Solaris 9 12/03 インストールガイド

第 3 章 Solaris インストール方法の選択

この章では、Solaris をインストールする方法について説明します。Solaris オペレーティング環境では、インストールやアップグレードをいくつかの方法で行うことができます。それぞれのインストール方法には、特定のインストール要件やインストール環境を意図したさまざまな機能があります。したがって、インストール環境に最も適した方法を選択してください。

Solaris Web Start

Solaris DVD または Solaris INSTALLATION CD に含まれる Solaris Web Start インストールプログラムは、グラフィカルユーザーインタフェース (GUI) でも、コマンド行インタフェース (CLI) でも起動できます。Solaris Web Start では、Solaris ソフトウェアや追加ソフトウェアのインストールやアップグレードに必要な手順がステップごとに示されます。システム管理者は、デフォルトオプションを使ってインストールすることも、カスタマイズオプションを使って必要なソフトウェアだけをインストールすることもできます。

Solaris Web Start では、Solaris オペレーティング環境や UNIX の初心者であっても、インストールの際に先に進んだり前に戻って必要な変更を簡単に行うことができます。インストール作業は複数の画面に分かれており、各画面にはユーザーが選択できるようにデフォルトの値が表示されます。

Solaris Web Start プログラムでは情報を入力する必要があるため、ユーザーはインストールプログラムと対話方式で処理を進める必要があります。したがって、システムによってはインストールやアップグレードを行う際には、このインストール方法が最適であるとは限りません。多数のシステムを対象としたバッチインストールには、カスタム JumpStart かフラッシュインストール機能を使用してください。

詳細は、第 14 章「Solaris Web Start の使用」を参照してください。

Solaris suninstall プログラム

Solaris SOFTWARE 1 of 2 CD に含まれる Solaris suninstall プログラムは、コマンド行インタフェース (CLI) で動作します。Solaris suninstall プログラムでは、Solaris 9 ソフトウェアのインストールやアップグレードに必要な手順がステップごとに示されます。このインストール方法は、GUI を実行するのに十分なメモリーがなく、国際ロケールを使用している場合に便利です。

Solaris suninstall プログラムは、Solaris オペレーティング環境ソフトウェアをインストールするだけです。このプログラムは、サードパーティアップグレードやネットワーク上でダウンロードできるソフトウェアなどを認識できません。したがって、Solaris オペレーティング環境をインストールした後にサードパーティアプリケーションをインストールする必要があります。また、インストール時にはシステム構成情報を入力するように求められます。このため、複数のシステムにインストールする場合は、suninstall は最適とは言えません。サードパーティアプリケーションのインストールには Solaris Web Start プログラムを使用できます。多数のシステムを対象としたバッチインストールには、カスタム JumpStart かフラッシュインストール機能を使用してください。

詳細は、第 15 章「Solaris suninstall プログラムの使用」を参照してください。

カスタム JumpStart

カスタム JumpStart では、あらかじめ作成したプロファイルを使って、複数のシステムのインストールやアップグレードを自動的にかつ同時に行うことができます。プロファイルには、どのようにソフトウェアをインストールするかを定義します。さらに、インストール前とインストール後に実行する作業を、シェルスクリプトを使用して指定することができます。システムのインストールまたはアップグレードにどのプロファイルとスクリプトを使用するかを選択できます。カスタム JumpStart は、指定されたプロファイルとスクリプトに従ってシステムのインストールやアップグレードを行います。

Solaris オペレーティング環境に関する知識を持っていて、複数のシステムをインストールする必要がある場合には、カスタム JumpStart が最適であるかもしれません。インストールするシステムが 2、3 台だけの場合には、このインストール方法が最適であるとは限りません。カスタム JumpStart 環境の作成に時間がかかる可能性があるからです。オペレーティング環境に関する知識を持っていない場合や、少数のシステムにインストールを行う場合は、Solaris Web Start インストールプログラムを使用してください。

詳細は、第 23 章「カスタム JumpStart インストールの準備」を参照してください。

フラッシュインストール機能

フラッシュインストール機能では、マスターシステムにインストールする構成を使用して、多数のシステムにインストールすることができます。それには、マスターシステムのインストールと構成を行なったあとに、マスターシステムからフラッシュアーカイブを作成する必要があります。フラッシュアーカイブは、必要に応じていくつでも作成できます。それぞれのシステムにインストールする際に、使用するフラッシュアーカイブを選択します。このインストール方法では、同じソフトウェアと構成を持つ多数のシステムを効率的にインストールできます。

フラッシュアーカイブを使用しない Solaris インストール方法では、各 Solaris パッケージが個別にインストールされます。パッケージベースのインストールではパッケージごとにパッケージマップの更新が必要になるため、時間がかかります。フラッシュアーカイブによるインストールは、個々の Solaris パッケージをインストールする場合よりもずっと早く終わります。

