイト (つづく) . 作成終了 ? |
「メッセージの作成」の項で示したとおりに作成を終了すると、メッセージは 7 ビット JIS コードに変換され送信されます。mailx 自身の終了には、 quit、コマンド行の先頭での CTRL-D、exit などのコマンドが用意されています。quit と CTRL-D は、既読のメッセージを mbox に保存して未読のメッセージをメールボックスに保存します。exit はメールボックスを変更せず、mbox に保存することなく mailx を終了します。mailx 終了の動作は、 hold などの変数を設定してカスタマイズできます。
ここでは、comsat を利用したメール到着の通知を紹介します。まず、到着した日本語メールが正しくコード変換して表示されるように、第 4 章「日本語対応 SunOS のシステム環境設定」「日本語対応 SunOS のシステム環境設定」の「in.comsat の設定」に従って inetd(1M) の構成を修正してください。
次に、biff(1B) でメール受信の通知を行うように設定します。
grape% biff y |
このように設定すると、7 ビット JIS コードに変換されている日本語メールが到着するときに、日本語 EUC にコード変換されて画面にはじめの数行が表示されます。
New mail for grape has arrived: ---- Date: Wed, 30 Sep 92 11:56:35 GMT From: lemon (A. Lemon - Garden Company) To: grape Subject: Next Lecture 葡萄さん: 次回の講習会は ...以下省略... |