この節では、高度なプログラミング作業と、頻度の低いプログラミング作業について説明します。
インストールを行うと、標準の CIM MOF ファイルがデフォルトのネームスペース /root/cimv2 と /root/security にコンパイルされます。新しいネームスペースを作成する場合は、そのネームスペースにオブジェクトを作成する前に適切な CIM MOF ファイルをネームスペースにコンパイルします。たとえば、標準の CIM 要素を使用するクラスを作成する場合は、ネームスペースに CIM Core Schema をコンパイルします。CIM Application Schema を拡張するクラスを作成する場合は、ネームスペースに CIM Application をコンパイルします。
例 6-14 のコードセグメントは、2 段階の処理により既存のネームスペース内にネームスペースを作成します。
最初に、CIMNameSpace メソッドを使用してネームスペースオブジェクトを構築します。このネームスペースオブジェクトには、ネームスペースが実際に作成される際に CIM Object Manager に渡されるパラメータが含まれます。
次に、CIMClient クラスを使用して CIM Object Manager に接続し、作成したネームスペースオブジェクトを渡します。CIM Object Manager は、このネームスペースオブジェクト内のパラメータを使用してネームスペースを作成します。
{ /*クライアントに渡すパラメータを格納するネームスペース オブジェクトをそのクライアント上に作成する。 args[0] には、ホスト名 (myhost など)が入る。 args[1] には、ネームスペース (最上位のディレクトリなど)が 入る。*/ CIMNameSpace cns = new CIMNameSpace (args[0], args[1]); /* CIM Object Manager に接続し、ネームスペース パラメータが入ったネームスペースオブジェクト (cns) を 渡す。*/ CIMClient cc = new CIMClient (cns); /* CIM Object Manager に、NULL 文字列 (ホスト名) と args[2] (secondlevel のようなネームスペース名) が入った別の ネームスペースオブジェクトを渡す。 */ CIMNameSpace cop = new CIMNameSpace("", args[2]); /* myhost の最上位レベルのネームスペースの下に 新しいネームスペース secondlevel を作成する。/* cc.createNameSpace(cop); } |
ネームスペースを削除するには、deleteNameSpace メソッドを使用します。
例 6-15 のコードセグメントは、最初にネームスペースを作成し、続いて deleteNameSpace メソッドを使用してこのネームスペースを削除します。
{ /* ネームスペースパラメータ args[0] (ホスト名) と args[1] (ネームスペース名) を格納するネームスペース オブジェクトをクライアント上に作成する。 */ CIMNameSpace cns = new CIMNameSpace (args[0], args[1]); /* CIM Object Manager に接続し、作成したネームスペース オブジェクトを渡す。 */ CIMClient cc = new CIMClient (cns); /* CIM Object Manager に NULL ホスト引数 (ここでは CIM Object Manager ホストは変更しない) と削除される ネームスペース名が入ったネームスペースオブジェクトを 渡す。*/ CIMNameSpace cop = new CIMNameSpace("", args[2]); /* ネームスペース cop を削除する。 */ cc.deleteNameSpace(cop); |
アプリケーションは、MOF 言語またはクライアント API のどちらかを使用してクラスを作成できます。MOF の構文に慣れている場合は、テキストエディタを使用して MOF ファイルを作成し、その後 MOF コンパイラを使用してそのファイルを Java クラスにコンパイルすることをお勧めします。この節では、クライアント API を使用して基底クラスを作成する方法を説明します。
CIM クラスを表す Java クラスを作成するには、CIMClass クラスを使用します。ほとんどの基底クラスは、クラス名を指定するだけで宣言できます。ほとんどのクラスには、クラスのデータを表すプロパティが含まれます。プロパティを宣言するには、プロパティのデータ型、名前、およびオプションのデフォルト値を含めます。プロパティのデータ型は、CIMDataType (事前に定義された CIM のデータ型の 1 つ) のインスタンスにします。
プロパティには、キープロパティであることを識別するキー修飾子を指定できます。キープロパティは、クラスのインスタンスを個別に定義します。インスタンスを持てるのは、キーが指定されたクラスだけです。そのため、キープロパティが定義されないクラスは、abstract クラスとしてしか使用できません。
新しいネームスペース内でクラスにキープロパティを定義する場合は、最初にコア MOF ファイルをそのネームスペースにコンパイルする必要があります。コア MOF ファイルには、標準の CIM 修飾子 (キー修飾子など) の宣言が含まれます。MOF ファイルの詳細は、第 3 章「MOF コンパイラ」を参照してください。
クラス定義は、別名、修飾子、修飾子フレーバなどの MOF 機能が含まれることにより複雑化します。
例 6-16 は、ローカルホスト上のデフォルトネームスペース (/root/cimv2) に新しい CIM クラスを作成します。このクラスは 2 つのプロパティを持ち、その 1 つはこのクラスのキープロパティです。続いて、newInstance メソッドを使用して、この新しいクラスのインスタンスを作成します。
{ /* ローカルホストの /root/cimv2 ネームスペースに接続し、 新しいクラス myclass を作成 */ // ローカルホスト上のデフォルトネームスペースに接続 CIMClient cc = new CIMClient(); // 新しい CIMClass オブジェクトを構築 CIMClass cimclass = new CIMClass(); // CIM クラス名を myclass に設定 cimclass.setName("myclass"); // 新しい CIM プロパティオブジェクトを構築 CIMProperty cp = new CIMProperty(); // プロパティ名を設定 cp.setName("keyprop"); // プロパティのデータ型を設定 cp.setType(CIMDatatype.getpredefined(CIMDataType.STRING)); // 新しい CIM 修飾子オブジェクトを構築 CIMQualifier cq = new CIMQualifier(); // 修飾子名を設定 cq.setName("key"); // プロパティに新しいキー修飾子を追加 cp.addQualfiier(cq); /* 10 に初期化された整数プロパティを作成 */ // 新しい CIM プロパティオブジェクトを構築 CIMProperty mp = new CIMProperty(); // プロパティ名を myprop に設定 mp.setName("myprop"); // プロパティのデータ型を設定 mp.setType(CIMDatatype.getpredefined(CIMDataType.INTEGER)); // myprop を 10 に初期化 mp.setValue(CIMValue.setValue(10)); /* myclass にこの新しいプロパティを追加した後、クラスを 作成するために CIM Object Manager を呼び出す。