この章では、Solaris 環境における USB (Universal Serial Bus) デバイスの概要を説明します。
この章の内容は次のとおりです。
Solaris 環境における USB デバイスの使用手順については、第8章「USB デバイスの使用 (手順)」を参照してください。
動的再構成およびホットプラグについての一般的な情報については、第6章「デバイスの動的構成 (手順)」を参照してください。
USB プリンタを構成する方法については、『Solaris のシステム管理 (上級編)』の「印刷の新機能」を参照してください。
ここでは、この Solaris リリースで拡張された USB デバイスの機能について説明します。
Solaris 9 12/03 リリースで導入された USBA フレームワークは、USB 1.1 デバイス用に開発されたものです。USBA 1.0 と呼ばれる新しいフレームワークは、USB 2.0 デバイスの高度な要件を満たすために開発されました。このフレームワークでは、USB 1.1 デバイスも使用できます。この Solaris リリースは、「二重フレームワーク」という機能で、両方のフレームワークに対応しています。 二重フレームワークは、従来のフレームワークから新しいフレームワークに簡単に移行するための機能です。従来の USBA フレームワークは、システムの USB 1.1 ポートに接続されたデバイスに対応し、新しい USBA 1.0 フレームワークは、システムの USB 2.0 ポートに接続されたデバイスに対応しています。Sun のマザーボードのポートはすべて USB 1.1 ポートですが、ほとんどの PCI カードのポートは USB 2.0 に対応しています。
USB 二重フレームワークの詳細については、http://www.sun.com/desktop/whitepapers.html を参照してください。
一方の USB フレームワーク用に作成されたドライバは、もう一方の USB フレームワークでは機能しません。Sun が提供している USB ドライバのほとんどには、それぞれのフレームワークに対応するバージョンがあります。
USB デバイスをポートに接続しようとすると、互換性の問題が発生することがあります。この問題は、ドライバがフレームワークと互換性がないために、そのデバイス用のドライバをフレームワークが認識しないために発生します。フレームワークが接続しようとしたドライバがそのフレームワークと互換性のないドライバである場合には、次のようなメッセージがコンソールに表示されます。
The driver for device binding name is not for USBA1.0 |
このメッセージは、Sun 以外のドライバ用のデバイスが USBA 1.0 フレームワークと互換性があり、そのデバイスが従来の USBA フレームワークがサポートしているポートに接続されている場合などに表示されます。USBA 1.0 フレームワークはそのデバイスを認識して適切なドライバに関連付けようとしますが、接続先のフレームワークと互換性がないためにそのドライバは拒否されます。
USB フレームワークの構成を確認する方法については、「USB デバイス情報を表示する方法 (prtconf)」を参照してください。
次の表に、Solaris がサポートしている USB 1.1 デバイスおよび USB 2.0 デバイスを示します。
|
Solaris 8 HW* リリース |
Solaris 9 リリース |
---|---|---|
USB 1.1 |
SPARC と x86 |
SPARC と x86 |
USB 1.1 オーディオデバイス |
USB 2.0 ハブではサポートされない |
USB 2.0 ハブではサポートされない |
USB 2.0 |
SPARC |
SPARC と x86 (Solaris 9 4/04) |
USB 2.0 オーディオデバイス |
サポートされない |
サポートされない |
USB 2.0 ストレージデバイス |
USB 2.0 ハブでサポートされる |
USB 2.0 ハブでサポートされる (Solaris 9 4/04) |
*Solaris 8 リリースではなく、Solaris 8 HW 5/03 以降の Solaris 8 HW リリースです。Solaris 8 HW 5/03 リリースの USB 二重フレームワークのパッチ番号は、109896 です。
Solaris 9 9/04 リリースでのみ、USB 2.0 ポートに接続されている USB 2.0 ハブ上で USB 1.1 デバイスが動作します。
次の表は、Sun SPARC ハードウェアがサポートしている USB の一覧です。
システムの種類 |
Solaris リリース |
サポートしている USB デバイスと速度 |
---|---|---|
Sun Blade 100、150、1000、および 2000 |
Solaris 9 4/04 リリースより前の Solaris 9 リリース、および Solaris HW 5/03 リリースより前の Solaris 8 リリース |
