JFP ユーザーズガイド

第 14 章 ユーザー定義文字の登録 (Solaris 外字ツール)

Solaris 2.6 から、ユーザー定義文字は既存のフォントファイルに追加せずに、別フォントファイルとして編集し、既存のフォントと組み合わせて利用するようになりました。ユーザー定義文字を登録できる領域は次のとおりです。

表 14-1 ユーザー定義文字の登録可能領域

文字 

登録可能な領域 

文字セットの区域 

日本語 EUC 

0xf5a1 - 0xfefe 

JIS X 0208 85 区 - 94 区 

 

0x8ff5a1 - 0x8ffefe 

JIS X 0212 85 区 - 94 区 

PCK 

0xf040 - 0xf9fc 

JIS X 0208 95 区 - 114 区 

UTF-8 

0xee8080 - 0xefa3bf (U+E000 - U+F8FF) 

 

このため、これまでのビットマップ用の「フォントエディタ」(fontedit)、アウトライン用の「タイプ3クリエータ」(type3creator) と「フォントマネージャ」(fontmanager) に代わり、Solaris 2.6 オペレーティング環境およびその互換バージョンの Solaris CDE 上で新たにユーザー定義文字を作成するツールとして、「Solaris 外字ツール」(sdtudctool) が提供されます。

「Solaris 外字ツール」は、日本語 EUC、PCK および UTF-8 に共通したユーザー定義文字を作成します。そのため、ユーザー定義文字を作成する場合、いずれかのロケールで作成するといずれのロケールでも利用できるようになります。

なお、フォントエディタ、タイプ3クリエータ、およびフォントマネージャを使って作成したユーザー定義文字を再利用する場合は、はじめに移行作業が必要です。詳細は、第 15 章「フォントの移行」を参照してください。

機能概要

「Solaris 外字ツール」には次の機能があります。

なお、作成されたユーザー定義文字フォントファイルは、日本語 OpenWindows 上でも共通して利用できます。


注 -

「Solaris 外字ツール」は Solaris CDE 上でのみサポートされます。日本語 OpenWindows 上でユーザー定義文字を利用する場合でも、Solaris CDE 環境上でユーザー定義文字を登録してください。


「Solaris 外字ツール」は、次の 3 つのウィンドウで構成されています。各ウィンドウ上のメニューの詳細は、「各機能の説明」を参照してください。

文字エディタ

図 14-1 文字エディタウィンドウ (Solaris 外字ツール)

編集画面

ユーザー定義文字を編集する画面です。

参照画面

ユーザー定義文字を作成するときに参考にする文字を表示する画面です。「表示」メニューから「参照」、またはツールバーの右端にあるボタンを選択すると、編集画面の右に表示します。

確認画面

左側にアウトラインでの文字、右側にビットマップでの文字を表示します。

一覧表

図 14-2 一覧表ウィンドウ (Solaris 外字ツール)

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「一覧表...」ボタンを選択するとこのウィンドウを表示し、現在登録しているユーザー定義文字を表示します。

参照表

図 14-3 参照表ウィンドウ (Solaris 外字ツール)

参照画面を表示したあと、「参照表...」ボタンを選択すると、このウィンドウを表示します。ユーザー定義文字を編集する場合に参考にしたい文字があるときに使用します。

起動方法

「Solaris 外字ツール」を起動するには、アプリケーションマネージャの「デスクトップアプリケーション」を開いて「Solaris 外字ツール」を選択するか、端末エミュレータで次のコマンドを入力します。

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sun% /usr/dt/bin/sdtudctool

環境変数 DTUDCFONTPATH でユーザー定義文字を保存するディレクトリを指定していない場合は、以下のディレクトリに保存します。

ローカルユーザーの場合: $HOME/.Xlocale/ja/fonts/UDC
スーパーユーザーの場合: $OPENWINHOME/lib/locale/ja/X11/fonts/UDC

環境の設定にもよりますが、ローカルユーザーがユーザー定義文字を登録した場合は、登録者の環境でユーザー定義文字の利用が可能となります。また、スーパーユーザーがユーザー定義文字を登録した場合、登録したマシンおよび $OPENWINHOME を共有するマシンでユーザー定義文字の利用が可能となります。また、各ユーザー間で環境変数 DTUDCFONTPATH に共有のディレクトリを指定することで、共有のユーザー定義文字を利用することもできます。

ユーザー定義文字を保存するディレクトリが存在しない場合は、起動時に次のダイアログが表示されます。

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各機能の説明

「Solaris 外字ツール」で提供する機能について説明します。

文字エディタ

「Solaris 外字ツール」の起動時に表示します。

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文字エディタのウィンドウタイトルには、ユーザー定義文字を読み込んだ場合にはその保存ディレクトリ名が、フォントファイルを読み込んだ場合にはファイル名を表示します。

