この章では、システムのシャットダウンとブートについて概要を説明します。Solaris オペレーティングシステムは、電子メールとネットワークリソースをいつでも利用できるように、停止することなく動作するように設計されています。しかし、システム構成の変更、定期保守、停電などの理由で、システムをシャットダウンまたはリブートしなければならない場合があります。
この章の内容は次のとおりです。
この節では、Solaris におけるシステムのシャットダウンとブートに関する新機能について説明します。
PXE (Preboot Execution Environment) ネットワーク起動プロトコルをサポートしている x86 システムでは、Solaris ブートフロッピーディスクを使用しなくても、ネットワークから直接 Solaris 9 オペレーティング環境 (x86 プラットフォーム版) をブートできます。PXE ネットワークブートは、Intel の PXE 仕様を実装しているデバイスでのみ動作します。
システム BIOS またはネットワークアダプタ BIOS のどちらか一方、またはその両方の BIOS 設定プログラムを使うことによって、クライアントシステム上で PXE ネットワークブートを使用できるようにします。いくつかのシステムでは、他のデバイスからのブートよりも先にネットワークブートが実行されるように、ブートデバイスの優先順位を調整する必要があります。各設定プログラムに関しては、製造業者のマニュアルを参照するか、またはブート中に表示される設定プログラムの指示を参照してください。
PXE 対応ネットワークアダプタの中には、ブート時にしばらく表示されるプロンプトに対して特定のキーを押すと、PXE ブートを実行する機能を持つものがあります。この機能は、PXE の設定を変更する必要がないので、通常はディスクドライブからブートを実行するシステムのインストールブートにおいて PXE を使用する場合に適しています。アダプタにこの機能がない場合は、システムのインストール後に行われるリブート時に、BIOS の設定で PXE を使用しないように設定してください。システムがディスクドライブからブートするようになります。
一部の初期バージョンの PXE ファームウェアでは、Solaris システムをブートすることができません。このようなファームウェアを使用する場合、システムがブートサーバーから PXE ネットワークブートストラッププログラムを読み込むことはできますが、ブートストラップはパケットを転送しません。この問題が発生した場合は、アダプタの PXE ファームウェアをアップグレードしてください。ファームウェアのアップグレードに関する情報は、アダプタの製造業者の Web サイトから入手してください。詳細については、elxl(7D) および iprb(7D) のマニュアルページを参照してください。
ブートフロッピーディスクを使用するか使用しないかに関わらず、x86 システムのブートについては、x86: システムをネットワークからブートする方法を参照してください。
システムをシャットダウンおよびブートする手順については、次を参照してください。
シャットダウンとブート作業 |
参照先 |
---|---|
SPARC システムまたは x86 システムのシャットダウン | |
SPARC システムのブート | |
x86 システムのブート | |
電源管理ソフトウェアによる SPARC システムの管理 |
power.conf(4) および pmconfig(1M) の各マニュアルページ |
この節では、シャットダウンとブートに関する用語について説明します。
実行レベルと init 状態 – 「実行レベル」とは、システムの状態を表す文字または数字のことで、どのシステムサービスを使用できるのかを示します。システムは常に定義済み実行レベルの 1 つで動作します。実行レベルを変更するために init プロセスが使用されるため、実行レベルは「init 状態」と呼ばれることもあります。システム管理者は、init(1M) コマンドを使用して、実行レベルを変更します。このマニュアルでは、init 状態を実行レベルと呼びます。
実行レベルの詳細については、実行レベルを参照してください。
ブートタイプ – 「ブートタイプ」とはシステムのブート方法を表します。次のようなブートタイプがあります。
対話式ブート – システムのブート方法に関する情報 (カーネルやデバイスのパス名など) を入力するプロンプトが表示される
再構成用ブート – システムが再構成され、新しく追加したハードウェアや新しい擬似デバイスがサポートされる
回復ブート – システムがハング状態になったとき、無効なエントリがあるためシステムが正常にブートできないとき、またはユーザーがログインできないときに使用する
システムをシャットダウンするときは次の点に注意してください。
システムのシャットダウンには、init および shutdown コマンドを使用します。これらのコマンドは、すべてのシステムプロセスとサービスを正常に終了させてからシャットダウンします。
サーバーをシャットダウンする場合は、shutdown コマンドを使用してください。shutdown コマンドは、シャットダウンを実行する前に、サーバーにログインしているユーザーやサーバーのリソースをマウントしているシステムにシャットダウンを通知します。システムのシャットダウンについては、ユーザーが予定を立てられるようあらかじめ電子メールで知らせておくようにします。
shutdown または init コマンドを使用してシステムをシャットダウンするには、スーパーユーザー権限が必要です。
shutdown および init どちらのコマンドも実行レベルを引数に指定します。最もよく使用される実行レベルは次の 3 つです。
