Solaris のシステム管理 (資源管理とネットワークサービス)

autofs がクライアント用のもっとも近い読み取り専用ファイルを選択する方法 (複数ロケーション)

以下は、直接マップの例です。


/usr/local          -ro \
   /bin                   ivy:/export/local/sun4\
   /share                 ivy:/export/local/share\
   /src                   ivy:/export/local/src
/usr/man            -ro   oak:/usr/man \
                          rose:/usr/man \
                          willow:/usr/man
/usr/games          -ro   peach:/usr/games
/usr/spool/news     -ro   pine:/usr/spool/news \
                          willow:/var/spool/news 

マウントポイント /usr/man および /usr/spool/news には複数の場所があり、/usr/man のマウントポイントは 3 つ、/usr/spool/news のマウントポイントは 2 つの場所が記述されています。このような場合、複製された場所のどこからマウントしてもユーザーは同じサービスを受けられます。ユーザーの書き込みまたは変更が可能ならば、その変更をロケーション全体で管理しなければならなくなるので、この手順は、読み取り専用のファイルシステムをマウントするときにだけ意味があります。あるときに、あるサーバー上のファイルを変更し、またすぐに別のサーバー上で「同じ」ファイルを変更しなければならないとしたら、たいへん面倒な作業になります。この利点は、もっとも利用しやすいサーバーが、そのユーザーの手をまったく必要としないで自動的にマウントされるということです。

ファイルシステムを複製として設定してあると (複製されたファイルシステムとは を参照)、クライアントはフェイルオーバー機能を使用できます。最適なサーバーが自動的に決定されるだけでなく、そのサーバーが使用できなくなるとクライアントは自動的に 2 番目に適したサーバーを使います。フェイルオーバー機能は、Solaris 2.6 の新機能です。

複製として設定するのに適しているファイルシステムの例は、マニュアルページです。大規模なネットワークでは、複数のサーバーがマニュアルページをエクスポートできます。どのサーバーからマニュアルページをマウントしても、そのサーバーが動作しており、しかもそのファイルシステムをエクスポートしているかぎり、問題ありません。上の例では、複数のマウント位置は、マップエントリ内のマウント位置のリストになっています。


/usr/man -ro oak:/usr/man rose:/usr/man willow:/usr/man 

この例では、サーバー oakrosewillow のどれからでもマニュアルページをマウントできます。どのサーバーが最適であるかは、次のいくつかの要素によって決まります。

順位を決定するときには、NFS バージョン 2 と NFS バージョン 3 のプロトコルをサポートしているサーバーの数が数えられます。サポートしているサーバーの数が多いプロトコルがデフォルトになります。これによって、クライアントにとっては利用できるサーバーの数が最大になります。

プロトコルのバージョンが同じサーバーの組の中で数がもっとも多いものがわかると、サーバーのリストが距離によってソートされます。ローカルサブネット上のサーバーには、リモートサブネット上のサーバーよりも高い優先順位が付けられます。もっとも近いサーバーが優先されることにより、待ち時間が短縮されネットワークトラフィックは軽減されます。図 16–3 に、サーバーとの距離を示します。

図 16-3 サーバーとの距離

図。

ローカルサブネット上に同じプロトコルをサポートしているサーバーが複数あるときは、それぞれのサーバーに接続する時間が計測され、速いものが使用されます。優先順位には、重み付けも関係します (autofs と重み付け を参照してください)。

バージョン 3 のサーバーの方が多いと、優先順位の決定は複雑になります。通常、ローカルサブネット上のサーバーはリモートサブネット上のサーバーよりも優先されます。バージョン 2 のサーバーがあり、それがもっとも近いバージョン 3 サーバーよりも近いと状況が複雑になる可能性があります。ローカルサブネットにバージョン 2 サーバーがあり、もっとも近いバージョン 3 サーバーがリモートサブネット上にあると、バージョン 2 サーバーが優先されます。このことは、バージョン 3 サーバーの方がバージョン 2 サーバーよりも多い場合にしかチェックされません。バージョン 2 サーバーの方が多いと、バージョン 2 サーバーしか選択されません。

フェイルオーバー機能を指定していると、この優先順位はマウント時に 1 回、マウントするサーバーを選択するときにチェックされ、その後は選択されたサーバーが使用できなくなるたびにチェックされます。複数の場所を指定しておくと、個々のサーバーが一時的にファイルシステムをエクスポートできないときに便利です。

多くのサブネットを持つ大規模なネットワークでは、この機能は特に便利です。autofs は最も近いサーバーを選択するため、NFS のネットワークトラフィックをローカルネットワークセグメントに制限します。複数のネットワークインタフェースを持つサーバーの場合は、それぞれのインタフェースが別々のサーバーであるとみなして、各ネットワークインタフェースに対応付けられているホスト名を指定します。autofs はそのクライアントにいちばん近いインタフェースを選択します。

autofs と重み付け

距離のレベルが同じサーバーから 1 つを選択するために、autofs マップに重み付けの値を追加することができます。次のような例があります。


/usr/man -ro oak,rose(1),willow(2):/usr/man

括弧内の数値が重み付けを表します。重み付けのないサーバーの値はゼロであり、選択される可能性が最高になります。重み付けの値が大きいほど、そのサーバーが選択される可能性は低くなります。


注 -

重み付けは、サーバーの選択に関係する要素の中でもっとも小さい影響力しかありません。ネットワーク上の距離が同じサーバーの間で選択を行う場合に考慮されるだけです。