この章では、ネットワーク環境でのサーバーとクライアントの管理について説明し、Solaris 環境でサポートされる各システム構成 (「システムタイプ」と呼びます) に関する情報を紹介します。また、目的に合った最適なシステムを選択するためのガイドラインも示します。
この章の内容は以下のとおりです。
ディスクレスクライアントサポートの管理手順については、第 8 章「ディスクレスクライアントの管理 (手順)」を参照してください。
この節では、サーバーとクライアントの新しい管理機能について説明します。
この Solaris 9 リリースでは、smosservice および smdiskless コマンドを使ってディスクレスクライアントを管理できます。ディスクレスクライアントとは、ディスクが搭載されておらず、すべてのサービスがサーバーに依存しているシステムのことです。
これらのコマンドは、Solaris Management Console ツール群の一部です。しかし、Solaris Management Console では、ディスクレスクライアントを管理できません。ディスクレスクライアントの管理に使用できるのは、smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドに限られます。
ディスクレスクライアントの管理方法の詳細については、「ディスクレスクライアント管理の概要」および第 8 章「ディスクレスクライアントの管理 (手順)」を参照してください。
サーバーとクライアントサポートの設定手順については、次の表を参照してください。
サーバー / クライアントサービス |
参照先 |
---|---|
インストールまたは JumpStart クライアント | |
Solaris 9 でのディスクレスクライアントシステム | |
Solaris の以前のリリースのディスクレスクライアントシステムおよび Solstice AutoClient システム |
『Solstice AdminSuite 2.3 管理者ガイド』 |
Solaris 8 または Solaris 9 での AutoClient 3.0.1 システム |
サービスプロバイダに問い合わせてください。 |
通常、ネットワーク上のシステムは、次のいずれかに該当します。
システムタイプ |
説明 |
---|---|
サーバー |
ネットワーク上のほかのシステムにサービスを提供するシステム。ファイルサーバー、ブートサーバー、Web サーバー、データベースサーバー、ライセンスサーバー、印刷サーバー、インストールサーバー、さらに、特定のアプリケーション用のサーバーなどもあります。この章では、サーバーとは、ネットワーク上の他のシステムにブートサービスとファイルシステムを提供するシステムのことを意味します。 |
クライアント |
サーバーから提供されるリモートサービスを利用するシステム。クライアントによってはディスク容量に制限があったり、まったくディスクを持たず、サーバーから提供されるファイルシステムに依存するものもあります。ディスクレスシステム、AutoClient システム、および アプライアンスシステムは、このタイプのクライアントの一例です。 またサーバーが提供するリモートサービス (インストールソフトウェアなど) を利用しながらも、サーバーに依存しなくても機能するクライアントもあります。この種類のクライアントの例として、ルート (/)、/usr、/export/home ファイルシステムとスワップ空間をそのハードディスクに含むスタンドアロンシステムがあります。 |
Sun Cobalt サーバーアプライアンス |
Sun Cobalt サーバーアプライアンスは、あらかじめ設定されたインターネットサービスの統合セットを提供します。サーバー機器のユーザーが必要なのは、Web ブラウザと IP アドレスだけです。サーバーは、一元管理されるので、アプライアンスのユーザーはクライアントを管理する必要がありません。詳細については、http://www.sun.com/hardware/serverappliances を参照してください。 |
アプライアンス |
Sun Ray アプライアンスのようなネットワークアプライアンスを使うと、アプリケーションや Solaris 環境にアクセスできます。アプライアンスを使うと、サーバー管理を一元化できるので、クライアント管理またはアップグレードを行う必要がなくなります。Sun Ray アプライアンスでは、「ホットデスク」も提供されます。この機能を使うと、サーバーグループのどのアプライアンスからでもただちに、作業中のコンピュータセッション (正確に言うと作業を中断したところ) にアクセスできます。詳細については、 http://www.sun.com/products/sunray を参照してください。 |
クライアントに対するサポートとは、クライアントの機能を促進するソフトウェアおよびサービスを提供することです。サポートには、次の項目が含まれます。
システムをネットワークに認識させる (ホスト名とイーサネットアドレス情報)。
システムをリモートからインストールおよびブートできるインストールサービスを提供する。
ディスク容量に限りがある、またはディスク容量がないシステムにオペレーティングシステム (OS) サービスおよびアプリケーションサービスを提供する。
システムタイプは、ルート (/) と /usr ファイルシステム (スワップ領域を含む) にアクセスする方法によって決まる場合があります。たとえば、スタンドアロンとサーバーシステムでは、これらのファイルシステムをローカルディスクからマウントしていますが、その他のクライアントでは、これらのファイルシステムをリモートからマウントし、サーバーから提供されるサービスに依存しています。次の表にそれぞれのシステムタイプの特徴を示します。
表 7-1 一般的なシステムタイプの特徴
システムタイプ |
