この章では、システムプロセスを管理する手順について説明します。この章で説明する手順は次のとおりです。
次の表では、プロセス情報を管理するために使用されるコマンドについて説明します。
表 23-1 プロセスを管理するためのコマンド|
コマンド |
マニュアルページ |
説明 |
|---|---|---|
|
ps、pgrep、prstat |
ps(1)、 pgrep(1)、 prstat(1M) |
システム上のアクティブなプロセスの状態をチェックする。また、プロセスについての詳細な情報を表示する |
|
dispadmin |
dispadmin(1M) |
デフォルトのスケジューリングポリシーをリストする |
|
priocntl |
priocntl(1) |
プロセスに優先順位クラスを割り当てて、プロセスの優先度を管理する |
|
nice |
nice(1) |
タイムシェアリングプロセスの優先度を変更する |
|
psrset |
psrset(1M) |
特定のプロセスグループを、1 つのプロセッサではなく、プロセッサのグループに結合する |
Solaris 管理コンソールの プロセスツールを使用すると、ユーザーフレンドリなインタフェースによるプロセスを管理できます。Solaris 管理コンソールの使用と起動の方法については、『Solaris のシステム管理 (基本編)』の「Solaris Management Console の操作 (手順)」を参照してください。
ps コマンドを使用すると、システム上で活動中のプロセスの状態をチェックできます。また、プロセスについての技術的な情報も表示できます。このデータは、プロセスの優先順位をどのように設定するか判断するなどの管理作業に利用できます。
ps コマンドを使用すると、システム上で活動中のプロセスの状態をチェックできます。使用するオプションに応じて、次の情報が表示されます。
プロセスの現在の状態
プロセス ID
親プロセス ID
ユーザー ID
スケジューリングクラス
優先順位
プロセスのアドレス
使用したメモリー
使用した CPU 時間
次の表では、ps コマンドを使用して報告されるいくつかのフィールドについて説明します。どのフィールドが表示されるかは、選択するオプションによって異なります。使用可能なすべてのオプションについては、ps(1) のマニュアルページを参照してください。
表 23-2 ps により出力されるフィールド|
フィールド |
説明 |
|---|---|
|
UID |
プロセス所有者の実効ユーザー ID |
|
PID |
プロセス ID |
|
PPID |
親プロセス ID |
|
C |
スケジューリングのためのプロセッサ使用率。このフィールドは -c オプションを使用すると表示されない |
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CLS |
プロセスが所属するスケジューリングクラス。リアルタイム、システム、またはタイムシェアリングのいずれか。このフィールドは、-c オプションを指定した場合にのみ表示される |
|
PRI |
カーネルスレッドのスケジューリング優先順位。番号が大きいほど優先順位が高い |
|
NI |
プロセスの nice 番号。これは、スケジュール優先順位に影響する。プロセスの nice 番号を大きくすると、その優先順位が下がる |
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ADDR |
proc 構造体のアドレス |
|
SZ |
プロセスの仮想アドレスサイズ |
|
WCHAN |
プロセスが休眠中のイベントまたはロックのアドレス |
|
STIME |
プロセスの起動時刻 (時、分、秒) |
|
TTY |
プロセス (またはその親プロセス) が起動された端末。疑問符は、制御端末がないことを示す |
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TIME |
プロセスの起動以降に使用した合計 CPU 時間 |
|
CMD |
プロセスを生成したコマンド |
ps コマンドを使用して、システム上で実行中のすべてのプロセスを表示します。
$ ps [-efc] |
|
ps |
ログインセッションに関連するプロセスのみを表示する |
|
-ef |
システム上で実行中のすべてのプロセスに関する詳細情報を表示する |
|
-c |
プロセススケジューラ情報を表示する |
次の例は、オプションを指定しないときの ps コマンドからの出力を示します。
$ ps PID TTY TIME COMD 1664 pts/4 0:06 csh 2081 pts/4 0:00 ps |
次の例は、ps -ef の出力を示します。この出力例は、システムのブート時に最初に実行されたプロセスが sched (スワッパ) であり、それに続いて init プロセス、pageout の順に実行されたことを示しています。
$ ps -ef
UID PID PPID C STIME TTY TIME CMD
root 0 0 0 Dec 20 ? 0:17 sched
root 1 0 0 Dec 20 ? 0:00 /etc/init -
root 2 0 0 Dec 20 ? 0:00 pageout
root 3 0 0 Dec 20 ? 4:20 fsflush
root 374 367 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/lib/saf/ttymon
root 367 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/lib/saf/sac -t 300
root 126 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/sbin/rpcbind
root 54 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/lib/sysevent/syseventd
root 59 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/lib/picl/picld
root 178 1 0 Dec 20 ? 0:03 /usr/lib/autofs/automountd
root 129 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/sbin/keyserv
root 213 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/lib/lpsched
root 154 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/sbin/inetd -s
root 139 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/lib/netsvc/yp/ypbind ...
