Solaris のシステム管理 (資源管理とネットワークサービス)

ハードウェアコンポーネント

メールの構成に必要な 3 つの要素は、単一のシステムによって提供することも個別のシステムによって提供することもできます。

ユーザーがドメイン外のネットワークと通信をするためには、4 番目の要素であるメールゲートウェイを追加する必要があります。詳細は、メールゲートウェイを参照してください。次の節では各ハードウェアコンポーネントについて説明しています。

メールホスト

メールホスト」は、ネットワークのメインのメールマシンに指定するマシンです。メールホストはサイトにおいて、他のシステムでは配信できないメールを転送するためのマシンになります。hosts データベースにシステムをメールホストとして指定するには、ローカルの /etc/hosts ファイルか、ネームサービスのホストファイルで、IP アドレスの右に mailhost を追加します。メールホストシステムでは、main.cf ファイルもメール構成ファイルとして使用する必要があります。作業手順については、第 25 章「メールサービス (手順)」メールホストを設定する方法を参照してください。

メールホストとして適切なのは、ローカルエリアネットワーク上のシステムで、電話回線に PPP または UUCP リンクを設定するためのモデムがあるものです。もう 1 つの候補は、ネットワークからグローバルなインターネットネットワークへのルーターとして構成されたシステムです。詳細は、第 29 章「Solaris PPP 4.0 (概要)」第 38 章「UUCP (概要)」、およびSolaris のシステム管理 (IP サービス)』の「ルーターの構成」を参照してください。ローカルネットワークのどのシステムにもモデムがない場合は、その中の 1 つをメールホストに指定します。

サイトの中には、タイムシェアリング構成でネットワークに接続されていないスタンドアロンのマシンを使用するものがあります。つまり、スタンドアロンのマシンが、シリアルポートに接続された端末として機能する場合です。このような構成では、スタンドアロンのシステムを 1 つのシステムネットワークのメールホストに指定することで、電子メールを設定できます。第 24 章「メールサービス (概要)」ハードウェアコンポーネントの概要に、典型的な電子メール構成を示す図があります。

メールサーバー

メールボックス」は、特定のユーザーの電子メールを含む単一のファイルです。メールは、ローカルマシンまたはリモートサーバーのユーザーのメールボックスが存在するシステムに配信されます。「メールサーバー」は、/var/mail ディレクトリにユーザーのメールボックスを保持しているいずれかのシステムになります。作業手順については、第 25 章「メールサービス (手順)」メールサーバーを設定する方法を参照してください。

メールサーバーはクライアントからすべてのメールをルーティングします。クライアントがメールを送信するときに、メールサーバーは配信のためそのメールをキューに入れます。メールがキューに入れられたら、ユーザーはこれらのメールメッセージを失わずに、クライアントをリブートしたり、電源を切ったりすることができます。受信者がクライアントからメールを受け取ると、メッセージの「From」行のパスには、メールサーバー名が含まれます。受信者が応答すると、その応答はユーザーのメールボックスに送られます。メールサーバーとして適しているのは、ユーザーにホームディレクトリを提供するシステムか、定期的にバックアップされるシステムです。

メールサーバーがユーザーのローカルシステムでない場合は、構成内で NFS ソフトウェアを使用するユーザーは、/etc/vfstab ファイル (root アクセスがある場合) を使用するか、オートマウンタを使用して、/var/mail ディレクトリをマウントできます。NFS サポートが利用できない場合、ユーザーはサーバーにログインしてメールを読み込めます。

ネットワーク上のユーザーが、オーディオファイル、DTP システムからのファイルなど他の形式のファイルを送信する場合は、メールボックスのメールサーバーには、さらに多くの領域を割り当てる必要があります。

全メールボックス用に 1 台のメールサーバーを設定する利点の 1 つは、バックアップが簡単になることです。メールが多くのシステムに分散しているとバックアップ作業が困難になる場合があります。1 台のサーバーに多くのメールボックスを保存する場合の短所は、サーバーに障害が発生した場合に多くのユーザーが影響を受けることです。ただし、十分なバックアップ機能を提供すれば、1 台のサーバーを採用する価値があります。

メールクライアント

「メールクライアント」は、メールサーバーでメールを受信し、ローカルの /var/mail のないシステムです。このような構成は、リモートモードと呼ばれます。リモートモードは、デフォルトでは /etc/mail/subsidiary.cf で使用することができます。

メールクライアントには、/etc/vfstab ファイルに適切なエントリがあり、メールサーバーからメールボックスをマウントするマウント先があることを確認する必要があります。またクライアントの別名の宛先が、クライアント名ではなく、メールサーバーのホスト名になっていることを確認してください。作業手順については、第 25 章「メールサービス (手順)」メールクライアントを設定する方法を参照してください。

メールゲートウェイ

「メールゲートウェイ」は、異なる通信プロトコルを実行するネットワーク間の接続を処理したり、同じプロトコルを使用する異なるネットワーク間の通信を処理するマシンです。たとえば、メールゲートウェイでは、SNA (Systems Network Architecture) プロトコルセットを実行するネットワークに、TCP/IP ネットワークを接続する場合もあります。

設定のもっとも簡単なメールゲートウェイは、同じプロトコルかメールプログラムを使用する 2 つのネットワークを接続するものです。このシステムでは、sendmail がドメインで受信者を見つけられないアドレスのあるメールを処理します。メールゲートウェイがある場合、sendmail はこれを使用して、ドメイン外でメールの送受信を行います。

2 つのネットワーク間には、次の図に示すように内容の異なるメールプログラムを使ってメールゲートウェイを設定できます。この構成をサポートするには、メールゲートウェイシステムで sendmail.cf ファイルをカスタマイズする必要がありますが、これは困難で時間のかかる作業になる場合もあります。

図 26-1 異なる通信プロトコル間のゲートウェイ

この図は、異なるメールプログラムを使用する 2 つのメールゲートウェイを示しています。

メールゲートウェイを設定する場合に、必要とするものにもっとも近いゲートウェイ構成ファイルを見つけ、状況に合わせて修正する必要があります。

インターネットに接続できるマシンがある場合は、そのマシンをメールゲートウェイとして構成できます。メールゲートウェイを構成するときは、まずサイトのセキュリティ要件を慎重に考慮する必要があります。社内ネットワークを外部と接続するには、ファイアウォールゲートウェイを構築し、それをメールゲートウェイとして設定する必要がある場合があります。作業手順については、第 25 章「メールサービス (手順)」メールゲートウェイを設定する方法を参照してください。