12 MB/秒のすべての USB デバイス |
Sun Blade 100、150、1000、および 2000 |
Solaris 9 4/04、および Solaris 8 HW 5/03 |
USB 1.1 デバイス、12 MB/秒 (任意の USB ポートに接続した場合) USB 2.0 デバイス、12 MB/秒 (マザーボードのポートに接続した場合) USB 2.0 デバイス、480 MB/秒 (拡張 PCI USB 2.0 カードのポートに接続した場合) |
Sun Blade 1500 および 2500 |
Solaris 9 4/04 および Solaris 8 HW 5/03 |
USB 1.1 デバイス、12 MB/秒 (任意の USB ポートに接続した場合) USB 2.0 デバイス、12 MB/秒 (マザーボードのポートに接続した場合) USB 2.0 デバイス、480 MB/秒 (PCI コンボカードのポートに接続した場合) |
その他の Sun SPARC PCI プラットフォーム |
Solaris 9 4/04 および Solaris 8 HW 5/03 |
USB 1.1 デバイス、12 MB/秒 USB 2.0 デバイス、480 MB/秒 (拡張 PCI USB 2.0 カードのポートに接続した場合) |
Solaris リリースで検証済みの PCI カードについては、次のサイトを参照してください。http://www.sun.com/io_technologies/usb.html
USB デバイスをサポートする Sun のプラットフォームは、次のとおりです。
USB 1.1 をサポートする OHCI ホストコントローラを搭載した次の SPARC システムは、ロースピードおよびフルスピードのデバイスをサポートします。
Solaris 8 または 9 リリースが動作する Sun BladeTM システム
Solaris 9 リリースが動作する NetraTM X 1/T1 および一部の Sun FireTM システム
Sun Blade 1500 や 2500 システムなど、OHCI および EHCI ホストコントローラを搭載した SPARC システムは、ハイスピードの USB 2.0 デバイス、およびロースピードとフルスピードの USB 1.1 デバイスをサポートします。Solaris 8 HW 5/03 リリースまたは Solaris 9 4/04 リリースが動作する PCI ベースの sun4u システムも含まれます (USB 2.0 PCI カードが搭載されている場合)。
Solaris 8 または Slaris 9 の x86 版で動作し、UHCI ホストコントローラを搭載した x86 ベースのシステムは、USB 1.1 をサポートします。
USB サポートの追加情報については、「USB デバイスの概要」を参照してください。
この Solaris リリースでは、次の USB 2.0 機能がサポートされます。
パフォーマンスの向上 USB 2.0 コントローラに接続されたデバイスの場合は、データのスループットが USB 1.1 デバイスと比較して最大で 40 倍速に向上します。
DVD やハードディスクなどの高速大容量ストレージデバイスにアクセスするときに、高速の USB プロトコルを利用できます。
互換性 1.0 および 1.1 デバイスおよびドライバとの下位互換性があるので、同じケーブル、コネクタ、およびソフトウェアインタフェースを使用できます。
USB デバイスおよび USB 用語については、「USB デバイスの概要」を参照してください。
USB 2.0 デバイスは、USB 2.0 仕様に準拠した高速デバイスです。USB 2.0 仕様については、 http://www.usb.org を参照してください。
この Solaris リリースの SPARC システムおよび x86 システムでは、たとえば、次の USB デバイスがサポートされます。
大容量ストレージデバイス CD-RW、ハードディスク、DVD、デジタルカメラ、Zip、フロッピーディスク、およびテープドライブ
キーボード、マウス、スピーカ、およびマイク
オーディオデバイス
この Solaris リリースで検証済みの USB デバイスをすべて確認するには、以下のサイトを参照してください。
http://www.sun.com/io_technologies/usb.html
それ以外のストレージデバイスでも、scsa2usb.conf ファイルを変更すれば使用できることがあります。詳細については、scsa2usb(7D) のマニュアルページを参照してください。
Solaris USB 2.0 デバイスでは、次の機能がサポートされます。
USB バス速度が、12 Mbps から 480 Mbps に向上しています。このため、USB 2.0 仕様をサポートするデバイスを USB 2.0 ポートに接続すると、対応する USB 1.1 デバイスに比べて速度が大幅に向上します。
USB 2.0 ポートは、SPARC システムでは次のように定義されています。
USB 2.0 PCI カード上のポート