root 191 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/sbin/syslogd
root 208 1 0 Dec 20 ? 0:02 /usr/sbin/nscd
root 193 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/sbin/cron
root 174 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/lib/nfs/lockd
daemon 175 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/lib/nfs/statd
root 376 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/lib/ssh/sshd
root 226 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/lib/power/powerd
root 315 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/lib/nfs/mountd
root 237 1 0 Dec 20 ? 0:00 /usr/lib/utmpd
.
.
.
|
/usr/proc/bin ディレクトリ内のプロセスツールを使用すると、/proc にあるプロセスに関する詳細情報を表示できます。/proc ディレクトリは、プロセスファイルシステム (PROCFS) とも呼ばれます。アクティブなプロセスのイメージは、その プロセスID 番号を使って /proc に格納されます。
プロセスツールは ps コマンドの一部のオプションに似ていますが、このツールから提供される出力の方が詳細です。プロセスツールには次の機能があります。
/usr/proc/bin ディレクトリに入っているいくつかのプロセスツールコマンドを使用すると、アクティブなプロセスに関する技術的な情報の詳細を表示したり、そのプロセスを制御したりできます。表 23-3 に一部の /proc ツールを示します。
プロセスが無限ループ内でトラップされた場合や、実行時間が長すぎる場合は、プロセスを終了 (kill) できます。pkill コマンドを使用してプロセスを終了する方 法については、第 23 章「システムプロセスの管理 (手順)」を参照してください。
/proc ファイルシステムは、状態情報と制御機能のためのサブディレクトリを含むディレクトリ階層です。
/proc ファイルシステムは、ウォッチポイント機能も提供します。この機能は、プロセスのアドレス領域の個々のページの読み取り権または書き込み権を再マップするために使用されます。この機能は制限がなく、MT-safe です。
デバッグ用ツールは、/proc の新しいウォッチポイント機能を使用するように変更されています。つまり、ウォッチポイントプロセス全体がより高速になったためです。
dbx デバッグ用ツールを使用してウォッチポイントを設定するときの次の制限は取り除かれました。
SPARC レジスタウィンドウのため、スタック上のローカル変数にウォッチポイントを設定する。
マルチスレッド化されたプロセスにウォッチポイントを設定する。
詳細については、proc(4)、core(4)、および mdb(1) のマニュアルページを参照してください。
表 23-3 /usr/proc/bin ツール|
プロセスツール |
説明 |
|---|---|
|
pcred |
プロセスの資格情報を表示する |
|
pfiles |
プロセス内で開いているファイルに関する fstat 情報と fcntl 情報を報告する |
|
pflags |
/proc 追跡フラグ、保留状態のシグナルと保持状態のシグナル、他の状態情報を出力する |
|
pldd |
プロセスにリンクされている動的ライブラリを表示する |
|
pmap |
各プロセスのアドレス空間マップを表示する |
|
psig |
各プロセスのシグナルの動作とハンドラを表示する |
|
prun |
各プロセスを開始する |
|
pstack |
各プロセスの 16 進シンボリックスタックトレースを出力する |
|
pstop |
各プロセスを停止する |
|
ptime |
microstate アカウントを使用してプロセスの時間を測定する |
|
ptree |
プロセスを含むプロセスツリーを表示する |
|
pwait |
プロセス終了後の状態情報を表示する |
|
pwdx |
プロセスの現在の作業ディレクトリを表示する |
詳細については、proc(1) のマニュアルページを参照してください。
Solaris 9 より前のリリースでは、長いコマンド名を入力しなくても済むようにするには、プロセスツールディレクトリを PATH 変数に追加してください。これにより、各ファイル名の最後の部分 (たとえば、/usr/proc/bin/pwdx ではなく pwdx) を入力するだけで、プロセスツールを実行できます。
詳細を表示したいプロセスのプロセス ID を表示します。
# pgrep process |
process は、詳細を表示したいプロセスの名前です。