ローカルファイルシステム |
ローカルスワップ領域 |
リモートファイルシステム |
ネットワーク利用度 |
相対パフォーマンス |
---|---|---|---|---|---|
サーバー |
/ /usr /home /opt /export/home /export/root |
あり |
なし |
高 |
高 |
スタンドアロンシステム |
/ /usr /export/home |
あり |
なし |
低 |
高 |
ディスクレスクライアント |
なし |
なし |
ルート (/) スワップ /usr /home |
高 |
低 |
AutoClient システム |
キャッシュルート (/) キャッシュされた /usr |
あり |
/var |
低 |
高 |
アプライアンス |
なし |
なし |
なし |
高 |
高 |
ルート (/) と /usr ファイルシステム、およびスワップ領域
/export と /export/home ファイルシステム。クライアントシステムをサポートし、ユーザーにホームディレクトリを提供する
アプリケーションソフトウェアを格納する /opt ディレクトリまたはファイルシステム
サーバー上には、他のシステムをサポートするために次のソフトウェアも格納できます。
サーバーとは異なるプラットフォームで、別のリリースまたはクライアントを稼働させるディスクレスシステムまたは AutoClient システム用のオペレーティングシステム (OS) サービス
ネットワークに接続されたシステムがリモートインストールを実行するのに必要な Solaris CD のイメージソフトウェアとブート用ソフトウェア
ネットワークに接続されたシステムが カスタム JumpStartTM インストールを行うのに必要な JumpStart ディレクトリ
「ネットワークに接続されたスタンドアロンシステム」は、ネットワーク上の他のシステムと情報を共有できますが、ネットワークから切り離されても機能できます。
スタンドアロンシステムは、ルート (/)、/usr、/export/home の各ファイルシステムとスワップ空間を含むハードディスクを自ら持つため、独立して動作できます。つまり、スタンドアロンシステムは、オペレーティングシステムのソフトウェア、実行可能ファイル、仮想メモリ空間、ユーザーが作成したファイルにローカルにアクセスできます。
スタンドアロンシステムに必要なファイルシステムを保持するには、十分なディスク領域が必要です。
「ネットワークに接続されないスタンドアロンシステム」は、ネットワークに接続されていない点を除き、ネットワークに接続されたスタンドアロンシステムと同じです。
「ディスクレスクライアント」とは、ディスクが搭載されておらず、必要なすべてのソフトウェアおよび記憶装置をサーバーに依存しているシステムのことです。ディスクレスクライアントには、サーバーからリモートで、ルート (/)、/usr、および /home ファイルシステムがマウントされます。
ディスクレスクライアントでは、ネットワークを介してオペレーティングシステムソフトウェアおよび仮想メモリ領域に継続的にアクセスする必要があるため、かなりのネットワークトラフィックが発生します。ディスクレスクライアントは、ネットワークから切り離されたり、そのサーバーが正しく機能しない場合は機能できません。
ディスクレスクライアントの概要については、「ディスクレスクライアント管理の概要」を参照してください。
AutoClient システムはインストールおよび管理方法においては、ディスクレスクライアントとほとんど同じです。AutoClient システムには、次の特徴があります。
サーバーから個々のルート(/) ファイルシステムおよび /usr ファイルシステムをスワップおよびキャッシュするため最低 100 MB のローカルディスクが必要
サーバーが使用できない場合、サーバーのキャッシュにアクセスできるように設定可能
ほかのファイルシステムおよびソフトウェアアプリケーションへのアクセスは、サーバーに依存
アプライアンス (たとえば、Sun Ray アプライアンス) は、管理を必要としない X ディスプレイデバイスです。このデバイスには、CPU、ファン、ディスクがなく、メモリもわずかしか搭載されていません。アプライアンスは Sun ディスプレイモニタに接続されていますが、アプライアンスユーザーのデスクトップセッションは、サーバーで実行され、その結果がユーザーのモニタに表示されます。ユーザーの X 環境は自動的に設定されます。この環境の特徴は、次のとおりです。
ほかのファイルシステムおよびソフトウェアアプリケーションへのアクセスは、サーバーに依存
ソフトウェアの一元管理およびリソース共有機能を提供
永続的なデータがない、FRU (現場交換可能ユニット) として使用
次の特徴に基づいてそれぞれのシステムタイプを比較することにより、使用中の環境にどのシステムタイプが適切かを判断することができます。
一元管理
システムを FRU (現場交換可能ユニット) として扱えるか。これは、時間がかかるバックアップや復旧操作を必要とせずに、またシステムデータを失わずに、障害が発生したシステムを直ちに新しいシステムと交換できることを意味する
システムをバックアップする必要があるか。数多くのデスクトップシステムのバックアップを実行するには、時間とリソースの点で多大の費用コストがかかる場合がある
システムのデータは、中央サーバーから変更できるか
クライアントシステムのハードウェアを操作せず、短時間で簡単に、システムを中央サーバーからインストールできるか
性能
この構成は、デスクトップで使用しても性能が低下しないか
ネットワークにシステムを追加すると、既存のネットワーク上のシステムの性能に影響を与えるか
ディスク使用率
この構成を効果的に導入するには、どれくらいのディスク容量が必要か