USB 2.0 ポートに接続された USB 2.0 ハブ上のポート
USB 2.0 は、PCI ベースのすべての SPARC プラットフォーム上で Solaris Ready 認証済みです。USB 2.0 ポートを利用するには、USB 2.0 PCI カードが必要です。Solaris リリースで検証済みの USB 2.0 PCI カードについては、http://www.sun.com/io_technologies/usb.html を参照してください。
同じシステムで USB 1.1 と USB 2.0 デバイスを併用する場合でも、USB 1.1 デバイスは、従来と同様に動作します。
USB 2.0 デバイスは USB 1.x ポートでも動作しますが、USB 2.0 ポートに接続するとパフォーマンスが大幅に向上します。
ほとんどの USB 2.0 ホストコントローラには、1 つのハイスピード EHCI (Enhanced Host Controller) と、1 つ以上のロースピードまたはフルスピードの OHCI (OpenHCI Host Controller) が組み込まれたコントローラが用意されています。USB 2.0 ポートに接続されたデバイスは、USB 2.0 をサポートするかどうかに応じて、EHCI または OHCI コントローラに動的に割り当てられます。
USB 2.0 PCI カード上のポートに 接続された USB 2.0 ストレージデバイスのデバイス名は、以前の Solaris リリースで同じハードウェア構成で使用していた場合には、このリリースにアップグレードした後で変更されることがあります。この変更は、アップグレードによりこれらのデバイスが USB 2.0 デバイスとして認識され、制御が EHCI コントローラに引き継がれるために発生します。コントローラの番号 ( /dev/[r]dsk/cwtxdysz の w) は、それらのデバイスに合わせて変更されます。
USB 2.0 デバイスのサポートの詳細については、ehci(7D) および usba(7D) のマニュアルページを参照してください。
サポートされている最大ケーブル長は 5 m です。
延長ケーブルを使用しないでください。ケーブルを延長するには、最良の結果が得られるよう、自己電源供給方式のハブを使ってください。
詳細については、http://www.usb.org/channel/training/warning/ を参照してください。
バス電源供給方式のハブは、接続先の USB バスの電源を利用して、接続されているデバイスに電源を供給します。これらのハブの負荷が大きくなりすぎないように、十分に注意してください。これらのハブから接続先のデバイスに供給できる電源は限られているためです。
バス電源供給方式のハブは、カスケード接続しないでください。たとえば、バス電源供給方式のハブを別のバス電源供給方式のハブに接続しないでください。
キーボードやマウスなどの低速で消費電力の小さいデバイスを除いて、できるだけバス電源供給方式のデバイスをバス電源供給方式のハブに接続しないでください。ディスク、スピーカ、マイクなどの消費電力の大きいデバイスをバス電源供給方式のハブに接続すると、ハブに接続されたすべてのデバイスで電力が不足することがあります。この場合、デバイスが予期しない動作をすることがあります。
この Solaris リリースでは、すべての USB ストレージデバイスがリムーバブルメディアデバイスとしてアクセスされます。この変更には、次のような利点があります。
標準の MS-DOS または Windows (FAT) ファイルシステムを使用する USB ストレージデバイスがサポートされます。
format コマンドの代わりに、使いやすい rmformat コマンドを使用して、すべての USB ストレージデバイスをフォーマットしたり、パーティションを操作したりできます。format コマンドの機能が必要な場合は、format -e コマンドを使用してください。
fdisk 方式でパーティションを操作する必要がある場合は、fdisk コマンドを使用できます。
ルート権限を必要とする mount コマンドが必要なくなったため、ルート以外のユーザーでも USB ストレージデバイスにアクセスできます。デバイスは vold コマンドによって自動的にマウントされ、/rmdisk ディレクトリの下で利用できます。システムの停止中に新しいデバイスを接続した場合は、boot -r コマンドを使用して再構成ブートを実行し、そのデバイスを vold に認識させます。vold は、ホットプラグ対応のデバイスを自動的に認識しません。システムの稼働中に新しいデバイスを接続した場合は、vold を再起動してください。詳細については、vold(1M) および scsa2usb(7D) のマニュアルページを参照してください。
FAT ファイルシステムのディスクをマウントしてアクセスできます。たとえば、次のようになります。
mount -F pcfs /dev/dsk/c2t0d0s0:c /mnt |
