Sun Cluster 製品はハードウェアとソフトウェアが統合されたソリューションであり、高度な可用性とスケーラビリティーを備えたサービスを作成するために使用されます。『Sun Cluster の概念 (Solaris OS 版)』では、Sun Cluster 製品をより深く理解するために必要な概念の情報を説明します。このマニュアルは、Sun Cluster のほかのマニュアルと合わせて、Sun Cluster ソフトウェアの全体を説明するものです。
この章では、Sun Cluster 製品の根底にある一般的な概念の概要を説明します。
この章では次の内容を示します。
Sun Cluster ソフトウェアの基本知識と概要
各ユーザーから見た Sun Cluster
Sun Cluster ソフトウェアを使用する前に理解しておく必要がある重要な概念の明示
重要な概念に関連する手順と情報を記載した Sun Cluster のマニュアル
クラスタに関連する作業と、これらの作業手順が記載されたマニュアル
この章で説明する内容は次のとおりです。
Sun Cluster 環境は、Solaris オペレーティングシステムをクラスタオペレーティングシステムに拡張するものです。「クラスタ」は、1 つまたは複数のノードの集合です。各ノードは、この集合に排他的に属しています。 Solaris 10 OS 上で動作するクラスタには、「グローバルクラスタ」と「ゾーンクラスタ」の 2 種類があります。
Solaris 10 OS より前にリリースされた Solaris OS 上で動作するクラスタの場合、ノードはクラスタメンバーシップに参加する「物理的なマシン」であり、定足数デバイスではありません。Solaris 10 OS 上で動作するクラスタでは、ノードの概念が変更されました。この環境でのノードは、クラスタに関連付けられている Solaris ゾーンです。また、「Solaris ホスト」(単純に「ホスト」とも呼ばれます) は、Solaris OS および個別のプロセスが実行される、次のハードウェア構成またはソフトウェア構成のいずれかです。
仮想マシンで構成されていない、またはハードウェアドメインとして構成されていない「ベアメタル」物理マシン
Sun Logical Domains (LDoms) のゲストドメイン
Sun Logical Domains (LDoms) の I/O ドメイン
ハードウェアドメイン
これらのプロセスは、相互にやりとりすることによって、ユーザーに提供するアプリケーション、システムリソース、データを (ネットワーククライアントにとって) 1 つのシステムのように形成します。
Solaris 10 環境のグローバルクラスタは、1 つまたは複数のグローバルクラスタ投票ノード、および任意で 0 または 1 つ以上のグローバルクラスタ非投票ノードだけで構成されるクラスタの一種です。
グローバルクラスタには、オプションで solaris8、solaris9、lx (linux)、またはネイティブブランドの非大域ゾーンを含めることができます。これらはノードではなく、高可用性のコンテナ (リソース) です。
グローバルクラスタ投票ノードとは、グローバルクラスタ内のネイティブブランドの大域ゾーンで、定足数投票、つまりクラスタのメンバーシップ投票の、総数の票を構成します。この総数により、そのクラスタが処理を継続するのに十分な票を持っているかどうかが決定されます。グローバルクラスタ非投票ノードとは、グローバルクラスタ内のネイティブブランドの非大域ゾーンで、定足数投票、つまりクラスタのメンバーシップ投票の、総数の票を構成しません。
Solaris 10 環境では、ゾーンクラスタは、1 つまたは複数のクラスタブランドの投票ノードのみから構成されるクラスタです。ゾーンクラスタは、グローバルクラスタに依存しており、したがって、グローバルクラスタを必要とします。グローバルクラスタはゾーンクラスタを含みません。ゾーンクラスタを構成するには、グローバルクラスタが必要です。ゾーンクラスタは 1 つのマシン上に最大で 1 つのゾーンクラスタノードを持ちます。
ゾーンクラスタノードは、同一マシン上のグローバルクラスタ投票ノードが処理を継続している間にかぎり、処理を継続できます。マシン上でグローバルクラスタ投票ノードに障害が発生すると、同じマシンのすべてのゾーンクラスタノードにも障害が発生します。
クラスタには、従来の単一サーバーシステムと比較した場合、いくつかの利点があります。これらの利点には、フェイルオーバーサービスとスケーラブルサービスのサポート、モジュールの成長に対応できる容量、従来のハードウェアフォルトトレラントシステムよりも低価格の製品といったものがあります。
次に、Sun Cluster ソフトウェアの目的を示します。
ソフトウェアまたはハードウェアの障害が原因のシステム停止時間を短縮するか完全になくします。
単一サーバーシステムを停止させるような障害が発生しても、エンドユーザーへのデータとアプリケーションの可用性を保証します。
クラスタにノードを追加し、追加したプロセッサに応じたサービスを提供できるようにすることで、アプリケーションのスループットを向上させます。
クラスタ全体を停止しなくても保守を実行できるようにすることで、システムの可用性を強化します。
フォルトトレラント機能と高可用性についての詳細は、『Sun Cluster の概要 (Solaris OS 版)』の「Sun Cluster によるアプリケーションの可用性の向上」を参照してください。
高可用性の FAQ については、「高可用性に関する FAQ」を参照してください。
この節では、Sun Cluster ソフトウェアのユーザーを 3 種類に分け、各ユーザーに関連する概念とマニュアルについて説明します。
各ユーザーは次のとおりです。
ハードウェア保守担当者
システム管理者
アプリケーション開発者
ハードウェア保守担当者にとって、Sun Cluster ソフトウェアは、サーバー、ネットワーク、および記憶装置を含む市販のハードウェアの集合に見えます。これらのコンポーネントは、すべてのコンポーネントにバックアップがあり、単一の障害によってシステム全体が停止しないように配線されています。