描画ツール

描画ツールが提供する各ツールの機能と操作方法を表 14-2に示します。描画ツールの中から 1 つのツールを選択すると、別のツールが選択されるまでそのツールが選択されています。

図 14-4 描画ツール (Solaris 外字ツール)

表 14-2 描画ツールの機能と操作方法

ツール名 

機能 

操作方法 

自由線 

手書きの線と個別のピクセルを描きます。 

1. 「描画ツール」メニューから「自由線」を選択します。 

2. 描画画面上で左マウスボタンを押しながら描画します。 

3. 左マウスボタンを離します。 

直線 

直線を描きます。 

1. 「描画ツール」メニューから「直線」を選択します。 

2. 描画画面上で左マウスボタンを押しながら描画します。 

3. 左マウスボタンを離します。 

折れ線 

連続する複数の線分を描きます。 

1. 「描画ツール」メニューから「折れ線」を選択します。 

2. 描画画面上で、線分の開始地点と終了地点ごとに左マウスボタンをクリックします。 

クリックした場所から新たに線分が描画されます。 

3. 線分の最終地点で左マウスボタンをダブルクリックします。 

多角形 

最初の描画線と最後の描画線の間を閉じた多角形を描きます。 

1.「描画ツール」メニューから「多角形」を選択します。 

2. 描画画面上で、描画線の開始地点と終了地点ごとに左マウスボタンをクリックします。 

クリックした場所から新たに線分が描画されます。 

3. 線分の最終地点で左マウスボタンをダブルクリックします。 

四角形 

四角形を描きます。 

1. 「描画ツール」メニューから「四角形」を選択します。 

2. 描画画面上で左マウスボタンを押しながら描画します。 

3. 左マウスボタンを離します。 

円 

円を描きます。 

1. 「描画ツール」メニューから「円」を選択します。 

2. 描画画面上で左マウスボタンを押しながら描画します。 

3. 左マウスボタンを離します。 

消しゴム 

指定されたピクセルを消去します。 

注: アウトラインモードでは利用できません。「範囲指定」で範囲を指定し、「編集」メニューを利用し消します。 

1. 「描画ツール」メニューから「消しゴム」を選択します。 

2. 描画画面上で左マウスボタンを押しながら消します。 

範囲指定 

範囲を指定します。「編集」メニューのコマンドを使う場合は、最初に「範囲指定」で範囲を指定する必要があります。なお、指定領域の移動は、指定領域の中心付近を、左マウスボタンで押しながら移動します。 

1. 「描画ツール」メニューから「範囲指定」を選択します。 

2. 描画画面上で左マウスボタンを押しながら範囲を指定します。 

3. 左マウスボタンを離します。 

メニュー

文字エディタには次のメニューがあります。

ファイル

編集

モードの切り替えは、ツールバー上に表示されている「アウトライン」と「ビットマップ」ボタンを切り替えて指定します。

次の 2 つのモードがあります。

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注 -

アウトライン表示時の「範囲指定」では、文字を構成するオブジェクトのすべてのコントロールポイントが指定領域に含まれなければなりません。コントロールポイントの表示は「表示」->「コントロール」で行います。


表示

ヘルプ

一覧表

一覧表は、ユーザー定義文字を読み込んだ場合はユーザー定義文字を、フォントファイルを読み込んだ場合はファイルに含まれる文字を表示します。一覧表上の文字を選択すると編集画面上に表示され、編集対象になります。

一覧表のウィンドウタイトルには、ユーザー定義文字を読み込んだ場合にはその保存ディレクトリ名が、フォントファイルを読み込んだ場合にはファイル名が表示されます。

ツールバー上には、次のメニューが表示されます。

メニューバーには、次のメニューが表示されます。

ファイル

編集

表示

参照表

参照表は、「ファイル」メニューの内容を除き、一覧表とほとんど同じインタフェースを持っています。

参照表のウィンドウタイトルには、ユーザー定義文字を読み込んだ場合にはその保存ディレクトリ名が、フォントファイルを読み込んだ場合にはファイル名が表示されます。

ファイル

その他の機能

「Solaris 外字ツール」では、一覧表上でのドラッグ&ドロップ、一覧表から編集画面へのドラッグ&ドロップ、参照表から編集画面へのドラッグ&ドロップ、および参照表から一覧表へのドラッグ&ドロップをサポートしています。