LOG SENSE ページをサポートするデバイスを除いて、すべての USB ストレージデバイスの電源が管理されます。LOG SENSE ページを使用するデバイスは通常、USB-SCSI ブリッジデバイスを介して接続する SCSI デバイスです。以前の Solaris リリースでは、一部の USB ストレージデバイスはリムーバブルメディアとして認識されなかったため、電源管理の対象外でした。
USB 大容量ストレージデバイスでは、アプリケーションの動作が異なることがあります。USB ストレージデバイスでアプリケーションを使用するときには、次の点に考慮してください。
以前のリリースでは、フロッピーディスクや Zip ドライブなどの小容量のデバイスだけがリムーバブルメディアとして認識されていたため、アプリケーションがメディアのサイズを正しく認識しないことがあります。
メディアを取り出すことができないデバイス (ハードディスクドライブなど) に対して、メディアを取り出す要求を行うと、要求は成功しますが、何も実行されません。
以前の Solaris リリースの動作が必要な場合、つまり、すべての USB 大容量ストレージがリムーバブルメディアデバイスとして認識されるとは限らないようにするには、/kernel/drv/scsa2usb.conf ファイルを更新すれば、以前の動作を強制的に適用できます。
USB 大容量ストレージデバイスの使用方法の詳細については、scsa2usb(7D) のマニュアルページを参照してください。
USB 大容量ストレージデバイスを追加または削除するときに問題が発生した場合は、次のヒントを参考にしてください。
システムの停止中に USB デバイスを追加または削除した場合は、再構成ブートを実行する必要があります。
ok boot -r |
システムの稼働中に接続したデバイスにアクセスするときに、問題が発生した場合は、次のコマンドを実行してください。
# devfsadm |
保存停止モードでシステムの電力消費を抑えている場合は、デバイスを移動しないでください。詳細については、「SPARC: USB 電源管理」を参照してください。
アプリケーションがデバイスを使用しているときに、そのデバイスが取り外されて使用できなくなっている場合は、アプリケーションを停止してください。そのデバイスノードが削除されているかどうかを確認するには、 prtconf コマンドを使用します。
この節では、この Solaris リリースで拡張された USB ドライバの機能について説明します。
新しい汎用 USB ドライバ UNIX® 標準の read(2) および write(2) システムコールを使って、アプリケーションから USB デバイスのアクセスおよび操作を実行できるようになりました。特別なカーネルドライバを記述する必要はありません。次の機能が追加されています。
アプリケーションから raw デバイスのデータおよびステータスにアクセスできます。
制御転送、バルク転送、および割り込み (入力と出力) 転送がサポートされます。
詳細については、ugen(7D) のマニュアルページ、および次の Web サイトで USB DDK を参照してください。http://developers.sun.com/solaris/developer/support/driver/usb.html
Digi Edgeport USB のサポート シリアルポート変換デバイス用に複数の Digi Edgeport のサポートを提供します。
新しいデバイスは、/dev/term/[0-9]* および /dev/cua/[0-9]* としてアクセスします。
USB シリアルポートは、ローカルシリアルコンソールとして使用できない点を除き、ほかのシリアルポートと同様に使用できます。USB シリアルポートのデータが USB ポートを使用して転送されますが、このことをユーザーは意識する必要はありません。
詳細については、usbser_edge(7D) を参照するか、http://www.digi.com および http://www.sun.com/io を参照してください。
ユーザーが記述したカーネルおよびユーザー独自のドライバの文書サポートおよびバイナリサポート Solaris USB Driver Development Kit (DDK) を利用できます。DDK に関する情報など、USB ドライバの開発に関する最新の情報については、次の Web サイトを参照してください。http://developers.sun.com/solaris/developer/support/driver/usb.html
EHCI ドライバには、次の特徴があります。
USB 2.0 をサポートする拡張ホストコントローラインタフェースに準拠しています。
高速の制御転送、バルク転送、および割り込み転送をサポートします。
現在、高速のアイソクロナス (isochronous、等時性) トランザクションはサポートされていません。たとえば、USB 2.0 オーディオデバイスはサポートされていません。
システムに USB 2.0 および USB 1.x デバイスが実装されている場合には、EHCI ドライバおよび OHCI ドライバは、システムに接続されているデバイスの種類に応じてデバイス制御を渡します。