ハードウェア保守担当者は、クラスタに関する次の概念を理解する必要があります。
クラスタハードウェアの構成と配線
設置と保守 (追加、取り外し、交換)
ネットワークインタフェースコンポーネント (アダプタ、接続点、ケーブル)
ディスクインタフェースカード
ディスクアレイ
ディスクドライブ
管理コンソールとコンソールアクセスデバイス
管理コンソールとコンソールアクセスデバイスの設定
次の項には、前述の重要な概念に関連する説明が記載されています。
『Sun Cluster 3.1 - 3.2 Hardware Administration Manual for Solaris OS』には、ハードウェアサービスの概念に関連する手順と情報が記載されています。
システム管理者にとって、Sun Cluster 製品は、記憶装置を共有する Solaris ホストの集合です。
システム管理者は、次の作業を行うソフトウェアを扱います。
クラスタ内の Solaris ホスト間のコネクティビティーを監視するための、Solaris ソフトウェアに統合された専用のクラスタソフトウェア
クラスタノードで実行されるユーザーアプリケーションプログラムの状態を監視するための専用のソフトウェア
ディスクを設定して管理するためのボリュームマネージャー
直接ディスクに接続されていない Solaris ホストも含め、すべての Solaris ホストが、すべての記憶装置にアクセスできるようにするための専用のクラスタソフトウェア
ファイルがすべての Solaris ホストに対してローカルに接続されているように表示するための専用のクラスタソフトウェア
システム管理者は、次の概念とプロセスについて理解する必要があります。
ハードウェアとソフトウェアの間の対話
クラスタをインストールして構成する方法の一般的な流れ
Solaris オペレーティングシステムのインストール
Sun Cluster ソフトウェアのインストールと構成
ボリュームマネージャーのインストールと構成
クラスタを動作可能状態にするためのアプリケーションソフトウェアのインストールと構成
Sun Cluster データサービスソフトウェアのインストールと構成
クラスタハードウェアとソフトウェアのコンポーネントを追加、削除、交換、およびサービス提供するためのクラスタ管理手順
パフォーマンスを向上させるための構成の変更方法
次の項には、前述の重要な概念に関連する説明が記載されています。
次の Sun Cluster のマニュアルには、システム管理者の概念に関連する手順と情報が記載されています。
Sun Cluster ソフトウェアは、Oracle、NFS、DNS、Sun Java System Web Server、Apache Web Server (SPARC ベースシステム上)、Sun Java System Directory Server などのアプリケーションに対応する「データサービス」を提供します。データサービスを作成するには、既成のアプリケーションを Sun Cluster ソフトウェアの制御下で動作するように設定する必要があります。Sun Cluster ソフトウェアは、このようなアプリケーションの起動、停止、および監視を行う構成ファイルと管理メソッドを提供します。新しいフェイルオーバーサービスまたはスケーラブルサービスを作成する必要がある場合は、Sun Cluster Application Programming Interface (API) と Data Service Enabling Technologies API (DSET API) を使用して、そのアプリケーションがクラスタ上でデータサービスとして実行するために必要な構成ファイルと管理メソッドを開発します。
アプリケーション開発者は、次の概念について理解する必要があります。
開発するアプリケーションの特性。その特性に基づいて、アプリケーションをフェイルオーバーまたはスケーラブルデータサービスとして実行できるかどうかを判断する必要があります。
Sun Cluster API、DSET API、汎用データサービス。開発者は、各自のアプリケーションをクラスタ環境に合わせて構成するプログラムまたはスクリプトを記述するために、どのツールがもっとも適しているかを判断する必要があります。
次の項には、前述の重要な概念に関連する説明が記載されています。
次の Sun Cluster のマニュアルには、アプリケーション開発者の概念に関連する手順と情報が記載されています。
すべての Sun Cluster ソフトウェアの作業には、ある程度の概念的な背景知識が必要です。次の表は、作業と作業手順が記載されたマニュアルを示したものです。このマニュアルの概念に関する章では、各概念がこれらの作業とどのように対応するかを説明します。
表 1–1 作業マップ: ユーザーの作業と参照するマニュアル
作業 |
参照先 |
---|---|
クラスタハードウェアの設置 |
『Sun Cluster 3.1 - 3.2 Hardware Administration Manual for Solaris OS 』 |
クラスタへの Solaris ソフトウェアのインストール | |
SPARC: SunTM Management Center ソフトウェアのインストール | |
Sun Cluster ソフトウェアのインストールと構成 | |
ボリュームマネージャーのインストールと構成 |
『Sun Cluster ソフトウェアのインストール (Solaris OS 版)』 各ボリュームマネージャーのマニュアル |
Sun Cluster データサービスのインストールと構成 | |
クラスタハードウェアの保守 |
『Sun Cluster 3.1 - 3.2 Hardware Administration Manual for Solaris OS 』 |
Sun Cluster ソフトウェアの管理 | |
ボリュームマネージャーの管理 |
『Sun Cluster のシステム管理 (Solaris OS 版)』およびボリューム管理に関するマニュアル |
アプリケーションソフトウェアの管理 |
各アプリケーションのマニュアル |
問題の識別と対処方法 | |
新しいデータサービスの作成 |