どの Solaris インストール方法を使用する場合でも、フラッシュアーカイブの初期インストールを複製できます。Solaris Web Start と Solaris suninstall プログラムでは、インストールするフラッシュアーカイブを選択するように指示されます。カスタム JumpStart では、インストールするフラッシュアーカイブをプロファイルに指定します。Solaris Live Upgrade では、非アクティブブート環境にインストールするフラッシュアーカイブを指定します。

インストール済みのクローンシステムを更新する場合は、差分アーカイブを使用して相違部分だけをインストールできます。差分アーカイブには、2 つのシステムイメージの相違部分のみが含まれています。差分アーカイブをインストールするには、カスタム Jumpstart インストールか Solaris Live Upgrade を使用します。

複数のシステムに多くの異なる構成でインストールしたい場合には、システムごとにフラッシュアーカイブが必要になります。フラッシュアーカイブはファイルサイズが大きいため、大量のディスク容量が必要です。多数の異なるインストール構成が必要であったり、インストール構成を変更する柔軟性を残しておきたい場合には、カスタム JumpStart インストールを使用することを検討してください。また、JumpStart finish スクリプトまたは組み込み済みのフラッシュ配置後スクリプトを使用して、システム固有のカスタマイズを実行することも可能です。

初期インストールや更新にあたってのアーカイブのインストールやスクリプトの使用を含む、フラッシュインストール機能の概要は、第 17 章「フラッシュの概要と計画」を参照してください。

カスタム JumpStart を使用したアーカイブのインストール方法の詳細は、カスタム JumpStart インストールを使用して フラッシュアーカイブをインストールする方法を参照してください。

WAN ブートインストール

WAN ブートインストールでは、ハイパーテキストトランスポートプロトコル (HTTP) を使用して、広域ネットワーク (WAN) 経由でソフトウェアのブートとインストールを行うことができます。 WAN ブートを使用すると、インターネットなどの大規模なパブリックデータネットワークを介して Solaris オペレーティング環境をシステムにインストールできますが、これらのネットワークはインフラストラクチャの信頼性が低い場合があります。さまざまなセキュリティ機能を使ってデータの機密性とインストールイメージの完全性を保護できます。

WAN ブートインストールでは、暗号化されたフラッシュアーカイブをパブリックネットワークを介して転送し、リモートクライアントに対してカスタム JumpStart インストールを実行できます。非公開鍵を使用してデータの認証および暗号化を行うことにより、インストールの完全性を保護できます。デジタル認証を使用するようシステムを構成して、インストールデータとファイルを HTTPS 経由で転送することもできます。

WAN ブートインストールの概要と詳細については、 第 37 章「WAN ブートによる広域ネットワーク経由のインストール (トピック)」を参照してください。

Solaris Live Upgrade

Solaris Live Upgrade では、アクティブブート環境が稼動している間に複製ブート環境のアップグレードが行え、稼動中の環境のダウンタイムをなくすことができます。Solaris Live Upgrade は、CUI または CLI のどちらででも行えます。まず、複製ブート環境を作成する必要があります。複製ブート環境を作成した後で、このブート環境をアップグレードするか、あるいは、この非アクティブブート環境にフラッシュアーカイブまたは差分アーカイブをインストールできます。準備が整った時点で、この非アクティブブート環境をアクティブにします。次回のリブート時には、この非アクティブブート環境がアクティブブート環境に切り替わります。何か問題が発生する場合は、本来のブート環境をアクティブにしてリブートするだけで元どおりに復元できます。

詳しい説明と操作方法については、第 29 章「Solaris Live Upgrade (トピック)」を参照してください。

SPARC: ファクトリ JumpStart

ファクトリ JumpStart インストールでは、Solaris DVD または Solaris SOFTWARE 1 of 2 CD をドライブに挿入して、システムの電源を入れるだけで、新しい SPARC システムに Solaris ソフトウェアを自動的にインストールできます。その際、システムの機種とディスクサイズにもとづいてデフォルトのプロファイルが選択されます。システムにどのソフトウェアコンポーネントをインストールするかは、このプロファイルで決まります。システム構成情報を入力するように求められることはなく、インストールするソフトウェアを選択することはできません。

SPARC ベースの新しいシステムには、このインストール方法を使用する場合に必要な JumpStart ブートイメージがあらかじめインストールされています。古い SPARC ベースシステムの場合は、re-preinstall(1M) コマンドを使用すれば、JumpStart ブートイメージをシステムにインストールできます。x86 ベースのシステムでは、ファクトリ JumpStart インストールを使用することはできません。