USB 2.0 PCI カードには、1 つの EHCI コントローラおよび 1 つ以上の OHCI コントローラが組み込まれています。
USB 1.1 デバイスを接続すると、OHCI コントローラに動的に割り当てられます。USB 2.0 デバイスを接続すると、EHCI コントローラに動的に割り当てられます。
Universal Serial Bus (USB) は PC 業界で開発された、周辺機器 (キーボード、マウス、プリンタなど) をシステムに接続するための低コストのソリューションです。
USB コネクタは 1 方向 1 種類のケーブルだけに適合するように設計されています。USB が設計された主な目的は、デバイスごとに異なる何種類ものコネクタを減らすことです。USB の設計により、システムの背面パネルの混雑を軽減できます。
デバイスは、外部 USB ハブ上の USB ポートか、コンピュータ本体に設置されたルートハブ上の USB ポートのいずれかに接続されます。ハブには複数のポートがあるため、1 つのハブからデバイスツリーの複数の枝が伸びることがあります。
次の表に、Solaris 環境でサポートされるUSB デバイスを示します。
USB デバイス |
USB デバイスがサポートされるシステム |
---|---|
オーディオデバイス上の HID コントロール |
SPARC および x86 システム |
ハブ |
SPARC および x86 システム |
キーボードとマウス |
SPARC および x86 システム |
大容量ストレージ |
SPARC および x86 システム サポートされる構成では、キーボードとマウスは 1 つずつしか含めることができない。これらのデバイスは、オンボードの USB ホストコントローラに接続する必要がある |
プリンタ |
SPARC および x86 システム |
スピーカおよびマイク |
SPARC および x86 システム |
USB シリアルコンバータ |
SPARC システム |
次の表に、Solaris 環境で使用される USB の略語について説明します。USB の構成要素と略語についての詳細は http://www.usb.org を参照してください。
略語 |
定義 |
---|---|
ugen |
USB 汎用ドライバ |
USB |
Universal Serial Bus |
USBA |
USB アーキテクチャ (Solaris) |
USBAI |
USBA クライアントドライバインタフェース (Solaris) |
HCD |
USB ホストコントロールドライバ |
EHCI |
拡張オープンコントローラインタフェース |
OHCI |
オープンホストコントローラインタフェース |
UHCI |
ユニバーサルホストコントローラインタフェース |
USB 仕様は、ライセンス料を払わずに入手することができます。USB 仕様は、バスとコネクタの電気的および機械的なインタフェースを定義します。
USB が採用するトポロジでは、ハブが USB デバイスに接続点を提供します。ホストコントローラには、システム内のすべての USB ポートの起点となるルートハブが含まれます。ハブの詳細については、「USB ホストコントローラとルートハブ」を参照してください。
図 71 は、有効な USB ポートが 3 つ搭載されたシステムを示しています。1 番目の USB ポートは Zip ドライブに接続されています。2 番目の USB ポートは外部ハブに接続されており、このハブには CD-RW デバイスと、キーボードとマウスの複合デバイスが接続されています。このキーボードは「複合デバイス」であるため USB コントローラが組み込まれており、このコントローラによって、キーボードとキーボードに接続されたマウスの両方が制御されます。 キーボードとマウスは、同じ USB コントローラによって制御されるため、同一の USB バスアドレスを共有します。
図 71 は、ハブとプリンタの「合成デバイス」の例も示しています。 このハブは外部ハブで、プリンタと同じケースに入っています。プリンタはこのハブに固定接続されます。このハブとプリンタは、それぞれ異なる USB バスアドレスを持ちます。
次の表に、図 71 に示したデバイスの一部について、デバイスツリーパス名を示します。
/pci@1f,4000/usb@5/storage@1
/pci@1f,4000/usb@5/hub@2/device@1/keyboard@0
/pci@1f,4000/usb@5/hub@2/device@1/mouse@1
/pci@1f,4000/usb@5/hub@2/storage@3
/pci@1f,4000/usb@5/hub@3/printer@1
属性とサービスが似ている USB デバイスは、いくつかのデバイスクラスに分類されます。デバイスクラスごとに 1 つのドライバが割り当てられます (フレームワークごとに 1 つ)。1 つのクラス内のデバイスは、同じデバイスドライバの組み合わせで管理されます。ただし、USB 仕様では、特定のクラスに属さないベンダー固有のデバイスも許可しています。
