次の節および 第 8 章「ディスクレスクライアントの管理 (手順)」では、Solaris 9 リリースでのディスクレスクライアントサポートの管理方法について説明します。
「ディスクレスクライアント」とは、オペレーティングシステム、ソフトウェア、および記憶装置を「OS サーバー」に依存しているシステムのことです。ディスクレスクライアントは、そのルート (/)、/usr、およびその他のファイルシステムを OS サーバーからマウントします。ディスクレスクライアントは独自の CPU と物理メモリーを持っており、データをローカルで処理することができます。しかしディスクレスクライアントは、ネットワークから切り離されたり、その OS サーバーが正しく機能しない場合は機能できません。ディスクレスクライアントは、ネットワークを経由して継続的に機能する必要があるため、多大なネットワークトラフィックを発生させます。
以前の Solaris リリースでは、Solstice グラフィカル管理ツールでディスクレスクライアントが管理されました。Solaris 9 リリースでは、ディスクレスクライアントの smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドを使って、OS サービスおよびディスクレスクライアントサポートを管理できるようになりました。
次の表に smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドをサポートする Solaris リリースおよびアーキテクチャタイプを示します。
アーキテクチャタイプ |
Solaris 2.6 |
Solaris 7 |
Solaris 8 1/01、4/01、7/01、10/01、2/02 |
Solaris 9 |
---|---|---|---|---|
SPARC サーバー |
O |
O |
O |
O |
IA サーバー |
O |
O |
O |
O |
SPARC クライアント |
O |
O |
O |
O |
IA クライアント |
X |
X |
X |
O |
次の表に smosservice および smdiskless コマンドがサポートする OS サーバーとクライアントの組み合わせを示します。
|
Solaris 2.6 リリースサポート |
Solaris 7 リリースサポート |
Solaris 8 1/01、4/01、7/01、10/01、2/02 サポート |
Solaris 9 サポート |
---|---|---|---|---|
OS サーバー/クライアント OS リリース |
Solaris 2.6-Solaris 2.6 |
Solaris 7-Solaris 2.6、または 7 |
Solaris 8 1/01、4/01、7/01、10/01, 2/02-Solaris 2.6、7、または 8 1/01、4/01、7/01、10/01、2/02 |
Solaris 9-Solaris 2.6、7、8 1/01、4/01、7/01、10/01、2/02 |
smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドを使うと、ネットワークにディスクレスクライアントサポートを追加したり、維持したりすることができます。ネームサービスを使うと、システム情報を一元管理できるので、ホスト名などの重要なシステム情報をネットワーク上のすべてのシステムに複製する必要がありません。
smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドを使うと次の作業が実行できます。
ディスクレスクライアントサポートの追加および変更
OS サービスの追加および削除
LDAP、NIS、NIS+、またはファイル環境でのディスクレスクライアント情報の管理
ディスクレスクライアントコマンドは、ディスクレスクライアントの起動の設定にのみ使用できます。このコマンドは、リモートインストールまたはプロファイルサービスなど、ほかのサービスの設定では使用できません。リモートインストールを設定するには、sysidcfg ファイルにディスクレスクライアント仕様を定義する必要があります。詳細については、『Solaris 9 インストールガイド』を参照してください。
次の表のコマンドを使って独自のシェルスクリプトを記述すると、簡単にディスクレスクライアント環境を設定および管理できます。
表 7-3 ディスクレスクライアントコマンド
コマンド |
サブコマンド |
作業 |
---|---|---|
/usr/sadm/bin/smosservice |
|
|
|
add |
OS サービスを追加する |
delete |
OS サービスを削除する |
|
list |
OS サービスをリスト表示する |
|
patch |
OS サービスのパッチを管理する |
|
/usr/sadm/bin/smdiskless |
|
|
|
add |
ディスクレスクライアントを OS サーバーに追加する |
delete |
ディスクレスクライアントを OS サーバーから削除する |
|
list |
OS サーバー上のディスクレスクライアントをリスト表示する |
|
modify |
ディスクレスクライアントの属性を変更する |
次に示す 2 種類の方法で、これらのコマンドに関するヘルプを参照することができます。
コマンド、サブコマンド、および必要なオプションを入力するときに、-h オプションを使用する。たとえば、smdiskless add の使用方法を表示するには、次のように入力する。