ドラッグ&ドロップ機能は、文字のコードポイントの移動や、すでに登録されている文字を利用して文字を作成する場合に便利です。

コードポイントの移動例

コードポイントを移動する際の操作例を次に示します。

  1. 移動したいコードポイントの文字をマウスのアジャスト (中央) ボタンを押して選択したまま、移動先のコードポイントへカーソルをドラッグ&ドロップします。

参照表からの文字のコピー例

次のいずれかの操作を実行すると文字をコピーできます。

    参照表上のコピーしたい文字をマウスのアジャスト (中央) ボタンを押して選択したまま、一覧表のコピー先のコードポイントへカーソルをドラッグ&ドロップします。

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    一覧表上でコードポイントを指定した後、参照表上の参照したい文字をマウスのアジャスト (中央) ボタンを押して選択したまま、編集画面上にドラッグ&ドロップします。保存ボタンを選択します。

ユーザー定義文字の日本語入力システムへの登録方法

ユーザー定義文字を単語として日本語入力システムの辞書ファイルへ登録 することにより、ユーザー定義文字の入力が容易になります。登録を行なわない場合でも JIS 区点コード入力または、16 進コード入力によりユーザー定義文字を入力することが出来ます。ここでは、「Solaris 外字ツール」を利用して各日本語入力システムの辞書ファイル登録までの手順を説明します。単語登録に関しての詳細は、「Wnn6 ユーザーズガイド」、「ATOK8 ユーザーズガイド」または「cs00 ユーザーズガイド」を参照して下さい。

  1. 「Solaris 外字ツール」を起動します。詳細は、「起動方法」を参照してください。

  2. 「描画モード」を選択し、編集画面上に文字を描画します (起動時には「自由線」が設定されています)。

  3. 文字の描画が終了したら、編集画面下の「保存」ボタンを押します。

  4. 「次」ボタンを押し、次のコードポイントに移動します。

  5. すべてのユーザー定義文字の登録が終了したら、「ファイル」メニューから「保存」を選択します。

    なお、「一覧表...」ボタンを押すと、登録したユーザー定義文字の一覧表が表示されます。この一覧表から直接、編集するユーザー定義文字を選択したり、登録するコードポイントを指定したりできます。詳細は、「一覧表」を参照してください。

    「Solaris 外字ツール」は、ユーザー定義文字を保存したディレクトリを自動的に現行セッションのフォントパスに組み込みます。詳細は、「文字エディタ」「ファイル」の「オプション」、および 「オプション」を参照してください。

  6. ユーザー定義文字の保存が終了すると、ユーザー定義文字の読みを辞書に登録するためのユーザー定義文字辞書登録用中間ユーティリティが自動的に起動されます。

  7. 単語登録対象の日本語入力システムを選択し(Wnn6、ATOK8 または cs00)、単語登録したいユーザー定義文字の「読み」および「コメント」を入力し、「了解」ボタンまたは「適用」ボタンを押します。「コメント」は、Wnn6 のみ辞書ファイルに登録されます。

  8. 7. で選択した日本語入力システム別にウィンドウが表示されます。ウィンドウの説明に従って処理を続けてください。

    • Wnn6 テスト形式辞書への保存

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    • atok8wordlist 形式ファイルへの保存

    • cs00 単語リストファイル形式への保存

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    なお、ユーザー定義文字の「読み」を辞書ファイルに登録しない場合、アプリケーションでの指定方法はコード入力となります。

ユーザー定義文字のアプリケーションでの利用方法

ユーザー定義文字の利用は、登録後に起動したアプリケーションから有効になります。

表 14-3 日本語入力システムで利用可能なユーザー定義文字のコード範囲

日本語入力システム 

図形文字集合 

 

コード範囲 

Wnn6、cs00 

日本語 EUC コードセット 1 

日本語 EUC コードセット 2 

PC 漢字(PCK) 

UTF-8 

 

0xf5a1 から 940 文字 

0x8ff5a1 から 940 文字 

0xF040 から 1880 文字 

0xee8080 から 1880 文字 

ATOK8 

日本語 EUC コードセット 1 

日本語 EUC コードセット 2 

PC 漢字(PCK) 

UTF-8 

 