実行レベル 3 – すべてのシステムリソースを使用でき、ユーザーもログインできる状態。デフォルトでは、システムをブートすると実行レベル 3 になります。通常の運用で使用されます。NFS リソースを共有できるマルチユーザーレベルとも呼ばれます。
実行レベル 6 – オペレーティングシステムを停止して、/etc/inittab ファイルの initdefault エントリに定義されている状態でリブートします。
実行レベル 0 – オペレーティングシステムがシャットダウンされ、安全に電源切断できる状態。システムの設置場所を変更したり、ハードウェアを追加または削除する場合は、システムを実行レベル 0 にする必要があります。
実行レベルの詳細については、第 11 章「実行レベルとブートファイル (手順)」を参照してください。
シャットダウン後にシステムをブートするには、SPARC システムの場合は、PROM レベルで boot コマンドを使用します。x86 システムの場合は、一次ブートサブシステムメニューで boot コマンドを使用します。
電源を切断した後に再投入すればシステムをリブートできます。ただし、この方法ではシステムサービスやプロセスが突然終了してしまうので、適切なシャットダウンとは言えません。緊急時のリブート以外には使用しないようにします。
SPARC システムと x86 システムとでは、ブート時に使用するハードウェアが異なります。これらのハードウェアの違いについては、第 15 章「ブートプロセス (参照情報)」を参照してください。
次のような場合に、システムをネットワークからブートする必要があります。
システムを最初にインストールする場合
システムをローカルディスクからブートできない場合
システムがディスクレスクライアントである場合
さらに、次の 2 つのネットワーク構成ブート方法も利用できます。
RARP (Reverse Address Resolution Protocol and ONC+ RPC Bootparams Protocol)
DHCP (Dynamic Host Configuration Protocol)
デフォルトのネットワークブート方法は RARP に設定されています。
ネットワーク経由でシステムをブートする方法については、次の表を参考にしてください。
ネットワークブート作業 |
参照先 |
---|---|
SPARC システムまたは SPARC ディスクレスクライアントのブート | |
x86 システムまたは x86 ディスクレスクライアントのブート | |
インストール時の DHCP クライアントのブート | |
DHCP マネージャを備えた DHCP クライアントの構成 |
表 10–1 に、システム管理作業とそれに伴って必要となるシャットダウンの種類を示します。
表 10–1 システムのシャットダウン
システムシャットダウンの理由 |
適切な実行レベル |
参照先 |
---|---|---|
停電のためシステムの電源を切断する |
実行レベル 0。安全に電源を切れる状態 | |
/etc/system ファイル内のカーネルパラメータを変更する |
実行レベル 6 (システムのリブート) | |
ファイルシステムを保守する (システムデータのバックアップや復元など) |
実行レベル S (シングルユーザーレベル) | |
/etc/system などのシステム構成ファイルを修正する |
システムをブートする場合を参照 |
なし |
システムにハードウェアを追加する (または、システムからハードウェアを削除する) |
再構成用ブート (ハードウェアを追加または削除したら電源を切断する) | |
ブート失敗の原因となっていた重要なシステムファイルを修正する |
システムをブートする場合を参照 |
なし |
カーネルデバッガ (kadb) をブートして、システムの障害を調査する |
実行レベル 0 (可能な場合) | |
ハング状態から回復させ、クラッシュダンプを強制する |
システムをブートする場合を参照 |
なし |
サーバーまたはスタンドアロンシステムのシャットダウンの例については、第 12 章「システムのシャットダウン (手順)」を参照してください。
次の表に、システム管理作業とそれに伴って必要となるブートタイプを示します。
表 10–2 システムのブート
システムリブートの理由 |
適切なブートタイプ |
SPARC のブート手順の参照先 |
x86 のブート手順の参照先 |
---|---|---|---|
停電のためシステムの電源を切断する |
システムの電源を再投入する | ||
/etc/system ファイル内のカーネルパラメータを変更する |
システムを実行レベル 3 でリブートする (NFS リソースを共有できるマルチユーザーレベル) | ||
ファイルシステムを保守する (システムデータのバックアップや復元など) |
実行レベル S で Control + D を押して、システムを実行レベル 3 に戻す | ||
/etc/system などのシステム構成ファイルを修正する |
対話式ブート | ||
システムにハードウェアを追加する (または、システムからハードウェアを削除する) |
再構成ブート (ハードウェアを追加または削除したら電源を投入する) | ||
カーネルデバッガ (kadb) をブートして、システムの障害を調査する |
kabd をブートする | ||
ブート失敗の原因となっていた重要なシステムファイルを修正する |
回復ブート | ||
ハング状態から回復させ、クラッシュダンプを強制する |
回復ブート |
システムブートの例については、第 13 章「SPARC: システムのブート (手順)」または第 14 章「x86: システムのブート (手順)」を参照してください。