*/ // クラスオブジェクトにキープロパティを追加 cimclass.addProperty(cp); // クラスオブジェクトに整数プロパティを追加 cimclass.addProperty(mp); /* CIM Object Manager に接続し、新しいクラスを渡す。*/ cc.setClass(new CIMObjectPath(),cimclass); // CIM Object Manager に新しいクラスを渡す ci = cc.newInstance(); // myclass に新しい CIM インスタンスを作成 // クライアント接続が開かれている場合、接続を閉じる。 if(cc != null) { cc.close(); } |
クラスを削除するには、CIMClient の deleteClass メソッドを使用します。クラスを削除すると、クラス、そのサブクラス、およびそのすべてのインスタンスが削除されます。削除されるクラスを参照する関連は削除されません。
例 6-17 は、deleteClass インタフェースを使用してクラスを削除します。
import java.rmi.*; import com.sun.wbem.client.CIMClient; import com.sun.wbem.cim.CIMInstance; import com.sun.wbem.cim.CIMValue; import com.sun.wbem.cim.CIMProperty; import com.sun.wbem.cim.CIMNameSpace; import com.sun.wbem.cim.CIMObjectPath; import com.sun.wbem.cim.CIMClass; import com.sun.wbem.cim.CIMException; import java.util.Enumeration; /** * コマンド行に指定されるクラスを削除。 * デフォルトネームスペース root¥cimv2 で作業を行う。 */ public class DeleteClass { public static void main(String args[]) throws CIMException { CIMClient cc = null; try { CIMNameSpace cns = new CIMNameSpace(args[0]); cc = new CIMClient(cns); CIMObjectPath cop = new CIMObjectPath(args[1]); cc.deleteClass(cop); } catch (Exception e) { System.out.println("Exception: "+e); } if(cc != null) { cc.close(); } } } |
CIM 修飾子は、CIM クラス、インスタンス、プロパティ、メソッド、またはパラメータの特性を示す要素です。修飾子の属性は次のとおりです。
データ型
値
名前
Managed Object Format (MOF) 構文では、各 CIM 修飾子は同じ MOF ファイルでそのデータ型を宣言する必要があります。修飾子には、スコープ属性はありません。スコープは、どの CIM 要素がその修飾子を使用できるかを示します。スコープを定義できるのは、修飾子のデータ型宣言内だけです。スコープは、修飾子では変更できません。
次に、CIM 修飾子のデータ型を宣言する MOF 構文を示します。この文は、ブール型 (デフォルト値は FALSE) を使用して修飾子のデータ型 key を定義します。このデータ型が記述できるのは、プロパティと、オブジェクトに対する参照だけです。DisableOverride フレーバは、このキー修飾子がそれらの値を変更できないことを意味します。
Qualifier Key : boolean = false, Scope(property, reference), Flavor(DisableOverride);
次のコード例は、CIM 修飾子の MOF 構文を示します。このサンプル MOF ファイルでは、key と Description はプロパティ test の修飾子です。プロパティのデータ型は、値 a を持つ整数です。
{ [key, Description("test")] int a }
例 6-18 のコードセグメントは、CIMQualifier クラスを使用して CIM 要素のベクトル内の CIM 修飾子を識別します。この例は、各 CIM 修飾子ごとにプロパティ名、値、およびデータ型を返します。
修飾子フレーバは、修飾子の使用を制御するフラグです。フレーバは、派生クラスとインスタンスに修飾子を継承できるかどうか、および派生クラスまたはインスタンスが修飾子の本来の値をオーバーライドできるかどうかを指定する規則を記述します。
... } else if (tableType == QUALIFIER_TABLE) { CIMQualifier prop = (CIMQualifier)cimElements.elementAt(row); if (prop != null) { if (col == nameColumn) { return prop.getName(); } else if (col == typeColumn) { CIMValue cv = prop.getValue(); if (cv != null) { return cv.getType().toString(); } else { return "NULL"; } } ... |
例 6-19 のコードセグメントは、新しいクラスの CIM 修飾子のリストをそのスーパークラス内の修飾子に設定します。
... try { cimSuperClass = cimClient.getClass(new CIMObjectPath(scName)); Vector v = new Vector(); for (Enumeration e = cimSuperClass.getQualifiers().elements(); e.hasMoreElements();) { CIMQualifier qual = (CIMQualifier)((CIMQualifier)e.nextElement()).clone(); v.addElement(qual); } cimClass.setQualifiers(v); } catch (CIMException exc) { return; } } |