0xf5a1 から 940 文字 

利用できません 

0xf040 から 940 文字 

0xee8080 から 940 文字 

日本語入力システム Wnn6 を利用している場合

  1. 区点入力ウィンドウを表示します。

  2. ユーザー定義文字を登録したコードポイントを区点コードで指定します。

    たとえば、85 区 1 点から一覧を表示して選択する場合は、区点入力ウィンドウで 85 を入力し、候補一覧を表示します。

    一覧から選択します。

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日本語入力システム ATOK8 を利用している場合

  1. JIS 入力モードにします。

  2. ユーザー定義文字を登録したコードポイントを JIS コードで指定します。

    たとえば、85 区 1 点 が JIS 0x7521 なので、75 を入力し候補一覧を表示します。

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日本語入力システム cs00 を利用している場合

  1. 区点入力モードにします。

  2. ユーザー定義文字を登録したコードポイントを区点コードで指定します。

    たとえば、85 区 1 点から一覧を表示して選択する場合は、85 を入力し候補一覧を表示します。

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詳細は、『Wnn6 ユーザーズガイド』、『ATOK8 ユーザーズガイド』、または『cs00 ユーザーズガイド』を参照してください。

ユーザー定義文字の DPS 上での利用方法

「Solaris 外字ツール」で作成されたユーザー定義文字は、以下のフォントに組み込まれます。

JIS エンコーディングのフォント

GothicBBB-Medium-H            Ryumin-Light-H
GothicBBB-Medium-V            Ryumin-Light-V
GothicBBB-Medium-Hojo-H       Ryumin-Light-Hojo-H
GothicBBB-Medium-Hojo-V       Ryumin-Light-Hojo-V

EUC エンコーディングのフォント

GothicBBB-Medium-EUC-H        Ryumin-Light-EUC-H
GothicBBB-Medium-EUC-V        Ryumin-Light-EUC-V
GothicBBB-Medium-Hojo-EUC-H   Ryumin-Light-Hojo-EUC-H
GothicBBB-Medium-Hojo-EUC-V   Ryumin-Light-Hojo-EUC-V

SJIS エンコーディングのフォント

GothicBBB-Medium-RKSJ-H       Ryumin-Light-RKSJ-H
GothicBBB-Medium-RKSJ-V       Ryumin-Light-RKSJ-V

83pv-RKSJ エンコーディングのフォント

GothicBBB-Medium-83pv-RKSJ-H  Ryumin-Light-83pv-RKSJ-H
GothicBBB-Medium-83pv-RKSJ-V  Ryumin-Light-83pv-RKSJ-V

組み込まれたフォント名は、各フォント名に New を付けたフォント名になります。たとえば、GothicBBB-Medium-EUC-H にユーザー定義文字を追加したフォントのフォント名は、NewGothicBBB-Medium-EUC-H になります。

ユーザー定義文字の印刷方法

「Solaris 外字ツール」を使って登録したユーザー定義文字を印刷するには、jpostprint(1) を使って、いったん PostScript ファイルを生成してから、次のスクリプトで印刷します (jpostprint はデフォルトでは、$HOME/.Xlocale/$LANG/fonts/UDC ディレクトリに保存されているユーザー定義文字を使用します)。

sun% /usr/lib/lp/postscript/jpostprint <テキストファイル名> | lpr

環境変数 DTUDCFONTPATH で保存ディレクトリを設定した場合は、次のように指定します。

sun% /usr/lib/lp/postscript/jpostprint -u "$DTUDCFONTPATH/UDC%d.pfa" | lpr

詳細は、jpostprint(1) のマニュアルページを参照してください。

オプション

次のオプションを使用できます。

sun% /usr/dt/bin/sdtudctool -f fontfile

「Solaris 外字ツール」は起動時に指定したフォントファイルを読み込みます。現時点では、BDF/PCF 形式のフォントを読み込むことができます。

環境設定

環境変数

DTUDCFONTPATH

ユーザー定義文字を保存するディレクトリを指定します。指定しない場合、以下のディレクトリがユーザー定義文字の保存ディレクトリとして利用されます。

ローカルユーザーの場合

$HOME/.Xlocale/$LANG/fonts/UDC

スーパーユーザーの場合

$OPENWINHOME/lib/locale/$LANG/X11/fonts/UDC

リソース

以下のリソースをサポートしています。

utUDCPrefix

ユーザー定義文字を保存するビットマップフォントファイルの接頭辞を指定します。デフォルトは UDC です。

utUDCBDFSize

ユーザー定義文字のビットマップフォントのサイズを指定します。デフォルトは 12、14、16、20、24 です。

utRefXFont

参照一覧を開いた時の表示文字を XLFD 名で指定します。デフォルトは -sun-gothic-medium-r-normal--16-140-75-75-c-140-jisx0208.1983-0 です。

utUDCCIDPrefix

ユーザー定義文字を組み込んだ際のフォントの名の接頭辞です。デフォルトは New です。

utUDCCIDBase

ユーザー定義文字を組み込むフォント名からエンコード名以降を除いた文字です。デフォルトは GothicBBB-MediumRyumin-Light です。