プロセス ID は、出力の第 1 列目に表示されます。
表示したいプロセス情報を表示します。
# /usr/proc/bin/pcommand pid |
|
pcommand |
実行したいプロセスツールコマンド。表 23-3 を参照 |
|
pid |
プロセス ID |
次の例は、プロセスツールコマンドを使用して lpsched プロセスに関する詳細情報を表示する方法を示しています。まず、長いプロセスツールコマンドを入力しなくてもすむように、/usr/proc/bin パスが定義されています。次に、lpsched プロセスの ID が表示されています。最後に、3 つのプロセスツールコマンドからの出力が表示されています。
# PATH=$PATH:/usr/proc/bin
# export PATH 1
# pgrep lpsched 2
213
# pwdx 213 3
213: /
# ptree 213 4
213 /usr/lib/lpsched
# pfiles 213 5
213: /usr/lib/lpsched
Current rlimit: 4096 file descriptors
0: S_IFIFO mode:0000 dev:270,0 ino:67 uid:0 gid:0 size:0
O_RDWR
1: S_IFIFO mode:0000 dev:270,0 ino:67 uid:0 gid:0 size:0
O_RDWR
3: S_IFCHR mode:0666 dev:136,0 ino:35882 uid:0 gid:3 rdev:21,0
O_WRONLY FD_CLOEXEC
4: S_IFDOOR mode:0444 dev:275,0 ino:18526 uid:0 gid:0 size:0
O_RDONLY|O_LARGEFILE FD_CLOEXEC door to nscd[208]
5: S_IFREG mode:0664 dev:136,0 ino:64648 uid:71 gid:8 size:0
O_WRONLY
|
/usr/proc/bin ディレクトリを PATH 変数に追加します。
lpsched のプロセス ID を表示します。
lpsched の現在の作業ディレクトリを表示します。
lpsched が入っているプロセスツリーを表示します。
fstat と fcntl の情報を表示します。
制御するプロセスのプロセス ID を表示します。
# pgrep process |
process は、制御するプロセスの名前です。
プロセスの ID は、出力の第 1 列目に表示されます。
適切な /usr/proc/bin コマンドを使用してプロセスを制御します。
# /usr/proc/bin/pcommand pid |
|
pcommand |
実行したいプロセスツールコマンド。表 23-3 を参照 |
|
pid |
プロセス ID |
プロセス状態を確認します。
# ps -fe | grep PID |
次の例は、プロセスツールを使用して dtpad を停止し再開する方法を示しています。
# PATH=$PATH:/usr/proc/bin # export PATH 1 # pgrep dtpad 2 2921 # pstop 2921 3 # prun 2921 4 |
/usr/proc/bin ディレクトリを PATH 変数に追加する
dtpad のプロセス ID を表示する
dtpad プロセスを停止する
dtpad プロセスを再開する
プロセスを強制的に終了 (kill) しなければならない場合があります。プロセスが無限ループに入っていたり、大きいジョブを開始したが完了する前に停止したい場合があります。所有しているプロセスであれば、どれでも終了できます。また、スーパーユーザーはプロセス ID が 0、1、2、3、4 のものを除き、システム上のどんなプロセスでも終了できます。プロセス ID が 0、1、2、3、4 のプロセスを終了させると、システムがクラッシュする可能性があります。
詳細については、pgrep(1) のマニュアルページを参照してください。
(省略可能) 別のユーザーが所有するプロセスを終了するには、スーパーユーザーになります。
停止するプロセスのプロセス ID を表示します。
$ pgrep process |
process は、詳細を表示するプロセスの名前です。
プロセスの ID は、出力の第 1 列目に表示されます。
プロセスを停止します。
$ pkill [-9] process |
|
-9 |
プロセスを確実に終了させる |
|
process |
停止するプロセスの名前 |
プロセスが停止したことを確認します。
$ pgrep process |
次のリストは、システム上で構成されるクラスと、タイムシェアリングクラスのユーザー優先順位の範囲です。クラスの種類は次のとおりです。
プロセスのスケジュール優先順位とは、プロセススケジューラによって割り当てられる優先順位のことです。これらの優先順位は、スケジューラのスケジュールポリシーに従って割り当てられます。dispadmin コマンドを使用すると、デフォルトのスケジュールポリシーを表示できます。
priocntl コマンドを使用して、プロセスを優先順位クラスに割り当てて、プロセスの優先順位を管理できます。priocntl コマンドを使用してプロセスを管理する手順については、「プロセスの優先順位を指定する方法」を参照してください。
