Solaris のシステム管理 (IP サービス)

DHCP サーバーの構成前に必要な選択 (作業マップ)

この節では、ネットワークに最初の DHCP サーバーを構成する前に決定する必要がある事柄について説明します。この作業マップを使って、決定する必要がある事柄を確認してください。

タスク 

説明 

参照先 

DHCP サーバーを選択する 

DHCP サービスを実行するためのシステム要件をサーバーが満たしているかどうか判断する 

DHCP を使用するためのサーバーの選択

データストアを選択する 

データストアの選択肢を比較して、サイトに最も適したデータストアを決定する 

データストアの選択

リースポリシーを設定する 

サイトに適したリースを決定するために、IP アドレスのリースについて確認する 

リースポリシーの設定

ルーターのアドレスを指定するか、ルーターを検索するかを選択する 

DHCP クライアントが特定のルーターを使用するか、ルーターを検索するかを決定する 

DHCP クライアントのためのルーターの決定

DHCP を使用するためのサーバーの選択

ネットワークトポロジを念頭に置き、次のガイドラインに従って、DHCP サーバーを設定するホストを選択します。

サーバーとしての要件は次のとおりです。

データストアの選択

DHCP データは、テキストファイル、バイナリファイル、または NIS+ ディレクトリサービスに保存できます。次の表は、各データストアの特徴とそれが最も適している環境を示したものです。

表 8–3 データストアの比較

データストア 

性能 

保守 

共有 

推奨環境 

バイナリファイル 

高性能、大容量 

少ない保守、データベースサーバーが不要。内容は、DHCP マネージャ、dhtadmpntadm で表示する必要がある。ファイルの定期的なバックアップが必要。

コンテナを DHCP サーバーの間で共有することはできない 

多数のネットワークからなり、ネットワークごとに数千のクライアントがいる中規模から大規模の環境。小規模から中規模の ISP に適している  

NIS+ 

中程度の性能と容量。NIS+ サービスの性能と容量に依存する 

DHCP サーバーシステムが NIS+ クライアントとして構成されていなければならない。 NIS+ サービスの保守が必要。内容は、DHCP マネージャ、dhtadmpntadm で表示する必要がある。nisbackup による定期的なバックアップが必要。

DHCP データは NIS+ に分散される。複数のサーバーから同じコンテナにアクセスできる 

ネットワーク当たり 5000 クライアントまでの小規模から中規模の環境 

テキストファイル 

中程度の性能、少ない容量 

少ない保守、データベースサーバーが不要。ASCII ファイルであるため、DHCP マネージャ、dhtadm または pntadm を使用しなくても見ることができる。ファイルの定期的なバックアップが必要。

コンテナを DHCP サーバーの間で共有できる。ただし、DHCP データが、NFS マウントポイントを通してエクスポートされる 1 つのファイルシステムに格納されていなければならない 

ネットワーク当たり数百から 1000 クライアントで、合計が 10,000 クライアント未満の小規模な環境 

NIS+ とは異なり、NIS はデータストアオプションとしては推奨されません。これは、高速な増分更新がサポートされていないためです。ネットワークで NIS が使用されている場合は、データストアとしてテキストファイルまたはバイナリファイルを使用することをお勧めします。

リースポリシーの設定

リースとは、DHCP サーバーが特定の IP アドレスの使用を DHCP クライアントに許可する期間のことです。管理者は、サーバーの初期構成時に、サイト全体に適用するリースポリシーを指定する必要があります。このポリシーには、リース期間やクライアントがこのリースを更新できるかどうかを指定します。 サーバーは提供された情報を使用して、構成時に作成するデフォルトマクロ内のオプションの値を設定します。管理者は、作成する構成マクロでオプションを使用することによって、特定のクライアントや特定のクライアントタイプごとに、異なるリースポリシーを設定することもできます。

リース期間は、リースが有効な時間数、日数、または週数として指定されます。クライアントに IP アドレスが割り当てられると (あるいは、クライアントが、すでに割り当てられている IP アドレスのリースを再度ネゴシエーションすると)、クライアントの DHCP 肯定応答のタイムスタンプにリース期間の時間数が加算され、リース満了日時が計算されます。たとえば、DHCP 肯定応答のタイムスタンプが 2001 年 9 月 16 日 9:15 AM で、リース期間が 24 時間の場合、リース満了時間は 2001 年 9 月 17 日 9:15 AM になります。リース満了日時はクライアントの DHCP ネットワークレコード中に保存され、DHCP マネージャまたは pntadm を使って表示されます。

リース期間には、期限切れの IP アドレスを速やかに再利用できるように比較的小さな値を設定します。ただし、リース期間は、DHCP サービスが使用できなくなっても、その DHCP サービスが動作するシステムの修理が終わるまでクライアントが動作を継続できるような長さでなければなりません。一般には、サーバーの予想停止時間の 2 倍を指定します。たとえば、故障部品を検出、交換し、サーバーをリブートするのに 4 時間かかるとすれば、8 時間をリース期間に指定します。

リースネゴシエーションオプションは、リースが満了する前に、クライアントが提供されたリースについてサーバーとネゴシエーションできるかどうかを決めるものです。リースのネゴシエーションが可能な場合には、クライアントがリースの残り時間を常に監視し、リース期間の半分が経過すると、リース期間を元の値に復元する要求を DHCP サーバーに送ります。IP アドレスの数より多くのシステムが存在するために IP アドレスの使用時間を制限したい場合には、リースのネゴシエーションを無効にすることができます。しかし、IP アドレスの数が十分にある場合は、リースネゴシエーションを有効にすべきです。これによって、NFS や telnet セッションなどの TCP 接続を中断するおそれがあるネットワークインタフェースの停止や新しいリースの取得を、クライアントに強制する必要がなくなります。管理者は、サーバー構成時に、リースネゴシエーションをサイト全体に対して有効にすることができます。あるいは、構成マクロの LeaseNeg オプションを使用すれば、特定のクライアントやクライアントタイプに対してのみ有効にすることができます。


注 –

ネットワークでサービスを提供するシステムはそれ自身の IP アドレスを保持すべきであり、短期的なリースに依存すべきではありません。このようなシステムで DHCP を使用する場合は、常時リースにより IP アドレスを割り当てるのではなく、予約済みの IP アドレスを手動で割り当てるべきです。これによって、このシステムの IP アドレスが使用されなくなったときには、それを検出することができます。


DHCP クライアントのためのルーターの決定

クライアントが自身のローカルネットワークの外側にあるネットワークと通信する場合には、ルーターが必要です。クライアントは、このルーターの IP アドレスを知っている必要があります。

管理者は、DHCP サーバーの構成時に、クライアントが使用するルーターの IP アドレスを指定する必要があります。あるいは、DHCP マネージャを使用する場合には、クライアント自身がルーター検索プロトコルを使ってルーターを検出するように指定することもできます。

そのネットワークのクライアントがルーター検索機能をサポートする場合には、ルーターが 1 つしかなくてもルーター検索プロトコルを使用すべきです。ルーター検索プロトコルを使用すると、クライアントはネットワーク内でのルーター変更に容易に対応できます。たとえば、ルーターに故障が発生したため、新しいアドレスを持つルーターに置き換えられた場合でも、クライアントは新しいアドレスを自動的に検出できます。つまり、新しいルーターアドレスを知るために新しいネットワーク構成を取得する必要はありません。