Human Interface Device (HID) クラスには、ユーザーが制御するデバイス (キーボード、マウス、ジョイスティックなど) が含まれます。Communication Device クラスには、電話に接続するデバイス (モデムや ISDN インタフェースなど) が含まれます。その他にも、Audio Device、Monitor Device、Printer Device、Storage Device などのデバイスクラスがあります。各 USB デバイスはデバイスのクラスを表す記述子を持っています。デバイスクラスは、そのメンバーが構成とデータ転送についてどのように動作するかを指定します。クラス情報の詳細については、http://www.usb.org を参照してください。
USB デバイスは、2 つのレベルのデバイスツリーノードとして表現できます。デバイスノードは、USB デバイス全体を表します。1 つまたは複数の子インタフェース ノードはデバイス上にある個々のUSB インタフェースを表します。
ドライバのバインドは互換性のある名前属性の使用によって実現されます。詳細については、『IEEE 1275 USB binding (英語版)』の 3.2.2.1 項と『Writing Device Drivers』を参照してください。ドライバは、デバイス全体にバインドしてすべてのインタフェースを制御することも、1 つのインタフェースだけにバインドすることも可能です。デバイス全体にバインドするドライバがベンダーにもクラスにも存在しない場合、汎用 USB マルチインタフェースドライバがデバイスレベルのノードにバインドされます。IEEE 1275 バインド仕様の 3.2.2.1 項で定義されているように、このドライバは互換名プロパティを使用して、各インタフェースに対してドライバのバインドを試みます。
Solaris USB アーキテクチャ(USBA) は、USB 1.1 および USB 2.0 の仕様に加え、Solaris ドライバ条件にも準拠しています。USBA モデルは Sun Common SCSI Architecture (SCSA) に似ています。USBA は、汎用 USB トランスポート層という概念をクライアントドライバに提供する薄い層で、汎用 USB の主要な機能を実装するサービスをクライアントドライバに提供します。
次の節では、Solaris 環境における USB について知っておく必要のある情報を説明します。
サポートされているのは、Sun USB キーボードとマウスデバイスだけです。また、複数の USB キーボードとマウスデバイスを含むシステム構成は場合によっては機能しますが、Solaris 環境ではサポートされていません。詳細については、次の説明を参照してください。
USB キーボードおよびマウスは、バス上の任意の場所に接続して、コンソールキーボードおよびマウスとして構成することができます。キーボードとマウスが外部ハブに接続されている場合は、システムのブートが遅くなります。
リブート中または ok プロンプトの出ている間は、コンソールキーボードおよびマウスを移動しないでください。システムのリブート後であれば、いつでもコンソールキーボードおよびマウスを別のハブに移動することができます。キーボードおよびマウスは、差し込んだ後は再び完全に機能します。
SPARC のみ USB キーボードの電源キーと Sun タイプ 5 キーボードの電源キーの動作は異なります。USB キーボードでは、「SUSPEND/SHUTDOWN」キーを使用してシステムを中断またはシャットダウンすることができますが、そのキーを使用してシステムの電源を入れることはできません。
Sun 社製以外の USB キーボードでは、キーパッドの左側にある機能は使用できません。
複数のキーボードはサポートされません。
複数のキーボードは認識され、使用できますが、コンソールキーボードとしては認識されません。
ブート時に最初に認識されたキーボードがコンソールキーボードとなります。このため、複数のキーボードが接続されていると、ブート時に混乱の原因となります。
コンソールキーボードを取り外しても、次に利用可能な USB キーボードはコンソールキーボードにはなりません。次にホットプラグされるキーボードがコンソールキーボードになります。
複数のマウスはサポートされません。
複数のマウスは認識され、使用できますが、コンソールマウスとしては認識されません。
ブート時に最初に認識されたマウスがコンソールマウスとなります。このため、複数のマウスが差し込まれていると、ブート時に混乱の原因となります。
コンソールマウスを取り外しても、次に利用可能な USB マウスはコンソールマウスにはなりません。次にホットプラグされるマウスがコンソールマウスになります。
Sun 社製以外の、キーボードとマウスを組み合わせたデバイスを使用する場合、このキーボードがブート時に最初に認識されると、PS/2 マウスが差し込まれていなくても、このキーボードとマウスがコンソールキーボードとマウスになります。このため、別の USB マウスがシステムに差し込まれていても、コンソールマウスとして構成されないので機能しません。