priocntl -l コマンドを使用すると、プロセスのスケジューリングクラス と優先順位の範囲を表示できます。
$ priocntl -l |
次の例に priocntl -l コマンドからの出力を示します。
# priocntl -l
CONFIGURED CLASSES
==================
SYS (System Class)
TS (Time Sharing)
Configured TS User Priority Range: -60 through 60
IA (Interactive)
Configured IA User Priority Range: -60 through 60
RT (Real Time)
Maximum Configured RT Priority: 59
|
ps コマンドを使用して、プロセスのグローバル優先順位を表示できます。
$ ps -ecl |
グローバル優先順位は、PRI カラムの下に表示されます。
次の例は、ps -ecl コマンドの出力を示します。PRI カラム内のデータは、pageout プロセスが最上位の優先順位を持ち、sh が最下位の優先順位であることを示しています。
$ ps -ecl F S UID PID PPID CLS PRI ADDR SZ WCHAN TTY TIME COMD 19 T 0 0 0 SYS 96 f00d05a8 0 ? 0:03 sched 8 S 0 1 0 TS 50 ff0f4678 185 ff0f4848 ? 36:51 init 19 S 0 2 0 SYS 98 ff0f4018 0 f00c645c ? 0:01 pageout 19 S 0 3 0 SYS 60 ff0f5998 0 f00d0c68 ? 241:01 fsflush 8 S 0 269 1 TS 58 ff0f5338 303 ff49837e ? 0:07 sac 8 S 0 204 1 TS 43 ff2f6008 50 ff2f606e console 0:02 sh |
指定した優先順位でプロセスを起動します。
# priocntl -e -c class -m userlimit -p pri command-name |
|
-e |
コマンドを実行する |
|
-c class |
プロセスを実行する範囲のクラスを指定する。有効なクラスは TS (タイムシェアリング)、RT (リアルタイム)、IA (対話型)、FSS (フェアシェア)、または FX (固定優先順位) です。 |
|
-m userlimit |
-p オプションを使用するときに、優先順位を上下できる最大範囲を指定する |
|
-p pri command-name |
リアルタイムスレッド用に RT クラス内で相対優先順位を指定できるようにする。タイムシェアリングプロセスの場合は、-p オプションを使用すると -60 から +60 までのユーザー指定の優先順位を指定できる |
プロセス状態を確認します。
# ps -ecl | grep command-name |
次の例では、ユーザーが指定する最上位の優先順位を使用して find コマンドを開始します。
# priocntl -e -c TS -m 60 -p 60 find . -name core -print # ps -ecl | grep find |
実行中のタイムシェアリングプロセスのスケジューリングパラメータを変更します。
# priocntl -s -m userlimit [-p userpriority] -i idtype idlist |
|
-s |
ユーザー優先順位の範囲について上限を設定し、現在の優先順位を変更する |
|
-m userlimit |
-p オプションを使用するときに、優先順位を上下できる最大範囲を指定する |
|
-p userpriority |
優先順位を指定する |
|
-i idtype idlist |
idtype と idlist の組み合わせを使用してプロセスを識別する。idtype では PID や UID など、ID のタイプを指定する。idlist を使用して、pid または UID のリストを識別する |
プロセス状態を確認します。
# ps -ecl | grep idlist |
次の例では、500 ミリ秒のタイムスライス、クラス RT 内の優先順位 20、グローバル優先順位 120 を指定して、コマンドを実行します。
# priocntl -e -c RT -t 500 -p 20 myprog # ps -ecl | grep myprog |
プロセスをリアルタイムプロセスに変更したり、リアルタイムプロセスから変更したりするには、ユーザーはスーパーユーザーであるか、リアルタイムシェル内で作業中でなければなりません。
プロセスのクラスを変更します。
# priocntl -s -c class -i idtype idlist |
|
-s |
ユーザー優先順位の範囲について上限を設定し、現在の優先順位を変更する |
|
-c class |
クラス TS またはクラス RT を指定して、プロセスのクラスを変更する |
|
-i idtype idlist |