次の表では、各システムタイプの順位をカテゴリ別に表示しています。1 は、最も効果があることを意味します。4 は、最も効果が低いことを意味します。
表 7-2 システムタイプの比較
システムタイプ |
一元管理 |
性能 |
ディスク使用率 |
---|---|---|---|
スタンドアロンシステム |
4 |
1 |
4 |
ディスクレスクライアント |
1 |
4 |
1 |
AutoClient システム |
1 |
2 |
2 |
アプライアンス |
1 |
1 |
1 |
次の節および 第 8 章「ディスクレスクライアントの管理 (手順)」では、Solaris 9 リリースでのディスクレスクライアントサポートの管理方法について説明します。
「ディスクレスクライアント」とは、オペレーティングシステム、ソフトウェア、および記憶装置を「OS サーバー」に依存しているシステムのことです。ディスクレスクライアントは、そのルート (/)、/usr、およびその他のファイルシステムを OS サーバーからマウントします。ディスクレスクライアントは独自の CPU と物理メモリーを持っており、データをローカルで処理することができます。しかしディスクレスクライアントは、ネットワークから切り離されたり、その OS サーバーが正しく機能しない場合は機能できません。ディスクレスクライアントは、ネットワークを経由して継続的に機能する必要があるため、多大なネットワークトラフィックを発生させます。
以前の Solaris リリースでは、Solstice グラフィカル管理ツールでディスクレスクライアントが管理されました。Solaris 9 リリースでは、ディスクレスクライアントの smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドを使って、OS サービスおよびディスクレスクライアントサポートを管理できるようになりました。
次の表に smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドをサポートする Solaris リリースおよびアーキテクチャタイプを示します。
アーキテクチャタイプ |
Solaris 2.6 |
Solaris 7 |
Solaris 8 1/01、4/01、7/01、10/01、2/02 |
Solaris 9 |
---|---|---|---|---|
SPARC サーバー |
O |
O |
O |
O |
IA サーバー |
O |
O |
O |
O |
SPARC クライアント |
O |
O |
O |
O |
IA クライアント |
X |
X |
X |
O |
次の表に smosservice および smdiskless コマンドがサポートする OS サーバーとクライアントの組み合わせを示します。
|
Solaris 2.6 リリースサポート |
Solaris 7 リリースサポート |
Solaris 8 1/01、4/01、7/01、10/01、2/02 サポート |
Solaris 9 サポート |
---|---|---|---|---|
OS サーバー/クライアント OS リリース |
Solaris 2.6-Solaris 2.6 |
Solaris 7-Solaris 2.6、または 7 |
Solaris 8 1/01、4/01、7/01、10/01, 2/02-Solaris 2.6、7、または 8 1/01、4/01、7/01、10/01、2/02 |
Solaris 9-Solaris 2.6、7、8 1/01、4/01、7/01、10/01、2/02 |
smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドを使うと、ネットワークにディスクレスクライアントサポートを追加したり、維持したりすることができます。ネームサービスを使うと、システム情報を一元管理できるので、ホスト名などの重要なシステム情報をネットワーク上のすべてのシステムに複製する必要がありません。
smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドを使うと次の作業が実行できます。
ディスクレスクライアントサポートの追加および変更
OS サービスの追加および削除
LDAP、NIS、NIS+、またはファイル環境でのディスクレスクライアント情報の管理
ディスクレスクライアントコマンドは、ディスクレスクライアントの起動の設定にのみ使用できます。このコマンドは、リモートインストールまたはプロファイルサービスなど、ほかのサービスの設定では使用できません。リモートインストールを設定するには、sysidcfg ファイルにディスクレスクライアント仕様を定義する必要があります。詳細については、『Solaris 9 インストールガイド』を参照してください。
次の表のコマンドを使って独自のシェルスクリプトを記述すると、簡単にディスクレスクライアント環境を設定および管理できます。
表 7-3 ディスクレスクライアントコマンド
コマンド |
サブコマンド |
作業 |
---|---|---|
/usr/sadm/bin/smosservice |
|
|
|
add |
OS サービスを追加する |
delete |
OS サービスを削除する |
|
list |
OS サービスをリスト表示する |
|
patch |
OS サービスのパッチを管理する |
|
/usr/sadm/bin/smdiskless |
|
|
|
add |
ディスクレスクライアントを OS サーバーに追加する |
delete |
ディスクレスクライアントを OS サーバーから削除する |
|
list |
OS サーバー上のディスクレスクライアントをリスト表示する |
|
modify |
ディスクレスクライアントの属性を変更する |
次に示す 2 種類の方法で、これらのコマンドに関するヘルプを参照することができます。