% /usr/sadm/bin/smdiskless add -p my-password -u my-user-name -- -h |
smdiskless(1M) または smosservice(1M) のマニュアルページを参照する。
smosservice および smdiskless コマンドはスーパーユーザーとして使用できます。役割によるアクセス制御 (RBAC) を使用している場合、割当てられた RBAC 権限に応じて、すべてのディスクレスクライアントコマンドまたはそのサブセットのいずれかを使用できます。次の表にディスクレスクライアントコマンドを使用するのに必要な RBAC 権限を示します。
表 7-4 ディスクレスクライアントの管理に必要な権限
RBAC 権限 |
コマンド |
作業 |
---|---|---|
基本的な Solaris ユーザー、ネットワーク管理 |
smosservice list |
OS サービスをリスト表示する
|
|
smosservice patch |
OS サービスパッチをリスト表示する |
|
smdiskless list |
ディスクレスクライアントをリスト表示する |
ネットワーク管理 |
smdiskless add |
ディスクレスクライアントを追加する |
システム管理者 |
すべてのコマンド |
すべての作業 |
Solaris OS サーバーとは、ディスクレスクライアントシステムをサポートするオペレーティングシステム (OS) サービスを提供するサーバーです。OS サーバーをサポートするか、smosservice コマンドを使用してスタンドアロンシステムを OS サーバーに変換することができます。
サポートする各プラットフォームグループおよび Solaris リリース用に、特定の OS サービスをOS サーバーに追加する必要があります。たとえば、Solaris 8 リリース上で実行中の SPARCTM Sun4m システムをサポートする場合には、Sun4m/Solaris 8 OS サービスを OS サーバーに追加する必要があります。また、それぞれのシステムが属するプラットフォームグループが異なるため、Solaris 8 のリリースを実行する SPARC Sun4c システムまたは IA ベースのシステムをサポートする OS サービスも追加する必要があります。
OS サービスを追加するには、適切な Solaris CD またはディスクイメージへのアクセス権が必要です。
OS サーバーに OS サービスを追加しようとすると、サーバー上の OS と追加するサービスの OS のバージョンが一致しないというエラーメッセージが表示される場合があります。このメッセージは、OS サーバーにインストールされている OS のパッケージにパッチが適用されていても、追加しようとしている OS サービスのパッケージにはパッチが適用されていない (パッチがパッケージに組み込まれているため) 場合に表示されます。
たとえば、Solaris 7 リリースを実行するサーバーがあるとします。また、このサーバーには、パッチが適用された Solaris 2.6 SPARC sun4m OS サービスなど、ほかの OS サービスも追加されているとします。CD-ROM から Solaris 2.6 SPARC sun4c OS サービスをこのサーバーに追加しようとすると、次のようなエラーメッセージが表示される場合があります。
Error: inconsistent revision, installed package appears to have been patched resulting in it being different than the package on your media. You will need to backout all patches that patch this package before retrying the add OS service option. |
ディスクレスクライアント環境を設定する前に、各ディスクレスクライアントディレクトリに必要なディスク容量があるかどうか確認する必要があります。
以前のバージョンの Solaris リリースでは、インストール中にディスクレスクライアントサポートについてのプロンプトが表示されました。Solaris 9 リリースでは、手動でインストール中に /export ファイルシステムを割り当てるか、またはインストール後に作成してください。具体的なディスク容量要件については、次の表を参照してください。
表 7-5 OS サーバーに必要なディスク容量
ディレクトリ |
必要な容量 (MB) |
---|---|
/export/Solaris_version |
10 |
/export/exec |
800 |
/export/share |
5 |
/export/swap/diskless_client |
32 (デフォルトのサイズ) |
/export/dump/ diskless_client |
32 (デフォルトのサイズ) |
/export/root/templates/Solaris_ version |
30 |
/export/root/clone/Solaris_ version/ machine_class |
30 - 60 (マシンクラスによって異なる) |
/export/root/ diskless_client(clone of above) |
30 - 60 (マシンクラスによって異なる) |
/tftpboot/inetboot. machine_class .Solaris_version
|
machine_class.Solaris_version ごとに 200 KB |