idtype と idlist の組み合わせを使用してプロセスを識別する。idtype では PID や UID など、ID のタイプを指定する。idlist を使用して、pid または UID のリストを識別する |
プロセス状態を確認します。
# ps -ecl | grep idlist |
次の例では、ユーザー 15249 が所有するすべてのプロセスをリアルタイムプロセスに変更します。
# priocntl -s -c RT -i uid 15249 # ps -ecl | grep 15249 |
スーパーユーザーとしてユーザープロセスをリアルタイムクラスに変更すると、そのユーザーは priocntl -s を使用して、リアルタイムのスケジューリングパラメータを変更できません。
nice コマンドは、SunOS の旧バージョンとの下位互換性を保つためにのみサポートされます。priocntl コマンドを使用する方がプロセスを柔軟に管理できます。
プロセスの優先順位は、そのスケジュールクラスポリシーと nice 番号によって決定されます。各タイムシェアリングプロセスは、グローバル優先順位を持っています。グローバル優先順位は、ユーザーが指定した優先順位 (nice コマンドまたは priocntl コマンドの影響を受ける) とシステムで計算された優先順位を加算して算出されます。
プロセスの実行優先順位番号は、オペレーティングシステムによって割り当てられ、スケジュールクラス、使用される CPU 時間、nice 値 (タイムシェアリングプロセスの場合) などの複数の要素によって決定されます。
各タイムシェアリングプロセスは、親プロセスから継承したデフォルトの nice 番号で起動します。nice 値は、ps レポートの NI カラムに表示されます。
ユーザーは、自分が与える nice 番号優先順位を大きくしてプロセスの優先順位を下げることができます。ただし、nice 番号を小さくしてプロセスの優先順位を上げることができるのは、スーパーユーザー (または root) だけです。これは、ユーザーが各自のプロセスの優先順位を大きくして CPU の独占比率を高めるのを防ぐためです。
nice 番号の範囲は 0 から +40 までで、0 が最上位の優先順位となります。デフォルト値は 20 です。nice コマンドには利用できるバージョンが 2 つあり、一方は標準バージョンの /usr/bin/nice で、他方は C シェルの一部となっているバージョンです。
nice 番号を変更して、コマンドやプロセスの優先順位を変更できます。プロセスの優先順位を下げるには、次のコマンドを使用します。
|
/usr/bin/nice command-name |
nice 番号を 4 単位増やす (デフォルト) |
|
/usr/bin/nice +4 command-name |
nice 番号を 4 単位増やす |
|
/usr/bin/nice -10 command-name |
nice 番号を 10 単位増やす |
第 1 と第 2 のコマンドは、nice 番号を 4 単位増やします (デフォルト)。第 3 のコマンドは、nice 番号を 10 単位増やします。3 つのすべてのコマンドは、プロセスの優先順位を下げます。
次のコマンドは、nice 番号を小さくしてコマンドの優先順位を上げます。
プロセスの優先順位を上げるには、次のいずれかを使用します。
|
/usr/bin/nice -10 command-name |
nice 番号を 10 単位小さくしてコマンドの優先順位を上げる。 |
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/usr/bin/nice --10 command-name |
nice 番号を 10 単位小さくしてコマンドの優先順位を上げる。最初のマイナス記号はオプション記号です。2 番目のマイナス記号は負の数を表します。 |
同じユーザーが所有する複数の同じジョブがないかどうかを調べます。ジョブが終了するまで待たずに多数のバックグラウンドジョブを起動するスクリプトを実行した場合に、この問題が発生することがあります。
CPU 時間が大量に増えているプロセスがないかどうかを調べます。この問題を調べるには、ps 出力の TIME フィールドを確認します。そのプロセスが無限ループに入っている可能性があります。
実行中のプロセスの優先順位が高すぎないかどうかを調べます。ps -c コマンドを使用して CLS フィールドを調べると、各プロセスのスケジューラクラスが表示されます。リアルタイム (RT) プロセスとして実行中のプロセスが CPU を独占している可能性があります。また、nice 値の大きいタイムシェアリング (TS) プロセスがないかどうかを調べます。スーパーユーザー特権を持つユーザーが、このプロセ スの優先順位を上げすぎた可能性があります。システム管理者は、nice コマンドを使用して優先順位を下げることができます。
制御がきかなくなったプロセスを調べます。このようなプロセスは、CPU 時間の使用が継続的に増加していきます。プロセスが開始 (STIME) されたときに調べるか、しばらくの間 CPU 時間 (TIME) が累計されるのを観察していると、この問題が発生しているかどうかを判断できます。