コマンド、サブコマンド、および必要なオプションを入力するときに、-h オプションを使用する。たとえば、smdiskless add の使用方法を表示するには、次のように入力する。
% /usr/sadm/bin/smdiskless add -p my-password -u my-user-name -- -h |
smdiskless(1M) または smosservice(1M) のマニュアルページを参照する。
smosservice および smdiskless コマンドはスーパーユーザーとして使用できます。役割によるアクセス制御 (RBAC) を使用している場合、割当てられた RBAC 権限に応じて、すべてのディスクレスクライアントコマンドまたはそのサブセットのいずれかを使用できます。次の表にディスクレスクライアントコマンドを使用するのに必要な RBAC 権限を示します。
表 7-4 ディスクレスクライアントの管理に必要な権限
RBAC 権限 |
コマンド |
作業 |
---|---|---|
基本的な Solaris ユーザー、ネットワーク管理 |
smosservice list |
OS サービスをリスト表示する
|
|
smosservice patch |
OS サービスパッチをリスト表示する |
|
smdiskless list |
ディスクレスクライアントをリスト表示する |
ネットワーク管理 |
smdiskless add |
ディスクレスクライアントを追加する |
システム管理者 |
すべてのコマンド |
すべての作業 |
Solaris OS サーバーとは、ディスクレスクライアントシステムをサポートするオペレーティングシステム (OS) サービスを提供するサーバーです。OS サーバーをサポートするか、smosservice コマンドを使用してスタンドアロンシステムを OS サーバーに変換することができます。
サポートする各プラットフォームグループおよび Solaris リリース用に、特定の OS サービスをOS サーバーに追加する必要があります。たとえば、Solaris 8 リリース上で実行中の SPARCTM Sun4m システムをサポートする場合には、Sun4m/Solaris 8 OS サービスを OS サーバーに追加する必要があります。また、それぞれのシステムが属するプラットフォームグループが異なるため、Solaris 8 のリリースを実行する SPARC Sun4c システムまたは IA ベースのシステムをサポートする OS サービスも追加する必要があります。
OS サービスを追加するには、適切な Solaris CD またはディスクイメージへのアクセス権が必要です。
OS サーバーに OS サービスを追加しようとすると、サーバー上の OS と追加するサービスの OS のバージョンが一致しないというエラーメッセージが表示される場合があります。このメッセージは、OS サーバーにインストールされている OS のパッケージにパッチが適用されていても、追加しようとしている OS サービスのパッケージにはパッチが適用されていない (パッチがパッケージに組み込まれているため) 場合に表示されます。
たとえば、Solaris 7 リリースを実行するサーバーがあるとします。また、このサーバーには、パッチが適用された Solaris 2.6 SPARC sun4m OS サービスなど、ほかの OS サービスも追加されているとします。CD-ROM から Solaris 2.6 SPARC sun4c OS サービスをこのサーバーに追加しようとすると、次のようなエラーメッセージが表示される場合があります。
Error: inconsistent revision, installed package appears to have been patched resulting in it being different than the package on your media. You will need to backout all patches that patch this package before retrying the add OS service option. |
ディスクレスクライアント環境を設定する前に、各ディスクレスクライアントディレクトリに必要なディスク容量があるかどうか確認する必要があります。
以前のバージョンの Solaris リリースでは、インストール中にディスクレスクライアントサポートについてのプロンプトが表示されました。Solaris 9 リリースでは、手動でインストール中に /export ファイルシステムを割り当てるか、またはインストール後に作成してください。具体的なディスク容量要件については、次の表を参照してください。
表 7-5 OS サーバーに必要なディスク容量
ディレクトリ |
必要な容量 (MB) |
---|---|
/export/Solaris_version |
10 |
/export/exec |
800 |
/export/share |
5 |
/export/swap/diskless_client |
32 (デフォルトのサイズ) |
/export/dump/ diskless_client |
32 (デフォルトのサイズ) |
/export/root/templates/Solaris_ version |
30 |
/export/root/clone/Solaris_ version/ machine_class |
30 - 60 (マシンクラスによって異なる) |
/export/root/ diskless_client(clone of above) |
30 - 60 (マシンクラスによって異なる) |
/tftpboot/inetboot. machine_class .Solaris_version
|
machine_class.Solaris_version ごとに 200 KB |