USB マウスまたは PS/2 マウスデバイスでは、3 ボタン以上の使用がサポートされています。
USB マウスまたは PS/2 マウスデバイスでは、ホイール付きマウスによるスクロールが使用可能です。つまり、USB マウスまたは PS/2 マウスでホイールを回転させると、マウスが置かれたアプリケーションまたはウィンドウがスクロールします。StarSuiteTM、MozillaTM、および GNOME アプリケーションはホイール付きマウスによるスクロールをサポートします。ただし、ホイール付きマウスによるスクロールをサポートしないアプリケーションもあります。
USB ハブは次のことを行います。
ポートにおけるデバイスの取り付けと取り外しの監視
ポートにおける個々のデバイスの電源管理
ポートへの電源の制御
USB ホストコントローラは「ルートハブ」という埋め込みハブを持っています。 システムの背面パネルに見えるポートはルートハブのポートです。USB ホストコントローラは次のことを行います。
USB バスの管理。個々のデバイスはバスの調整はできません。
デバイスによって決定されるポーリング間隔による、デバイスのポーリング。ポーリング間隔 (時間) を考慮してデバイスに十分なバッファーがあることを前提とします。
USB ホストコントローラとそれに接続されているデバイス間でのデータの送信。ピアツーピア通信はサポートされません。
SPARC システムと x86 システムのどちらにおいても、ハブを 4 段を超えて多段接続しないでください。SPARC システムでは、OpenBootTM PROM (OBP) は 4 段を超えるデバイスを正確に認識できません。
バス電源供給方式のハブ同士をカスケード接続しないでください。バス電源供給方式のハブは独自の電源を持っていません。
大量の電源を必要とするデバイスをバス電源供給方式のハブに接続しないでください。これらのデバイスがバス電源供給方式のハブ上で正しく機能しなかったり、他のデバイス用の電源がなくなったりする可能性があります。このようなデバイスとして、USB フロッピーディスクデバイスなどがあります。
この Solaris リリースでは、ロースピードまたはフルスピードのデバイスを SPARC システムの USB 2.0 ポートに接続された USB 2.0 ハブに接続することはできません。
SPARC システムでは、USB デバイスの保存停止および復元再開機能が完全にサポートされます。ただし、稼動中のデバイスを保存停止したり、システムの保存停止で電源がオフになっているときにデバイスを取り外すことは決してしないでください。
SPARC システムで電源管理を有効にしている場合、USB のフレームワークはすべてのデバイスの電源管理を最大限に試みます。USB デバイスの電源管理により、ハブドライバはデバイスが接続されているポートの中断も行います。「リモートウェイクアップ」をサポートするデバイスは、そのデバイスが利用可能な状態になるように、そのデバイスのパス上にあるすべてのデバイスを呼び起こすようシステムに通知できます。 アプリケーションがデバイスに入出力を送信した場合も、ホストシステムはデバイスを呼び起こすことができます。
リモートウェイクアップ機能がサポートされている場合、すべての HID (キーボード、マウス、スピーカ、マイクなど)、ハブ、およびストレージデバイスは、デフォルトで電源管理されます。USB プリンタが電源管理されるのは、2 つの印刷ジョブ間だけです。汎用の USB ドライバ (UGEN) に接続しているデバイスの電源は、デバイスが閉じているときにのみ管理されます。
電源消費を減らすために電源管理を行なっている場合は、まず USB 末端デバイスの電源が切断されます。また、ハブのポートに接続されているすべてのデバイスの電源が切断されると、しばらくしてからハブの電源が切断されます。もっとも効率的に電源管理をするためには、あまり多くのハブをカスケード接続しないでください。
USB ケーブルを接続する際には、以下のガイドラインに従ってください。
USB 2.0 デバイスを接続するときは、必ず USB 2.0 に準拠したフルレイト(480M ビット/秒) の 20/28 AWG ケーブルを使用してください。
USB 1.0 または 1.1 デバイスを接続するときは、必ず USB 1.0 に準拠したフルレイト (12M ビット/秒) の 20/28 AWG ケーブルを使用してください。また、バス電源供給方式のハブは低速のデバイスだけに使用してください。USB デバイスを接続するときは、必ずフルレイト (12M ビット/秒) の 20/28 AWG ケーブルを使用してください。
サポートされている最長ケーブル長は 5 m です。
延長ケーブルを使用しないでください。ケーブルを延長するには、最良の結果が得られるよう、自己電源供給方式のハブを使ってください。
詳細については、http://www.usb.org/channel/training/warning を参照してください。